時間泥棒【完結】

虹乃ノラン

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第六章

スカーフェイスを追って(3)

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   《ライオン公園 石門坂下》

 ライオン公園の石門を越えると、公園出口のゆるやかな下り坂の先に、大勢の人だかりと救急車が一台止まっていた。
「あそこだ!」
 指さした先には、小さな男の子がぐったりと横たわり、その脇に一台の自転車が倒れていた。その場所を目指して長い下り坂を走り、九〇度に曲がったカーブを右へ曲がる。人だかりにたどり着くと、救急隊員が横たわる男の子に声をかけているのが見えた。
「小さい子ね。コスモ小の生徒かな?」
 僕たちより下級生らしいその男の子は、どうやら下り坂のカーブを曲がれずに、自転車ごと壁にぶつかったようだった。脇に転がる自転車のカゴが、グシャグシャに変形してしまっている。
「ねえ、あの倒れている子は、君たちの友達?」
 人だかりの中に、自転車を支えた低学年らしい男の子が二人いるのを見つけて、僕が声をかけると、二人はおびえた表情で何度も肯いた。
「あの子は一体どうしたの?」
 二人のうちの一人が、かすれた声でなんとか話し出す。。
「僕たち、公園で遊んでて、それで、帰ろうと思って、さ、三人で坂道をおっ、おりてたら……

「大丈夫。おちついて?」
 ガタガタ震えながら、必死に説明しようとしてくれる。
「そしたら、あの子が急にブレーキもかけずにどんどん行っちゃって……」よほど怖かったんだろう。その子の目がみるみるまっ赤に染まっていった。「僕たち、危ない! って叫んだんだけど、あの子ぜんぜん聞こえてないみたいで……それで、壁にぶつかっちゃったの」
 男の子の話を聞き終えると、ミチルが割って入ってきた。
「ねえ、君たちが坂道をおりてるとき、片目をケガした黒猫を見なかった?」
 男の子は首を振って「見てない」と泣き始めた。すると、それまで黙ったままだったもう一人の子が、思い出したように口を開いた。
「ぼ、僕見たかも!」
「本当⁉ どこで見たか教えてくれる?」
「後ろ姿だったから片目かどうかわからないけど! でも尻尾の長い黒猫だったよ!」
 男の子が
をさす。そこは、ライオン公園入口よりも五〇メートルほどおりた西へ抜ける道だった。獅子丘町を抜け、隣の乙女町へと通じてる道だ。
 担架に乗せられて、倒れていた男の子が救急車に運ばれる。
 救急隊員から話を聞いていたマルコが、戻ってきて言った。
「男の子はたぶん大丈夫だって! ヘルメットもかぶってたし、壁にぶつかる前に縁石と街路樹の茂みが、クッションになってくれたみたい!」
 マルコの言葉に、少しだけみんなホッとした。

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