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第3章 モブだけど、ヒロインを救ってもいいよね?

第41話 強化週間・三日目②

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「ん、バッチリ。それじゃ二人共、ちょっと休憩しよう」

「休憩……ってなによ、料理でも始めるつもり?」

「きゅーん?」

「フッフッフ……まあ見てなって」

 ソリンに持ってきてもらった道具を整理し、俺はさっそく調理を始める。

 まず小麦粉、砂糖、ベーキングパウダー、バジリスクの卵、カウカウミルクを混ぜ合わせ生地を準備。

 さらに”バクダンザクロ”を一口サイズに切り分けておく。

 フライパンにカウカウバターを入れたら、その辺に流れてる溶岩の熱でしっかり溶かしてあげる。

 火の元がいらないダンジョンなのは楽で助かるなぁ。

 フライパンがしっかり温まったら生地を入れ、固まらない内に切り分けた”バクダンザクロ”もパラパラと投入。

 片面がしっかり焼けたのを確認したら、生地を裏返してしばらく加熱。

 ふっくらと焼き上がったら四等分に切り分け、一口サイズの”バクダンザクロ”を乗せてメープルシロップをかけてあげれば――。

「はい完成! ”バクダンザクロとシロップのホットケーキ”だよ!」

「「わあぁっ!」」

「きゅーん♪」

 出来上がったスイーツを見て目を輝かせる女性陣。

 よしよし、反応は上々だな。

「もう”バクダンザクロ”をそのまま食べるのはつらいかもだけど、こうして調理してあげればぐっと食べやすくなると思う。それじゃ召し上がれ」

「きゅん! きゅーん!」

 ハグハグ、とホットケーキを食べるスピカ。
 すると、

「きゅう~ん♡」

 とっても甘くて美味しい~♡
 とうっとり顔で堪能してくれる。

ピコン!


〔〔炎属性の経験値を取得〕〕

〔〔炎属性がレベルUP!〕〕


 それに合わせて彼女の〔炎〕属性レベルも上昇。

 よかった、これなら楽しんで”バクダンザクロ”を摂取してもらえるな。

「二人もどうぞ。冷めない内にね」

「それじゃ……ん~、口の中でとろける~♪」

「シロップの甘さと”バクダンザクロ”の酸味が合わさって、最高ですねぇ~♡」

「じゃ俺も……うん、ダンジョンで食べるスイーツとしちゃ上出来だな」

 甘くて美味い。
 ”バクダンザクロ”特有の食感もそれほど気にならないし、これはいい気分転換なるな。

「そういえばノエル、前から思ってたんだけどさ」

「ん? なんだ?」

「ノエルってどうしてこんなに料理上手なの? 辺境とはいえ貴族の息子なら、自分で料理なんてする必要ないわよね」

「え? ああ……それは――」

 何故かと聞かれれば、俺は転生前に一人暮らしだったから。

 基本自炊生活だったし料理配信者の動画見るのとか好きだったから、アレコレ真似して作ってたんだよな。

 ……ええ、そうです。

 オシャンティーなお店に一緒に行くお相手がいなかったからとか、そういう理由ではないです。

 はい、決して。

 ぼっちだったからダンプリやり込んでたとか、そういうワケでもないです。

 詮索ダメ、絶対。

「――趣味なんだよ。料理作るのって面白いじゃん?」

「はぁ……。まあ、あなたを見てると楽しそうだとは思うけど」

「いいから静かに食べよう……誰だって触れてほしくない過去はあるんだよ……」

「……?」

 涙を堪えながらホットケーキを食べ進める俺氏。

 よし……この調子で調理に気を配れば、あと数日を乗り切れるか――
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