【完結】売れっ子アイドル、転生したら嫌われ子豚だった!~アイドル魂で子豚人生満喫中です~

赤井たまご

文字の大きさ
上 下
17 / 77
第2章・アイドルへの試練

song.16

しおりを挟む
***

ー王宮ー

フルールお気に入りのガーデンハウスに、しとしと…と、雨の降る音が木霊する。

フルールは雨音のメロディに乗せ、そっと唄を口ずさむ。妖精のプリュームは気持ち良さそうに、ひらひらと舞った。

すると、あいにくの雨にどんよりとしていた王宮内の空気が一瞬で変わった。

澄んだ美しい歌声が響き渡り、空気は浄化され、従者達の心も晴れていった。

「…本当に美しい歌声だわ…」
「王妃様がキラキラと輝いてみえる…」
「王妃様の歌声を聞くと、何でか元気になるんだよな…」

あの日以来、フルールは王宮内の至る所で唄を口ずさむようになった。今ではその歌声が従者達の活力となっていた。

「今日のおやつは何かな?プリューム」

『アップルパイ!』

「アップルパイか…いいね!ふふっ」

そんな事はつゆ知らず、最近恒例となったプリュームとのおやつ会議に、フルールは夢中なのであった。

そんなフルールの元に

「王妃様、国王様がお呼びです」

騎士の一人が迎えにきたのだった。

***

ー国王執務室ー

コンコン…

「国王様、王妃様をお連れいたしました」

「入れ」

フルールが執務室に入ると、そこにはウルティムスをはじめ

側近のウィズダム、騎士団長のビクトリア、そして、魔法省大臣のレオンがいた。

「何事か」と、大きな瞳をぱちくりさせるフルールに

「座れ」

と、ふかふかのソファーを指さし、促すウルティムス。

「単刀直入に言う。今後一切、王宮内でも外でも…」

「唄を歌う事を禁ずる」


「えっ…」

フルールはウルティムスに言われた言葉の意味が理解出来ず、激しく動揺した。そんなフルールに、三人が即座にフォローに入る。

「国王!ちゃんとご説明してください…。それでは王妃様が可哀想です!」

「一国の王が口下手ですか?国の行く末が心配でなりません」

「んふっ、本当ですよ。何の為に口があるんでしょうか?役に立たない口など必要ありませんね?あっても無駄なので取ってしまいましょうか?」

「………」

有能な部下達の正論に、ウルティムスはぐうの音も出ない。レオンに関しては、もはや脅しではない。

「はぁー…」

「お前は「聖歌人ヒム」だ」


***

聖歌人ヒム

それは「歌うことで魔法が使える者」のことを指す。

その為、魔力そのものは必要なく「無限」に「どんな」魔法でも使用することが出来る。
何故、そんな者が存在するのか、一体どういう仕組みなのか。

全ては「妖精の加護」の伝承に繋がっていた。


妖精は、愛する我が子達に「魔力」を与えたが、愛する獣には「魔力」を与えなかった。
与えられなかった。。。。のだ。

妖精からの「寵愛」を一身に受ける獣は、もはや「獣」ではなくなってしまっていた。
しかし「妖精」でもない。

いうならば「神」の領域のような、澄んだ不確かな存在。

そんな不確かな存在うつわに「魔力」という「地上の力」は耐えられなかった。

妖精は愛する獣を、そんな不確かな存在にしてしまったことを嘆いた。
しかし、獣は「それすらも愛おしい」と、嘆く妖精に毎夜「聖歌」を唄った。

妖精は獣の「歌声」を生涯、愛し続けた。


すると、何百年に1度
テルース星に「魔力」を持たず、だが「歌うことで魔法が使える」という者が生まれて来るようになった。


民は、その者を「祖先」の生まれ変わりと信じ、その「歌声」は「神の力」だと、崇拝したのだった。

***

「…僕が、その聖歌人ヒムって、こと?」
「(…てっきり、妖精プリュームが何かしてると思ってたんだけど…僕の魔法だったの?)」

話を聞き終えたフルールは、コテンッ…と、首を横に傾げる。

「んふっ、今日も愛らしいです!王妃様!」
「「ヒム」と言うのは、その獣の名前だったと言われているのですよ!」

「へぇー…でも、何で?何で歌ったらいけないの?」
「それに、僕が本当に聖歌人ヒムって言う証拠は?」

説明を聞いても納得が出来ないフルールは、三人に詰め寄った。

すると…

***
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。

白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。 僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。 けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。 どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。 「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」 神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。 これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。 本編は三人称です。 R−18に該当するページには※を付けます。 毎日20時更新 登場人物 ラファエル・ローデン 金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。 ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。 首筋で脈を取るのがクセ。 アルフレッド 茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。 剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。 神様 ガラが悪い大男。  

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...