呪われたわたしが幸せになるまで

koma

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プロローグ

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「出ていけ! この化け物!!」
「もう我慢できない!!」

 石が飛んでくる。
 避けきれずに目をつむる。
 咄嗟に腕で頭をかばったけれど、それが何だっていうのだろう。
 痛みが防げるわけでもないのに。

(本当にわたしのせいなの……?)

 魔物に襲われたばかりの街は、たくさんの瓦礫で埋もれていた。
 土煙が起こり、あちこちから泣き声も聞こえてくる。

 わたしがいなくなればこの厄災はおさまるのだと人々は言った。

 でも、消えるのは怖い。

 ぎゅっと体を縮こませて、訪れるはずの痛みを待つ。

 ──と。



「何やってんだてめえら」



 場に響いた低い声に、周囲のざわめきがいっきに消えた。
 誰かが、「団長」と掠れた声をあげる。

(……団長?)

 一向に訪れない痛みとその異変に、わたしは恐る恐る頭を上げた。するとすぐそばに黒い立派な軍靴が見えて、見知らぬ男の人が、街の人たちに対峙していた。
 
「よってたかって一人をいじめて楽しいか? ああ?」

 夜みたいに黒い髪。同じ色のとんがった耳。
 背中を向けられているから顔は見えないけれど、着ているものから、その人が騎士団に所属されている方だとはわかった。黒を基調とした立派な軍服に身を包んでいらっしゃる。

「……ったく」

 男の人は舌打ちをすると、面倒そうにこちらを振り返る。
 少し垂れ気味の、獰猛な瞳と目があった。

「大丈夫か? おら」

 ぐいっと腕を引かれ、よろめきながらも立ち上がる。そんなわたしを彼はじろじろと眺めてきた。

「どこも怪我はしてねえみてえだが、一応診てもらうか。あんたには聞きたいこともあるしな」
「え……」

 助けてくれたのかと思ったのに。

 わたしの不安を感じ取ったのか、男の人は、少しだけ瞳を和らげた。

「安心しろ。とって食ったりしねえから。──ただ」

 彼の発言とともに、騎士団の人々が駆け集まってくる。そうして、黒耳の彼の背後に待機するように整列した。

「呪いについて聞かせてもらおうと思ってな」


 わたしに、拒否権なんてあるはずもなかった。


 

 


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