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第1章 目隠し皇女
第10話 目隠し皇女①
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儀礼としての謁見を終えた俺は、グレイとエステルに案内されて王宮の廊下を進む。
「さっきはごめんね。まさかダルトン大臣があそこまで言うとは思ってなくて……」
「い、いやぁ平気だよ。エステルも気にするな」
「でも……」
「いいやクーロ、気にするべきだ」
グレイがピシャリと言う。
彼は不機嫌そうにしながら、
「キミは僕と並ぶ大英雄であり、希少な【全属性使い】なんだ。それに娘を預ける身なんだぞ? もっと気高くいてもらわないと困る」
「ハ、ハハ……努力するよ」
そう言われちゃ返す言葉もない。
でも気高くとか誇り高く振舞うのって苦手なんだよなぁ。
謙虚に目立たず生きてた方が気が楽だし。
もっとも、これからは立場的にそんなことも言ってられんかもしれんが。
「さて――着いたぞ」
グレイとエステルが、とあるドアの前で立ち止まる。
ドアは小さく、ここが皇女殿下の部屋というワケではないだろう。
恐らく中はこじんまりとした応接室になってるのだと思う。
「よし、それじゃようやく娘さんに――」
「クーロ」
グレイがこちらに背を向けたまま、俺の名を呼ぶ。
「……今からなにを見ても、決して口外しないと約束してほしい。それと……どうか驚かないでくれ」
「? なんだよ今更。事情が事情なんだし、わかってるさ」
皇女殿下はスパイに狙われる身。
俺が口を滑らせれば、どんな危険が及ぶかわからない。
それくらいは理解してこの場にいるつもりだ。
「……ありがとう。では――」
グレイはコンコンとドアをノックし、
「シャノア、いるかい?」
『――はい、お父様。どうぞ入っていらして』
若い女性の声が室内から返ってくる。
少し聞いただけでもわかる、透き通った美しい声色。
それに、口調は異なるがどことなくエステルとも似ている。
「失礼するよ」
グレイはドアを開け、中へと入っていく。
それにエステルも続き、最後に俺。
「どうも、失礼し――――!」
部屋の中へと入った俺は、気軽に挨拶しようとした。
だが思わず、言葉を詰まらせてしまう。
「まあ、貴方がクーロ・カラム様ですのね! お待ち申しておりました!」
部屋の中央に向かい合うように置かれたソファ。
その片方に、少女は腰掛けていた。
――似ている。
そっくりだ。
エステルの若い頃に。
顔立ちはエステルに瓜二つ。
体格も細身でエステルに似ており、彼女の双子の妹と言われても信じてしまえるかもしれない。
ただ明確に違うのは、長く伸ばした髪の色だけグレイ譲りの金色であること。
それによってグレイの面影も感じられ、皇家らしい麗しさが備わっているように思える。
一目見れば、誰でも彼女がグレイとエステルの実子であると見抜くことができるだろう。
だけど――俺が驚いてしまったのは、そこではない。
彼女がエステルに似ているから驚いたんじゃないんだ。
それくらいは予想できていた。
なによりも俺を驚かせ、視線を奪ったのは――彼女の顔に巻かれた”目隠し”。
サテン生地に装飾が施された独特の目隠しで、両目を完全に覆い隠しているのである。
「さっきはごめんね。まさかダルトン大臣があそこまで言うとは思ってなくて……」
「い、いやぁ平気だよ。エステルも気にするな」
「でも……」
「いいやクーロ、気にするべきだ」
グレイがピシャリと言う。
彼は不機嫌そうにしながら、
「キミは僕と並ぶ大英雄であり、希少な【全属性使い】なんだ。それに娘を預ける身なんだぞ? もっと気高くいてもらわないと困る」
「ハ、ハハ……努力するよ」
そう言われちゃ返す言葉もない。
でも気高くとか誇り高く振舞うのって苦手なんだよなぁ。
謙虚に目立たず生きてた方が気が楽だし。
もっとも、これからは立場的にそんなことも言ってられんかもしれんが。
「さて――着いたぞ」
グレイとエステルが、とあるドアの前で立ち止まる。
ドアは小さく、ここが皇女殿下の部屋というワケではないだろう。
恐らく中はこじんまりとした応接室になってるのだと思う。
「よし、それじゃようやく娘さんに――」
「クーロ」
グレイがこちらに背を向けたまま、俺の名を呼ぶ。
「……今からなにを見ても、決して口外しないと約束してほしい。それと……どうか驚かないでくれ」
「? なんだよ今更。事情が事情なんだし、わかってるさ」
皇女殿下はスパイに狙われる身。
俺が口を滑らせれば、どんな危険が及ぶかわからない。
それくらいは理解してこの場にいるつもりだ。
「……ありがとう。では――」
グレイはコンコンとドアをノックし、
「シャノア、いるかい?」
『――はい、お父様。どうぞ入っていらして』
若い女性の声が室内から返ってくる。
少し聞いただけでもわかる、透き通った美しい声色。
それに、口調は異なるがどことなくエステルとも似ている。
「失礼するよ」
グレイはドアを開け、中へと入っていく。
それにエステルも続き、最後に俺。
「どうも、失礼し――――!」
部屋の中へと入った俺は、気軽に挨拶しようとした。
だが思わず、言葉を詰まらせてしまう。
「まあ、貴方がクーロ・カラム様ですのね! お待ち申しておりました!」
部屋の中央に向かい合うように置かれたソファ。
その片方に、少女は腰掛けていた。
――似ている。
そっくりだ。
エステルの若い頃に。
顔立ちはエステルに瓜二つ。
体格も細身でエステルに似ており、彼女の双子の妹と言われても信じてしまえるかもしれない。
ただ明確に違うのは、長く伸ばした髪の色だけグレイ譲りの金色であること。
それによってグレイの面影も感じられ、皇家らしい麗しさが備わっているように思える。
一目見れば、誰でも彼女がグレイとエステルの実子であると見抜くことができるだろう。
だけど――俺が驚いてしまったのは、そこではない。
彼女がエステルに似ているから驚いたんじゃないんだ。
それくらいは予想できていた。
なによりも俺を驚かせ、視線を奪ったのは――彼女の顔に巻かれた”目隠し”。
サテン生地に装飾が施された独特の目隠しで、両目を完全に覆い隠しているのである。
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