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ゲームセット
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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
乙女ゲームというジャンルが確立されて幾年が過ぎ、次々と供給されては流行り廃りを繰り返している昨今
加速する需要が常に新たな刺激やシナリオを求め続けた結果、乙女ゲーム界隈はもはや飽和寸前という状況にまで陥っていた
そんな中、ある有名ソフトメーカーから挑戦状のような乙女ゲームが発売される
その名も
“聖女の行進 ~ 天上の雪月花 ~”
大筋の概要は
主人公である聖女を操作して攻略対象の好感度を上げ、選択に伴ったルートのエンディングを見るという王道の乙女ゲーなのだが
コンセプトは『クリアしてみろ』
と言う挑発的な謳い文句で売り出し
宣言通り今だにクリア者0
何故こんな事になっているのか疑問に思われる方も多いと思うので詳細を挙げてみよう
まず、攻略対象が関わる人全てでありエンディングの数が人数分×マルチエンディングシステムなので一人につき数種類のスチルが用意されている
更に同時攻略要素もあるので組み合わせを合わせると、その数は10000を越すのではと言われておりギャラリーがなかなか埋まらない
問題はまだある
キャラによってはエンディングを迎えた後にエピローグが流れるのだが
このエピローグにももちろんパターンがあり、そしてその数なんと32個
それは発売から3年経っても完全攻略出来ないユーザーからの声を受けて開発元が公式発表したからこそ判明している数字である
先も触れた事だが
現在は発売から8年が経つものの
未だに全てのエピローグを見たものはおらず
なんならトゥルーエンドすら見つけられていない
その理由として
キャラ作成の段階から乱数で決まる初期ステータスが低いと簡単に詰む事から始まる、俗に言う出産リセマラ
発生するイベントに対する順番や発生頻度がプレイ毎に異なる為“正解”が状況によって違う不規則性
ステータスやスキルなどの割り振りをしっかり管理して、ある程度の戦闘力が無いとすぐに殺されてしまう武闘派志向
かと言って自己を鍛えるだけでは攻略対象の好感度も上がらず(上がるキャラも居るが)乙女的な華やかさが皆無になるジレンマ
国防に関するフラグを成立させないとバッドエンドに直行という転落型シナリオ
と、枚挙に暇がない
『更にここにアクション要素も取り入れたかった』
ゲーム雑誌にそう書かれていたのを見た時は恐れ慄いたものだ
しかし、このメーカーを知っている者は
『あそこならやりかねん』
と、言われるくらいにはハードコアな物ばかり作るメーカーとして名を馳せており
当ゲームも乙女ゲームという畑違いなジャンルのなかで異彩を放っている(イロモノとも言う)
そんな訳なので乙女ゲームを主要とする層にはボリュームがありすぎてそこまで受けず
そこそこ売れたものの、早々に飽きられたのだが
乙女ゲームとハードコアを両方嗜むゲーマーには大いに受け、現在もかなりの人数が完全攻略を目指してWikiを更新しているのであった
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
苦しい、息ができない
でも
「今回は厳選神引きでイベントもほぼ回収の最高傑作なのよ…あと少し…あと…」
つい先程起こった大規模な地震により倒壊した元自室(今や事故現場)
もはや何に挟まれているのかもわからない状態の中、根性でゲームを続行し息も絶え絶えに伸ばす手元にはぼんやりと光る液晶画面
流れる文字は涙やおそらく血で霞んでしまってよく見えていないが文字数とキャラ絵の立ち位置からいつもと違うルートに入っている事を確信する
…悔しい!!
須藤 凛の意識はそこで途切れるも、その手は決してゲーム端末を離すことはなく
そのまま絶命した
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「面白い魂みーっけ♪」
その声は遥か天上で響く極上の調べ
無垢なる者の興味を引いた証
どうやら凛の今生はここまでだが、次の頁はすでに準備されたようだ
「さぁ、シナリオを進めようか」
新たに捲られた頁には一体どんな物語が待っているのか
凛の沈んだ意識が浮上していく
物語を刻む為に
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
乙女ゲームというジャンルが確立されて幾年が過ぎ、次々と供給されては流行り廃りを繰り返している昨今
加速する需要が常に新たな刺激やシナリオを求め続けた結果、乙女ゲーム界隈はもはや飽和寸前という状況にまで陥っていた
そんな中、ある有名ソフトメーカーから挑戦状のような乙女ゲームが発売される
その名も
“聖女の行進 ~ 天上の雪月花 ~”
大筋の概要は
主人公である聖女を操作して攻略対象の好感度を上げ、選択に伴ったルートのエンディングを見るという王道の乙女ゲーなのだが
コンセプトは『クリアしてみろ』
と言う挑発的な謳い文句で売り出し
宣言通り今だにクリア者0
何故こんな事になっているのか疑問に思われる方も多いと思うので詳細を挙げてみよう
まず、攻略対象が関わる人全てでありエンディングの数が人数分×マルチエンディングシステムなので一人につき数種類のスチルが用意されている
更に同時攻略要素もあるので組み合わせを合わせると、その数は10000を越すのではと言われておりギャラリーがなかなか埋まらない
問題はまだある
キャラによってはエンディングを迎えた後にエピローグが流れるのだが
このエピローグにももちろんパターンがあり、そしてその数なんと32個
それは発売から3年経っても完全攻略出来ないユーザーからの声を受けて開発元が公式発表したからこそ判明している数字である
先も触れた事だが
現在は発売から8年が経つものの
未だに全てのエピローグを見たものはおらず
なんならトゥルーエンドすら見つけられていない
その理由として
キャラ作成の段階から乱数で決まる初期ステータスが低いと簡単に詰む事から始まる、俗に言う出産リセマラ
発生するイベントに対する順番や発生頻度がプレイ毎に異なる為“正解”が状況によって違う不規則性
ステータスやスキルなどの割り振りをしっかり管理して、ある程度の戦闘力が無いとすぐに殺されてしまう武闘派志向
かと言って自己を鍛えるだけでは攻略対象の好感度も上がらず(上がるキャラも居るが)乙女的な華やかさが皆無になるジレンマ
国防に関するフラグを成立させないとバッドエンドに直行という転落型シナリオ
と、枚挙に暇がない
『更にここにアクション要素も取り入れたかった』
ゲーム雑誌にそう書かれていたのを見た時は恐れ慄いたものだ
しかし、このメーカーを知っている者は
『あそこならやりかねん』
と、言われるくらいにはハードコアな物ばかり作るメーカーとして名を馳せており
当ゲームも乙女ゲームという畑違いなジャンルのなかで異彩を放っている(イロモノとも言う)
そんな訳なので乙女ゲームを主要とする層にはボリュームがありすぎてそこまで受けず
そこそこ売れたものの、早々に飽きられたのだが
乙女ゲームとハードコアを両方嗜むゲーマーには大いに受け、現在もかなりの人数が完全攻略を目指してWikiを更新しているのであった
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
苦しい、息ができない
でも
「今回は厳選神引きでイベントもほぼ回収の最高傑作なのよ…あと少し…あと…」
つい先程起こった大規模な地震により倒壊した元自室(今や事故現場)
もはや何に挟まれているのかもわからない状態の中、根性でゲームを続行し息も絶え絶えに伸ばす手元にはぼんやりと光る液晶画面
流れる文字は涙やおそらく血で霞んでしまってよく見えていないが文字数とキャラ絵の立ち位置からいつもと違うルートに入っている事を確信する
…悔しい!!
須藤 凛の意識はそこで途切れるも、その手は決してゲーム端末を離すことはなく
そのまま絶命した
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「面白い魂みーっけ♪」
その声は遥か天上で響く極上の調べ
無垢なる者の興味を引いた証
どうやら凛の今生はここまでだが、次の頁はすでに準備されたようだ
「さぁ、シナリオを進めようか」
新たに捲られた頁には一体どんな物語が待っているのか
凛の沈んだ意識が浮上していく
物語を刻む為に
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
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