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第二章
ライオン公園のタイムカプセル(4)
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「――デジャブって、聞いたことある?」
ミチルが突然言い出す。みんなが不思議そうにするなかで、僕だけは内心ドキリとしていた。だってまったく同じことを考えていたから。
「それって、見たこともないのに見た気がしたりする、あのクレイジーな現象か?」
「それならボクも経験あるよ! 昨日カレーを食べたと思ったら、次の日もカレーを食べてたってやつだよね?」
「ミチル? そのデジャブが、どうしたの?」
紅葉が催促すると、ミチルはじっと立ったまま、まっすぐ腕を伸ばして木を指さした。
「あっ⁉……」口々にそう言うと、みんな黙り込んだ。ミチルの指した先に、ポッチャリした白猫が座っていた。再び不思議な感覚になる。変な気分になっているのはきっと僕だけじゃない。全員揃ってあの白猫にデジャブを感じてると確信できた。
「えっ! なんだ? 今のクレイジーな感覚は?」
ジョージが慌てるのを見て紅葉の顔色が変わった。「まさかあんたも⁉」
マルコも目を丸くしてキョロキョロ見渡す。そしてみんな揃って僕を見た。誰も口には出さなかったけれど、「おまえもか?」って顔で。僕は大きくうなずいた。
「うわー、なに⁉ ボク怖いの嫌いなんだよ!」うろたえるマルコに、かぶせるようにジョージが叫ぶ。
「おい! 見ろよ、あの猫!」
ポッチャリした白猫は、大きな木の生える地面を前足で掘っていた。
「トイレかな?」
ミチルがそう言うけど、白猫はいっこうに用を足す気配はない。地面を掘るだけ掘ると、その場から少し離れてまた僕たちを見つめている。
「なんか、あたしたちに、なにかを訴えてるみたいだね」
「……訴えてる?」
紅葉の言葉が気になって、木の根元まで近づいてみると土の中からなにか金属のような物が少しだけ頭をのぞかせていた。
「みんな! 来て!」
慌ててみんなを呼ぶと、まだ埋まっている部分を急いで掘り起こす。土の中から出てきたのは、銀色のソフトボールくらいの球だった。
「なんだ? そりゃ?」
ジョージがつぶやく。
「ソフトボールにしては、硬そうね? なんだろう?」紅葉が指でつつくと、横でマルコが不思議そうに言った。
「ひょっとしてタイムカプセル?」
両手でねじってみると、その球はきれいにふたつに割れた。
「おおぉ!」
とみんながどよめく。出てきたのは写真で、筒状に丸まっている。中を見た僕は思わずそれを手離した。
「なんだどうした⁉ そのクレイジーなブツを早く見せろ!」
ミチルが写真を拾いあげ、みんなが覗き込んだ。
「なによこれ⁉」
紅葉が声をあげた。
「ねえ、こんなの撮ったっけ? ボク、記憶がないよ」
「この五人で、写真を撮ったことなんてないわ、たぶん……」
もちろん誰にも記憶はない。でもそこに写し出された動かぬ証拠を前に、ミチルの返事も曖昧なものだった。僕たちが覗き込んでいたのは、五人の集合写真――僕たち全員がにこやかに笑っている写真だったんだ。
「そっくりさん……かな?」思わずつぶやくと、すかさずジョージが否定した。
「バカ野郎! こんなクレイジーなヘアスタイルした小学生が、他にいてたまるか!」
ミチルが突然言い出す。みんなが不思議そうにするなかで、僕だけは内心ドキリとしていた。だってまったく同じことを考えていたから。
「それって、見たこともないのに見た気がしたりする、あのクレイジーな現象か?」
「それならボクも経験あるよ! 昨日カレーを食べたと思ったら、次の日もカレーを食べてたってやつだよね?」
「ミチル? そのデジャブが、どうしたの?」
紅葉が催促すると、ミチルはじっと立ったまま、まっすぐ腕を伸ばして木を指さした。
「あっ⁉……」口々にそう言うと、みんな黙り込んだ。ミチルの指した先に、ポッチャリした白猫が座っていた。再び不思議な感覚になる。変な気分になっているのはきっと僕だけじゃない。全員揃ってあの白猫にデジャブを感じてると確信できた。
「えっ! なんだ? 今のクレイジーな感覚は?」
ジョージが慌てるのを見て紅葉の顔色が変わった。「まさかあんたも⁉」
マルコも目を丸くしてキョロキョロ見渡す。そしてみんな揃って僕を見た。誰も口には出さなかったけれど、「おまえもか?」って顔で。僕は大きくうなずいた。
「うわー、なに⁉ ボク怖いの嫌いなんだよ!」うろたえるマルコに、かぶせるようにジョージが叫ぶ。
「おい! 見ろよ、あの猫!」
ポッチャリした白猫は、大きな木の生える地面を前足で掘っていた。
「トイレかな?」
ミチルがそう言うけど、白猫はいっこうに用を足す気配はない。地面を掘るだけ掘ると、その場から少し離れてまた僕たちを見つめている。
「なんか、あたしたちに、なにかを訴えてるみたいだね」
「……訴えてる?」
紅葉の言葉が気になって、木の根元まで近づいてみると土の中からなにか金属のような物が少しだけ頭をのぞかせていた。
「みんな! 来て!」
慌ててみんなを呼ぶと、まだ埋まっている部分を急いで掘り起こす。土の中から出てきたのは、銀色のソフトボールくらいの球だった。
「なんだ? そりゃ?」
ジョージがつぶやく。
「ソフトボールにしては、硬そうね? なんだろう?」紅葉が指でつつくと、横でマルコが不思議そうに言った。
「ひょっとしてタイムカプセル?」
両手でねじってみると、その球はきれいにふたつに割れた。
「おおぉ!」
とみんながどよめく。出てきたのは写真で、筒状に丸まっている。中を見た僕は思わずそれを手離した。
「なんだどうした⁉ そのクレイジーなブツを早く見せろ!」
ミチルが写真を拾いあげ、みんなが覗き込んだ。
「なによこれ⁉」
紅葉が声をあげた。
「ねえ、こんなの撮ったっけ? ボク、記憶がないよ」
「この五人で、写真を撮ったことなんてないわ、たぶん……」
もちろん誰にも記憶はない。でもそこに写し出された動かぬ証拠を前に、ミチルの返事も曖昧なものだった。僕たちが覗き込んでいたのは、五人の集合写真――僕たち全員がにこやかに笑っている写真だったんだ。
「そっくりさん……かな?」思わずつぶやくと、すかさずジョージが否定した。
「バカ野郎! こんなクレイジーなヘアスタイルした小学生が、他にいてたまるか!」
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