異世界球児は二刀流〜魔法は捕るもの投げるもの〜

みみっく

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白球の記憶

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時は遡って13年前

高校2年の夏休み、俺は茹だるような暑さの中母校のグラウンドで部活動に勤しんでいた

その日は午前中トレーニング、午後からは練習試合といったメニューなのだが午後の練習試合の相手と言うのが本土から遠征でやってきたそこそこの強豪高校であり、部員11名の凡人集団である俺達にはオーバーキルもいいとこだった

しかし俺達は思いのほか健闘した
(相手が二軍という事もあるのだが)

1点ビハインドで迎えた6回の表、前のバッターがフォアボールで出塁し俺の打席になったタイミングでピッチャーの交代が告げられる

投球練習が始まる、なんだか物凄いボールを投げている気がするのだが不思議と不安はない。監督も俺のそんな様子を感じ取ったのだろう、サインはバントではなくヒッティングだった

試合再開の声がかかる

1球目→アウトコースのボール球なので見送る
2球目→インコースに来たから思いっきり引っ張ってやったらかなりの飛距離は出たものの結果はファールだった
3球目→セフティーバントを試みたらあっけなくファールに…何故か味方ベンチから野次が飛んでくる、セコイとか言うな

そして4球目…あの既視感デジャヴの正体である甘美な時間がやってきて文句無しのホームラン
ちなみに人生初である。

この時は足を滑らせる事もなかった為、会心の当たりを万感の想いで迎えていた

打球が体育館の屋根に吸い込まれた所で景色は一変する

『知らなかった』

人は極限状態からおそらく生涯で最高のバッティングをした時

異世界への扉が開くのだ

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