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第3章・アイドルの恋愛事情

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-???-

ギラギラと照り付ける太陽の下。

ドサッ…

「ピィッ!………あっっつぅ!!」

しばし水の中で過ごしていたフルールは、突然の重力に体がふらつき、その際、元に戻った「足」が絡まり、顔面から転倒してしまう。

幸い、柔らかな砂の上だった為、怪我をする事はなかったが、熱を吸収した砂の上は暑く、フルールは咄嗟に跳び跳ねた。

あまりの暑さに、見上げた空は赤く見え「まるで燃えているみたいだ…」と、フルールは思うのだった。

すると

「ニハハハハハッ!」

「!!!」

突然、大きな笑い声が辺りに響き渡り、同時にフルールは「誰か」に抱えあげられた。

その「誰か」に、フルールは驚愕する。

黒髪の短髪に褐色肌の大男。鍛えられた体は「あの」ウルティムスよりも大きい。一言で言うならば、ゴリゴリのマッチョ男。

だが、ぱっちり二重のアイスブルーの瞳と、大きな口から見え隠れする八重歯が幼さを感じさせる。

大男は人懐っこい笑顔を浮かべ、叫んだ。

「これは驚いた!「勝利の女神」が降ってきたではないか!」

「皆のもの!我の「勝利」が確実となったぞ!」

わぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!

ビリビリと凄まじい歓声に、フルールは「この場所」が何処なのか、瞬時に把握した。

「…っ…(なんで……)」

「ある王国」に存在する「灼熱砂漠」のド真ん中。そこに建てられた闘技場。

此処では「毎日」多くの剣士達が剣を交えて戦う。

時には、猛獣相手とも戦いを繰り広げる場所であり、今では民の娯楽施設にもなっている。

フルールが転移した、この王国場所の別名は

死戦しせんの大地」

「死してなおも戦い続ける」を、国の標語スローガンに掲げる、この王国の名は

「バダク王国」

海に囲まれたマーレ王国とは、真逆に位置する王国であり、此処で暮らす者は皆「戦」に身命を賭している。

それは「王族」も例外ではない。フラッと、国王自ら闘技場に現れ、剣を交え戦う。

この日、観戦に訪れた民は、数日は興奮冷めやらぬ状態が続くという。

そして「今」が、まさに「その日」であった。

ガッシリとした太い腕で、しっかりとフルールを抱き抱えている、この大男こそ

バダク王国・現国王、サイ獣人のバロン・バダク(23)

バロンはまさに、これから一戦を交える所なのであった。

全ての状況を把握したフルールは、体が小刻みに震え出す。

フルールはプリュームと二人で「平和で穏やかに暮らせる場所」を望み、転移した。

しかし

「……プギィィィィィィィ!!!(真逆じゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁ!!!)」

思わず豚語で泣き叫ぶフルール。

暫くの間、フルールの悲痛な叫びが闘技場に木霊するのであった。

***

-マーレ王国-

……ゴロゴロゴロゴロゴロゴロッ…!

凄まじい雷の轟きが、マーレ王国に鳴り響く。

「…………何を言っておるのだ…」
「レオン!!!」

まるでソヌスの「心情」を察したかのように、空は荒れ狂っていた。

鬼の形相をしたソヌスを電光が照らし、恐ろしさを際立たせる。

その場に居合わせた従者達は、鳴り響く雷の音そのものがソヌスの「怒号」に聞こえ、顔を青くする。

しかし

「何を…とは…」
聖歌人ヒムが逃げました』
「そう言ったのですよ……父上」

レオンは恐れることなく冷静に、淡々とソヌスに語りかける。

「…あの場所からどうやって逃げ出せるのだ?「水の中」では「歌」は歌えぬ!」

聖歌人ヒムは「魔法」が使えなかったはずだ!」

ソヌスは怒りで体を震わせながら、威圧感のある声でレオンに怒鳴るも

「…私もそう思っていましたが……」

「…「唄う方法」は「1つ」ではない…のかも知れませんね」

レオンは不敵な笑みを浮かべるのだった。

ギリッ…
「…っ…何を馬鹿な…!?」

唇を噛み締めるソヌスを、レオンは眉間にシワを寄せながら眺める。

「…さっさと連れ戻すのだ…出来なければ…」

「…分かっておるな…?…レオン…」

刺すような目つきでレオンを睨み付けたソヌスは、そのまま返事を聞くこともなく、レオンに背を向けた。

立ち去るソヌスの後ろ姿を、レオンは黙って見つめる。

「……「声」を出して歌う、それだけが「唄」ではない、ということですよ」
「…「思い」を伝える方法が「声」だけではないように…」

「それに気付けなかった時点で、あなたは負けてるんですよ」

父上マーレ国王……」

レオンの静かな呟きが、ソヌスに届くことはないのであった…。

***


スランプになり、更新が遅くなりました…汗。
申し訳ありません…涙。これからも頑張ります!
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