44 / 66
第十二章
お父さんの恋人(4)
しおりを挟む
でも、もしはじめから、お父さんと朱里が裏でつながってたってことならすべて説明がつく。
こんなふうにして、あたしと朱里って人を近づけようとするなんてずるい。
もちろんお父さんの気持ちだってわかる。お母さんを失った代わりに、厄介な病気を抱えた娘だけが残っちゃったんだから。これまで必死であたしというお荷物を背負って充分頑張ってきてくれた。けど……だからって、こんなやり方は卑怯よ!
自分の恋人をあたしの友だちとして?
スパイみたいにあたしの懐に潜り込ませて?
あたしが彼女を信用し、信頼関係ができあがったころに真実を明かそうだなんて!
これじゃあ……お父さんは、お母さんの気持ちも、あたしの気持ちも両方踏みにじってる……まるで、自分の目的を達成するためなら手段を選ばない悪党だ!
絶対的に信頼し、信用している者に裏切られる心の痛みは、想像を絶するものだった。ようやく、あたしを取り巻くすべてがうまく回り始めそうだと感じたこの日、あたしはお父さんと、親友だと思っていた朱里を失ったんだから。
いい表しようのない喪失感の中、あたしはひとりベンチに座ったまま。いつしか、ざわついていた店内の音は薄れていた。
ベンチの隣で自販機がガタンと音を立てる。振り向けば、ジュースを買ってもらった小さな女の子がお母さんと手をつないで歩いていった。
こんなふうにして、あたしと朱里って人を近づけようとするなんてずるい。
もちろんお父さんの気持ちだってわかる。お母さんを失った代わりに、厄介な病気を抱えた娘だけが残っちゃったんだから。これまで必死であたしというお荷物を背負って充分頑張ってきてくれた。けど……だからって、こんなやり方は卑怯よ!
自分の恋人をあたしの友だちとして?
スパイみたいにあたしの懐に潜り込ませて?
あたしが彼女を信用し、信頼関係ができあがったころに真実を明かそうだなんて!
これじゃあ……お父さんは、お母さんの気持ちも、あたしの気持ちも両方踏みにじってる……まるで、自分の目的を達成するためなら手段を選ばない悪党だ!
絶対的に信頼し、信用している者に裏切られる心の痛みは、想像を絶するものだった。ようやく、あたしを取り巻くすべてがうまく回り始めそうだと感じたこの日、あたしはお父さんと、親友だと思っていた朱里を失ったんだから。
いい表しようのない喪失感の中、あたしはひとりベンチに座ったまま。いつしか、ざわついていた店内の音は薄れていた。
ベンチの隣で自販機がガタンと音を立てる。振り向けば、ジュースを買ってもらった小さな女の子がお母さんと手をつないで歩いていった。
105
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
九竜家の秘密
しまおか
ミステリー
【第6回ホラー・ミステリー小説大賞・奨励賞受賞作品】資産家の九竜久宗六十歳が何者かに滅多刺しで殺された。現場はある会社の旧事務所。入室する為に必要なカードキーを持つ三人が容疑者として浮上。その内アリバイが曖昧な女性も三郷を、障害者で特殊能力を持つ強面な県警刑事課の松ヶ根とチャラキャラを演じる所轄刑事の吉良が事情聴取を行う。三郷は五十一歳だがアラサーに見紛う異形の主。さらに訳ありの才女で言葉巧みに何かを隠す彼女に吉良達は翻弄される。密室とも呼ぶべき場所で殺されたこと等から捜査は難航。多額の遺産を相続する人物達やカードキーを持つ人物による共犯が疑われる。やがて次期社長に就任した五十八歳の敏子夫人が海外から戻らないまま、久宗の葬儀が行われた。そうして徐々に九竜家における秘密が明らかになり、松ヶ根達は真実に辿り着く。だがその結末は意外なものだった。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
【完結】雨上がり、後悔を抱く
私雨
ライト文芸
夏休みの最終週、海外から日本へ帰国した田仲雄己(たなか ゆうき)。彼は雨之島(あまのじま)という離島に住んでいる。
雄己を真っ先に出迎えてくれたのは彼の幼馴染、山口夏海(やまぐち なつみ)だった。彼女が確実におかしくなっていることに、誰も気づいていない。
雨之島では、とある迷信が昔から吹聴されている。それは、雨に濡れたら狂ってしまうということ。
『信じる』彼と『信じない』彼女――
果たして、誰が正しいのだろうか……?
これは、『しなかったこと』を後悔する人たちの切ない物語。
宇宙との交信
三谷朱花
ライト文芸
”みはる”は、宇宙人と交信している。
壮大な機械……ではなく、スマホで。
「M1の会合に行く?」という謎のメールを貰ったのをきっかけに、“宇宙人”と名乗る相手との交信が始まった。
もとい、”宇宙人”への八つ当たりが始まった。
※毎日14時に公開します。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
サクラ舞い散るヤヨイの空に
志波 連
ライト文芸
くるくるにカールさせたツインテールにミニスカート、男子用カーデガンをダボっと着た葛城沙也は、学内でも有名なほど浮いた存在だったが、本人はまったく気にも留めず地下アイドルをやっている姉の推し活に勤しんでいた。
一部の生徒からは目の敵にされ、ある日体育館裏に呼び出されて詰問されてしまう沙也。
他人とかかわるのが面倒だと感じている飯田洋子が、その現場に居合わせつい止めに入ってしまう。
その日から徐々に話すことが多くなる二人。
互いに友人を持った経験が無いため、ギクシャクとするも少しずつ距離が近づきつつあったある日のこと、沙也の両親が離婚したらしい。
沙也が泣きながら話す内容は酷いものだった。
心に傷を負った沙也のために、洋子はある提案をする。
他のサイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより引用しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる