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勝利の『勝つサンド』!!
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援護射撃はカツサンド
げんを担いで仲間達が作ってくれた物だ
後から聞いたのだが、これも見事に飯テロとなり食堂でカツサンドの配給がされることとなり聖☆お姉さんSは初のイベントを私抜きでこなしていた模様、もちろんバッチリ拗ねた
秘蔵の熟成肉を使われた部長さんは少しだけ悲しそうだった
提供するなら混ざりたかったらしい、それを聞いて2人で拗ねた
「部長さん…チーズも隠れて作ってましたよね」
「まぁね、アレも安定するまでは人が多く出入りしないほうがいいから」
「結構な量仕込んでましたね?」
「ここの牛よく出すんだわ、捨てるのもったいなくてね?」
「なるほど、それでチーズですか道理ですね」
「だろう?」
「…ホエー豚ってご存知ですか?」
「!!!!」
「「やるか!」」
農作物部に新たに極秘プロジェクトが追加された瞬間であった
さて、この援護射撃だが最終仕込みが残っている為配り終わっても食べずに待ってもらう
冬華さんがあと1歩の所で囓る所だった
ホント油断できない人だ
「お爺ちゃん?ココに居てくれるって事はもう準備出来てると考えて良いんですよね?」
ニッコリとお爺ちゃんに笑いかける
お爺ちゃんの周りの何人かが一歩下がったが何故だろうか?
「無論じゃよ、ほれ!全員コレをつけて『アトラス・ワールド』にログインじゃ移動先は指定してあるから安心せい」
そういってVRセットを皆に渡していく
全員がログインしたのを見届けてから私もログインした
冬華さんあたりが摘み食いしそうだったので
ログインすると、そこは戦う調理師の拠点だった
予定と違う場所に肝を冷やしたが、よく見るといつもよりも広い?
キッチンも凄い使い易そうに改造されてなんだこれ!?
とりあえず気を落ち着かせてテーブルの上を見ると先程会議室に来たカツサンドと同じようなカツサンドが置かれていた
「お待たせしてすみません!とりあえずココでこのカツサンドを一口食べて見て下さい!製法、材料は先程配られた物と変わらない物を使用しています!!全部食べちゃダメですよー!」
待ってましたと言わんばかりにカツサンドを頬張る重役達
「うむ、旨い!やっぱあいつら熟成肉見つけやがったか!」
「「「「旨いぞ!よくやったwww」」」」
部長、ご愁傷様です
「猫舌なんだけどこの世界だとあまり気にしなくても良いのはちょっと嬉しいわね」
経理の潮崎さん、なるほどそういう見方もあるのか!勉強になります!!
「これは春奈も手伝っているのかな?うん、美味しい!」
樹さん、多分その理論だと全部美味しくなっちゃうんで今はノータッチで…勿論全肯定しますが
「??美味しいんだけど…???」
一口食べて首を捻るのは冬華さんだ、いやー危なかった!ココでバレてたら面白くなかったもんね!
「ホッホッ!次ココに来るのが楽しみじゃわい!」
お爺ちゃん、私もです!!
「皆さん食べましたし残してもいますね?残った物は自分のインベントリ内にしまってログアウトして現実でも食べましょう!!」
そう言うと全員が残りをしまい、ログアウトしていった
私もログアウトしようとしたら冷蔵庫の張り紙に『勝利の勝つサンドよ!絶対大丈夫!』や『おねぇちゃん、がんばって!』
と書かれているのを見つけ、再度気合を入れ直した
ログアウトすると会議室では既に昼食が始まっており、皆衝撃を受けた様子で『勝つサンド』を頬張っている
それもそのはずだ、この目の前の『勝つサンド』には一手間かかっているのだから
「「燻製されていたのかっ!?」」
「味に深みがあってこっちのも美味しいわね」
「熟成肉を…燻製!?いやでもこの旨さ、認めざるを得ないなぁ」
「納得がいったわ!一口食べようとした時の香りが違ったはそう言う事ね?」
「ほぅ!こりゃ旨い!サッパリしていて爺いにも食べやすいて」
「あの面子、誰か一人持ち回りで食堂に常駐させたらええんちゃう?毎日よーさんやってくるで?独身連中とかwww」
「俺は通うな、間違いなく」
「春奈は料理上手になったなぁ…」
1人変な事言ってるが事実なのでスルーしよう
お楽しみはここからだ!
「皆さん程良く食べ終わりましたね?では、もう一度、ログインして食べてみませんか?」
(((((((((((((!!!!!!!)))))))))))))
その言葉に疑問を持つ人はいなかった、すぐに全員VRセットを取り付け、ログインしていく
私は一足先にセットし終わっていたので今度は1番乗り…と思ってたらお爺ちゃんが既にもぐもぐしていた
「ここじゃと胃もたれの心配もないから良いのう」
とニコニコ顔だ、勝手にしてくれ
「しかし奴ら驚くぞ?自分らがこんな事しでかしてたとは思いもよらんじゃろうに」
愉快そうに笑っている
次々ログインして自身のインベントリから『勝つサンド』を取り出して食べ出す面々
「燻製の香りがついている!!」
「マスタードの風味も変わってる気がする」
「最初食べた物も美味しかったですが、今食べているのは現実のものと相違ない感じがしますね!!」
「おそらく経験の差やね、脳が食べた物を学習してゲーム内で再現するには実際に同じ物…は流石に無理やけど分量や素材データを組み合わせて近寄らせる事が出来ればより再現出来るっちゅう事…か?まだ仮説やね、本格的に検証せなあかんやつ出てきましたよ室長?」
「そうだね、『今まで食べていた物が何故美味しかったのか』と言う所も当たりはつくけど検証しなきゃ…特に燻製されているデータが入っているはずなのに感じなかった辺りがややこしそうだ」
「そうなのよねぇ?私なんか現実で一度この香りに近づいたのよ?不思議でしょうがないわ」
このまま会議を始めかねない勢いなのでストップをかける
「この事に気がついたのはルナの、春奈のおかげです」
全員が注目する、ちょっと照れる
「ゲーム開始のキャラメイク画面で、春奈は『ママに会った』そう言っていました、そして『ママは前と変わらず優しい匂いで柔らかかった』と私に教えてくれたんです」
何人かは驚愕の表情をしている
「そう、私もキャラメイクでハルカさんには会いましたし恥ずかしい話ですが、結構接近しましたが匂いの記憶は全くありませんでした」
その場全てが黙って私の話を聞く
「そして今朝、許可を貰った後貸し出し用のVRセットをつけてルナと共にログインしてルナを抱きしめると、現実のものと相違ない匂いと感触が帰ってきたんです。その後昨日の仲間達と合流してルナに確認をとってもらいましたが、全員感触と匂いが更新されていたそうです」
誰かが唾を飲む音が聞こえた
「VRセットが違うせい、という可能性も考えましたが丁度私達のログインを確認して知人のプレイヤーが来てくれたのでそれとなく触ってみても変化は無く、柔らかいマネキンのような感触のままでした」
研究、開発、医療…間接的には広報等全てに関わる事実に様々な表情を浮かべる面々
「この事は、私の…私がこの【アトラスコーポレーション】に来てから抱いた野望と絡まり、今やもう皆様に私の野望を聞いていただきたくて仕方ありません!!先にログアウトして準備を進めます!皆様は直ぐに来て頂いても良いですし、此処で少しお話し合いしても構いません!それでは失礼します!」
そう言ってログアウトをする
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
残された部屋にて
「こんなとんでもない情報をゲーム内でぶっ放すなんてなあ!?」
「大丈夫やと思いますよー?これ、まだ実装してない部屋拡張機能や、渋やんあたりが触ってるだろうからその辺りガッチガチやろうし心配あらへんよ」
「おそらくこのキッキンは『お目溢ししてくれますよね~?』ってぇとこだろ!目に浮かぶわな!!」
「研究!開発!医療まで…新しい玩具見つけたみたいにぶつぶつ言ってんじゃないわよ!!気色悪い!ココで決めるのは一つだけよ、話を全て聞いた上で小娘の野望とやらに乗るのか、小娘を取り入れて野望を誘導していくのかのどっちかよ!」
「あまり変わらない気がする」
「てか燈ちゃん入室前段階でウチに全会一致でスカウト決定だったじゃん」
「冬海さんの御孫さんには悪いけどスカッとしたものねー」
「馬鹿とハサミは使い様、馬鹿孫でも役に立つもんじゃのう」
「すげぇ爺ちゃんだ」
「うるさいわよー!さぁ、私は早く小娘の話を聞きたいの!貴方達は乗るの?どうするの?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私が思っていたよりも早く幹部陣は戻ってきた
「さぁ小娘!聞かせてもらおうじゃないの!貴女の“野望”とやらをね?もうこの会社乗っ取り宣言が出ても驚かないわよ?」
何人かの重役は笑っている
「私は、わがままな人間です」
その言葉から私の戦いは始まった
自分がわがままだと完全に自覚したのは
2日前の最初の炊き出しの時に裏側で進められて作り上げられたステージ、それも東雲さんが歌い出してすぐの事だった
小さな頃から興味のある事に飛び込んでは学び、様々な事に興味を持つ性格も幸いして出来る範囲、色んな事を教えて貰えた
その環境を作ってくれた両親には感謝してもしきれない
その結果他の子達よりも要領良くそつなくこなして行く事が多くなり、大きくなるにつれて自分は何となくこのまま就職して要領良く楽しくやっていくんだろうと漠然と考えていた
しかし、ココの社員さん達を見て考えを改めた
部署や立場などを通り越して
自分が出せる能力を知り、やりたい事に全力なのだ
しかもそれが公然と許されている!
ここなら何だってできる!
社内の部署の枠に囚われず良い意見は取り上げて使えそうな部署へ、壁があると全員で意見を出し合う所を先程の会議でこれでもかと言うほど見た、私の野望はどんどん加速する
「今、現状で考えているのは、この場所を日本から切り離されても大丈夫なくらいの完結型都市にする事です」
その場の空気が変わる
「戯言と取られても構いません、ただ条件を満たしていけば可能だと私は考えます!」
そこで昨日みんなで作り上げたフローチャート図を会議室のタブレットに共有する
「まず初めに教育施設、幼稚園、小中高等学校、大学に大学院とを設立医療棟は大学と連携して病院とかにするのも良いかもしれません」
費用の事などお構いなしに話す、会議の資料にチラッと載っていたが相当資本金あるみたいだしあくまで戯言だ、とりあえず聞いてもらおう
「そこで農産物や水産物の研究、開発等も行えば今ある施設も無駄になりませんし、なんなら拡大も夢ではありません」
一応取らぬ狸ではあるがこちらも出しておく
「資金面ですが、これから発表されるであろう脳死状態からの回復実験の成功例の数や四肢欠損した患者の回復実験等でスポンサーはついて頂けるかと考えています」
こんな大きな研究施設と医療棟を持っているのに被験者がルナだけなどあるはずがない
ルナの成功を皮切りにどんどんと目覚める人が増えるはずだ
それに先程披露した脳が経験した事を電脳世界で再現する技術は例えば事故で後天的に腕を失った人が『アトラス』世界にて欠損無しのままキャラメイクしてリハビリをする、サーバーでその脳波を記憶して義手に応用すると良い成果が出るのではないだろうか?
コレは今朝の実験結果だったので口頭で足しておいた
すぐにチャートに更新される、流石だ
「こういったリハビリの方はNPCとして『アトラス』に参加しても面白いかもしれませんね?そして、この様な一般参加NPCなのですが他にも候補を考えています!」
これも私のやりたかった事の一つだ
「介護施設、老人ホームを立ち上げて施設利用者さんに子供達と触れ合ってもらったり、畑を耕したり、好きにしてもらう事です、今は介護AIとかも発達しましたし、専門のAIや職員を入れる事で実現出来るかと!やってみなければわかりませんが余所が出来てウチができないって事はまず無いと思っています」
そのためには一次産業の拡大、つまり農業や林業、畜産などの知識と手が足りなくなる
「介護施設利用者の中にも経験者はいたりするでしょうが、絶対数が少ないと思いますので、廃村になりそうな限界集落に交渉してこちらに来てもらうなどの策も必要と考えます」
そして最後に
「『アトラスワールド』は様変わりするようですがゲームとしてこれからも踏ん張ってもらいます!その為に、私を含めた聖☆お姉さんと新たに運営部から篠原芽衣さん、開発部から渋澤櫻子さん、そして…今回ゲスト滞在している東雲秋穂さんの3名から聖☆お姉さんSとしてのユニット参加の承諾を既に私は交わして承諾書として持っています」
流石に条件は2~3件付きますけどね?
「とは言っても小娘が考えた戯言です、皆様に補足していただけたらどれほど良くなるのか考えもつきませんので、もし良かったら今お見せしているフローチャートにどんどん書き込んで頂けると嬉しいです!!」
もう既に手垢まみれだけどな!!それも全部わくわくするものばかりだ!!
「わかってて言ってるわよね?所詮は戯言だから見てられないだけよ?こことかこことか!」
「こっちもあるぞ!あ!その手があるか」
「早く検証行きたいけどこっち先に仕上げないと建設的ではないね」
「こっちもやー!なんやこの課題!燃えてくるのぅ!!」
「スポンサーが大体…で、介護事業でこのくらい、『アトラス』の広告費が社内で賄えるとすると…うふふふふふ」
気がつくと大人達が全員で真剣に途方もない事へのプロセスを組み始めていた
私もそこに混じって意見を言う、直ぐに反論が来るがそれを元にさらに活発化する会議
私は産まれてはじめての巨大な達成感と
終わりの見えない会議で空腹感により腹と頭を抱え始めるのだった
「くぅぅぅぅぅぅぅぅ」
あ、鳴った///
げんを担いで仲間達が作ってくれた物だ
後から聞いたのだが、これも見事に飯テロとなり食堂でカツサンドの配給がされることとなり聖☆お姉さんSは初のイベントを私抜きでこなしていた模様、もちろんバッチリ拗ねた
秘蔵の熟成肉を使われた部長さんは少しだけ悲しそうだった
提供するなら混ざりたかったらしい、それを聞いて2人で拗ねた
「部長さん…チーズも隠れて作ってましたよね」
「まぁね、アレも安定するまでは人が多く出入りしないほうがいいから」
「結構な量仕込んでましたね?」
「ここの牛よく出すんだわ、捨てるのもったいなくてね?」
「なるほど、それでチーズですか道理ですね」
「だろう?」
「…ホエー豚ってご存知ですか?」
「!!!!」
「「やるか!」」
農作物部に新たに極秘プロジェクトが追加された瞬間であった
さて、この援護射撃だが最終仕込みが残っている為配り終わっても食べずに待ってもらう
冬華さんがあと1歩の所で囓る所だった
ホント油断できない人だ
「お爺ちゃん?ココに居てくれるって事はもう準備出来てると考えて良いんですよね?」
ニッコリとお爺ちゃんに笑いかける
お爺ちゃんの周りの何人かが一歩下がったが何故だろうか?
「無論じゃよ、ほれ!全員コレをつけて『アトラス・ワールド』にログインじゃ移動先は指定してあるから安心せい」
そういってVRセットを皆に渡していく
全員がログインしたのを見届けてから私もログインした
冬華さんあたりが摘み食いしそうだったので
ログインすると、そこは戦う調理師の拠点だった
予定と違う場所に肝を冷やしたが、よく見るといつもよりも広い?
キッチンも凄い使い易そうに改造されてなんだこれ!?
とりあえず気を落ち着かせてテーブルの上を見ると先程会議室に来たカツサンドと同じようなカツサンドが置かれていた
「お待たせしてすみません!とりあえずココでこのカツサンドを一口食べて見て下さい!製法、材料は先程配られた物と変わらない物を使用しています!!全部食べちゃダメですよー!」
待ってましたと言わんばかりにカツサンドを頬張る重役達
「うむ、旨い!やっぱあいつら熟成肉見つけやがったか!」
「「「「旨いぞ!よくやったwww」」」」
部長、ご愁傷様です
「猫舌なんだけどこの世界だとあまり気にしなくても良いのはちょっと嬉しいわね」
経理の潮崎さん、なるほどそういう見方もあるのか!勉強になります!!
「これは春奈も手伝っているのかな?うん、美味しい!」
樹さん、多分その理論だと全部美味しくなっちゃうんで今はノータッチで…勿論全肯定しますが
「??美味しいんだけど…???」
一口食べて首を捻るのは冬華さんだ、いやー危なかった!ココでバレてたら面白くなかったもんね!
「ホッホッ!次ココに来るのが楽しみじゃわい!」
お爺ちゃん、私もです!!
「皆さん食べましたし残してもいますね?残った物は自分のインベントリ内にしまってログアウトして現実でも食べましょう!!」
そう言うと全員が残りをしまい、ログアウトしていった
私もログアウトしようとしたら冷蔵庫の張り紙に『勝利の勝つサンドよ!絶対大丈夫!』や『おねぇちゃん、がんばって!』
と書かれているのを見つけ、再度気合を入れ直した
ログアウトすると会議室では既に昼食が始まっており、皆衝撃を受けた様子で『勝つサンド』を頬張っている
それもそのはずだ、この目の前の『勝つサンド』には一手間かかっているのだから
「「燻製されていたのかっ!?」」
「味に深みがあってこっちのも美味しいわね」
「熟成肉を…燻製!?いやでもこの旨さ、認めざるを得ないなぁ」
「納得がいったわ!一口食べようとした時の香りが違ったはそう言う事ね?」
「ほぅ!こりゃ旨い!サッパリしていて爺いにも食べやすいて」
「あの面子、誰か一人持ち回りで食堂に常駐させたらええんちゃう?毎日よーさんやってくるで?独身連中とかwww」
「俺は通うな、間違いなく」
「春奈は料理上手になったなぁ…」
1人変な事言ってるが事実なのでスルーしよう
お楽しみはここからだ!
「皆さん程良く食べ終わりましたね?では、もう一度、ログインして食べてみませんか?」
(((((((((((((!!!!!!!)))))))))))))
その言葉に疑問を持つ人はいなかった、すぐに全員VRセットを取り付け、ログインしていく
私は一足先にセットし終わっていたので今度は1番乗り…と思ってたらお爺ちゃんが既にもぐもぐしていた
「ここじゃと胃もたれの心配もないから良いのう」
とニコニコ顔だ、勝手にしてくれ
「しかし奴ら驚くぞ?自分らがこんな事しでかしてたとは思いもよらんじゃろうに」
愉快そうに笑っている
次々ログインして自身のインベントリから『勝つサンド』を取り出して食べ出す面々
「燻製の香りがついている!!」
「マスタードの風味も変わってる気がする」
「最初食べた物も美味しかったですが、今食べているのは現実のものと相違ない感じがしますね!!」
「おそらく経験の差やね、脳が食べた物を学習してゲーム内で再現するには実際に同じ物…は流石に無理やけど分量や素材データを組み合わせて近寄らせる事が出来ればより再現出来るっちゅう事…か?まだ仮説やね、本格的に検証せなあかんやつ出てきましたよ室長?」
「そうだね、『今まで食べていた物が何故美味しかったのか』と言う所も当たりはつくけど検証しなきゃ…特に燻製されているデータが入っているはずなのに感じなかった辺りがややこしそうだ」
「そうなのよねぇ?私なんか現実で一度この香りに近づいたのよ?不思議でしょうがないわ」
このまま会議を始めかねない勢いなのでストップをかける
「この事に気がついたのはルナの、春奈のおかげです」
全員が注目する、ちょっと照れる
「ゲーム開始のキャラメイク画面で、春奈は『ママに会った』そう言っていました、そして『ママは前と変わらず優しい匂いで柔らかかった』と私に教えてくれたんです」
何人かは驚愕の表情をしている
「そう、私もキャラメイクでハルカさんには会いましたし恥ずかしい話ですが、結構接近しましたが匂いの記憶は全くありませんでした」
その場全てが黙って私の話を聞く
「そして今朝、許可を貰った後貸し出し用のVRセットをつけてルナと共にログインしてルナを抱きしめると、現実のものと相違ない匂いと感触が帰ってきたんです。その後昨日の仲間達と合流してルナに確認をとってもらいましたが、全員感触と匂いが更新されていたそうです」
誰かが唾を飲む音が聞こえた
「VRセットが違うせい、という可能性も考えましたが丁度私達のログインを確認して知人のプレイヤーが来てくれたのでそれとなく触ってみても変化は無く、柔らかいマネキンのような感触のままでした」
研究、開発、医療…間接的には広報等全てに関わる事実に様々な表情を浮かべる面々
「この事は、私の…私がこの【アトラスコーポレーション】に来てから抱いた野望と絡まり、今やもう皆様に私の野望を聞いていただきたくて仕方ありません!!先にログアウトして準備を進めます!皆様は直ぐに来て頂いても良いですし、此処で少しお話し合いしても構いません!それでは失礼します!」
そう言ってログアウトをする
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
残された部屋にて
「こんなとんでもない情報をゲーム内でぶっ放すなんてなあ!?」
「大丈夫やと思いますよー?これ、まだ実装してない部屋拡張機能や、渋やんあたりが触ってるだろうからその辺りガッチガチやろうし心配あらへんよ」
「おそらくこのキッキンは『お目溢ししてくれますよね~?』ってぇとこだろ!目に浮かぶわな!!」
「研究!開発!医療まで…新しい玩具見つけたみたいにぶつぶつ言ってんじゃないわよ!!気色悪い!ココで決めるのは一つだけよ、話を全て聞いた上で小娘の野望とやらに乗るのか、小娘を取り入れて野望を誘導していくのかのどっちかよ!」
「あまり変わらない気がする」
「てか燈ちゃん入室前段階でウチに全会一致でスカウト決定だったじゃん」
「冬海さんの御孫さんには悪いけどスカッとしたものねー」
「馬鹿とハサミは使い様、馬鹿孫でも役に立つもんじゃのう」
「すげぇ爺ちゃんだ」
「うるさいわよー!さぁ、私は早く小娘の話を聞きたいの!貴方達は乗るの?どうするの?」
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私が思っていたよりも早く幹部陣は戻ってきた
「さぁ小娘!聞かせてもらおうじゃないの!貴女の“野望”とやらをね?もうこの会社乗っ取り宣言が出ても驚かないわよ?」
何人かの重役は笑っている
「私は、わがままな人間です」
その言葉から私の戦いは始まった
自分がわがままだと完全に自覚したのは
2日前の最初の炊き出しの時に裏側で進められて作り上げられたステージ、それも東雲さんが歌い出してすぐの事だった
小さな頃から興味のある事に飛び込んでは学び、様々な事に興味を持つ性格も幸いして出来る範囲、色んな事を教えて貰えた
その環境を作ってくれた両親には感謝してもしきれない
その結果他の子達よりも要領良くそつなくこなして行く事が多くなり、大きくなるにつれて自分は何となくこのまま就職して要領良く楽しくやっていくんだろうと漠然と考えていた
しかし、ココの社員さん達を見て考えを改めた
部署や立場などを通り越して
自分が出せる能力を知り、やりたい事に全力なのだ
しかもそれが公然と許されている!
ここなら何だってできる!
社内の部署の枠に囚われず良い意見は取り上げて使えそうな部署へ、壁があると全員で意見を出し合う所を先程の会議でこれでもかと言うほど見た、私の野望はどんどん加速する
「今、現状で考えているのは、この場所を日本から切り離されても大丈夫なくらいの完結型都市にする事です」
その場の空気が変わる
「戯言と取られても構いません、ただ条件を満たしていけば可能だと私は考えます!」
そこで昨日みんなで作り上げたフローチャート図を会議室のタブレットに共有する
「まず初めに教育施設、幼稚園、小中高等学校、大学に大学院とを設立医療棟は大学と連携して病院とかにするのも良いかもしれません」
費用の事などお構いなしに話す、会議の資料にチラッと載っていたが相当資本金あるみたいだしあくまで戯言だ、とりあえず聞いてもらおう
「そこで農産物や水産物の研究、開発等も行えば今ある施設も無駄になりませんし、なんなら拡大も夢ではありません」
一応取らぬ狸ではあるがこちらも出しておく
「資金面ですが、これから発表されるであろう脳死状態からの回復実験の成功例の数や四肢欠損した患者の回復実験等でスポンサーはついて頂けるかと考えています」
こんな大きな研究施設と医療棟を持っているのに被験者がルナだけなどあるはずがない
ルナの成功を皮切りにどんどんと目覚める人が増えるはずだ
それに先程披露した脳が経験した事を電脳世界で再現する技術は例えば事故で後天的に腕を失った人が『アトラス』世界にて欠損無しのままキャラメイクしてリハビリをする、サーバーでその脳波を記憶して義手に応用すると良い成果が出るのではないだろうか?
コレは今朝の実験結果だったので口頭で足しておいた
すぐにチャートに更新される、流石だ
「こういったリハビリの方はNPCとして『アトラス』に参加しても面白いかもしれませんね?そして、この様な一般参加NPCなのですが他にも候補を考えています!」
これも私のやりたかった事の一つだ
「介護施設、老人ホームを立ち上げて施設利用者さんに子供達と触れ合ってもらったり、畑を耕したり、好きにしてもらう事です、今は介護AIとかも発達しましたし、専門のAIや職員を入れる事で実現出来るかと!やってみなければわかりませんが余所が出来てウチができないって事はまず無いと思っています」
そのためには一次産業の拡大、つまり農業や林業、畜産などの知識と手が足りなくなる
「介護施設利用者の中にも経験者はいたりするでしょうが、絶対数が少ないと思いますので、廃村になりそうな限界集落に交渉してこちらに来てもらうなどの策も必要と考えます」
そして最後に
「『アトラスワールド』は様変わりするようですがゲームとしてこれからも踏ん張ってもらいます!その為に、私を含めた聖☆お姉さんと新たに運営部から篠原芽衣さん、開発部から渋澤櫻子さん、そして…今回ゲスト滞在している東雲秋穂さんの3名から聖☆お姉さんSとしてのユニット参加の承諾を既に私は交わして承諾書として持っています」
流石に条件は2~3件付きますけどね?
「とは言っても小娘が考えた戯言です、皆様に補足していただけたらどれほど良くなるのか考えもつきませんので、もし良かったら今お見せしているフローチャートにどんどん書き込んで頂けると嬉しいです!!」
もう既に手垢まみれだけどな!!それも全部わくわくするものばかりだ!!
「わかってて言ってるわよね?所詮は戯言だから見てられないだけよ?こことかこことか!」
「こっちもあるぞ!あ!その手があるか」
「早く検証行きたいけどこっち先に仕上げないと建設的ではないね」
「こっちもやー!なんやこの課題!燃えてくるのぅ!!」
「スポンサーが大体…で、介護事業でこのくらい、『アトラス』の広告費が社内で賄えるとすると…うふふふふふ」
気がつくと大人達が全員で真剣に途方もない事へのプロセスを組み始めていた
私もそこに混じって意見を言う、直ぐに反論が来るがそれを元にさらに活発化する会議
私は産まれてはじめての巨大な達成感と
終わりの見えない会議で空腹感により腹と頭を抱え始めるのだった
「くぅぅぅぅぅぅぅぅ」
あ、鳴った///
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