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九十六話

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 ※実家が田舎すぎてWi-Fiとかネットの回線が繋げれませんとか言われてワロタ(*´∀`*)w
 ポケットWi-Fi?とかも無理とかホントすごい(*´∀`*)w



 
 到着してから特に何のお迎えも無かったので通りを歩きながら色々と見学しつつ王宮へ向かうことにした。
 馬車にはたいした荷物もないし、盗まれてもさして問題もないので門のところで預けてみた。
 この扱い次第であの検問してた奴等の人格が問われるな。

 見ていて面白い店も多かったので特に退屈することなく王宮前に到着した。
 
 「近くで見ると圧倒されるな。 うむリリア達についてきて良かった」

 「うふふふ。 エルちゃんが喜んでくれて嬉しいです」

 「ゼクトさんは一緒に住むならこういうところは如何?」

 「セイン様も懲りませんねぇ。 ……流石に住むのは却下です。 手入れが面倒なので」

 「ゼクトさんはどんな所が良いんですか?」

 セインの質問に却下で答えると、興味深そうにリリアが尋ねてきた。

 「そうですね。 ……案外リリア様の家なんかは私としては好きですね。 あそこは流石に改修が必要ですけど」

 「えへへへへ。 自分の家が好きって言われると嬉しいですね。 確かにボロになってるので直さないといけない部分も多いんですけど」

 実に嬉しそうな表情を浮かべるリリア。
 ああいう牧歌的な村でのんびり暮らせるならそれもそれで悪くはないとは思う。
 とは言え流石に雨漏りがある家が良いという訳ではないけどな。近いうちに修理というか改修の依頼を出しておかないと。
 ……その間アリアとルリアの家をどうするか。
 しばらくかかるだろうし、どこか準備しないとな。

 そんな事を考えていると、セインとエルレイアがいつの間にか兵士に視察として来たことを伝えていた。
 兵士はかなり驚いた様子で最敬礼をした後に、言葉通り飛ぶように走っていった。
 んー? やっぱり反応が違うな。
 どちらかと言えばこっちの方が正常な反応に見えるけど……。
 兵士が中に行って一分程度して、見たことのある男を連れて戻ってきた。

 「た、大変申し訳ありません! 検問の兵士には必ず着いたら連絡するように説明していたので……す……が。 ……え? あ、えと……ま、まさか!?」

 たしか秘書官のフォーリスさんだったか。
 流石に服を変えた程度ではバレたようなので、面倒になる前に先に名乗らせてもらおう。

 「これはこれは、案内していただける方ですか? 私はゼット。 こちらはリリネア様に、セイン様、エルレイア様です」

 それぞれを紹介して頭を下げる。
 三人は貴族としての教養がきちんとあるので良いけど、俺の場合そんなものは全く備わっていないので気を付けないとな。

 「ゼット……リリネア……? …………ああ、なるほど。 そういうことでしたか。 ご、ごほん。 取り乱して申し訳ありません。 私は陛下付きの秘書官であるフォーリスと申します。 これからの視察で皆様をご案内いたしますので、何かあればなんなりとお申し付けください」

 名前を変えている事でこちらの意図を何となく理解してくれたのかな? 
 流石に秘書官というだけあって回転が早いな。
 そして最高に顔色が悪いな。体調悪いなら別のやつでもいいのに。

 「フォーリス殿……だったか。 顔色が悪いようだが大丈夫か?」

 「あい、いえ大丈夫でっす!」

 「あらあら、緊張していらっしゃるのかしら?」

 まぁ……緊張しないわけないよな。
 だってリリアと俺って間違いなくこの国にとっての疫病神だしな。 
 はっ!とうとう神にランクアップしてしまったか!
 こんな可愛らしい神様なら喜んでついてもらいたいものだ。

 「と、突然でしたが、いまは陛下も時間がございますので、まずは謁見に向かいましょう。 どうぞこちらへ」

 ふざけた事を考えていると、フォーリスが王宮内に招きいれてくれた。
 実に見事な造りの王宮内が一体どうなっているのか、そこはそれで気になるな。










 「…………よく……来てくれた」

 苦虫を噛み潰してそのエキスを鼻から流し込んだかなと思う程度には苦々しい顔をしたサブノックさんが出迎えてくれた。
 隣のヒトも冷や汗出まくりである。
 周囲の人間も総じて似たような反応である。
 いやぁ……なんというか申し訳ない気分が半分、楽しいなと思う気分が半分。
 向こうはこちらを殺りに来てたこともあったんだし、仕方ないっちゃ仕方ないよね。
 
 「今回は視さちゅ…………こほん。 視察を受け入れて頂きありがとうございます。 視察と名目はついていますが親善、という意味もありますのであまり気負わないで大丈夫ですので、どうかよろしくお願いします」

 気負わないでと言いつつ噛んで顔を真っ赤にしている主がとても可愛いです、はい。
 この集団のトップはリリアなのでリリアが前に出て挨拶をしてくれたが……いやはや、意外と似合うな。
 立場がヒトを育てるというが、リリアは気付いたら本当に成長してるな。
 こうして王、しかも元敵国のトップと目を逸らさずに話せるようになっているんだ。
 最初に出会った頃とすると見違えるようだ。
 
 (ゼクト殿、何をボーッとしているのだ)

 (ああ、いえ。 リリア様も成長したものだなぁと)

 (それは確かにな。 昔のリリアだったらたぶんまともに喋れてもいないな)

 (今も噛んでますけどね)

 (それくらいは許してやれ)

 謁見中ではあるが、ついつい苦笑してしまう。
 エルレイアもおかしかったのか見た目はほとんど変わらないが、口角が少し上がっている。

 「では歓待の準備をしておく。 移動の旅で疲れたであろう。 今日はゆっくりと身体の疲れを癒してくれ」

 いつの間にかリリアとサブノックの形だけの会談も終わったようだ。
 一切話は聞いていなかったけど、まぁきっと大丈夫だろう。
 ……不敬なうえに仕事に対するやる気がゼロなのがバレバレだな。怒られないように気を付けよう。
 リリアがなるべく表情を崩さないようにサブノックの前から下がり、チラリとこちらをみる。
 恥ずかしさと緊張と安心感などが色々と混ざったような表情だが、舌を出してチラリとこちらに笑みを向けてくる。
 実に可愛い。その出た舌をぺろぺ……おっと危ない心の紳士が大暴走だ。

 (頑張りましたよゼクトさん!)

 (見てましたよ。 しさちゅ頑張りましょう)

 (忘れたいんですから止めてくださいよ!)

 リリアをからからう事を忘れずにさぁ戻ろうとしたその時。
 カチャリと背後から剣の柄に手をかけた音がした。
 とりあえず敵意もないし斬り込んでくる感じはなさそなのでゆっくりと振り返ってみる。
 セインとエルレイアは過剰に反応し、いつでも武器を出せるようにして構え振り返る。
 …………英雄であるリリアさんはまだ良く分かっていないのか、こちらも俺と似たような速度で振り返ってる。

 敵意は無いが、たしかイグニスだったかな?
 たぶんこの場で俺とセイン、リリアを除いた中で一番強いかもしれない。
 エルレイアといい勝負か……いや、エルレイアにはキツいかな。
 そんな奴が俺たちに向け剣を手にかけている。
 どう考えても敵対行為……あ、いや正確には違うか。
 ただあのタイミングでわざとらしく音を出して警戒させるのはよくないなぁ。

 「な、ななななな何をしているイグニス!?」

 「正気ですかイグニス殿!? なぜ剣に手をかけているのですか!?」

 慌てるサブノックとフォーリス。
 そりゃそうだ。とりあえずの顔合わせが終わったその時にこんなヤバイ雰囲気を作ったんだ。

 「申し訳ありません陛下。 ただ……一人の武人として、どうしてもゼクト殿に本気の勝負をもう一度お願いしたく、心が抑えられませんでした」

 あまり表情を動かさなそうなイグニスがそんな事を言いながらこちらを見つめている。
 女性からの熱視線だったら自分モテてるなぁとか勘違い出来て良いんだけど、男からだとなぁ。
 でも感じるのは敵意ではなく、純粋な闘志というか。
 
 「陛下、もしゼット殿が許すならば、一度試合をしたいのです。 私は……私の持てる力全てをぶつけることの出来る戦いがしてみたい」

 真剣な表情で頼み込むイグニス。
 流石に視察に来た相手に最強の近衛が挑むのは如何なものなのか。
 そして試合といってと視察団のものと最強の近衛が戦ってイグニスが負けた場合、それでもまた評判が地に落ちてしまっては周囲からの信頼の回復が大変なものになる。

 けどそれでも強いものと戦ってみたいという欲求が勝るとは……イグニスは真に武人なんだな。

 「陛下、私は特に問題ありませんよ。 あの時の戦いではイグニス様も不完全燃焼でしょうしね。 ですが試合、となると優劣がついてしまう。 指南、という形で如何ですか?」

 「願ってもない」

 ゼクトの言葉に我が意を得たりとばかりに爽やか系の笑顔を浮かべる。
 なんだ意外と好青年っぽいな。
 普段はたんに顰めっ面してるだけか。勿体ない。

 「…………はぁ。 一番問題を起こさないと思っておったお主が一番のトラブルを呼ぶとは……。 いやまぁよい。 折角だ、英雄殿の力を間近で拝見出来るよい機会だ。 兵士……いや、戦いに関わる者達は達人同士の戦いだ。 見ていて決して損はない。 時間の空いているものは見学させてもらうといい」

 こうしてイグニスの提案におれたサブノックによって兵士達が訓練所へ大移動を始める。
 さてさて……とはいえサムライや符術士として戦いをおしえるのもなぁ。
 たまには違うクラスで戦ってみるか。
 一応ゼットさんだしな。
 全く一緒だと変だしな。

 ぬっふふふふふふふふ。

 久しぶりの別クラスだ。
 折角だし堪能させてもらおう。


 「ゼットさん! 良いんですかあんなの?」

 「いやいや。 殺伐とした雰囲気よりは良いじゃないですか。 こういう場所を作る事でメイドさん達の時間の猶予が出来てあとのスケジュールが楽になる事もありますよ
。 なにせ我々は突然来ちゃったんですから準備も必要でしょう。 ……それに個人的に強くなるために、強者と戦いたいという彼の姿勢は嫌いではありませんから」

 「ふぇぇぇ……やっぱりゼッ……クトさんは色々考えているんですね」

 「私はイグニス殿の話は分かるな。 流石にゼット殿に本気で手合わせは勘弁してほしいが、強い相手となら戦ってみたいという気持ちはある」

 「あら、皆さん野蛮ねぇ。 私は眺めるだけなら好きですけど」

 三者三様反応もそれぞれである。
 どうでもいいけどリリネアさんにはそろそろ覚えて欲しいものですな。
 
 そんな事を考えつつ案内にしたがい、目的の場所へ移動を始めるのだった。 
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