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閑話 とある日のリリアさん
しおりを挟むその事件はとある日。
なんの変哲もない昼下がりに起きた。
「ご主人様、またマッサージをしていただけませんか? 最近肩の凝りが酷くて」
「別にいいけど、何をそんなに肩が凝る程にやってるんだ?」
「秘密ですわ」
ゼクトの問いにちょっと楽しそうに答えるアカネ。
それを見たリリアは少し不思議に思い尋ねた。
「アカネさんがゼクトさんにそういうの頼むってちょっと意外ですね。 ゼクトさんの手を煩わせたくないとか言うかと思ってましたけど」
「うふふふふふ。 リリア様はご存じないの? ご主人様のマッサージは最高ですわよ?」
「え!? そうなんですか!?」
「ええ。 ご主人様が本気を出せばもう妾やミソラなんて一瞬でメロメロですわね」
「マッサージの感想でメロメロってなんだよ。 いやまぁいいけど。 じゃあ夜にな」
「うふふふ。 楽しみにお待ちしていますわ」
そう言ってホームに戻るアカネ。
そんなアカネを見ながらリリアは考える。
(……ホームで普段何をしているのか知らないけど……これは不公平じゃないですかね?)
主である自分を差し置いてアカネやミソラと楽しんでいるのは不公平だと感じたリリア。
はっきり言えばただの嫉妬である。
「ゼクトさん!」
「おぉう。 どうした?」
「私にもそのメロメロマッサージをお願いします! すぐに!」
「メロメロはいらんが……いやまぁいいけど。 じゃあ部屋に行こうか」
謎のリリアの意気込みに押され、寮の自室へと向かうゼクトとリリア。
ゼクトからすればただのマッサージなので別に気負うことは何もない。
「じゃあリリア。 上の服を脱いでベッドにうつ伏せになって」
「ぬ、脱ぐんですか!? え、いや、その別にいいんですけど……」
顔を真っ赤にしながらも隠れるようにしながら上着を抜いてキャミソール姿になるリリア。
そのままうつ伏せになる。
羞恥心のためか背中も薄っすらと赤くなっている。
「じゃあ腕、肩、背中の順でやっていくから」
「は、はい!」
ゼクトの指が右の掌から前腕、上腕、肩とゆっくりと優しくマッサージを始める。
最初は少し痛みを感じる程度の刺激だったが、前腕から上腕に移動するにつれだんだんと体が火照りはじめ、刺激が痛みから快感へと変わり始めていた。
「んっ……あっ……! ぜ、ゼクトさん……き、きもちぃいですぅ……んあっ!」
「そうか。 一応リンパの流れに沿ってやってるからな。 循環がよくなってくると熱くなってくるらしいな」
「は……はい……すごく熱いですぅ……あん」
「……その声はどうにかならないか?」
「ンッ……こえ、ですか? はう!」
少し汗ばんでいる背中と色気のある声のせいで中々に扇情的な姿になっているリリア。
本人としてはゼクトの指がもたらす快感に酔いしれているだけなのだが、ゼクトからすれば完全に誘っているように感じてしまっていた。
「いやまぁ……まぁいいや」
アカネやミソラはそういった反応はないので、気にもしていなかったゼクト。
そのためリリアの反応に少し戸惑っていた。
両側の腕が終わり今度は背中に移動する。
特製のローションを背中に塗布し、ゆっくりと肩甲骨付近から広背筋に沿って指圧していく。
「あふぅ……こ、これは……んぅ……や、やばいですねぇ……あっ……気持ちよすぎですぅ」
「俺も理性が崩壊しそうでやばいな」
平常心を保ちながらゆっくりとその滑らかで美しい白い肌に指を這わせていき、筋肉をほぐしていく。
その柔らかな感触を楽しみながらもしっかりとマッサージを頑張るゼクト。
更に腰に到達し、なるべく優しくマッサージを施す。
しっかりと解して、次に両足に移る。
女性らしい足つきだが、少し筋肉質なその足を足背から下腿、大腿と念入りに硬くなっている部分を解きほぐしていく。
「ンアッ! ちょ、ちょっと痛いですけど、何ていうか痛気持ちぃですね……っ!」
「はっはっはっは。 リリアはMなのかな?」
「えむってなんで、すか?」
「気にしなくていいよ」
鋼の自制心を総動員させなんとか最後までやり遂げたゼクト。
ベッドの上で息も荒く倒れこんでいるリリアの姿は最初よりも更に扇情的で妖しい色気すら感じる様子だ。
「はぁ……はぁ……スゴク良かったです……」
「俺はいろんな意味で大変だったな」
「……ゼクトさん……」
「ん?」
「……今度は二人で気持ちよくなりませんか?」
うるんだ瞳で両手をゼクトに突き出すリリア。
そんなリリアの様子を見て、我慢していたゼクトの理性が崩壊してしまうのは仕方の無い事でもあった。
「なんていう夢を見たんですよねー。 というわけでゼクトさん、ちょっと私にマッサージしてみませんか?」
「ふむ。 その夢だとリリア様は結構なMのようですし、気合いれてやってみましょうかね」
「あ、ちょっと待ってくださいゼクトさん……ちょ、待っ、痛っ……!」
その日、学園の寮内にしばらくリリアの絶叫が響き渡ったという。
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