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第4章 モブなので、婚約破棄された悪役令嬢をドラゴン調教師にします。……え、どういうこと?
第72話 ユー・キャン・フライ☆
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――『オレンジ・ロック・キャニオン』。
広大な荒野と隆起した橙色の大岩。
それがどこまでも続く、殺風景ながらも美しい初級ダンジョン。
ちなみにここは初級ダンジョンとは言いつつ、東方から届く荷物が通る輸送経路でもある。
故に人の手によって街道が作られ、付近には街もあるほど。
『フォルシティ魔導学園』からは離れた場所にあるため行き来するだけでも一苦労ではあるが、それでもあえてここを選んだ。
フレンのトレーニングにはピッタリだと思ったからな。
「……なんだかまた随分遠くまで来てしまいましたわね」
「きゅわわっ♪」
既に疲れた表情をしているクローディアと、対照的にとても楽しそうにはしゃぐフレン。
相変わらず子供連れの母親みたいだなぁ。
ちなみに、フレンは今日もクローディアの頭に乗っている。
「だけど綺麗な場所だろ?」
「それは、まあ……」
「息抜きがてらの旅行にも丁度いいと思ってね。なあスピカ~」
「きゅーん♪」
旅行するの楽し~♪
と彼女はルンルン気分で俺の肩に乗る。
この景観を気に入ってもらえたようでなによりだ。
「けれど、”ダンジョンデビュー”と仰られたからにはモンスターと戦うのでしょう?」
「勿論。基本的にはこの辺りでエンカウントするジャッカロープを倒してもらう。レベル的にも丁度いい相手だ」
ジャッカロープは荒野や高原などに生息する小型の角ウサギ。
雑魚モンスターの中でも脅威度は低く、フレンでも十分倒せるはず。
それと――
「それと、もう一つ目標がある」
「目標、ですの?」
「”飛ぶ”ことだ。この『オレンジ・ロック・キャニオン』には数日滞在するつもりだけど、その間にフレンには飛べるようになってほしい」
そう言って、俺は付近にあった巨大な岩を指差す。
岩――というより大地からせり上がった土の塊のようなそれは高さ二メートル以上もあり、俺の背丈よりずっと大きい。
もっとも、それでも周辺の岩よりは小型な方だけど。
「これくらいの岩から飛び降りて、羽ばたくトレーニングをするんだ。最初は滑空からだけどね」
「きゅわっ!?」
「フ、フレンを岩から突き落とすですって!? い、嫌です、嫌ですわ! そんなの許さなくってよ!」
フレンを抱えてブンブンと首を左右に振るクローディア。
うむ、うむうむ。
彼女もすっかり親バカだな。
そうなってくれて、俺はとっても嬉しいよ……!
これでキミもすっかり”こちら側”の仲間入りだな……!
――でもトレーニングはトレーニング、
「大丈夫だよ。練習時はスピカに抱えてもらうし、着地時のクッションもしっかり用意してある」
「じゅ、準備がよろしいのね……」
「これでも師匠ですから」
そう返すと、彼女は少しムッとする。
まったくかわいい弟子だ。
「それじゃ案ずるよりもなんとやら、さっそく――ダイブしてみよっか☆」
広大な荒野と隆起した橙色の大岩。
それがどこまでも続く、殺風景ながらも美しい初級ダンジョン。
ちなみにここは初級ダンジョンとは言いつつ、東方から届く荷物が通る輸送経路でもある。
故に人の手によって街道が作られ、付近には街もあるほど。
『フォルシティ魔導学園』からは離れた場所にあるため行き来するだけでも一苦労ではあるが、それでもあえてここを選んだ。
フレンのトレーニングにはピッタリだと思ったからな。
「……なんだかまた随分遠くまで来てしまいましたわね」
「きゅわわっ♪」
既に疲れた表情をしているクローディアと、対照的にとても楽しそうにはしゃぐフレン。
相変わらず子供連れの母親みたいだなぁ。
ちなみに、フレンは今日もクローディアの頭に乗っている。
「だけど綺麗な場所だろ?」
「それは、まあ……」
「息抜きがてらの旅行にも丁度いいと思ってね。なあスピカ~」
「きゅーん♪」
旅行するの楽し~♪
と彼女はルンルン気分で俺の肩に乗る。
この景観を気に入ってもらえたようでなによりだ。
「けれど、”ダンジョンデビュー”と仰られたからにはモンスターと戦うのでしょう?」
「勿論。基本的にはこの辺りでエンカウントするジャッカロープを倒してもらう。レベル的にも丁度いい相手だ」
ジャッカロープは荒野や高原などに生息する小型の角ウサギ。
雑魚モンスターの中でも脅威度は低く、フレンでも十分倒せるはず。
それと――
「それと、もう一つ目標がある」
「目標、ですの?」
「”飛ぶ”ことだ。この『オレンジ・ロック・キャニオン』には数日滞在するつもりだけど、その間にフレンには飛べるようになってほしい」
そう言って、俺は付近にあった巨大な岩を指差す。
岩――というより大地からせり上がった土の塊のようなそれは高さ二メートル以上もあり、俺の背丈よりずっと大きい。
もっとも、それでも周辺の岩よりは小型な方だけど。
「これくらいの岩から飛び降りて、羽ばたくトレーニングをするんだ。最初は滑空からだけどね」
「きゅわっ!?」
「フ、フレンを岩から突き落とすですって!? い、嫌です、嫌ですわ! そんなの許さなくってよ!」
フレンを抱えてブンブンと首を左右に振るクローディア。
うむ、うむうむ。
彼女もすっかり親バカだな。
そうなってくれて、俺はとっても嬉しいよ……!
これでキミもすっかり”こちら側”の仲間入りだな……!
――でもトレーニングはトレーニング、
「大丈夫だよ。練習時はスピカに抱えてもらうし、着地時のクッションもしっかり用意してある」
「じゅ、準備がよろしいのね……」
「これでも師匠ですから」
そう返すと、彼女は少しムッとする。
まったくかわいい弟子だ。
「それじゃ案ずるよりもなんとやら、さっそく――ダイブしてみよっか☆」
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✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
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