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第十二章

お父さんの恋人(4)

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 でも、もしはじめから、お父さんと朱里が裏でつながってたってことならすべて説明がつく。
 こんなふうにして、あたしと朱里って人を近づけようとするなんてずるい。
 もちろんお父さんの気持ちだってわかる。お母さんを失った代わりに、厄介な病気を抱えた娘だけが残っちゃったんだから。これまで必死であたしというお荷物を背負って充分頑張ってきてくれた。けど……だからって、こんなやり方は卑怯よ!
 自分の恋人をあたしの友だちとして?
 スパイみたいにあたしの懐に潜り込ませて?
 あたしが彼女を信用し、信頼関係ができあがったころに真実を明かそうだなんて!
 これじゃあ……お父さんは、お母さんの気持ちも、あたしの気持ちも両方踏みにじってる……まるで、自分の目的を達成するためなら手段を選ばない悪党だ!
 絶対的に信頼し、信用している者に裏切られる心の痛みは、想像を絶するものだった。ようやく、あたしを取り巻くすべてがうまく回り始めそうだと感じたこの日、あたしはお父さんと、親友だと思っていた朱里を失ったんだから。
 いい表しようのない喪失感の中、あたしはひとりベンチに座ったまま。いつしか、ざわついていた店内の音は薄れていた。
 ベンチの隣で自販機がガタンと音を立てる。振り向けば、ジュースを買ってもらった小さな女の子がお母さんと手をつないで歩いていった。

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