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番外編
アンコール.4
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***
-ベルヴァ王国・茉莉花宮-
シャララン…
部屋の天井に吊るされたシャンデリアを、窓から入って来た穏やかな風が揺らす。
小さく響く綺麗な音と、父の大きく温かい手が、アンジュエルの眠気を誘う。
「……くぅ………zzz」
不機嫌からのふて寝は、次第に深い眠りへと変わって行く。
「はっ、まだまだ子供だな…」
息子の単純で愛くるしい姿に、ウルティムスは小さく微笑む。
すると
「もう、ティム!!ちゃんと怒ってよ!」
母であるフルールは腰に手を当てながら、呑気なウルティムスに対し怒りを露にする。
だが
ピンク色の頬を大きく膨らませ、眠ってしまったアンジュエルを気遣い小声で怒るフルールの姿に、ウルティムスは愛おしさは募るものの、怖くはない。
「そう、ぷりぷりするな…腹の子に悪影響だぞ」
「可愛い悪戯の範囲じゃねーか…あ"ぁ"っ?」
「もう!!!ティムは子供達に甘すぎ!」
「だから、アンジュがわがままを押し通そうとするんだよ!我慢も覚えさせないと…」
フルールの言うことは最もである。全てのわがままを許していては、ろくな大人にならない。
ましてや、アンジュエルは王太子だ。
これから王太子教育も始まる為、今のうちに我慢を覚えさせないといけない。
ウルティムスも頭では理解しているものの
「……まだ5歳だろう?…それに……」
「こんなに可愛いんだ!何をしても「全て」が許される!!」
「そういう問題じゃないよ!!!」
我が子が可愛すぎるウルティムスは、毎度行動に移せず…。
専ら厳しく教育するのは、フルールの役割となっていたのだった。
***
「はぁ~……もう…」
フルールは夫の子供への溺愛ぶりに、溜め息を吐く。
「…(…恋人とか紹介されたら、ティムどうなるんだろう…)」
目に浮かぶ「地獄絵図」にフルールは将来が心配になり、頭を抱えた。
すると
「ルル…んっ」
ウルティムスは首を横に振り、空いている自分の隣に視線を流す。
番からの「横に座れ」の合図に、フルールは大人しく従い腰を下ろす。
その瞬間
チュッ…
二人の唇が重なる。
「んっ…っ…」
ゆっくりと、少しずつ激しくなる口付けを、フルールは拒否することなく受け入れる。
「はぁ…っ……」
「……ふっ…」
暫くして離れて行く唇を、フルールは咄嗟に追いかけてしまう。そんなフルールの可愛い癖に、ウルティムスは満足気に微笑む。
ウルティムスが溺愛しているのは、子供達だけではない。
初夜を迎えて5年の年月が経つも、ウルティムスは毎晩のようにフルールを求める。
アンジュエルの卒乳後、フルールは「二人目」についてウルティムスに相談した事があった。
ベルヴァの国王が二人目を授かりにくい事は、王妃教育で知っていたフルール。その為、すぐに挑戦した方がいいと思っていた。
だが
「…ルルとの子供は何人でも欲しい…だが…」
「今は、もっと「ルル」が欲しい」
そう寂しそうに呟くウルティムスに、フルールは息を呑んだ。
元々、2年の間「おあずけ」をされていたウルティムス。
思いの外、すぐにアンジュエルを授かった事で、ウルティムスは再び「おあずけ」となってしまい、愛し合う時間があまり取れていなかった。
母となったフルールは「母性」の方が強く、性欲は何処かに行ったきり帰って来なかったのだが、ウルティムスの言葉で、愛する番を「二の次」にしてしまっていた事に気付く。
フルールはウルティムスを力強く抱きしめ、寂しい思いをさせてしまった事を謝罪した。
それからの数年間、二人は愛を育む時間を優先し、後にプティエルが誕生、現在第三子の懐妊となった。
「ルル、愛してる」
「…っ…////もう…話逸らさないでよ……」
そう言いつつも、子供達を抱え動けないウルティムスに自ら擦り寄るフルール。
ウルティムスの耳元で愛を囁き、軽いキスを送る。
フルールの小悪魔っぷりに我慢出来ず、ウルティムスは噛み付くようなキスをする。
チュッ…チュッ…
「……ティム…愛してる…///」
二人の愛し合う音は長い時間、辺りに響き渡った。
側近のウィズダムが、ウルティムスを回収に来るその時まで…。
子供達
「……(とっくに、起きてるんだけど…)」
「……(ぷぅ……)」
後に、アンジュエルとプティエルは、空気を読むことに長けた子に成長するのだった。
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-ベルヴァ王国・茉莉花宮-
シャララン…
部屋の天井に吊るされたシャンデリアを、窓から入って来た穏やかな風が揺らす。
小さく響く綺麗な音と、父の大きく温かい手が、アンジュエルの眠気を誘う。
「……くぅ………zzz」
不機嫌からのふて寝は、次第に深い眠りへと変わって行く。
「はっ、まだまだ子供だな…」
息子の単純で愛くるしい姿に、ウルティムスは小さく微笑む。
すると
「もう、ティム!!ちゃんと怒ってよ!」
母であるフルールは腰に手を当てながら、呑気なウルティムスに対し怒りを露にする。
だが
ピンク色の頬を大きく膨らませ、眠ってしまったアンジュエルを気遣い小声で怒るフルールの姿に、ウルティムスは愛おしさは募るものの、怖くはない。
「そう、ぷりぷりするな…腹の子に悪影響だぞ」
「可愛い悪戯の範囲じゃねーか…あ"ぁ"っ?」
「もう!!!ティムは子供達に甘すぎ!」
「だから、アンジュがわがままを押し通そうとするんだよ!我慢も覚えさせないと…」
フルールの言うことは最もである。全てのわがままを許していては、ろくな大人にならない。
ましてや、アンジュエルは王太子だ。
これから王太子教育も始まる為、今のうちに我慢を覚えさせないといけない。
ウルティムスも頭では理解しているものの
「……まだ5歳だろう?…それに……」
「こんなに可愛いんだ!何をしても「全て」が許される!!」
「そういう問題じゃないよ!!!」
我が子が可愛すぎるウルティムスは、毎度行動に移せず…。
専ら厳しく教育するのは、フルールの役割となっていたのだった。
***
「はぁ~……もう…」
フルールは夫の子供への溺愛ぶりに、溜め息を吐く。
「…(…恋人とか紹介されたら、ティムどうなるんだろう…)」
目に浮かぶ「地獄絵図」にフルールは将来が心配になり、頭を抱えた。
すると
「ルル…んっ」
ウルティムスは首を横に振り、空いている自分の隣に視線を流す。
番からの「横に座れ」の合図に、フルールは大人しく従い腰を下ろす。
その瞬間
チュッ…
二人の唇が重なる。
「んっ…っ…」
ゆっくりと、少しずつ激しくなる口付けを、フルールは拒否することなく受け入れる。
「はぁ…っ……」
「……ふっ…」
暫くして離れて行く唇を、フルールは咄嗟に追いかけてしまう。そんなフルールの可愛い癖に、ウルティムスは満足気に微笑む。
ウルティムスが溺愛しているのは、子供達だけではない。
初夜を迎えて5年の年月が経つも、ウルティムスは毎晩のようにフルールを求める。
アンジュエルの卒乳後、フルールは「二人目」についてウルティムスに相談した事があった。
ベルヴァの国王が二人目を授かりにくい事は、王妃教育で知っていたフルール。その為、すぐに挑戦した方がいいと思っていた。
だが
「…ルルとの子供は何人でも欲しい…だが…」
「今は、もっと「ルル」が欲しい」
そう寂しそうに呟くウルティムスに、フルールは息を呑んだ。
元々、2年の間「おあずけ」をされていたウルティムス。
思いの外、すぐにアンジュエルを授かった事で、ウルティムスは再び「おあずけ」となってしまい、愛し合う時間があまり取れていなかった。
母となったフルールは「母性」の方が強く、性欲は何処かに行ったきり帰って来なかったのだが、ウルティムスの言葉で、愛する番を「二の次」にしてしまっていた事に気付く。
フルールはウルティムスを力強く抱きしめ、寂しい思いをさせてしまった事を謝罪した。
それからの数年間、二人は愛を育む時間を優先し、後にプティエルが誕生、現在第三子の懐妊となった。
「ルル、愛してる」
「…っ…////もう…話逸らさないでよ……」
そう言いつつも、子供達を抱え動けないウルティムスに自ら擦り寄るフルール。
ウルティムスの耳元で愛を囁き、軽いキスを送る。
フルールの小悪魔っぷりに我慢出来ず、ウルティムスは噛み付くようなキスをする。
チュッ…チュッ…
「……ティム…愛してる…///」
二人の愛し合う音は長い時間、辺りに響き渡った。
側近のウィズダムが、ウルティムスを回収に来るその時まで…。
子供達
「……(とっくに、起きてるんだけど…)」
「……(ぷぅ……)」
後に、アンジュエルとプティエルは、空気を読むことに長けた子に成長するのだった。
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