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第十二章
五人の写真(4)
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「いや、突然声をかけてすまなかったね。君たちが、あまりに仲の良さそうな素敵な子供たちだったので、私の写真のモデルになってもらいたいと思ってね」
そう優しく話すお爺さんは、悪い人には見えなかった。
「あたしたちでよければ」
紅葉が気前のいい笑顔で応える。
「おお! ありがとう、それじゃあ、そこに並んでくれるかい?」
僕たちは、お爺さんが指定した薬局と本屋の建物の間に並ぶ。そんな僕たちにお爺さんがレンズを向けた。
「さあ、笑って! はい、チーズ!」
パシャリと小気味良いシャッター音がカメラから聞こえると、ジョージが言った。
「なあ、じいさん! その写真、仕上がったら店まで取りに行くから、ちゃんと俺たちにもくれよ!」
お爺さんは大きく肯いた。
「もちろんだとも。特別な容れ物に入れて必ず君たちに届けるよ。ありがとう」
お爺さんはそう言うと、商店街の人混みの中へと消えていった。
「さあ、帰ろうよ」
僕が歩き始めると、突然ミチルが言い出した。
「みんな! ごめん、先に帰って! わたし、あの猫たちのこと、やっぱりほっとけない!」
ミチルが振り返って、勢いよく走り出す。僕たちは顔を見合わると後を追いかけた。商店街の人波に逆らうようにして双子のいた広場を目指す。
「ねえ! どうしたのよ? ミチル」
紅葉が、まっ先にミチルの後を追う。
「あの猫たち、なんだか他人とは思えなくなっちゃって!」
「おまえって、そういう不思議なとこあるよな⁉ どう見たって、俺にはおまえとあの猫たちが親戚どうしには見えないぞ?」
ジョージが後ろから声を飛ばすけど、ジョージ、君こそしょっちゅう不思議発言をしてることに本当に気づいてないんだろうか?
「でもさ! ミチルちゃんが、マシュマロとスカーフェイスを飼ってくれるなら、ボクはとても安心だな」
マルコの言葉に、僕たちは大きく肯いた。
こうして、僕たちが連れ帰ったマシュマロとスカーフェイスは、ミチルの家で元気に育っている。二匹は本当に仲が良くていつも一緒にいるよ。
なんでそんなことを知ってるかって? それは二匹のおかげで《北川理髪店》が町の癒しスポットとして有名になったからだ。
赤と青のサインポールの周りをぐるぐる走るスカーフェイスに、それを近くでぼーっと見ているマシュマロ。そして隣には、朝から座り込んでタバコをふかすドレッドヘアのミチルのお父さん。
そんな平和すぎる光景が乙女町の名物となり、見物客が沢山やってくるようになったんだ。それこそ黄道テレビ局のカメラで中継されるまでにね。
僕たちの暮らす町、ギンガワ県コスモ市の黄道区を大きくまわるイエローバス。時計の針みたいに正確に、町から町へと僕らを乗せていく。僕たちの町の時間は、今日も変わらずゆったりと流れていく。そして窓からは今日も、菜の花のきれいな黄色い道と、町ゆく人の笑顔が次々に映っていった。
そう優しく話すお爺さんは、悪い人には見えなかった。
「あたしたちでよければ」
紅葉が気前のいい笑顔で応える。
「おお! ありがとう、それじゃあ、そこに並んでくれるかい?」
僕たちは、お爺さんが指定した薬局と本屋の建物の間に並ぶ。そんな僕たちにお爺さんがレンズを向けた。
「さあ、笑って! はい、チーズ!」
パシャリと小気味良いシャッター音がカメラから聞こえると、ジョージが言った。
「なあ、じいさん! その写真、仕上がったら店まで取りに行くから、ちゃんと俺たちにもくれよ!」
お爺さんは大きく肯いた。
「もちろんだとも。特別な容れ物に入れて必ず君たちに届けるよ。ありがとう」
お爺さんはそう言うと、商店街の人混みの中へと消えていった。
「さあ、帰ろうよ」
僕が歩き始めると、突然ミチルが言い出した。
「みんな! ごめん、先に帰って! わたし、あの猫たちのこと、やっぱりほっとけない!」
ミチルが振り返って、勢いよく走り出す。僕たちは顔を見合わると後を追いかけた。商店街の人波に逆らうようにして双子のいた広場を目指す。
「ねえ! どうしたのよ? ミチル」
紅葉が、まっ先にミチルの後を追う。
「あの猫たち、なんだか他人とは思えなくなっちゃって!」
「おまえって、そういう不思議なとこあるよな⁉ どう見たって、俺にはおまえとあの猫たちが親戚どうしには見えないぞ?」
ジョージが後ろから声を飛ばすけど、ジョージ、君こそしょっちゅう不思議発言をしてることに本当に気づいてないんだろうか?
「でもさ! ミチルちゃんが、マシュマロとスカーフェイスを飼ってくれるなら、ボクはとても安心だな」
マルコの言葉に、僕たちは大きく肯いた。
こうして、僕たちが連れ帰ったマシュマロとスカーフェイスは、ミチルの家で元気に育っている。二匹は本当に仲が良くていつも一緒にいるよ。
なんでそんなことを知ってるかって? それは二匹のおかげで《北川理髪店》が町の癒しスポットとして有名になったからだ。
赤と青のサインポールの周りをぐるぐる走るスカーフェイスに、それを近くでぼーっと見ているマシュマロ。そして隣には、朝から座り込んでタバコをふかすドレッドヘアのミチルのお父さん。
そんな平和すぎる光景が乙女町の名物となり、見物客が沢山やってくるようになったんだ。それこそ黄道テレビ局のカメラで中継されるまでにね。
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