3 / 10
とある都会のボロアパートにて
しおりを挟む△▼△▼△▼△▼
「これで最後っと!」
内定式や事前研修で後回しになってしまっていた荷物の片付けを終え、勢いに任せて終了宣言をする
布団と段ボールしか見えていなかった6畳半の部屋に、何ヶ月か振りに畳が顔を覗かせているのを見て感慨深い物を覚えつつ最終工程である風呂に入る事にした
玄関のすぐ左にある風呂場に備え付けられているのはシャワーと蛇口、そしてその蛇口のお湯を受け止めるのは驚くなかれ
大きめの木桶だ
「最近の若いモンは、ばすたぶ?がないと部屋を借りないって聞いてね」
とは大家さんであるテン婆さんの話だ
素材は檜でできており、大人1人余裕で入れる
なんなら2人でもギリいけそう
妙に温泉気分になれるもんだから小憎らしい
と言っても眼前のトイレ(和式)が雰囲気を台無しにしてくるのでプラスマイナスはマイナスを振り切っている
「今度温泉の元でも買ってくるか…」
そんな事を言いながら風呂から上がり、この家の格式高い雰囲気に未だ馴染むことのない最新式冷蔵庫から缶ビールを取り出して風呂上がりの一杯を堪能
カシュッ
ゴクッ
ぷはぁ
至高の三拍子の完成させメールチェック等を行いながら飲み進める
残り3割といったところで眠気を催してきたので明日の準備をする事にした
「つっても確認するだけなんだけどねー」
独り言が増えてるなぁなんて思いながら手短に確認を終え、手に持っていたビールを飲み干して床につく。
明日は初出勤なのだ、遅刻など以ての外!
寝坊厳禁である
しっかりと目覚ましのタイマーがセットされた事を確認して栄治は眠りにつくのだった
△▼△▼△▼△▼
翌朝、タイマーが鳴る寸前に目を覚ます栄治
「たまーにあるよねこれ、んで実は起きてなくてまだ夢みたいなやつ」
また独り言を言ってしまった…
とばつの悪そうに身体を起こすと
昨日までは見えていなかった畳と綺麗に整頓されている部屋が視界に入り、頭が覚醒していく
“新生活が始まる”
なんとなくそう実感して気分が高揚する
築40年からは数えてないらしい木造ボロアパートでも住めば都
例え裸電球で電子レンジを使うと怪しく光が揺れようが
洗濯機を置くスペースが無くただでさえ狭い風呂場を圧迫していようが
玄関の扉が押しても引いても開くという謎仕様であろうが
俺の城である
誇らしい気分のまま朝食を準備して平らげる
引越し初日から感じてはいたが、母親のありがたみは未だに消え去る事はない
「母ちゃん、父ちゃん、ありがとう」
ほぼ日課となった両親への感謝、今日は初出勤と言う事も相まって一段と気持ちが入った
片付けと出社準備を整えて玄関で靴を履く
「今日も一日、頑張ってきます!アパートの神さま見守っててくださいませ」
部屋に向かって柏手を打ち一礼をする
これも今のところ日課になっている行為だ
築年数が古いこのボロアパートではあるが、そこから滲み出す年季はもはや風格と言って差し支えなく
なんとなく拝みたくなるのである
そしてドアノブに手をかける
今日は押してみようか
なんて思いながらドアノブを回し、押し開く
「行ってきます!!」
自身に発破をかけるべく、しっかりと口に出しつつ一歩外に出ると
目の前に広がるのはいつもとは明らかに違う…というか現実味が皆無な真っ白な空間で
俺から発信された声はその中を切り裂くかのようにとても鋭く響いていた
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる