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第3章・アイドルの恋愛事情
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***
-マーレ王国-
ブクッ…ブクブクッ……
ひっそりとした室内は、異様な空気に包まれていた。
そんな中、色とりどりの可愛らしい小魚達は、軽やかにフルールの前を泳いで行く。
しかし
「………………」
「「「!!!??」」」
フルールの「顔」を見た瞬間、小魚達は驚き硬直する。
そこには、異様な雰囲気を漂わせ「般若のような顔」をしたフルールが、ブツブツと不気味に小言を呟いていた。
異様な空気の正体は、フルール自身なのであった。
***
レオンが去った後、あたりには静寂が満ちていた。深い静寂はフルールの意識をぼんやりとさせる。
レオンの魔法で「体内時間が停止」しているフルールは「睡眠欲」も「食欲」も沸いてこず、時間感覚が全くなかった。
泣くこと以外にやることがないフルールは、寄り添ってくれる小魚達が心の支えだった。
そんな中、フルールは小魚達とは違う「強い視線」を感じ、辺りを見渡す。
すると
金魚鉢の外側に「何か」が、張り付いていることに気付いた。
その「何か」を視界に映した瞬間、霧が晴れていくように気分がスッキリとし、フルールは冷静になっていく。
冷静になったフルールは「本来の自分」を思い出し、それと同時に、沸々と「激しい怒り」が胸の内に沸き上がる。
「…ごぽぽぽぽっ(何で僕が、こんな場所に閉じ込められないといけない訳?僕って被害者だよね?)」
「…ごぽぽっ…ごぽぽぽぽっ(可愛い僕を独り占めしたい気持ちは分かるけど、会いにも来ないって何?)」
「…ごぽぽぽぽっ(レオンは裏切り者だし、僕のお願い聞いてくれないし!)」
「…ごぽぽぽぽっごぽぽぽぽっ(あっ!裏切り者はティムもか、あの浮気者!!ヤリ○ん!!!)」
「…ごぽぽぽぽっ(夫婦として歩み寄るって、約束したのに!!!)」
「…ごぽぽぽぽっ(ウィズダム達も止めてよ…!)」
ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ…
フルールは自分が納得するまで、ひたすら独り言を呟き続けたのだった。
***
「…ごぽぽっ…(ふぅー………)」
「…ごぽっ…!(よっと!)」
鬱憤を吐き出し終えたフルールは静かに立ち上がり、ゆっくりと金魚鉢に張り付いている「もの」に近付いて行く。
「…ごぽぽっ…(見当たらなくて、心配したよ…)」
「…ごぽっ…(プリューム)」
小さな手足を大の字に広げ、顔が潰れる程、金魚鉢にベッタリと張り付いていたのは
妖精の「プリューム」だった。
「…ごぽぽっ…(怪我はない?よく此処がわかったね!)」
『大丈夫!でも、疲れた…』
プリュームはニコニコしながら、小さな手で「OKマーク」を作った。
プリュームは「あの」水上竜巻でフルールと引き離されてしまい、その後は、フルールの微かな「魔力」を追って、マーレ王国までやって来たのだった。
「…ごぽぽっ…(ふふっ、不思議…プリュームを見たら、すぐ元気になったよ)」
『私は「妖精」だから「癒し」系なの』
「…ごぽぽっ…(ふふっ、そうだったね!……プリューム)」
「…ごぽぽぽっ…(僕と「駆け落ち」してくれる?)」
二人はじぃ…と、見つめ合う。
『私は「ずっと」聖歌人と一緒!』
「…………ごぽぽっ…(ありがとう)」
望んでいた「答え」を貰えたフルールは涙ぐみ、心からの感謝をプリュームに伝えた。
フルールは、ずっと心細かった。
誰だって「ひとりぼっち」は寂しい。
だが、プリュームが側に来てくれた事で、フルールは「勇気」が持てたのだった。
声が出せないフルールは「心の聲」で、唄を歌う。
キラキラした七色の光が、二人を優しく包み込んだ。
広くなった金魚鉢に、小魚達は寂しさを感じるのだった。
***
-???-
「んふっ、ついに動きましたね」
『ーーーーーー…』
「「あなた」の言う通り、妖精も「思い通り」に動いてくれましたよ」
『ーーーーーー……』
「んふっ、ただ向かった先が「あの国」とは…全てが「思い通り」とはいきませんね、流石です」
『ーーーーー!!』
「大丈夫ですよ、少々会話が出来ないだけで…マーレ国王よりかは「扱いやすい男」です」
『ーーーーー!!!』
「ご安心を、影はいつでも王妃様と共に…」
『ーーーーーーー』
「んふっ、承知いたしました」
「我が「国王」に「忠誠」を…」
***
-マーレ王国-
ブクッ…ブクブクッ……
ひっそりとした室内は、異様な空気に包まれていた。
そんな中、色とりどりの可愛らしい小魚達は、軽やかにフルールの前を泳いで行く。
しかし
「………………」
「「「!!!??」」」
フルールの「顔」を見た瞬間、小魚達は驚き硬直する。
そこには、異様な雰囲気を漂わせ「般若のような顔」をしたフルールが、ブツブツと不気味に小言を呟いていた。
異様な空気の正体は、フルール自身なのであった。
***
レオンが去った後、あたりには静寂が満ちていた。深い静寂はフルールの意識をぼんやりとさせる。
レオンの魔法で「体内時間が停止」しているフルールは「睡眠欲」も「食欲」も沸いてこず、時間感覚が全くなかった。
泣くこと以外にやることがないフルールは、寄り添ってくれる小魚達が心の支えだった。
そんな中、フルールは小魚達とは違う「強い視線」を感じ、辺りを見渡す。
すると
金魚鉢の外側に「何か」が、張り付いていることに気付いた。
その「何か」を視界に映した瞬間、霧が晴れていくように気分がスッキリとし、フルールは冷静になっていく。
冷静になったフルールは「本来の自分」を思い出し、それと同時に、沸々と「激しい怒り」が胸の内に沸き上がる。
「…ごぽぽぽぽっ(何で僕が、こんな場所に閉じ込められないといけない訳?僕って被害者だよね?)」
「…ごぽぽっ…ごぽぽぽぽっ(可愛い僕を独り占めしたい気持ちは分かるけど、会いにも来ないって何?)」
「…ごぽぽぽぽっ(レオンは裏切り者だし、僕のお願い聞いてくれないし!)」
「…ごぽぽぽぽっごぽぽぽぽっ(あっ!裏切り者はティムもか、あの浮気者!!ヤリ○ん!!!)」
「…ごぽぽぽぽっ(夫婦として歩み寄るって、約束したのに!!!)」
「…ごぽぽぽぽっ(ウィズダム達も止めてよ…!)」
ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ…
フルールは自分が納得するまで、ひたすら独り言を呟き続けたのだった。
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「…ごぽぽっ…(ふぅー………)」
「…ごぽっ…!(よっと!)」
鬱憤を吐き出し終えたフルールは静かに立ち上がり、ゆっくりと金魚鉢に張り付いている「もの」に近付いて行く。
「…ごぽぽっ…(見当たらなくて、心配したよ…)」
「…ごぽっ…(プリューム)」
小さな手足を大の字に広げ、顔が潰れる程、金魚鉢にベッタリと張り付いていたのは
妖精の「プリューム」だった。
「…ごぽぽっ…(怪我はない?よく此処がわかったね!)」
『大丈夫!でも、疲れた…』
プリュームはニコニコしながら、小さな手で「OKマーク」を作った。
プリュームは「あの」水上竜巻でフルールと引き離されてしまい、その後は、フルールの微かな「魔力」を追って、マーレ王国までやって来たのだった。
「…ごぽぽっ…(ふふっ、不思議…プリュームを見たら、すぐ元気になったよ)」
『私は「妖精」だから「癒し」系なの』
「…ごぽぽっ…(ふふっ、そうだったね!……プリューム)」
「…ごぽぽぽっ…(僕と「駆け落ち」してくれる?)」
二人はじぃ…と、見つめ合う。
『私は「ずっと」聖歌人と一緒!』
「…………ごぽぽっ…(ありがとう)」
望んでいた「答え」を貰えたフルールは涙ぐみ、心からの感謝をプリュームに伝えた。
フルールは、ずっと心細かった。
誰だって「ひとりぼっち」は寂しい。
だが、プリュームが側に来てくれた事で、フルールは「勇気」が持てたのだった。
声が出せないフルールは「心の聲」で、唄を歌う。
キラキラした七色の光が、二人を優しく包み込んだ。
広くなった金魚鉢に、小魚達は寂しさを感じるのだった。
***
-???-
「んふっ、ついに動きましたね」
『ーーーーーー…』
「「あなた」の言う通り、妖精も「思い通り」に動いてくれましたよ」
『ーーーーーー……』
「んふっ、ただ向かった先が「あの国」とは…全てが「思い通り」とはいきませんね、流石です」
『ーーーーー!!』
「大丈夫ですよ、少々会話が出来ないだけで…マーレ国王よりかは「扱いやすい男」です」
『ーーーーー!!!』
「ご安心を、影はいつでも王妃様と共に…」
『ーーーーーーー』
「んふっ、承知いたしました」
「我が「国王」に「忠誠」を…」
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