VRMMOでNPCの幼女を餌付けしてお姉ちゃんプレイしてたら求婚されました！？

春の香り

淡く揺蕩たゆたうような光が見える

僕が気がついた事がわかったのか
光は動き出す

いや、光ごと僕が動きだしたという方が正解だろうか


ーーー夢を、見ていたんだ


春の夢だ
芽吹き、育ち、咲き誇り、実を残し
そして散る

僕は散った花弁を掻き集めて蹲うずくまる

これ以上風に攫われないように
これ以上溢さないように

胸の中心に
擦り切れた実を抱えて泣き噦じゃくり


歪な大樹の根元で見る


愛の夢


ーーー『ツキがふたつもあるなんて超ラッキーな名前ですね！』


突風のような音が響いた


しかし風は感じない
吹いていないはずなのに花弁が震え出す

ーーー『きっと、ツキが巡ってきたのよ』

芽吹きはそう言った

ーーー『貴方の子が愛せないなら私の子を愛せば良いじゃない』

これは実身体を結ぶ前だ

花弁が色を、形を、輝きを
そして香りを取り戻した時


「るーーーーー！！！」


感動も束の間、背中に何か張り付いている


「るるーる！るなーななー！！」

妖精だろうか？
僕の背中をどんたどんたと叩いているが一向に痛くない

「るる！るななぬ！」

「この実が欲しいのかい？ダメだよ、これは僕にとっていちばん…」

「るなーーーーーー！！」

小さな妖精だったので怪我をさせたりしないよう注意してたら物凄い速さで強奪された

「ちょっ！」
「るーななーーー♪」

実が食べられてしまう！！
慌てて捕まえようとしたが

「うりゅーふふふでぃゅふふ…」

恍惚とした表情で宝石でも磨くかのように実を摩る妖精に毒気を抜かれてしまった

「るーーーなーーー！！るるるーーー♪」

実を抱えながら妖精が飛ぶ
ふわふわとはとても言い難い風切音が鳴っている

「りゅーーーーーうーーぅぅぅぅーー！」

おやドップラー効果だ
最近の夢は現実味を帯びてるな

なんて考えてたら


ドゴォ！！！


妖精が大樹にぶつかった
実は大丈夫か！？と駆けつけると

無事どころか輝いて見える

「るっ！るっ！！ぺっ！」

邪魔と言わんばかりに大樹を足蹴にする妖精
僕から見た感じ君の不注意だったと思うよ？

「るーーなっ！ぬぬぬぬ！」

妖精は大樹をよじ登り、細い枝葉や古い樹液溜りを魔法のようにかき消していく

「る～♪る～♪なぁぁぁぁ！！」

やがて剪定が終わったのか満足そうに肯いて両手を天に掲げた、喜んでいるようで僕も嬉しい

「るなっ！るーなっー！」

そして渾身のドヤ顔
指差す先は僕の大事な実…に

芽が生えていた

大樹に寄り添って風に揺れている

僕は久しぶりに大樹の全体を見ている事に気がついた

「るななな！るーる！」

いつの間にか視界から消えていた妖精は花弁を胸いっぱいに抱えてふわふわしている

「拾ってくれたのかい？ありがとう、大事なものなん…」
「んべー！」

そのまま僕の腕に持ってきてくれるもんだと思ってました

妖精は僕に舌を出しながら花弁を天にばら撒くと

「るーーー！」

魔法をかけた

「なーーー♪」

満足そうな彼女
春の香りのする
満開の大樹
いつの間にか空いている洞ウロ

「唯の巣作りだったとかじゃないよね？」
「あぁん！？」

「ふっっは！あはは！ははははは！！」

ぷりぷりふわふわ怒っている彼女をみて笑ってしまった

そうしているうちに彼女もつられて笑い出す

「ふははははは！」

思ったより覇王な笑い声に涙が出た


僕は大丈夫、ツキが巡ってきたんだ
ふたつもね


大きな洞が空いた歪な僕の大樹
胸の高さくらいで正確な中心とは言えないけれど
間違い無く僕の真ん中はココだ

妖精が実と少しの花弁をせっせと運んでいる
手伝おうと大樹に触れたら混ざった

それはそうか
これは僕なのだから

時が動き出し
辺りは暗くなって来たが視界は明るい
洞の中は輝くものが多いからね

月が出ている

きっと、月から見たら僕は草原を照らす
燈篭アカリのように見えていることだろう



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“高天ヶ原”メインサーバールーム

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プログラムの実行を完了
実行前プロセスの最適化完了
要再起動項目多数
虚空蔵アカシックレコードより情報を参照
類似例確認
報告義務…
…………
……
……etc

“ATLAS WORLD next”計画を実行

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