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第138話 黄金の小麦畑

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―――コンコン…

出発してからだいぶ時間が経ち
心地よい揺れにウトウトし始めていたとき…
馬に乗り馬車の護衛についてくれていたロンが小窓を軽く叩いてこう言った。

「ニコル様、見てください。
ニコル様が憧れていると仰っていた田舎町の風景ですよ!」

ロンに言われるがまま小窓を覗き込むと…
そこには夕焼けに照らされた小麦畑が一面に広がっていた!

「わぁぁ…!すごいわ!オレンジ色の夕日に照らされて、黄金の絨毯みたい……」

小麦畑はキランキランと輝いていて
風に揺られてサワサワとやわらかく波打っていた。

わたしがあまりに感動し夢中になって景色を見ていることに満足したのか、
ロンがクスクス笑いながらこの村についていろいろ話してくれた。

ここはグリタ島までの中間地点あたり。
小麦の出荷量が王国イチなんだそう。

住民は代々、小麦や野菜作りを中心とした畑仕事をしながら暮らしてして
細々とはいえど生活には困っておらず平和そのものなんだそうだ。
それもあって、みんなゆったりと穏やかな人が多いんだとか。

『それこそまさにスローライフ!』

「ほぉぉぉ…!」と思わず声が出てしまったが、続いての情報にびっくり仰天!

なんとこの村……
庭師のおじいさんの出身地なんだそうだ。

以前、畑仕事の最中に
庭師さんは田舎の小さな男爵家出身だと言っていたけど。
まさかここがそうだったとはね!

『どおりでマイナスイオンたっぷりなはずだよ…野菜作りにも色々詳しいわけだ。』

このあたたかく照らされた小麦畑の上に、
庭師さんの恵比寿顔がほわっと浮かんだ。


―――そういえば、
この村を抜けて街に出たら今日の宿があるらしい。

街とはいっても王都の街とは違って
だいぶ庶民的で人は少ないようだけど、
わたしは下町っぽいそういう雰囲気も好きだから楽しみだ。

街まではあと1時間くらいとの事で内心助かった。
揺れは心地いいけど腰がそろそろ限界……
乗ってるだけだけど、楽な姿勢をとれないから体がカチコチで!


そうしてしばらく…
このままのんびりとした平和な風景を見ていると、畑仕事を終えて帰り支度をしているひとたちを見かけた。

『おうちに帰ったら、家族と一緒にごはんをたべるのかな?ふふっ。今日も一日ご苦労様でした…』

そんなことを思っていたら、
まぁるく優しい気持ちになって、
またウトウトしてきてしまった。

この睡魔に乗っかって、宿に着くまで少しだけ目を瞑ってみようかと思ったけれど、
美しい景色と夕日に照らされるみんなの姿を目に焼き付けたくて我慢することにした。

……どうやら今日の夜は、早いうちにぐっすり眠ることになりそうだ。
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