35 / 77
第3章・アイドルの恋愛事情
song.33
しおりを挟む
***
-???-
ギラギラと照り付ける太陽の下。
ドサッ…
「ピィッ!………あっっつぅ!!」
しばし水の中で過ごしていたフルールは、突然の重力に体がふらつき、その際、元に戻った「足」が絡まり、顔面から転倒してしまう。
幸い、柔らかな砂の上だった為、怪我をする事はなかったが、熱を吸収した砂の上は暑く、フルールは咄嗟に跳び跳ねた。
あまりの暑さに、見上げた空は赤く見え「まるで燃えているみたいだ…」と、フルールは思うのだった。
すると
「ニハハハハハッ!」
「!!!」
突然、大きな笑い声が辺りに響き渡り、同時にフルールは「誰か」に抱えあげられた。
その「誰か」に、フルールは驚愕する。
黒髪の短髪に褐色肌の大男。鍛えられた体は「あの」ウルティムスよりも大きい。一言で言うならば、ゴリゴリのマッチョ男。
だが、ぱっちり二重のアイスブルーの瞳と、大きな口から見え隠れする八重歯が幼さを感じさせる。
大男は人懐っこい笑顔を浮かべ、叫んだ。
「これは驚いた!「勝利の女神」が降ってきたではないか!」
「皆のもの!我の「勝利」が確実となったぞ!」
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!
ビリビリと凄まじい歓声に、フルールは「この場所」が何処なのか、瞬時に把握した。
「…っ…(なんで……)」
「ある王国」に存在する「灼熱砂漠」のド真ん中。そこに建てられた闘技場。
此処では「毎日」多くの剣士達が剣を交えて戦う。
時には、猛獣相手とも戦いを繰り広げる場所であり、今では民の娯楽施設にもなっている。
フルールが転移した、この王国の別名は
「死戦の大地」
「死してなおも戦い続ける」を、国の標語に掲げる、この王国の名は
「バダク王国」
海に囲まれたマーレ王国とは、真逆に位置する王国であり、此処で暮らす者は皆「戦」に身命を賭している。
それは「王族」も例外ではない。フラッと、国王自ら闘技場に現れ、剣を交え戦う。
この日、観戦に訪れた民は、数日は興奮冷めやらぬ状態が続くという。
そして「今」が、まさに「その日」であった。
ガッシリとした太い腕で、しっかりとフルールを抱き抱えている、この大男こそ
バダク王国・現国王、犀獣人のバロン・バダク(23)
バロンはまさに、これから一戦を交える所なのであった。
全ての状況を把握したフルールは、体が小刻みに震え出す。
フルールはプリュームと二人で「平和で穏やかに暮らせる場所」を望み、転移した。
しかし
「……プギィィィィィィィ!!!(真逆じゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁ!!!)」
思わず豚語で泣き叫ぶフルール。
暫くの間、フルールの悲痛な叫びが闘技場に木霊するのであった。
***
-マーレ王国-
……ゴロゴロゴロゴロゴロゴロッ…!
凄まじい雷の轟きが、マーレ王国に鳴り響く。
「…………何を言っておるのだ…」
「レオン!!!」
まるでソヌスの「心情」を察したかのように、空は荒れ狂っていた。
鬼の形相をしたソヌスを電光が照らし、恐ろしさを際立たせる。
その場に居合わせた従者達は、鳴り響く雷の音そのものがソヌスの「怒号」に聞こえ、顔を青くする。
しかし
「何を…とは…」
『聖歌人が逃げました』
「そう言ったのですよ……父上」
レオンは恐れることなく冷静に、淡々とソヌスに語りかける。
「…あの場所からどうやって逃げ出せるのだ?「水の中」では「歌」は歌えぬ!」
「聖歌人は「魔法」が使えなかったはずだ!」
ソヌスは怒りで体を震わせながら、威圧感のある声でレオンに怒鳴るも
「…私もそう思っていましたが……」
「…「唄う方法」は「1つ」ではない…のかも知れませんね」
レオンは不敵な笑みを浮かべるのだった。
ギリッ…
「…っ…何を馬鹿な…!?」
唇を噛み締めるソヌスを、レオンは眉間にシワを寄せながら眺める。
「…さっさと連れ戻すのだ…出来なければ…」
「…分かっておるな…?…レオン…」
刺すような目つきでレオンを睨み付けたソヌスは、そのまま返事を聞くこともなく、レオンに背を向けた。
立ち去るソヌスの後ろ姿を、レオンは黙って見つめる。
「……「声」を出して歌う、それだけが「唄」ではない、ということですよ」
「…「思い」を伝える方法が「声」だけではないように…」
「それに気付けなかった時点で、あなたは負けてるんですよ」
「父上……」
レオンの静かな呟きが、ソヌスに届くことはないのであった…。
***
スランプになり、更新が遅くなりました…汗。
申し訳ありません…涙。これからも頑張ります!
-???-
ギラギラと照り付ける太陽の下。
ドサッ…
「ピィッ!………あっっつぅ!!」
しばし水の中で過ごしていたフルールは、突然の重力に体がふらつき、その際、元に戻った「足」が絡まり、顔面から転倒してしまう。
幸い、柔らかな砂の上だった為、怪我をする事はなかったが、熱を吸収した砂の上は暑く、フルールは咄嗟に跳び跳ねた。
あまりの暑さに、見上げた空は赤く見え「まるで燃えているみたいだ…」と、フルールは思うのだった。
すると
「ニハハハハハッ!」
「!!!」
突然、大きな笑い声が辺りに響き渡り、同時にフルールは「誰か」に抱えあげられた。
その「誰か」に、フルールは驚愕する。
黒髪の短髪に褐色肌の大男。鍛えられた体は「あの」ウルティムスよりも大きい。一言で言うならば、ゴリゴリのマッチョ男。
だが、ぱっちり二重のアイスブルーの瞳と、大きな口から見え隠れする八重歯が幼さを感じさせる。
大男は人懐っこい笑顔を浮かべ、叫んだ。
「これは驚いた!「勝利の女神」が降ってきたではないか!」
「皆のもの!我の「勝利」が確実となったぞ!」
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!
ビリビリと凄まじい歓声に、フルールは「この場所」が何処なのか、瞬時に把握した。
「…っ…(なんで……)」
「ある王国」に存在する「灼熱砂漠」のド真ん中。そこに建てられた闘技場。
此処では「毎日」多くの剣士達が剣を交えて戦う。
時には、猛獣相手とも戦いを繰り広げる場所であり、今では民の娯楽施設にもなっている。
フルールが転移した、この王国の別名は
「死戦の大地」
「死してなおも戦い続ける」を、国の標語に掲げる、この王国の名は
「バダク王国」
海に囲まれたマーレ王国とは、真逆に位置する王国であり、此処で暮らす者は皆「戦」に身命を賭している。
それは「王族」も例外ではない。フラッと、国王自ら闘技場に現れ、剣を交え戦う。
この日、観戦に訪れた民は、数日は興奮冷めやらぬ状態が続くという。
そして「今」が、まさに「その日」であった。
ガッシリとした太い腕で、しっかりとフルールを抱き抱えている、この大男こそ
バダク王国・現国王、犀獣人のバロン・バダク(23)
バロンはまさに、これから一戦を交える所なのであった。
全ての状況を把握したフルールは、体が小刻みに震え出す。
フルールはプリュームと二人で「平和で穏やかに暮らせる場所」を望み、転移した。
しかし
「……プギィィィィィィィ!!!(真逆じゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁ!!!)」
思わず豚語で泣き叫ぶフルール。
暫くの間、フルールの悲痛な叫びが闘技場に木霊するのであった。
***
-マーレ王国-
……ゴロゴロゴロゴロゴロゴロッ…!
凄まじい雷の轟きが、マーレ王国に鳴り響く。
「…………何を言っておるのだ…」
「レオン!!!」
まるでソヌスの「心情」を察したかのように、空は荒れ狂っていた。
鬼の形相をしたソヌスを電光が照らし、恐ろしさを際立たせる。
その場に居合わせた従者達は、鳴り響く雷の音そのものがソヌスの「怒号」に聞こえ、顔を青くする。
しかし
「何を…とは…」
『聖歌人が逃げました』
「そう言ったのですよ……父上」
レオンは恐れることなく冷静に、淡々とソヌスに語りかける。
「…あの場所からどうやって逃げ出せるのだ?「水の中」では「歌」は歌えぬ!」
「聖歌人は「魔法」が使えなかったはずだ!」
ソヌスは怒りで体を震わせながら、威圧感のある声でレオンに怒鳴るも
「…私もそう思っていましたが……」
「…「唄う方法」は「1つ」ではない…のかも知れませんね」
レオンは不敵な笑みを浮かべるのだった。
ギリッ…
「…っ…何を馬鹿な…!?」
唇を噛み締めるソヌスを、レオンは眉間にシワを寄せながら眺める。
「…さっさと連れ戻すのだ…出来なければ…」
「…分かっておるな…?…レオン…」
刺すような目つきでレオンを睨み付けたソヌスは、そのまま返事を聞くこともなく、レオンに背を向けた。
立ち去るソヌスの後ろ姿を、レオンは黙って見つめる。
「……「声」を出して歌う、それだけが「唄」ではない、ということですよ」
「…「思い」を伝える方法が「声」だけではないように…」
「それに気付けなかった時点で、あなたは負けてるんですよ」
「父上……」
レオンの静かな呟きが、ソヌスに届くことはないのであった…。
***
スランプになり、更新が遅くなりました…汗。
申し訳ありません…涙。これからも頑張ります!
22
お気に入りに追加
436
あなたにおすすめの小説
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。
昼寝部
キャラ文芸
天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。
その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。
すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。
「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」
これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。
※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
魔力なしの嫌われ者の俺が、なぜか冷徹王子に溺愛される
ぶんぐ
BL
社畜リーマンは、階段から落ちたと思ったら…なんと異世界に転移していた!みんな魔法が使える世界で、俺だけ全く魔法が使えず、おまけにみんなには避けられてしまう。それでも頑張るぞ!って思ってたら、なぜか冷徹王子から口説かれてるんだけど?──
嫌われ→愛され 不憫受け 美形×平凡 要素があります。
※総愛され気味の描写が出てきますが、CPは1つだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる