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第四章
黒野時計堂(3)
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「さて、まずなにから話をするんだったかな?」
お爺さんはゆったりと椅子に腰かけると、おかしな口ぶりで話し始めた。
「お爺さん、ここは一体どこなんですか? 僕たち、商店街に帰りたいんです」
「ああ! そうだったね。ここはね《時間の狭間》と呼ばれる場所なんだよ」
「時間の、はざま?」
唐突な言葉に僕たちは目を丸くした。
「それってどういうことですか?」紅葉が尋ねる。
「つまりね、ここは過去でも、現在でも、はたまた未来でもない場所なんだ。つまり《時間》という干渉をいっさい受けない《外側の世界》なんだよ」
ミチルだけは、ただ一人理解しているのか、何度もうなずいている。
僕と紅葉は意味がわからず顔を見合わせ、ジョージとマルコにいたっては、すでに話すら聞いていない……。
「わかりづらいかな? 君たちがここへ来たのはちょうど午後五時。そして、今でも午後五時のままだ。つまり、君たちがここで何時間過ごそうとも、午後五時から、一秒だって進まない――ここは、そんな《外の世界》なんだよ。もちろん《外》というのは、君たちにとっての《外》であって、私たちにとっては、君らの世界こそが《外の世界》でもあるんだがね」
お爺さんは難しいことを言った。そんな世界が現実にあるなんてとても信じられないし、どう考えても説明がつかない。
「私はね、ずっとここで《時間の管理人》として仕事をしているんだよ。今日、君たちの中で、気がついたらこんなにも時間が過ぎてた、と思った人はいないかな? その間なんの記憶も残ってない、なんていう不思議な経験をした人はいるかい?」
僕は今朝のことや、ライオン公園で紅葉を待っていたときのことを思い出した。
「それが、時間となにか関係があるんですか?」
「じつはね……」
お爺さんは静かに立ち上がり、柱時計の正面に立つ。
「この時計を見てくれるかい?」
お爺さんはゆったりと椅子に腰かけると、おかしな口ぶりで話し始めた。
「お爺さん、ここは一体どこなんですか? 僕たち、商店街に帰りたいんです」
「ああ! そうだったね。ここはね《時間の狭間》と呼ばれる場所なんだよ」
「時間の、はざま?」
唐突な言葉に僕たちは目を丸くした。
「それってどういうことですか?」紅葉が尋ねる。
「つまりね、ここは過去でも、現在でも、はたまた未来でもない場所なんだ。つまり《時間》という干渉をいっさい受けない《外側の世界》なんだよ」
ミチルだけは、ただ一人理解しているのか、何度もうなずいている。
僕と紅葉は意味がわからず顔を見合わせ、ジョージとマルコにいたっては、すでに話すら聞いていない……。
「わかりづらいかな? 君たちがここへ来たのはちょうど午後五時。そして、今でも午後五時のままだ。つまり、君たちがここで何時間過ごそうとも、午後五時から、一秒だって進まない――ここは、そんな《外の世界》なんだよ。もちろん《外》というのは、君たちにとっての《外》であって、私たちにとっては、君らの世界こそが《外の世界》でもあるんだがね」
お爺さんは難しいことを言った。そんな世界が現実にあるなんてとても信じられないし、どう考えても説明がつかない。
「私はね、ずっとここで《時間の管理人》として仕事をしているんだよ。今日、君たちの中で、気がついたらこんなにも時間が過ぎてた、と思った人はいないかな? その間なんの記憶も残ってない、なんていう不思議な経験をした人はいるかい?」
僕は今朝のことや、ライオン公園で紅葉を待っていたときのことを思い出した。
「それが、時間となにか関係があるんですか?」
「じつはね……」
お爺さんは静かに立ち上がり、柱時計の正面に立つ。
「この時計を見てくれるかい?」
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