【完結】売れっ子アイドル、転生したら嫌われ子豚だった!~アイドル魂で子豚人生満喫中です~

赤井たまご

文字の大きさ
上 下
70 / 77
番外編

アンコール.4

しおりを挟む
***

-ベルヴァ王国・茉莉花宮-

シャララン…

部屋の天井に吊るされたシャンデリアを、窓から入って来た穏やかな風が揺らす。

小さく響く綺麗な音と、父の大きく温かい手が、アンジュエルの眠気を誘う。

「……くぅ………zzz」

不機嫌からのふて寝は、次第に深い眠りへと変わって行く。

「はっ、まだまだ子供だな…」

息子の単純で愛くるしい姿に、ウルティムスは小さく微笑む。

すると

「もう、ティム!!ちゃんと怒ってよ!」

母であるフルールは腰に手を当てながら、呑気なウルティムスに対し怒りを露にする。

だが

ピンク色の頬を大きく膨らませ、眠ってしまったアンジュエルを気遣い小声で怒るフルールの姿に、ウルティムスは愛おしさは募るものの、怖くはない。

「そう、ぷりぷりするな…腹の子に悪影響だぞ」
「可愛い悪戯の範囲じゃねーか…あ"ぁ"っ?」

「もう!!!ティムは子供達に甘すぎ!」
「だから、アンジュがわがままを押し通そうとするんだよ!我慢も覚えさせないと…」

フルールの言うことは最もである。全てのわがままを許していては、ろくな大人にならない。

ましてや、アンジュエルは王太子だ。

これから王太子教育も始まる為、今のうちに我慢を覚えさせないといけない。

ウルティムスも頭では理解しているものの

「……まだ5歳だろう?…それに……」

「こんなに可愛いんだ!何をしても「全て」が許される!!」

「そういう問題じゃないよ!!!」

我が子が可愛すぎるウルティムスは、毎度行動に移せず…。

専ら厳しく教育するのは、フルールの役割となっていたのだった。

***

「はぁ~……もう…」

フルールは夫の子供への溺愛ぶりに、溜め息を吐く。

「…(…恋人とか紹介されたら、ティムどうなるんだろう…)」

目に浮かぶ「地獄絵図」にフルールは将来が心配になり、頭を抱えた。

すると

「ルル…んっ」

ウルティムスは首を横に振り、空いている自分の隣に視線を流す。

番からの「横に座れ」の合図に、フルールは大人しく従い腰を下ろす。

その瞬間

チュッ…

二人の唇が重なる。

「んっ…っ…」

ゆっくりと、少しずつ激しくなる口付けを、フルールは拒否することなく受け入れる。

「はぁ…っ……」

「……ふっ…」

暫くして離れて行く唇を、フルールは咄嗟に追いかけてしまう。そんなフルールの可愛い癖に、ウルティムスは満足気に微笑む。

ウルティムスが溺愛しているのは、子供達だけではない。

初夜を迎えて5年の年月が経つも、ウルティムスは毎晩のようにフルールを求める。

アンジュエルの卒乳後、フルールは「二人目」についてウルティムスに相談した事があった。

ベルヴァの国王が二人目を授かりにくい事は、王妃教育で知っていたフルール。その為、すぐに挑戦した方がいいと思っていた。

だが

「…ルルとの子供は何人でも欲しい…だが…」
「今は、もっと「ルル」が欲しい」

そう寂しそうに呟くウルティムスに、フルールは息を呑んだ。

元々、2年の間「おあずけ」をされていたウルティムス。

思いの外、すぐにアンジュエルを授かった事で、ウルティムスは再び「おあずけ」となってしまい、愛し合う時間があまり取れていなかった。

母となったフルールは「母性」の方が強く、性欲は何処かに行ったきり帰って来なかったのだが、ウルティムスの言葉で、愛する番を「二の次」にしてしまっていた事に気付く。

フルールはウルティムスを力強く抱きしめ、寂しい思いをさせてしまった事を謝罪した。

それからの数年間、二人は愛を育む時間を優先し、後にプティエルが誕生、現在第三子の懐妊となった。

「ルル、愛してる」

「…っ…////もう…話逸らさないでよ……」

そう言いつつも、子供達を抱え動けないウルティムスに自ら擦り寄るフルール。

ウルティムスの耳元で愛を囁き、軽いキスを送る。

フルールの小悪魔っぷりに我慢出来ず、ウルティムスは噛み付くようなキスをする。

チュッ…チュッ…

「……ティム…愛してる…///」

二人の愛し合う音は長い時間、辺りに響き渡った。

側近のウィズダムが、ウルティムスを回収に来るその時まで…。



子供達
「……(とっくに、起きてるんだけど…)」
「……(ぷぅ……)」

後に、アンジュエルとプティエルは、空気を読むことに長けた子に成長するのだった。

***
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。

白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。 僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。 けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。 どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。 「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」 神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。 これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。 本編は三人称です。 R−18に該当するページには※を付けます。 毎日20時更新 登場人物 ラファエル・ローデン 金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。 ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。 首筋で脈を取るのがクセ。 アルフレッド 茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。 剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。 神様 ガラが悪い大男。  

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた! どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。 そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?! いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?! 会社員男性と、異世界獣人のお話。 ※6話で完結します。さくっと読めます。

処理中です...