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第3章 モブだけど、ヒロインを救ってもいいよね?
第29話 学園長デイヴィス・バルバロート
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――俺はこの人物を知っている。
いや、『フォルシティ魔導学園』に通う生徒なら誰でも知っているだろう。
何故なら――彼はこの学園の偉大なる学園長デイヴィス・バルバロート。
あらゆる学問とあらゆる武芸を修めたとされる大賢人であり、齢5000年を生きるエルフでもある。
……ぶっちゃけると「ダンプリ世界で最強の人誰?」と聞かれれば必ず候補に入ってくるお方。
そのくらい強くて凄い人なのだ。
っていうかヤバい人なのだ。
ゲームの中でも、最後の最後に大暴れしてたしな。
アレは名シーンの一つだよ。
それにしても、
「俺のことをご存知なんですか?」
「勿論じゃとも。”ホワイト・ドラゴンの赤子を連れ回す新入生”は、今学園中で噂になっておるからの」
え、そうなの?
全然知らんかった。
確かに俺は周囲の視線とかに興味はないけどさ……。
まさかそんな目立ってたとは……。
「しかし驚きじゃ。それだけの若さでドラゴンを懐かせる者を見たのは、もう何千年ぶりとなるか……」
「そ、そんなに……?」
「うむ。大抵の場合、見栄や権威を振りかざそうとした貴族の子供が無理に飼って、食い殺されかけておるからな。ホッホッホ」
「……」
いや、それは笑って言っていいことなのか?
あんた一応教育者だよね?
そりゃまあ、中途半端な覚悟でドラゴンを育てようとする貴族のバカ息子ならさもありなんだけど……。
「よほどの知識と愛情がなければ不可能じゃ。どこでドラゴンの育て方を身につけた?」
「……辺境の領地にいる間に、色々本を読みました」
「嘘じゃな」
「――!」
「いくら本を読み漁ったとて、経験がなければ務まらぬ。お主からはさぞ長い間ドラゴンと関わった自信――いや余裕が垣間見えるの」
……この爺さん、食えないな。
そんな簡単に見透かしてくるかよ。
いや、それもそうか。
このデイヴィス学園長は大昔に、盟友と呼び慕ったドラゴンと共に数多の戦に参加。
多大な勝利や名誉と引き換えに、その盟友を戦地で失ったんだとか……。
ダンプリ内の人物設定にそんなことが書かれてあったはず。
きっとドラゴンに対する想いもひとしおなのだろう。
だからこそ見抜ける、か……。
「学園長、あなた……」
「ま、話したくなければ別に話さんでもいいけど。別にめっちゃ興味あるとか、そういうワケじゃないからの~」
――おいコラ、ならなんで聞いたねん。
気持ちを汲み取ろうとした俺の純粋な想いを返せ。
しかもちょっとお茶目な感じ出すな。
余計にイラっとするやんけ。
「じゃが、これは聞いておきたい。お主は何故ドラゴンを育てる?」
「え?」
「大変な苦労があるじゃろう。育成以外のことなど、なにもできないほどに」
「それは、そうですけど……」
「きゅーん?」
スピカが俺を見上げる。
――何故育てるかって?
そんなの、最初から決まってる。
「何故と聞かれたら、好きだからです。ドラゴンが――この子のことが」
「……それだけか?」
「それ以外に理由がいります?」
「――ホッホッホ! それもそうじゃな、確かにその通りじゃ!」
デイヴィス学園長は愉快そうに笑うと、俺の頭を撫でてくれる。
「お主はよい子じゃな。誇り高き命を私利私欲のために悪用しようとしない。立派な心掛けじゃ」
「そ、それはどうも……」
「じゃが一つだけ忠告しておくぞ? もし今の言葉を違えてその子を無碍に扱うようであれば、お主を退学とする。よいな」
「は……えぇ!?」
「ではさらばじゃ若人よ、話せてよかったぞ。――ああ、最後に一つだけ」
「――?」
「お主、アリッサム家の令嬢と仲良しのようじゃのう。どうか……最後まで、彼女の味方をしてやっておくれ」
いや、『フォルシティ魔導学園』に通う生徒なら誰でも知っているだろう。
何故なら――彼はこの学園の偉大なる学園長デイヴィス・バルバロート。
あらゆる学問とあらゆる武芸を修めたとされる大賢人であり、齢5000年を生きるエルフでもある。
……ぶっちゃけると「ダンプリ世界で最強の人誰?」と聞かれれば必ず候補に入ってくるお方。
そのくらい強くて凄い人なのだ。
っていうかヤバい人なのだ。
ゲームの中でも、最後の最後に大暴れしてたしな。
アレは名シーンの一つだよ。
それにしても、
「俺のことをご存知なんですか?」
「勿論じゃとも。”ホワイト・ドラゴンの赤子を連れ回す新入生”は、今学園中で噂になっておるからの」
え、そうなの?
全然知らんかった。
確かに俺は周囲の視線とかに興味はないけどさ……。
まさかそんな目立ってたとは……。
「しかし驚きじゃ。それだけの若さでドラゴンを懐かせる者を見たのは、もう何千年ぶりとなるか……」
「そ、そんなに……?」
「うむ。大抵の場合、見栄や権威を振りかざそうとした貴族の子供が無理に飼って、食い殺されかけておるからな。ホッホッホ」
「……」
いや、それは笑って言っていいことなのか?
あんた一応教育者だよね?
そりゃまあ、中途半端な覚悟でドラゴンを育てようとする貴族のバカ息子ならさもありなんだけど……。
「よほどの知識と愛情がなければ不可能じゃ。どこでドラゴンの育て方を身につけた?」
「……辺境の領地にいる間に、色々本を読みました」
「嘘じゃな」
「――!」
「いくら本を読み漁ったとて、経験がなければ務まらぬ。お主からはさぞ長い間ドラゴンと関わった自信――いや余裕が垣間見えるの」
……この爺さん、食えないな。
そんな簡単に見透かしてくるかよ。
いや、それもそうか。
このデイヴィス学園長は大昔に、盟友と呼び慕ったドラゴンと共に数多の戦に参加。
多大な勝利や名誉と引き換えに、その盟友を戦地で失ったんだとか……。
ダンプリ内の人物設定にそんなことが書かれてあったはず。
きっとドラゴンに対する想いもひとしおなのだろう。
だからこそ見抜ける、か……。
「学園長、あなた……」
「ま、話したくなければ別に話さんでもいいけど。別にめっちゃ興味あるとか、そういうワケじゃないからの~」
――おいコラ、ならなんで聞いたねん。
気持ちを汲み取ろうとした俺の純粋な想いを返せ。
しかもちょっとお茶目な感じ出すな。
余計にイラっとするやんけ。
「じゃが、これは聞いておきたい。お主は何故ドラゴンを育てる?」
「え?」
「大変な苦労があるじゃろう。育成以外のことなど、なにもできないほどに」
「それは、そうですけど……」
「きゅーん?」
スピカが俺を見上げる。
――何故育てるかって?
そんなの、最初から決まってる。
「何故と聞かれたら、好きだからです。ドラゴンが――この子のことが」
「……それだけか?」
「それ以外に理由がいります?」
「――ホッホッホ! それもそうじゃな、確かにその通りじゃ!」
デイヴィス学園長は愉快そうに笑うと、俺の頭を撫でてくれる。
「お主はよい子じゃな。誇り高き命を私利私欲のために悪用しようとしない。立派な心掛けじゃ」
「そ、それはどうも……」
「じゃが一つだけ忠告しておくぞ? もし今の言葉を違えてその子を無碍に扱うようであれば、お主を退学とする。よいな」
「は……えぇ!?」
「ではさらばじゃ若人よ、話せてよかったぞ。――ああ、最後に一つだけ」
「――?」
「お主、アリッサム家の令嬢と仲良しのようじゃのう。どうか……最後まで、彼女の味方をしてやっておくれ」
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