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十話

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※予約時間をミスってた(*´∀`*)!


「わー! 凄いですねゾア様! お店がいっぱいです!」

「ああ、確かに凄いな。 統一感が無いがそれがなんというか見ていて面白い」

「見たこと無いものがいっぱいです! あ、あれとか何ですかね? 変な角みたいですけど」

 組合から離れて露店が並ぶ通りに出たが、多数の立ち並ぶ店には圧巻の一言だ。
 売られているものも様々で食品を売る店の隣に武器を並べていたりアクセサリーを並べていたり。
 妙な民族衣装のようなものや日用雑貨と規則性もなく混沌としている。
 目当ての物を買いにいくというより、立ち寄った店で気になるものを買うという流れなのだろうか?
 目を輝かせて色々なものを物色しているレーティアが角笛のような形をしたものを手に取っていた。
 あれはヨシュアの記憶にあったな。

「それはあれだな。 男性の股間にあてるアクセサリーだな。 雄々しさをアピールするものだ」

「だ、んせいの……股間?」

 確かに一際目につくデザインではあるな。
 股間が大きい事が雄々しさに繋がる理由はよく分からんが、立派だ。
 周囲からにやにやとした視線を浴びせられ、レーティアは商品をそっと戻して背後にやってきた。
 耳まで真っ赤にしているが恥ずかしかったのだろうか。
 別にただの商品なのだし気にするほどのものでも無いと思うが。

「おう兄ちゃん! 彼女さん欲しがってるみたいだし買っていくかい?」

「ちょっ! 違いますゾア様! し、知らなかったんです! あんなの欲しくありませんから!」

「お、嬢ちゃんはこっちより兄ちゃんのもののほうが欲しいのかな? あっはっはっは!」

「う、うぅぅぅぅ!」

 ……言いたいことはなんとなく分かるが随分とまあ下品な店主だな。
 周りの連中もそれに乗っかって笑っているし、うちのレーティアは恥ずかしさで涙目じゃないか。
 こういう手合いを黙らせるのは簡単だが、それは物理的になんだよな。
 やってもいいが折角来た町で早速流血沙汰を起こすのも問題だからな。
 今は穏便にいこう。今は。
 
「それ以上は勘弁してやってくれるか? うちのお嬢様は初心なんだ」

「はっはっはっは! そいつぁすまねぇな!」

「行こうかレーティア。 知らなかったんだからそういうこともある」

「うぅぅぅぅ……すいません」

「私は気にしていない。 安心しろ」

「はい……」

 しかし……人間にとって性に関わるものとは恥ずかしいものなのか、面白いものなのかよく分からんな。
 私の人間体の裸を見て顔を赤くしたり、あんな角笛のようなものを売り物にしたりそれを持って恥ずかしがったり。
 まだまだ人間の事は不可解なものばかりだ。

 意気消沈してしまったレーティアを連れて更に進むと、町の中央部に出てきた。
 この辺りは店が減り、独創的な建物が多く見受けられる。
 ……三角形の家や明らかに斜めになっていたりするが機能的に大丈夫なのだろうか?
  
「あ、あの私なんかのせいでゾア様に嫌な思いをさせてしまって……申し訳ありません」

「ん? さっきの事か? 全く気にしていないから問題ない。 というより……私には彼等が何を面白がっていて、君が何を恥ずかしがっているのかがそもそも理解出来ていないからな」

「え!? 何をってその……えっと」

 また顔を赤くしてゴニョゴニョと言い淀むレーティア。
 これを理解するにはこの手に強い人間を喰らってみないと永遠に理解出来ない気がしてきたな。
 別に理解したいとは思っていないけど、ちょっとだけ気にはなる。

「あ、そ、そう言えばゾア様にはやりたいことはないんですか!? わ、私も参考にしたいなぁなんて!」

 あからさまに話題そらしてきたな。
 しかし私のやりたいことか。
 確かにレーティアには尋ねていたが、自分でやりたいことなんて考えていなかったな。
 やりたいこと、か。

「言われてみるとたしかに私にもやりたいことは無いな」

「そうなんですか? 魔物も簡単に倒してきますしお強いから、そっち関連で何かやりたいことがあるのかと思ってました」

「強さはやりたい事というよりやらなければならないことだから少し主旨からズレるな。 ああ、だが最近は人間そのものに興味があるな」

「人間にですか?」

「ああ。 色々あって人間二人の記憶を覗くことがあってな。 森で生きているだけでは知れない事がたくさんあった。 前は森で生きているだけでもなんの不満も無かったが、色々と知ってしまってはそれだけで満足出来なくなってしまったのは確かだ」

「色々と考えててやっぱりゾア様は凄いですね。 私はまだ何にも思いつかなくて……私は本当にゾア様に捧げられて死ぬ運命だと思ってましたから。 まさかこんな風に町に来てしたいことをしていいなんて言われるなんて考えもしてませんでした」

 まあ虐められていたのだしな。
 他の、新しい知見を得てやりたいことを見つける心の余裕なんて無かったのだろう。
 突然目の前に多くの選択肢を突きつけられても戸惑うのは当然なのかもしれない。

「そう急ぐ必要もない。 人生というものは案外長いものだ。 やりたいことを見つけるまでのんびりするといい。 それに私は君を縛りつけるつもりもない。 今はまだアイレノールの民を襲った者達の件もあるから推奨はしないが、先々は君が離れる事だって構わないと思っている」

「そ、それは私がいらないという事ですか!?」

「いてもいなくてもまあ大して変わらん。 が、いてくれると面白いという感情はあるかもしれないな」

「……そう、ですか」

 うん?なぜそんなに落ち込むのだ?
 レーティアとしても私のような化物と離れられれば解放されて気も楽になると思うのだが。
 ああ、金銭面かな?
 それならきちんと一人でも大丈夫な額を稼ぐつもりだから安心していいのだが。

「なにか不安なことでもあるのか?」

「え? い、いいえ! すいません! 大丈夫です!」

 なんだ大丈夫なのか。
 人間というのは難しいものだな。
 だが最近はそれを見るのも少し楽しいと感じている自分がいる。
 二人もの人間を取り込んだからか人の表情や気持ちの変化というものを少しだけ知り、それを見るのがなかなか楽しい。

「さて、そろそろ組合のほうへ戻るか。 君はお腹は空いていないか?」

「だ、だいじょう……ぶじゃないです」

 レーティアが大丈夫と答えようとしたタイミングで丁度よくお腹が鳴り赤面しながら否定した。
 実に可愛らしいものだ。

「じゃあ戻りついでにどこかで軽食でも買っていくか」

「あっ……は、はい」

 レーティアの手を取り、今度は別の道を通って食べ物の露店を探しながら歩き始める。
 性的なものは何もないのにまた少し恥ずかしそうにしているレーティア。
 彼女は今度は何を恥ずかしがっているのか。それを考えてみるのも面白いかもしれないな。




※小話。

レ「おふろ……ってなんですか?」
ゾ「む? 人は毎日お湯で身体を洗い、つかるのではないのか?」
レ「聞いたこと無いですねー」
ゾ「海水浴というのは? 海で下着のような姿で遊ぶのでは?」
レ「そんなことしてたら海の魔物に食べられちゃいます」
ゾ「そうなのか……書物の知識というものもあてにならんな」
レ「不思議な本ですね。 他にどんなのがあったんですか?」
ゾ「あとはそうだな……男同士で性行をしているものとかだな。 あれも嘘なのか?」
レ「え!? そ、それは分かりません!」
ゾ「そうか……嘘しかないなら棄てるか」
レ「ま、待ってもらっていいですか! そ、その本当に嘘なのか気になるので! そう、確認の為に! 嘘かどうか確認しますので!」
ゾ「……? そこまで言うなら」
レ「ふぅ……危なかった」
ゾ「なぜあそこまで必死に……今度聞いてみるか」


※見た後の感想を求められた時のレーティアの反応が気になるよね(*゚∀゚)!
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