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十八話
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※九話の八天御雷と十七話の天羽々斬にルビ振ってみたけど、なんかちゃんと表示されたりされなかったり……( ;´・ω・`)
みんな見れる?
地下から脱出したリリアとミソラはその場から一旦離れ墓地の入り口まで退避した。
普段の美空からは考えられない程にブルブルとふるえており、その様子にリリアが驚く。
「ど、どうしたんですかミソラさん!?」
『ま、マスターが……かつて見たこと無いほど怒っていました。 や、ヤバイです。 そ、そうです! あか姉を呼びましょう! あか姉! 出てきてください!』
「むしろミソラさんのほうがかつてないくらい慌ててますよ! というか今更ですけど、何だか姿が変わってる!?」
『そんなことはどうでもいいのです!』
お互いパニックになり最早何を言っているのか分からない状態になり始めている。
そんなパニック状態の二人の声を聞いて知ってか知らずか朱音が眠そうな顔で宝石から出てきた。
「いったい何事? 編み物のしすぎで眠たいのに……。 ミソラはなぜ戦闘状態なのかしら?」
『あか姉。 我々のせいではありませんが、マスターが激しくお怒りです。 正直近付くのを躊躇うレベルです』
「え!? なぜ!?」
『そこのリリア様が不覚にも拐われて襲われそうになっており、それを見たマスターが激おこでした』
「リリア様……言いたいことは色々ありますけど、なぜそんな厄介な事に……。 リリア様はぶっちゃけどうでも良いんですが、ご主人様がお怒りというのは一大事です。 ここは妾が身体を張ってお静めする必要が……」
『あか姉。 本当に冗談を言っている場合ではありません。 万が一リリア様に毛筋一本でも傷をつけたら折檻されそうな状態です』
「…………ヤバイですわね」
少しふざけてみた台詞に対して、本気でふざけるなという発言をするミソラに、いまの状況がまずいという事を認識したアカネ。
普段のミソラなら多少ふざけても、元の状態に戻って一緒に悪のりするというのにそれすら無く焦っている。
「いやぁー。 まさかあの状態のグラーフ卿から逃げ出すなんて流石は竜殺しかな? ちょっと見くびっていたよ」
その時、地下墓地から抜け出したリリアに対して突如称賛の言葉がかけられた。
三人が視線を向けた先には赤髪の青年が優雅に立っていた。
青年の頬には鷹のような紋様があり、自分の実力に自信があるのか、その表情には大胆不敵な態度が表れている。
「どちら様? 妾達は忙しい身故に放っておいてほしいのだけど」
「そう言わないでくれよ。 ……せっかく僕が改造したグラーフ卿を試せる機会が来たと思ったんだ」
「お父さんを……改造……? 試せる?」
男の発した言葉の意味がわからない。
いや、分かりたくないという思いがリリアの胸中を蝕み声が振るえていた。
「ああ。 君は知らないだろうから自己紹介しておこうか。 僕は超人結社の人間でね。 人から神へと至る道を探す者達の集まりだ。 君のお父さんは魔力も高いし、いい具合に壊れてたから素材に持ってこいでね。 ついつい色々と試していたらあんな風に壊れちゃったんだ。 ごめんね?」
悪びれた風もなく、気軽にグラーフを壊したことを謝る青年にリリアの怒りが爆発する。
「ふざ……けないで!!!」
掌中に集まった魔力を解き放ち、魔力弾を男に向けて放つ。
一瞬で作り出したそれは、怒りによるものか、以前のリリアからは考えられないほどの威力と精度だった。
確実に命中したと思われたその一撃は、しかし青年の服を汚すことすら出来なかった。
「おおー。 グラーフ卿もすごいけど、君はもっと強いんだね。 いい素材になりそうだ」
愉快そうに笑う青年は、ふとリリアの両脇に控えるアカネとミソラに目を向ける。
力量を見定める事が得意だと自負していた青年は二人の実力がまったく測れない事に気付く。
「そちらの二人は君の使い魔と仲間かな? 青いのは魔族のようだし、角付きが使い魔かな? 僕の眼力で見抜けないとは……。 面白い使い魔だ」
リリアの事をしっかり調べているのかいないのか、分からない発言である。
竜殺しは知っているが、アカネとミソラを知らないという事が事前の情報収集の甘さを伺わせる。
「……どうしますの美空? あれは敵っぽいですけど」
『……最優先事項はリリア様に怪我をさせないことです。 リリア様と何やら因縁がありそうですが、私達にとっての最重要課題はリリア様に傷をつけないことです』
「……ご主人様が激おこでしたら、あれを生け捕りにして情報を得る事が出来るのであれば多少気分が晴れてくれるかしら?」
『ナイスアイディアです。 ですが問題が一つ』
「あら? 妾の手にかかれば大抵の事はきっとどうとでもなりますわ」
自信満々で答えるアカネに、ミソラは複雑な顔をする。
アカネを信頼していないわけではない。
『サーチアイで見たところ、あのクソ虫はレベル六十程度です。 私達ではオーバーキルしてしまう程の雑魚なので手加減が難しいかと。 おそらくあか姉の最弱技でも一発で消し炭になります』
「そん……な……!? だ、だって超人結社とか名乗ってるのに!? すごい大物そうなのにそんな雑魚なの!?」
「さっきから言いたい放題じゃないか。 雑魚かどうかみせてやるよ!」
青年は掌に爆炎を作り出し、自分を貶すアカネとミソラを焼き尽くすべく炎を叩き付ける。
炎はリリアをもまとめて包み込み、墓地を炎の海へと変えていく。
「くくくく。 どうだいこの炎は? さっきまでの余裕なんて消し飛んだんじゃないかな? いや、肉体も残らず消し飛んじゃったかな? あはははは! …………え?」
「……危なかったですわ。 もう少しでリリア様に掠り傷がつくところでした」
『まったくです。 ここで掠り傷でもつけようものなら怒られるところでした』
「……お二人直撃してませんでした?」
青年の目には燃えるどころか傷一つなく余裕で佇む三人の姿が映った。
アカネとミソラがリリアの前に立ち、アカネは二本の短剣を優雅に構えておりミソラはその手に錫杖を持っている。
「あの程度なら寝てる時に使われたとしても起きませんわ」
『そうですね。 あの威力が十倍程度になれば火傷くらいはするかもしれませんが』
「これの十倍で火傷程度ですか……」
リリアは周囲の惨状を見て青年の魔法の威力の強さを理解した。自分達の足元は炎で焼け焦げ、衝撃で地面が抉れている。
それほどの魔法が十倍で火傷程度という事に、青年への怒りなど忘れてただただ恐ろしく思った。
きっと二人がいなければ、リリアは闇雲に突撃して返り討ちにあい青年の言う通り実験体とされていただろう。
「バカな! バカなバカなバカな!?」
青年は目の前の出来事が信じられないとでも言う風に炎を何度も何度も叩き付ける。
先程よりも若干威力が上がっているそれを、まるで微風のごとく受け流しつつ不快な表情を作るアカネとミソラ。
「このクソ虫……。 リリア様に傷がつけば私達が怒られるのに。 殺すと情報が取れないかもしれないから攻撃も迂闊に出来ない……。 本当に厄介ですわね」
『…………いっそ殺ってしまいましょう。 私は蘇生魔法も使えますので、体が多少残っていれば大丈夫です。 むしろこのまま攻撃を続けられてリリア様が掠り傷でも負う方が厄介です』
「…………そうですわね。 殺っちゃいましょう」
『私はここでリリア様への攻撃を防いでおきます』
ミソラはリリアの前面に立つと、青白い光の膜を自身とリリアの周囲に展開し防御を完成させた。
間断なく飛んでくる炎が膜に当たると呆気なく消滅していく。
「くそっ!? 超人結社の幹部である僕の魔法だぞ!? なぜこうも通じない!?」
青年は自分の力に自信を持っていた。
少なくとも火竜とだって正面切って戦えると自負していた自分が竜殺しに遅れを取るわけがないと判断していた。
しかし、そんな青年の目論みも火竜殺しであるリリアどころかその使い魔に舐められている。
彼のプライドがそれを許す事が出来ず、そして退き時を誤る事になる。
「少しおいたが過ぎますわね。 折檻ですわ」
一瞬にして背後に回った朱音がにこりと笑顔を向け、同時に背中に当てた掌をそのまま強く押し込み地面に叩き付ける。
勢い余って貫手のような形でアカネの手が青年の背骨を砕きながら侵入し、腹部を突き破る。
「がふっ!? あ、ありえない! ぼ、僕は超人結社の人間だぞ!? それをこんな……!?」
「嘘っ!? て、手加減したのに!?」
腹部を貫くアカネの手を見て青年は悪態をつき、アカネはアカネでアッサリと貫いてしまった事に驚く。
「くそ…………」
青年は腹部に空いた穴から大量に失血し、重要な臓器の幾つかを派手に突き破られ絶命した。
「み、ミソラ! し、死んだから早く交代ですわ!」
『彼の者の魂に癒しを。 リザレクション』
ミソラの魔法によって腹部に開いた穴がまるで逆再生のように修復され、青年の顔に生気が戻る。
目の前で何の苦もなく行われる大魔法の行使にリリアは驚愕を通り越し、畏怖する心も通り越して無心になった。
(ああ。 ……理解するのは諦めた方がいいのかも)
無心に辿り着いたリリアの出した答えはそれだった。
ゼクトや彼女達には最早何でもありなのだと。
(いまなら例えゼクトさんが国を一つ滅ぼしても笑って受け入れられる気がします)
赤髪の青年が死の縁から呼び戻される姿をみてリリアはそんな益体もない事を考えていた。
「…………………一応聞いておく。 それ誰がやった?」
「すごいでしょますたー。 ひとをしばるのにこうかてきときいた。 きっこーしばり」
「さすがミソラですわ。 まさか亀甲縛りで捕らえた敵を縛るなんて。 ご主人様、私も同じようにしてくださってもいいんですわよ?」
リリアの親父さんを二度と刃向かう気が起きないように徹底的に苛めぬいた後。
親父さんを連れて地上へ戻ると、墓地に爆撃でもあったのか見事に更地になっていた。
近くにリリア達がいたので近付くと、亀甲縛りされた人がいたので尋ねたところだ。
「……まぁ亀甲縛りは良いとして、誰それ?」
「お父さんを……そんな姿にした張本人みたいです。 超人結社とか名乗ってました」
「……少年の黒歴史ノートに出てきそうなネーミングだな」
俺はそんな組織入りたくないし、罷り間違っても名乗る事なんてありえない。
たぶん名乗ったらしばらくは引きこもる自信がある。
気絶している青年と親父さんを並べて座らせる。
親父さんの方は意識がもともと混濁しているような様子だったからこっちの男の方が色々と聞きやすいかもしれんな。
「おい、起きろ」
優しく起こす義理もないので頬をペチーンと強めに叩いてみた。
いい具合の紅葉手形の完成だ。
「う……ぐぅ……あ? 僕は……!?」
「やぁおはよう。 気分はどうだ」
「まさかそこの小娘の使い魔に遅れをとるとは……。 貴様はなんだぶっ!?」
「貴様? 誰に向かってモノを言っているのか分かっているのかしら?」
青年の言葉遣いが気に入らないのかアカネのビンタが青年の頬を打つ。
……っておい。 首折れてる。
「……アカネは手加減を覚えような? ミソラ、回復」
「りょーかい」
「まさかこんなに脆いなんて……不覚ですわ」
いや、いまのビンタ手加減する気ゼロでしたやん。首を捻切るつもりだったんじゃないかって勢いだったよ?
「はっ!? 僕はいったい何を……」
「はいはい。 キリキリ吐かないと次は首が千切れるぞ。 じゃあまずは氏名、住所、生年月日からいこうか」
「なぜ僕がそんなこぶばっ!?」
「はかないとぶつよー。 キリキリはけー」
「もう殴ってるじゃないか!?」
ミソラに優しく殴られ泣きの入っている青年。 マジで話が進まない。
「ぼ、僕はディールだ。 じ、住所は王都リクシアで誕生日は知らない。 孤児だったからな」
…………ネタのつもりだったのに本当に住所まで言ってくれたよこの方。
いや、言えって言ったのは俺だから悪いのは俺か。
「それで何が目的で親父さんを改造して、こんなところに来たのかな?」
「……ヴィスコール家は代々優秀な家系だ。 その優秀な魔力を持つ素体で人に魔族の力を混ぜ合わせたらどうなるかの実験を行っていた。 幸いグラーフ卿は妻を喪ったことで半分壊れていた。 甘言に乗せるのは容易いからな。 ここに来たのは壊れたグラーフ卿が娘のリリアの力があれば妻を生き返らせる手段があると思ったのだろう。 僕は面白そうだからついてきただけだ」
…………ものすごい素直に吐いてくれたけど、アカネとミソラの攻撃がそんなに痛かったのかな。
いやまぁ実際二回くらいは死んだようなもんだし仕方ないのか。
「……まぁ元凶はお前ってことだな。 超人結社ってのは仲間意識は強いか? お前を殺したらそいつらが報復にくる可能性は?」
「……僕達は人という種で最も強いというプライドを持っている。 僕が負けたと知ったら興味は間違いなく持つだろう。 僕は一応大幹部でもあるから報復はあるだろう」
「ふむふむ。 ……ちなみに組織のトップは誰だ?」
「…………僕達はあの人の事は知らない。 ただプラチナと呼んでいる」
姿は見せど正体分からず系の人かな?
あんまり有益な情報は持っていなさそうだな。
こいつを使いっぱしりにするか。
「……そうだ。 リリアの親父さんは元に戻せないのか?」
「無理だ。 あの状態が基本だと体が認識している。 回復魔法を試みても無駄だ」
エリクシルやら色々使ったけど元には戻らなかったもんな。
遺伝情報を元に回復するのかどうか分かりにくいが、ベースがあれな以上不可能なのだろう。
自意識もかなり弱ってるしな。
「……リリアこいつをどうしたい?」
今までディールの話を黙って聞いていたリリアはディールの前に立ち、全力でその頬を叩いた。
鈍い感じの音でかなり痛そうである。
「……二度と我が領内に近づかないでください」
「殺さなくていいのか?」
「…………お父さんにも自業自得な部分はありますから。 それにこんな人を殺しても私の心はきっと晴れません」
「……了解。 行っていいぞ」
芸術的な亀甲縛りなので外すのが勿体無いが、邪魔くさいのも確かなので縄を切り解放する。
ディールは戸惑いながらも立ち上がり足に炎を纏わせ浮き上がる。
「…………っこれで終わりと思うなよ!」
こちらの手が届かなそうな位置についた時、ディールは悔しそうにそう言いながら逃げていった。
「ご主人様の恩情に預かりながらあのような台詞……。 追いかけますか?」
「いまならまだよゆーでおいつけるよ」
過激な二人だなぁ。
でも大丈夫。
既に手は打っている。
「取り敢えず放っておけ。 リリア……親父さんだが、一応手持ちの状態異常を治すアイテムは試してみたが効果はなかった。 出来るのは…………」
地下で切り刻みながら回復薬もつかったりしていたのだが、精神やその腐敗した体が回復することはなかった。
おそらく身体も精神も限界なのかもしれない。
ミソラに目を配るが、首を振る。
「大丈夫です……。 あんな姿になっているのを見て覚悟は出来てました。 お父さんが他の誰かを傷つけるところは見たくないですし……。 私が終わらせます」
震える手に魔力を集め、高威力の魔力弾を形成するリリア。
火竜を倒した経験値でそうとうレベルが上がったのか以前より遥かに威力が上がっている。
「ていっ」
リリアの頭にチョップして発動を止める。
集中しいた魔力が霧散し、涙目になるリリア。
普段ならもっと苛めて可愛がりたいが、そんな雰囲気でもないのが残念だ。
「あいたっ!? な、何するんですかゼクトさん!?」
「そういうのは俺の仕事だ。 その代わりリリアはしっかり見届けるんだ。 親父さんの最後を」
「……でも……」
「それに親殺しってのはずっと胸に残る。 …………消えない傷は辛いだけだ」
「…………ゼクトさん」
親に限らず、親しい誰かを殺すのはいちいち胸に傷を作っていく。
その傷は消えることはなく、ふとした時に痛みを持つ。
俺のような人でなしならまだしも、リリアのような優しい人柄だと一生引き摺り続けるだろう。
そんなものは背負わなくていい。
柄に手をかけ、拘束している親父さんを見下ろす。
「…………最後に何か言い残す事はあるか?」
「ァァ…………。 …………スマナイ、アリガトウ。 シアワセニナッテクレ」
ゆっくりと、満足そうに目を閉じた親父さん。
これが奇跡なのか最後に少しだけ、人としての理性が戻った。
「来世では奥さんと幸せに暮らしてくれ」
先程散々苛めぬいてリリアを苦しめた罰は与えた。後は安らかに眠ればいい。
痛みを感じる暇もなく一瞬で逝けるように視認することすら不可能な速度で脳を貫き、首を落とす。
魔術で耐えていたのか、親父さんの腐りきっていた身体は首を落としたあとに砂のようにサラサラと崩壊していった。
「…………グスッ…………ふ、ふぇ……」
嗚咽が聞こえてきた。
誰のものかは分かっている。
アカネとミソラは無言でホームに戻り、俺も戻ろうかと思ったが後ろからトンっと軽い衝撃が来た。
「リリア……」
「…………いばだけは……ゆるじてぐださい」
「……いつでも許すさ。 存分に泣け。 なんなら俺を恨んでくれてもいい。 実際に止めを刺したのは……俺だからな」
背中で首を振って否定してくれるリリアだが嗚咽のせいで声が出ず、その代わりなのか強く後ろから抱き締めてきた。
「…………気のすむまで泣くといい」
太陽が中天に差し掛かり煌々と世界を照らすなか、墓地の一部では雨が降り続いた。
※明日から仕事始めなので、更新ペースは少し落ちます( *・ω・)ノ
仕方無いよね( ・3・)w
あ、ちょっ石はやめっ……!?
みんな見れる?
地下から脱出したリリアとミソラはその場から一旦離れ墓地の入り口まで退避した。
普段の美空からは考えられない程にブルブルとふるえており、その様子にリリアが驚く。
「ど、どうしたんですかミソラさん!?」
『ま、マスターが……かつて見たこと無いほど怒っていました。 や、ヤバイです。 そ、そうです! あか姉を呼びましょう! あか姉! 出てきてください!』
「むしろミソラさんのほうがかつてないくらい慌ててますよ! というか今更ですけど、何だか姿が変わってる!?」
『そんなことはどうでもいいのです!』
お互いパニックになり最早何を言っているのか分からない状態になり始めている。
そんなパニック状態の二人の声を聞いて知ってか知らずか朱音が眠そうな顔で宝石から出てきた。
「いったい何事? 編み物のしすぎで眠たいのに……。 ミソラはなぜ戦闘状態なのかしら?」
『あか姉。 我々のせいではありませんが、マスターが激しくお怒りです。 正直近付くのを躊躇うレベルです』
「え!? なぜ!?」
『そこのリリア様が不覚にも拐われて襲われそうになっており、それを見たマスターが激おこでした』
「リリア様……言いたいことは色々ありますけど、なぜそんな厄介な事に……。 リリア様はぶっちゃけどうでも良いんですが、ご主人様がお怒りというのは一大事です。 ここは妾が身体を張ってお静めする必要が……」
『あか姉。 本当に冗談を言っている場合ではありません。 万が一リリア様に毛筋一本でも傷をつけたら折檻されそうな状態です』
「…………ヤバイですわね」
少しふざけてみた台詞に対して、本気でふざけるなという発言をするミソラに、いまの状況がまずいという事を認識したアカネ。
普段のミソラなら多少ふざけても、元の状態に戻って一緒に悪のりするというのにそれすら無く焦っている。
「いやぁー。 まさかあの状態のグラーフ卿から逃げ出すなんて流石は竜殺しかな? ちょっと見くびっていたよ」
その時、地下墓地から抜け出したリリアに対して突如称賛の言葉がかけられた。
三人が視線を向けた先には赤髪の青年が優雅に立っていた。
青年の頬には鷹のような紋様があり、自分の実力に自信があるのか、その表情には大胆不敵な態度が表れている。
「どちら様? 妾達は忙しい身故に放っておいてほしいのだけど」
「そう言わないでくれよ。 ……せっかく僕が改造したグラーフ卿を試せる機会が来たと思ったんだ」
「お父さんを……改造……? 試せる?」
男の発した言葉の意味がわからない。
いや、分かりたくないという思いがリリアの胸中を蝕み声が振るえていた。
「ああ。 君は知らないだろうから自己紹介しておこうか。 僕は超人結社の人間でね。 人から神へと至る道を探す者達の集まりだ。 君のお父さんは魔力も高いし、いい具合に壊れてたから素材に持ってこいでね。 ついつい色々と試していたらあんな風に壊れちゃったんだ。 ごめんね?」
悪びれた風もなく、気軽にグラーフを壊したことを謝る青年にリリアの怒りが爆発する。
「ふざ……けないで!!!」
掌中に集まった魔力を解き放ち、魔力弾を男に向けて放つ。
一瞬で作り出したそれは、怒りによるものか、以前のリリアからは考えられないほどの威力と精度だった。
確実に命中したと思われたその一撃は、しかし青年の服を汚すことすら出来なかった。
「おおー。 グラーフ卿もすごいけど、君はもっと強いんだね。 いい素材になりそうだ」
愉快そうに笑う青年は、ふとリリアの両脇に控えるアカネとミソラに目を向ける。
力量を見定める事が得意だと自負していた青年は二人の実力がまったく測れない事に気付く。
「そちらの二人は君の使い魔と仲間かな? 青いのは魔族のようだし、角付きが使い魔かな? 僕の眼力で見抜けないとは……。 面白い使い魔だ」
リリアの事をしっかり調べているのかいないのか、分からない発言である。
竜殺しは知っているが、アカネとミソラを知らないという事が事前の情報収集の甘さを伺わせる。
「……どうしますの美空? あれは敵っぽいですけど」
『……最優先事項はリリア様に怪我をさせないことです。 リリア様と何やら因縁がありそうですが、私達にとっての最重要課題はリリア様に傷をつけないことです』
「……ご主人様が激おこでしたら、あれを生け捕りにして情報を得る事が出来るのであれば多少気分が晴れてくれるかしら?」
『ナイスアイディアです。 ですが問題が一つ』
「あら? 妾の手にかかれば大抵の事はきっとどうとでもなりますわ」
自信満々で答えるアカネに、ミソラは複雑な顔をする。
アカネを信頼していないわけではない。
『サーチアイで見たところ、あのクソ虫はレベル六十程度です。 私達ではオーバーキルしてしまう程の雑魚なので手加減が難しいかと。 おそらくあか姉の最弱技でも一発で消し炭になります』
「そん……な……!? だ、だって超人結社とか名乗ってるのに!? すごい大物そうなのにそんな雑魚なの!?」
「さっきから言いたい放題じゃないか。 雑魚かどうかみせてやるよ!」
青年は掌に爆炎を作り出し、自分を貶すアカネとミソラを焼き尽くすべく炎を叩き付ける。
炎はリリアをもまとめて包み込み、墓地を炎の海へと変えていく。
「くくくく。 どうだいこの炎は? さっきまでの余裕なんて消し飛んだんじゃないかな? いや、肉体も残らず消し飛んじゃったかな? あはははは! …………え?」
「……危なかったですわ。 もう少しでリリア様に掠り傷がつくところでした」
『まったくです。 ここで掠り傷でもつけようものなら怒られるところでした』
「……お二人直撃してませんでした?」
青年の目には燃えるどころか傷一つなく余裕で佇む三人の姿が映った。
アカネとミソラがリリアの前に立ち、アカネは二本の短剣を優雅に構えておりミソラはその手に錫杖を持っている。
「あの程度なら寝てる時に使われたとしても起きませんわ」
『そうですね。 あの威力が十倍程度になれば火傷くらいはするかもしれませんが』
「これの十倍で火傷程度ですか……」
リリアは周囲の惨状を見て青年の魔法の威力の強さを理解した。自分達の足元は炎で焼け焦げ、衝撃で地面が抉れている。
それほどの魔法が十倍で火傷程度という事に、青年への怒りなど忘れてただただ恐ろしく思った。
きっと二人がいなければ、リリアは闇雲に突撃して返り討ちにあい青年の言う通り実験体とされていただろう。
「バカな! バカなバカなバカな!?」
青年は目の前の出来事が信じられないとでも言う風に炎を何度も何度も叩き付ける。
先程よりも若干威力が上がっているそれを、まるで微風のごとく受け流しつつ不快な表情を作るアカネとミソラ。
「このクソ虫……。 リリア様に傷がつけば私達が怒られるのに。 殺すと情報が取れないかもしれないから攻撃も迂闊に出来ない……。 本当に厄介ですわね」
『…………いっそ殺ってしまいましょう。 私は蘇生魔法も使えますので、体が多少残っていれば大丈夫です。 むしろこのまま攻撃を続けられてリリア様が掠り傷でも負う方が厄介です』
「…………そうですわね。 殺っちゃいましょう」
『私はここでリリア様への攻撃を防いでおきます』
ミソラはリリアの前面に立つと、青白い光の膜を自身とリリアの周囲に展開し防御を完成させた。
間断なく飛んでくる炎が膜に当たると呆気なく消滅していく。
「くそっ!? 超人結社の幹部である僕の魔法だぞ!? なぜこうも通じない!?」
青年は自分の力に自信を持っていた。
少なくとも火竜とだって正面切って戦えると自負していた自分が竜殺しに遅れを取るわけがないと判断していた。
しかし、そんな青年の目論みも火竜殺しであるリリアどころかその使い魔に舐められている。
彼のプライドがそれを許す事が出来ず、そして退き時を誤る事になる。
「少しおいたが過ぎますわね。 折檻ですわ」
一瞬にして背後に回った朱音がにこりと笑顔を向け、同時に背中に当てた掌をそのまま強く押し込み地面に叩き付ける。
勢い余って貫手のような形でアカネの手が青年の背骨を砕きながら侵入し、腹部を突き破る。
「がふっ!? あ、ありえない! ぼ、僕は超人結社の人間だぞ!? それをこんな……!?」
「嘘っ!? て、手加減したのに!?」
腹部を貫くアカネの手を見て青年は悪態をつき、アカネはアカネでアッサリと貫いてしまった事に驚く。
「くそ…………」
青年は腹部に空いた穴から大量に失血し、重要な臓器の幾つかを派手に突き破られ絶命した。
「み、ミソラ! し、死んだから早く交代ですわ!」
『彼の者の魂に癒しを。 リザレクション』
ミソラの魔法によって腹部に開いた穴がまるで逆再生のように修復され、青年の顔に生気が戻る。
目の前で何の苦もなく行われる大魔法の行使にリリアは驚愕を通り越し、畏怖する心も通り越して無心になった。
(ああ。 ……理解するのは諦めた方がいいのかも)
無心に辿り着いたリリアの出した答えはそれだった。
ゼクトや彼女達には最早何でもありなのだと。
(いまなら例えゼクトさんが国を一つ滅ぼしても笑って受け入れられる気がします)
赤髪の青年が死の縁から呼び戻される姿をみてリリアはそんな益体もない事を考えていた。
「…………………一応聞いておく。 それ誰がやった?」
「すごいでしょますたー。 ひとをしばるのにこうかてきときいた。 きっこーしばり」
「さすがミソラですわ。 まさか亀甲縛りで捕らえた敵を縛るなんて。 ご主人様、私も同じようにしてくださってもいいんですわよ?」
リリアの親父さんを二度と刃向かう気が起きないように徹底的に苛めぬいた後。
親父さんを連れて地上へ戻ると、墓地に爆撃でもあったのか見事に更地になっていた。
近くにリリア達がいたので近付くと、亀甲縛りされた人がいたので尋ねたところだ。
「……まぁ亀甲縛りは良いとして、誰それ?」
「お父さんを……そんな姿にした張本人みたいです。 超人結社とか名乗ってました」
「……少年の黒歴史ノートに出てきそうなネーミングだな」
俺はそんな組織入りたくないし、罷り間違っても名乗る事なんてありえない。
たぶん名乗ったらしばらくは引きこもる自信がある。
気絶している青年と親父さんを並べて座らせる。
親父さんの方は意識がもともと混濁しているような様子だったからこっちの男の方が色々と聞きやすいかもしれんな。
「おい、起きろ」
優しく起こす義理もないので頬をペチーンと強めに叩いてみた。
いい具合の紅葉手形の完成だ。
「う……ぐぅ……あ? 僕は……!?」
「やぁおはよう。 気分はどうだ」
「まさかそこの小娘の使い魔に遅れをとるとは……。 貴様はなんだぶっ!?」
「貴様? 誰に向かってモノを言っているのか分かっているのかしら?」
青年の言葉遣いが気に入らないのかアカネのビンタが青年の頬を打つ。
……っておい。 首折れてる。
「……アカネは手加減を覚えような? ミソラ、回復」
「りょーかい」
「まさかこんなに脆いなんて……不覚ですわ」
いや、いまのビンタ手加減する気ゼロでしたやん。首を捻切るつもりだったんじゃないかって勢いだったよ?
「はっ!? 僕はいったい何を……」
「はいはい。 キリキリ吐かないと次は首が千切れるぞ。 じゃあまずは氏名、住所、生年月日からいこうか」
「なぜ僕がそんなこぶばっ!?」
「はかないとぶつよー。 キリキリはけー」
「もう殴ってるじゃないか!?」
ミソラに優しく殴られ泣きの入っている青年。 マジで話が進まない。
「ぼ、僕はディールだ。 じ、住所は王都リクシアで誕生日は知らない。 孤児だったからな」
…………ネタのつもりだったのに本当に住所まで言ってくれたよこの方。
いや、言えって言ったのは俺だから悪いのは俺か。
「それで何が目的で親父さんを改造して、こんなところに来たのかな?」
「……ヴィスコール家は代々優秀な家系だ。 その優秀な魔力を持つ素体で人に魔族の力を混ぜ合わせたらどうなるかの実験を行っていた。 幸いグラーフ卿は妻を喪ったことで半分壊れていた。 甘言に乗せるのは容易いからな。 ここに来たのは壊れたグラーフ卿が娘のリリアの力があれば妻を生き返らせる手段があると思ったのだろう。 僕は面白そうだからついてきただけだ」
…………ものすごい素直に吐いてくれたけど、アカネとミソラの攻撃がそんなに痛かったのかな。
いやまぁ実際二回くらいは死んだようなもんだし仕方ないのか。
「……まぁ元凶はお前ってことだな。 超人結社ってのは仲間意識は強いか? お前を殺したらそいつらが報復にくる可能性は?」
「……僕達は人という種で最も強いというプライドを持っている。 僕が負けたと知ったら興味は間違いなく持つだろう。 僕は一応大幹部でもあるから報復はあるだろう」
「ふむふむ。 ……ちなみに組織のトップは誰だ?」
「…………僕達はあの人の事は知らない。 ただプラチナと呼んでいる」
姿は見せど正体分からず系の人かな?
あんまり有益な情報は持っていなさそうだな。
こいつを使いっぱしりにするか。
「……そうだ。 リリアの親父さんは元に戻せないのか?」
「無理だ。 あの状態が基本だと体が認識している。 回復魔法を試みても無駄だ」
エリクシルやら色々使ったけど元には戻らなかったもんな。
遺伝情報を元に回復するのかどうか分かりにくいが、ベースがあれな以上不可能なのだろう。
自意識もかなり弱ってるしな。
「……リリアこいつをどうしたい?」
今までディールの話を黙って聞いていたリリアはディールの前に立ち、全力でその頬を叩いた。
鈍い感じの音でかなり痛そうである。
「……二度と我が領内に近づかないでください」
「殺さなくていいのか?」
「…………お父さんにも自業自得な部分はありますから。 それにこんな人を殺しても私の心はきっと晴れません」
「……了解。 行っていいぞ」
芸術的な亀甲縛りなので外すのが勿体無いが、邪魔くさいのも確かなので縄を切り解放する。
ディールは戸惑いながらも立ち上がり足に炎を纏わせ浮き上がる。
「…………っこれで終わりと思うなよ!」
こちらの手が届かなそうな位置についた時、ディールは悔しそうにそう言いながら逃げていった。
「ご主人様の恩情に預かりながらあのような台詞……。 追いかけますか?」
「いまならまだよゆーでおいつけるよ」
過激な二人だなぁ。
でも大丈夫。
既に手は打っている。
「取り敢えず放っておけ。 リリア……親父さんだが、一応手持ちの状態異常を治すアイテムは試してみたが効果はなかった。 出来るのは…………」
地下で切り刻みながら回復薬もつかったりしていたのだが、精神やその腐敗した体が回復することはなかった。
おそらく身体も精神も限界なのかもしれない。
ミソラに目を配るが、首を振る。
「大丈夫です……。 あんな姿になっているのを見て覚悟は出来てました。 お父さんが他の誰かを傷つけるところは見たくないですし……。 私が終わらせます」
震える手に魔力を集め、高威力の魔力弾を形成するリリア。
火竜を倒した経験値でそうとうレベルが上がったのか以前より遥かに威力が上がっている。
「ていっ」
リリアの頭にチョップして発動を止める。
集中しいた魔力が霧散し、涙目になるリリア。
普段ならもっと苛めて可愛がりたいが、そんな雰囲気でもないのが残念だ。
「あいたっ!? な、何するんですかゼクトさん!?」
「そういうのは俺の仕事だ。 その代わりリリアはしっかり見届けるんだ。 親父さんの最後を」
「……でも……」
「それに親殺しってのはずっと胸に残る。 …………消えない傷は辛いだけだ」
「…………ゼクトさん」
親に限らず、親しい誰かを殺すのはいちいち胸に傷を作っていく。
その傷は消えることはなく、ふとした時に痛みを持つ。
俺のような人でなしならまだしも、リリアのような優しい人柄だと一生引き摺り続けるだろう。
そんなものは背負わなくていい。
柄に手をかけ、拘束している親父さんを見下ろす。
「…………最後に何か言い残す事はあるか?」
「ァァ…………。 …………スマナイ、アリガトウ。 シアワセニナッテクレ」
ゆっくりと、満足そうに目を閉じた親父さん。
これが奇跡なのか最後に少しだけ、人としての理性が戻った。
「来世では奥さんと幸せに暮らしてくれ」
先程散々苛めぬいてリリアを苦しめた罰は与えた。後は安らかに眠ればいい。
痛みを感じる暇もなく一瞬で逝けるように視認することすら不可能な速度で脳を貫き、首を落とす。
魔術で耐えていたのか、親父さんの腐りきっていた身体は首を落としたあとに砂のようにサラサラと崩壊していった。
「…………グスッ…………ふ、ふぇ……」
嗚咽が聞こえてきた。
誰のものかは分かっている。
アカネとミソラは無言でホームに戻り、俺も戻ろうかと思ったが後ろからトンっと軽い衝撃が来た。
「リリア……」
「…………いばだけは……ゆるじてぐださい」
「……いつでも許すさ。 存分に泣け。 なんなら俺を恨んでくれてもいい。 実際に止めを刺したのは……俺だからな」
背中で首を振って否定してくれるリリアだが嗚咽のせいで声が出ず、その代わりなのか強く後ろから抱き締めてきた。
「…………気のすむまで泣くといい」
太陽が中天に差し掛かり煌々と世界を照らすなか、墓地の一部では雨が降り続いた。
※明日から仕事始めなので、更新ペースは少し落ちます( *・ω・)ノ
仕方無いよね( ・3・)w
あ、ちょっ石はやめっ……!?
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