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三十六話
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※ミントチョコとかアイスが好きだけど、友人に拒否されて悲しい(´ω`)
歯磨き粉みたいで無理って人多いよね(´ω`)
明かりも少ない静かな深夜の王都。
兵舎周辺からは特に人を避難させてあった為さらに人気は無くなっていた。
そんな兵舎が突如轟音をたてて崩壊しはじめ、中から巨大な魔物が姿を現した。
「おい、なんだあれ!? 兵舎の方からいきなり出てきたぞ!?」
「なんて禍々しい姿なんだ!? に、逃げるぞ!」
「なんでいきなりあんな所から!」
いきなり出現した巨大な魔物に対し、誰もが恐怖し我先にと魔物がいる場所とは反対の方向へと逃げまどい始める。
魔物はまるでその巨大な体躯を動かし、周囲の施設などに拳や背中の蜘蛛のような節足を動かして破壊し動作の確認をしている。蛇の様な尾で自分の近辺を薙ぎ払い、それだけで次々と建物が倒壊していく。
どこか楽しんでいるようなその姿に誰もが不安を覚えていた。
フォームランドに亡命しようとしていた兵士達を悉く一網打尽にしたエレインとチサト、そしてその配下の者達は戻ってきて早々に王都で起きている異変に表情を変え、出現した魔物に警戒心を高める。
「チサト、あんなもの見た事はありますか?」
「いえ、流石にない……手伝い、必要と思う?」
「え、行かないの!? いくらリリア嬢やあの使い魔達が強いと言ってもアレは大変でしょ!?」
チサトの言葉に驚いた表情を見せるエレイン。
暗に手伝いに行かないと言っているように聞こえたのだ。
今まで見たこともない程巨大で、禍々しい相手だ。いくらリリア達が強いという事を知ってはいても未知の相手である以上万全を期する必要があると考えていたエレインだからこそチサトの言葉に驚く。
「……性格が悪いと思われるだろうけど、正直あいつらが失敗すれば良いのにと思ってるのが半分」
「半分? もう半分は?」
不快そうな顔を魔物に向けたまま、チサトはため息をつく。
「あんまり思いたくないけど……あの男が負けるはずがないと思ってしまってるのも半分あるの。 だからもし劣勢になるようだったら行くけど、ちょっと様子見ようと思ってる」
「相当嫌ってるのね」
「顔をみたら顔面殴りたくなるくらいには」
「ふふっ。 チサトがそんなに感情を露わにするのも珍しい。 意外と好意なんじゃない?」
「冗談でもやめて。 絶対無理」
楽しそうに笑うエレインにチサトは本気で嫌そうな顔を向ける。
そんな顔を見てもなおエレインは楽しそうにしている。
チサトは誤解を解くのも面倒だと思い、魔物に再び視線を戻すと次の瞬間異常な光景を目にする事になる。
かなり距離が離れているが、鍛えられた超人的な視力を持つエレインとチサトが捉えたのは魔物が何かに向けて腕を振り下ろす所だ。しかしその腕が叩きつけられた場所では特に何も起こらない。 その次の刹那に赤い髪の女性が魔物の腹部に突撃し、巨大な体躯を持つ魔物を上空に吹き飛ばす光景だった。
「……す、すごい事になってますけど……ここからどうするんですかゼクトさん?」
「いやぁ。 追い詰められた敵が巨大化なんてお決まりの状況に本当に出くわすとは。 意外と面白いものですよね」
「お決まりじゃないですし、そこまで面白くはないですからね!?」
はっはっはっは。
いやしかし、元には戻れないだろうに自分で薬を飲むとはなぁ。
大人しく捕まってくれるか、人間のままで暴れてくれれば被害は少なくて済むのに。
そんな事を考えていると、どうやらグレゴリーの準備体操は終わったのかその巨大な腕を猛烈な勢いでこちらに向けて振り下ろしてきた。
「取りあえずここで暴れるのは色々と壊れてまずいな。 アカネ。 王都の外まで吹き飛ばせそうか?」
「御意」
振り下ろされる巨腕の下に潜り込み、腕を片手で受け止めた。
その勢いと質量から考えれば今の一撃で周囲に衝撃波など発生しそうだが、そんなものは一切なく完全に衝撃を殺し切っている。
その光景にグレゴリー自身も驚いている。
アカネはその腕を上に向かって弾き飛ばすと、消えたと感じる程の速度でグレゴリーの腹部に向けて突貫しその巨体を蹴り飛ばした。
すさまじい衝撃を受けた巨体は冗談のように浮き上がり、先に着地したアカネの追撃で王都を囲う壁の外まで一気に吹き飛ばされる。
「おー、おみごとあか姉。 さすが」
「じゃあ行きますよリリア様」
「え?」
呆けているリリアをお姫様抱っこで抱え、吹き飛ばされたグレゴリーを追いかける。
アカネとミソラもそれに追従するように移動を開始する。
結構な速度で移動しているので何やらリリアが言っているが気にしない事にしよう。
腹部に結構な一撃を受けたグレゴリーがなんとかその巨体をゆっくりと起こし、こちらに怒りと怯えの表情を見せてきた。正直変化する前でもした後でもそんな表情をされるとキモイです。
「バカな……。 コノ体ヲココマデ吹キ飛バスナド……」
「意外と軽かったですわ。 もう少し筋肉をつけるよう勧めますわよ」
「まぁアンバランスな体には見えるな」
「きもい」
「それは直接的すぎますよミソラさん!?」
変化球なげて意味が通じないよりは良いと思うよリリアさん。
「ヌゥゥゥ……オオオオオオオ!」
こちらの余裕の態度が気に食わかったのか、咆哮を上げて背中の八本の節足を器用に動かしその全てが襲いかかってきた。
硬質なそれは鉄板ですら余裕で貫きそうな程に鋭い。
高速で迫るそれを、アカネは特に慌てる事もなく短剣を取り出し一瞬にして切り刻んでいく。
まるでコマ落としのように瞬時に刻まれる事驚くグレゴリー。
その巨体で驚く程の速度で回転し、横合いから一気に尾を叩きつけにきた。
巨大な尾の質量であればそうそう簡単には止められないと思ったのか。
「……行儀の悪い尻尾ですわね。 お仕置きですわ」
短剣に炎を纏わせ、近づいてきた尾に向けて下から無造作に切りつける。
たったそれだけの動作で尾を叩き斬り、両断された部分から炎が吹きあがる。
「グゥオオオオ! クソックソックソォォォォォ!」
斬られ焙られた痛みで悶えるグレゴリー。
もうここまでくれば流石に勝てないのは分かりそうだが、その目に憎しみを宿し抗う気は満々のようだ。
まぁ抗うのは構わないけど、あんまり時間をかけて暴れられるのもそれはそれで鬱陶しい。
……ふむ。
「なぁ折角だ。 選ばせてやろう。 どんな死に方がいい? 焼け死ぬか、感電して死ぬか、凍死するか、圧死、刺殺、斬殺と選り取りみどりだ」
「ますたーやさしい。 わたしならもんどうむようでやる」
「本当にお優しいですわね。 さぁ選びなさいな。 死に方を選べるなんて滅多にないですわよ」
「……あれ。 おかしいな。 私には全然優しさなんて感じない。 あれ?」
いやいや優しさに溢れてるじゃないか。
苦痛に塗れて殺してやってもいいのに、楽に殺してあげると言ってるんだ。
個人的には焼死を選んでくれると嬉しい。死体処理が楽だからな。
「ワタシハ死ナヌ! キサマラガ死ネェ!」
そう叫んだグレゴリーが両腕に力を集中させ巨大な魔方陣を形成すると、大口を開けて光線を吐き出した。
光線は魔方陣を通過して巨大な閃光となり俺達を、そして王都を飲み込もうとする。
「戦闘モードへ移行。 反魔障壁展開」
戦闘モードに移行したミソラの展開した障壁がグレゴリーの一撃を易々と受け止め、霧散させる。
この場合ミソラの障壁の性能の高さを褒めるべきなのかグレゴリーの一撃のしょぼさを貶すべきなのか判断に迷うな。
「折角選ばせてやろうと思ったのに……残念だ。というわけでこちらで選ばせてもらう。 お前は」
刀を抜いて構えたところで拳を降らせるグレゴリー。
せっかちな奴だな。
「焼死決定だ。 派手に焼き殺してやるよ」
拳を斬り落とし、一気に加速して残った腕を斬り落とす。
勢いのまま駆け抜け、さらに上半身と蛇のような下半身の境界を一気に両断して上半身を落とす。
先端を失ってなお動きまわる八本の節足を根元から紅蓮で焼き払う。
身動きを取れなくなったその背中や下半身に幾つもの符を飛ばし貼り付ける。
「天焦がし地を焼く煉獄」
「マテ! マッテクレ! ワタシハマダ!」
貼りついた符が黒々とした光を放ち、輻射熱で周囲に熱波を放ち始める。
「汝に逃れる術はなく、ただ伏して訪れる災厄に身を委ねよ」
「死ニタクナイ! タス……ケテ!」
懇願するグレゴリーの周囲に渦を巻くように炎が動き始める。
「召炎・火之夜藝調」
全ての符が黒光を放ち、炎を上げる。
渦巻く流れによって炎は収束し天に向かって巻き上がる。
グレゴリーの体は鉄の融点すら超える獄炎に晒され、燃やし尽くされていく。
獄炎の渦はグレゴリーの体を焼き尽くしながら天へと昇り、夜でありながら世界を赤く染め上げ雲をも焼き尽くして少しずつ姿を消していった。
炎の嵐は姿を消し、辺りに静寂が戻る。
「…………なんか予想以上に派手だったな」
「そんなレベルじゃないですよ!? なんですかアレ!? なんなんですかアレ!?」
「いやぁ……。 現実でやるとあんな風になるんだなぁ。 殺しきれない事も考えて墜星符も準備しておいたけど要らなかったな」
「あれ以上に何かするつもりだったんですか!?」
「……てへっ」
「さすがはご主人様。 容赦のない徹底ぶりが素晴らしいですわ」
「ますたーのきちくさはせかいいち」
やだ褒められた。こいつらの感性もぶっ飛んでるな。
いやしかし……。
「これでリリアの評価は爆上がりだな。 世界一危険な人として名を残せるんじゃないか?」
「主にゼクトさんたちのせいですけどね!?」
「はっはっはっは。 これからまた色々忙しくなるだろうけど、頑張って」
「なんで他人事なんですか!? ちゃんと手伝ってくださいよ!」
……善処します。
しかし、これで実験体の無念が晴らせたとは思わないが、少しは気が晴れてくれるといいな。
頭を抱えながら歩くリリアをからかいながら、そんな柄にもない事を考えてしまった。
歯磨き粉みたいで無理って人多いよね(´ω`)
明かりも少ない静かな深夜の王都。
兵舎周辺からは特に人を避難させてあった為さらに人気は無くなっていた。
そんな兵舎が突如轟音をたてて崩壊しはじめ、中から巨大な魔物が姿を現した。
「おい、なんだあれ!? 兵舎の方からいきなり出てきたぞ!?」
「なんて禍々しい姿なんだ!? に、逃げるぞ!」
「なんでいきなりあんな所から!」
いきなり出現した巨大な魔物に対し、誰もが恐怖し我先にと魔物がいる場所とは反対の方向へと逃げまどい始める。
魔物はまるでその巨大な体躯を動かし、周囲の施設などに拳や背中の蜘蛛のような節足を動かして破壊し動作の確認をしている。蛇の様な尾で自分の近辺を薙ぎ払い、それだけで次々と建物が倒壊していく。
どこか楽しんでいるようなその姿に誰もが不安を覚えていた。
フォームランドに亡命しようとしていた兵士達を悉く一網打尽にしたエレインとチサト、そしてその配下の者達は戻ってきて早々に王都で起きている異変に表情を変え、出現した魔物に警戒心を高める。
「チサト、あんなもの見た事はありますか?」
「いえ、流石にない……手伝い、必要と思う?」
「え、行かないの!? いくらリリア嬢やあの使い魔達が強いと言ってもアレは大変でしょ!?」
チサトの言葉に驚いた表情を見せるエレイン。
暗に手伝いに行かないと言っているように聞こえたのだ。
今まで見たこともない程巨大で、禍々しい相手だ。いくらリリア達が強いという事を知ってはいても未知の相手である以上万全を期する必要があると考えていたエレインだからこそチサトの言葉に驚く。
「……性格が悪いと思われるだろうけど、正直あいつらが失敗すれば良いのにと思ってるのが半分」
「半分? もう半分は?」
不快そうな顔を魔物に向けたまま、チサトはため息をつく。
「あんまり思いたくないけど……あの男が負けるはずがないと思ってしまってるのも半分あるの。 だからもし劣勢になるようだったら行くけど、ちょっと様子見ようと思ってる」
「相当嫌ってるのね」
「顔をみたら顔面殴りたくなるくらいには」
「ふふっ。 チサトがそんなに感情を露わにするのも珍しい。 意外と好意なんじゃない?」
「冗談でもやめて。 絶対無理」
楽しそうに笑うエレインにチサトは本気で嫌そうな顔を向ける。
そんな顔を見てもなおエレインは楽しそうにしている。
チサトは誤解を解くのも面倒だと思い、魔物に再び視線を戻すと次の瞬間異常な光景を目にする事になる。
かなり距離が離れているが、鍛えられた超人的な視力を持つエレインとチサトが捉えたのは魔物が何かに向けて腕を振り下ろす所だ。しかしその腕が叩きつけられた場所では特に何も起こらない。 その次の刹那に赤い髪の女性が魔物の腹部に突撃し、巨大な体躯を持つ魔物を上空に吹き飛ばす光景だった。
「……す、すごい事になってますけど……ここからどうするんですかゼクトさん?」
「いやぁ。 追い詰められた敵が巨大化なんてお決まりの状況に本当に出くわすとは。 意外と面白いものですよね」
「お決まりじゃないですし、そこまで面白くはないですからね!?」
はっはっはっは。
いやしかし、元には戻れないだろうに自分で薬を飲むとはなぁ。
大人しく捕まってくれるか、人間のままで暴れてくれれば被害は少なくて済むのに。
そんな事を考えていると、どうやらグレゴリーの準備体操は終わったのかその巨大な腕を猛烈な勢いでこちらに向けて振り下ろしてきた。
「取りあえずここで暴れるのは色々と壊れてまずいな。 アカネ。 王都の外まで吹き飛ばせそうか?」
「御意」
振り下ろされる巨腕の下に潜り込み、腕を片手で受け止めた。
その勢いと質量から考えれば今の一撃で周囲に衝撃波など発生しそうだが、そんなものは一切なく完全に衝撃を殺し切っている。
その光景にグレゴリー自身も驚いている。
アカネはその腕を上に向かって弾き飛ばすと、消えたと感じる程の速度でグレゴリーの腹部に向けて突貫しその巨体を蹴り飛ばした。
すさまじい衝撃を受けた巨体は冗談のように浮き上がり、先に着地したアカネの追撃で王都を囲う壁の外まで一気に吹き飛ばされる。
「おー、おみごとあか姉。 さすが」
「じゃあ行きますよリリア様」
「え?」
呆けているリリアをお姫様抱っこで抱え、吹き飛ばされたグレゴリーを追いかける。
アカネとミソラもそれに追従するように移動を開始する。
結構な速度で移動しているので何やらリリアが言っているが気にしない事にしよう。
腹部に結構な一撃を受けたグレゴリーがなんとかその巨体をゆっくりと起こし、こちらに怒りと怯えの表情を見せてきた。正直変化する前でもした後でもそんな表情をされるとキモイです。
「バカな……。 コノ体ヲココマデ吹キ飛バスナド……」
「意外と軽かったですわ。 もう少し筋肉をつけるよう勧めますわよ」
「まぁアンバランスな体には見えるな」
「きもい」
「それは直接的すぎますよミソラさん!?」
変化球なげて意味が通じないよりは良いと思うよリリアさん。
「ヌゥゥゥ……オオオオオオオ!」
こちらの余裕の態度が気に食わかったのか、咆哮を上げて背中の八本の節足を器用に動かしその全てが襲いかかってきた。
硬質なそれは鉄板ですら余裕で貫きそうな程に鋭い。
高速で迫るそれを、アカネは特に慌てる事もなく短剣を取り出し一瞬にして切り刻んでいく。
まるでコマ落としのように瞬時に刻まれる事驚くグレゴリー。
その巨体で驚く程の速度で回転し、横合いから一気に尾を叩きつけにきた。
巨大な尾の質量であればそうそう簡単には止められないと思ったのか。
「……行儀の悪い尻尾ですわね。 お仕置きですわ」
短剣に炎を纏わせ、近づいてきた尾に向けて下から無造作に切りつける。
たったそれだけの動作で尾を叩き斬り、両断された部分から炎が吹きあがる。
「グゥオオオオ! クソックソックソォォォォォ!」
斬られ焙られた痛みで悶えるグレゴリー。
もうここまでくれば流石に勝てないのは分かりそうだが、その目に憎しみを宿し抗う気は満々のようだ。
まぁ抗うのは構わないけど、あんまり時間をかけて暴れられるのもそれはそれで鬱陶しい。
……ふむ。
「なぁ折角だ。 選ばせてやろう。 どんな死に方がいい? 焼け死ぬか、感電して死ぬか、凍死するか、圧死、刺殺、斬殺と選り取りみどりだ」
「ますたーやさしい。 わたしならもんどうむようでやる」
「本当にお優しいですわね。 さぁ選びなさいな。 死に方を選べるなんて滅多にないですわよ」
「……あれ。 おかしいな。 私には全然優しさなんて感じない。 あれ?」
いやいや優しさに溢れてるじゃないか。
苦痛に塗れて殺してやってもいいのに、楽に殺してあげると言ってるんだ。
個人的には焼死を選んでくれると嬉しい。死体処理が楽だからな。
「ワタシハ死ナヌ! キサマラガ死ネェ!」
そう叫んだグレゴリーが両腕に力を集中させ巨大な魔方陣を形成すると、大口を開けて光線を吐き出した。
光線は魔方陣を通過して巨大な閃光となり俺達を、そして王都を飲み込もうとする。
「戦闘モードへ移行。 反魔障壁展開」
戦闘モードに移行したミソラの展開した障壁がグレゴリーの一撃を易々と受け止め、霧散させる。
この場合ミソラの障壁の性能の高さを褒めるべきなのかグレゴリーの一撃のしょぼさを貶すべきなのか判断に迷うな。
「折角選ばせてやろうと思ったのに……残念だ。というわけでこちらで選ばせてもらう。 お前は」
刀を抜いて構えたところで拳を降らせるグレゴリー。
せっかちな奴だな。
「焼死決定だ。 派手に焼き殺してやるよ」
拳を斬り落とし、一気に加速して残った腕を斬り落とす。
勢いのまま駆け抜け、さらに上半身と蛇のような下半身の境界を一気に両断して上半身を落とす。
先端を失ってなお動きまわる八本の節足を根元から紅蓮で焼き払う。
身動きを取れなくなったその背中や下半身に幾つもの符を飛ばし貼り付ける。
「天焦がし地を焼く煉獄」
「マテ! マッテクレ! ワタシハマダ!」
貼りついた符が黒々とした光を放ち、輻射熱で周囲に熱波を放ち始める。
「汝に逃れる術はなく、ただ伏して訪れる災厄に身を委ねよ」
「死ニタクナイ! タス……ケテ!」
懇願するグレゴリーの周囲に渦を巻くように炎が動き始める。
「召炎・火之夜藝調」
全ての符が黒光を放ち、炎を上げる。
渦巻く流れによって炎は収束し天に向かって巻き上がる。
グレゴリーの体は鉄の融点すら超える獄炎に晒され、燃やし尽くされていく。
獄炎の渦はグレゴリーの体を焼き尽くしながら天へと昇り、夜でありながら世界を赤く染め上げ雲をも焼き尽くして少しずつ姿を消していった。
炎の嵐は姿を消し、辺りに静寂が戻る。
「…………なんか予想以上に派手だったな」
「そんなレベルじゃないですよ!? なんですかアレ!? なんなんですかアレ!?」
「いやぁ……。 現実でやるとあんな風になるんだなぁ。 殺しきれない事も考えて墜星符も準備しておいたけど要らなかったな」
「あれ以上に何かするつもりだったんですか!?」
「……てへっ」
「さすがはご主人様。 容赦のない徹底ぶりが素晴らしいですわ」
「ますたーのきちくさはせかいいち」
やだ褒められた。こいつらの感性もぶっ飛んでるな。
いやしかし……。
「これでリリアの評価は爆上がりだな。 世界一危険な人として名を残せるんじゃないか?」
「主にゼクトさんたちのせいですけどね!?」
「はっはっはっは。 これからまた色々忙しくなるだろうけど、頑張って」
「なんで他人事なんですか!? ちゃんと手伝ってくださいよ!」
……善処します。
しかし、これで実験体の無念が晴らせたとは思わないが、少しは気が晴れてくれるといいな。
頭を抱えながら歩くリリアをからかいながら、そんな柄にもない事を考えてしまった。
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