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第二章
ライオン公園のタイムカプセル(1)
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ミチルが気づいたのは、それから十分ほど経ってからだった。春の陽気の心地好さに、マルコとジョージが草の上で寝転がっていびきをかき始めたときだ。ようやく後ろに人の気配を感じたのか、ミチルがびっくりしたように振り返る。
「ミチル、邪魔してごめんね。じつは、紅葉にライオン公園に集まるように言われたんだ。たぶん来週の調理実習のことだと思うんだけど……」
ミチルは、横でいびきをかいて寝ているマルコとジョージを見ると優しく笑った。
「ごめんね。声をかけてくれればよかったのに……」
不思議系だとばかり思っていたけど、笑うミチルはとても素敵に見える。
「ちょっと待ってね。すぐ片づけるから」
ミチルは道具を片づけると立ち上がり、地面に落ちていた木の枝を優雅に拾いあげた。すごく絵になっている。今日からステキ系女子に格上げかな? そんな風に考えているとミチルが突然予想外の行動をとった。マルコとジョージの側まで行きしゃがみ込むと。小枝を生け花でも挿すみたいに二人の鼻の穴に入れていく。しかも笑いながら……。ミチルの頭の中でなにが起きてるかわかりようがないけど、僕は言葉を失ってただ見てることしかできなかった。ごめん、やっぱりミチルは不思議系女子で間違いない。
「あっ! ミチルちゃん、ごめん。ボク、寝ちゃったみたい」
フガフガ言いながらマルコが起き上がると、ミチルは優しく微笑みかけた。
「マルコはいつものことじゃない」
「寝てない! 俺は一ミリだって寝てないぞ!」
鼻から枝をぶら下げたまま、そんな言い訳に胸を張れるジョージが少しうらやましい。
「ライオン公園に行くのね。教室に置いてある荷物を取ってくるわ」
そう言ってミチルは校舎へと歩いていった。
「なんだよあいつ! 俺はただ目を閉じてただけなのに、こんなものつっこみやがって! とんだクレイジー娘だ」ぶら下がった枝を抜いてポイッと放り投げる。
僕たちは正門にまわり、そこでミチルを待った。やがてミチルが校舎から出てくると一緒に公園に向かう。ライオン公園は獅子丘町にある大きな公園で、歩いて十分の距離にある。高台にあるジャングルジムからは、黄道区が一望できるくらい見晴らしがいい。
「たまには公園でスケッチするのもいいかな?」
獅子丘町の緩やかな上り坂をのぼっていくと、途中、やはりお年寄りの人たちがぼんやり動かないまま桜の木を見ていたり、景色を見ていたりする光景が目についた。朝と同じような光景だ。それを見てジョージがニヤニヤとする。
「確かに、これだけ暖かいとぼんやりもしたくなるよな?」
まるで縁側に座って居眠りするおじいちゃんみたいだ、とでも言いたいんだろう。
「ほっといてよ!」
くやしいけどなにも言い返せなかった。
「ジョージ君……千、斗く、ん……」
そんなに急な坂じゃないけど、マルコはハァハァと息を切らしながらついて来る。
「ああ……おなかが空いたよ。なにか、食べる物……持ってない?」
するとミチルが持っていた手さげカバンを探り始めて、中からチョコバーを取り出した。マルコはそれを受け取ると、満面の笑顔でかじり始める。
「いつもありがとう! ミチルちゃん」
いつも……? マルコはいつもこんな風にお菓子をもらってるってことなのか? ミチルは慣れた様子で手さげカバンを整えるとまた歩き始めた。
「クレイジーだな、あのカバン。一体、なにが仕込んであるんだ?」
「あなたたちもいる? 毎日マルコにせびられるから持って来るくせがついちゃって」
「おぉ! サンキュー! いきなり鼻に枝をつっこまれたときはとんだクレイジー娘だと思ったけど、俺、おまえの子分になってやってもいいぜ!」
チョコバーもらって子分って、発想が桃太郎かと思ったけど、それは言うのをやめた。
「紅葉まだかな?」
公園に到着すると、中央付近にある大きな時計台の前で紅葉が来るのを待つ。敷地内には、お母さんに連れられた幼い子どもたちが楽しそうに走り回っていた。
「ミチル、邪魔してごめんね。じつは、紅葉にライオン公園に集まるように言われたんだ。たぶん来週の調理実習のことだと思うんだけど……」
ミチルは、横でいびきをかいて寝ているマルコとジョージを見ると優しく笑った。
「ごめんね。声をかけてくれればよかったのに……」
不思議系だとばかり思っていたけど、笑うミチルはとても素敵に見える。
「ちょっと待ってね。すぐ片づけるから」
ミチルは道具を片づけると立ち上がり、地面に落ちていた木の枝を優雅に拾いあげた。すごく絵になっている。今日からステキ系女子に格上げかな? そんな風に考えているとミチルが突然予想外の行動をとった。マルコとジョージの側まで行きしゃがみ込むと。小枝を生け花でも挿すみたいに二人の鼻の穴に入れていく。しかも笑いながら……。ミチルの頭の中でなにが起きてるかわかりようがないけど、僕は言葉を失ってただ見てることしかできなかった。ごめん、やっぱりミチルは不思議系女子で間違いない。
「あっ! ミチルちゃん、ごめん。ボク、寝ちゃったみたい」
フガフガ言いながらマルコが起き上がると、ミチルは優しく微笑みかけた。
「マルコはいつものことじゃない」
「寝てない! 俺は一ミリだって寝てないぞ!」
鼻から枝をぶら下げたまま、そんな言い訳に胸を張れるジョージが少しうらやましい。
「ライオン公園に行くのね。教室に置いてある荷物を取ってくるわ」
そう言ってミチルは校舎へと歩いていった。
「なんだよあいつ! 俺はただ目を閉じてただけなのに、こんなものつっこみやがって! とんだクレイジー娘だ」ぶら下がった枝を抜いてポイッと放り投げる。
僕たちは正門にまわり、そこでミチルを待った。やがてミチルが校舎から出てくると一緒に公園に向かう。ライオン公園は獅子丘町にある大きな公園で、歩いて十分の距離にある。高台にあるジャングルジムからは、黄道区が一望できるくらい見晴らしがいい。
「たまには公園でスケッチするのもいいかな?」
獅子丘町の緩やかな上り坂をのぼっていくと、途中、やはりお年寄りの人たちがぼんやり動かないまま桜の木を見ていたり、景色を見ていたりする光景が目についた。朝と同じような光景だ。それを見てジョージがニヤニヤとする。
「確かに、これだけ暖かいとぼんやりもしたくなるよな?」
まるで縁側に座って居眠りするおじいちゃんみたいだ、とでも言いたいんだろう。
「ほっといてよ!」
くやしいけどなにも言い返せなかった。
「ジョージ君……千、斗く、ん……」
そんなに急な坂じゃないけど、マルコはハァハァと息を切らしながらついて来る。
「ああ……おなかが空いたよ。なにか、食べる物……持ってない?」
するとミチルが持っていた手さげカバンを探り始めて、中からチョコバーを取り出した。マルコはそれを受け取ると、満面の笑顔でかじり始める。
「いつもありがとう! ミチルちゃん」
いつも……? マルコはいつもこんな風にお菓子をもらってるってことなのか? ミチルは慣れた様子で手さげカバンを整えるとまた歩き始めた。
「クレイジーだな、あのカバン。一体、なにが仕込んであるんだ?」
「あなたたちもいる? 毎日マルコにせびられるから持って来るくせがついちゃって」
「おぉ! サンキュー! いきなり鼻に枝をつっこまれたときはとんだクレイジー娘だと思ったけど、俺、おまえの子分になってやってもいいぜ!」
チョコバーもらって子分って、発想が桃太郎かと思ったけど、それは言うのをやめた。
「紅葉まだかな?」
公園に到着すると、中央付近にある大きな時計台の前で紅葉が来るのを待つ。敷地内には、お母さんに連れられた幼い子どもたちが楽しそうに走り回っていた。
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