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番外編
新婚旅行へ行こう 2
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「この間、仕事の関係でマカオに行ったでしょう? 街並みがすごく綺麗で、ひなこさんが好きそうだなって思ったんだ。一緒に見られたら、幸せだなって」
雪人が甘やかな笑顔で語るのを、ひなこは呆然と聞いていた。
「もちろん新婚旅行といっても、二人きりという訳にはいかないけれどね。子ども達も一緒に、ちょっとした旅行感覚で。パスポートもあるんだし、重く考えずに、ね?」
新婚旅行に海外。貧乏に育ってきたひなこにとって、それはセレブの領域だ。
確かに海外旅行の経験はあるが、それは御園学園での修学旅行のことだ。ひなこがちょっとした旅行と言われて思い浮かべるのは熱海とか近場であって、決して海外ではない。
出会ったばかりの頃を彷彿とさせる立て板に水っぷりに、ひなこは気が遠くなった。
「雪人さんが何を言っているのか、久しぶりに分からなくなってます……」
「あ、お願い、ごめん。そんな物凄い勢いで引かないで」
心の距離をぐっと縮めるように、雪人はひなこの手を握った。
「雪人さんに引いてる訳じゃなくて、結婚しても埋められない感覚の違いに引いてるだけですから……」
「それとても深刻なヤツだよね。離婚原因によく挙げられてるヤツだよね」
何を焦っているのか、雪人はやたらと必死だった。どれだけ深刻な意見の相違があっても、好きな気持ちはなくならないのに。
ひなこは大好きな旦那様を落ち着かせようと微笑んだ。
「正確には、自分自身に落ち込んでるんです。いつまで経っても全然慣れなくて、情けないなって」
少しは慣れればいいものを、いちいち驚いてしまう自分が嫌だった。ちっとも夫婦になれた気がしない。
けれど雪人は、ひなこのちっぽけな悩みを笑い飛ばしてくれる。
握っていた手に優しくキスをして、甘すぎる笑みを浮かべた。
「僕は、そんな変わらないあなたが好きだよ。変わったとしても、好きでい続ける自信はあるけれど」
「雪人さん……」
「だから、たまには『雪人』って、呼び捨てにしてほしいなって思ってしまうんだ。……僕こそ、いつだってあなたに求めてばかりで、とても情けないよね」
そのまま手を頬に当てながら、雪人は困った笑みになった。すがるようにも見えて、期待に応えようとひなこは口を開いた。
「そんなことないです。えっと、その、ゆ、ゆ、ゆ、ゆきひ――――」
「オーイ。久々に実家に帰ってみれば、何やってんだバカップル」
突如割り込んだ声に、ひなこは慌てて雪人から距離を取った。
振り向くと、リビングのドアに呆れ顔の楓が寄りかかっていた。ひなこの頬はどんどん赤くなる。
「お、おかえりなさい、楓君。……いつからいたの?」
「ただいま。親父がマカオについてプレゼンしてる辺りからかな」
「それほとんど最初からだよね!?」
ひなこは悲鳴を上げてのたうち回りたくなった。他人に聞かれるのも嫌だが、家族に聞かれるのが一番辛い。
楓は全く平常運転で手洗いとうがいを済ませ、ようやくソファに座った。身を固くするひなこと、邪魔されて不満げな雪人を改めて見比べる。
「あんたら、いつもあんな会話してる訳? マジでヤバイな」
「お願いだから蒸し返さないで!」
ひなこは小さくなって顔を覆った。
だが、キスをしている場面を見られなかったことだけは、不幸中の幸いだった。あれを目撃されたら色々と、何かが終わってしまう気がする。
もうとにかく居たたまれなくて、ガックリ肩を落とした。
じめじめと落ち込むひなこを置いてきぼりに、親子の会話は進んでいく。
「新婚なのは分かるけど、柊達の前では自重してるんだろーな」
「もちろんだよ。ところで、そろそろ彼女はできたのかな?」
「できてねーよ。つーか会うたびそうやって牽制すんのやめろよな。大人げねぇ」
「だって、どう考えても僕にとって一番の強敵は楓だからねぇ。お前が彼女でも作らない限り、心から安心はできないんだよ」
「フラれてんだよ俺は。一年以上も前に」
「まだ一年だよ。それに、タイミングが少しでもずれていたら、違う結末もあり得たかもしれないし」
途中から、彼らがひなこについて話していることに気付いた。
しかも雪人はどうやら、楓がまだ気持ちを引きずっているのではないかと疑っているようだった。
それは、楓にもひなこにも失礼な誤解だ。ひなこは憤慨して口を挟む。
「雪人さん、疑うなんて酷いです。私は、絶対に雪人さんだけなのに」
「ひなこさん……」
ひなこの恨めしげな視線に気付き、一瞬感動しかけた雪人は慌てて取り繕った。
「ごめん! ごめんね! ほんの少しだけ不安だったんだ。僕は本当に愛されているのかなって。普段のあなたの優しさを見ていれば、疑う余地なんてないのに……。でも、僕はどうしたって、あなたとの年齢差を埋められない。一緒のキャンパスに通うことはできないし、飲み会の誘いなんかもこれからあるだろうし……」
自分よりずっと背の高い雪人がしょんぼりと項垂れる姿は、何だか可愛らしく思えてしまう。悔しいが、怒りも持続しなかった。
ひなこはそっと雪人の手を握った。
「年齢差が不安なのは、私も一緒です。私は、雪人さんの側にいる、仕事もできて大人で、とっても魅力的な女性達に、到底太刀打ちできませんから……」
付き合っている時、彼の会社で行われたパーティに一度だけ顔を出したことがある。
雪人は何というか、全方位から狙われていた。ひなこは『雪人と付き合っているのは私だ』と、何度も叫びそうになった。年齢の問題もあって息子の友人として紹介されたことも、当時はひどく悲しかったものだ。
「……でも私は、雪人さんを信じてます。雪人さんとこれまで過ごしてきた時間を、分け合ってきた想いを。だから、あなたにも信じてほしい」
雪人が、ぎゅっと手を握り返してくる。まだ揺れる瞳は、迷子の子どものようだ。
たまにこうして幼い少年のような顔をするから、放っておけないと思うようになったのだ。彼の手を離せないと。
ひなこは、雪人を安心させるために優しく微笑んだ。
「それに、合コンというか飲み会? には誘われましたけど、ちゃんと断りました。私には雪人さんがいますからね」
言った途端、雪人の空気が凍り付いた。
「合コン……誘われたの? 相手は男?」
「雪人さん……」
今までの会話は何だったのかと言いたくなるような堂々巡りの気配に、ひなこは肩を落とした。根気よく言い聞かせても、彼の嫉妬は止まらない。
「ひなこさんのことはもちろん信じているよ。ただ周りの男共に嫉妬してしまうのは、どうしたってやめられないんだ。僕は心が狭いから、ひなこさんの全てを独占したいと思ってしまう……。とりあえず、その男の名前を教えてくれる?」
「な、何をする気ですか?」
「何も手出しはしないよ。ただ、ほんのちょっと調べるだけ」
「調べるってなんですか? もうっ、そんな必要ありませんってば!」
ひなこが再び怒り出すと、白けた声が過熱する二人を遮った。
「――この会話、続くカンジ? なら俺、アパート帰るけど」
楓の目がはっきり死んでいた。
ひなこはハッとする。確かに親の喧嘩など、子どもの前で見せるものではない。
「ごめんね楓君。みっともないところを見せちゃって……」
「あんたの中でそれはケンカなの? イチャイチャじゃなくて?」
慌てて謝ると、楓は死んだ目のままうわ言のように呟いた。
言っている意味はよく分からないが、彼の荒んだ目付きが解消されることはない。
今度は、ひなこ越しに雪人を睨む。
「で? 新婚旅行の話はどうなった訳?」
「あ」
すっかり忘れていたと声を上げたのは、ひなこだけだった。
楓が処置なしとばかりに項垂れる。
「……あんた、いつもこんなカンジで、親父にうまいこと丸め込まれてんじゃねーだろうな……何か段々心配になってきた……」
「そんなことは、ないと思う、けど……」
言いかけたが、視線を明後日に逸らす雪人を見て、ひなこは反論を続けられず黙り込んだ。
雪人が甘やかな笑顔で語るのを、ひなこは呆然と聞いていた。
「もちろん新婚旅行といっても、二人きりという訳にはいかないけれどね。子ども達も一緒に、ちょっとした旅行感覚で。パスポートもあるんだし、重く考えずに、ね?」
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確かに海外旅行の経験はあるが、それは御園学園での修学旅行のことだ。ひなこがちょっとした旅行と言われて思い浮かべるのは熱海とか近場であって、決して海外ではない。
出会ったばかりの頃を彷彿とさせる立て板に水っぷりに、ひなこは気が遠くなった。
「雪人さんが何を言っているのか、久しぶりに分からなくなってます……」
「あ、お願い、ごめん。そんな物凄い勢いで引かないで」
心の距離をぐっと縮めるように、雪人はひなこの手を握った。
「雪人さんに引いてる訳じゃなくて、結婚しても埋められない感覚の違いに引いてるだけですから……」
「それとても深刻なヤツだよね。離婚原因によく挙げられてるヤツだよね」
何を焦っているのか、雪人はやたらと必死だった。どれだけ深刻な意見の相違があっても、好きな気持ちはなくならないのに。
ひなこは大好きな旦那様を落ち着かせようと微笑んだ。
「正確には、自分自身に落ち込んでるんです。いつまで経っても全然慣れなくて、情けないなって」
少しは慣れればいいものを、いちいち驚いてしまう自分が嫌だった。ちっとも夫婦になれた気がしない。
けれど雪人は、ひなこのちっぽけな悩みを笑い飛ばしてくれる。
握っていた手に優しくキスをして、甘すぎる笑みを浮かべた。
「僕は、そんな変わらないあなたが好きだよ。変わったとしても、好きでい続ける自信はあるけれど」
「雪人さん……」
「だから、たまには『雪人』って、呼び捨てにしてほしいなって思ってしまうんだ。……僕こそ、いつだってあなたに求めてばかりで、とても情けないよね」
そのまま手を頬に当てながら、雪人は困った笑みになった。すがるようにも見えて、期待に応えようとひなこは口を開いた。
「そんなことないです。えっと、その、ゆ、ゆ、ゆ、ゆきひ――――」
「オーイ。久々に実家に帰ってみれば、何やってんだバカップル」
突如割り込んだ声に、ひなこは慌てて雪人から距離を取った。
振り向くと、リビングのドアに呆れ顔の楓が寄りかかっていた。ひなこの頬はどんどん赤くなる。
「お、おかえりなさい、楓君。……いつからいたの?」
「ただいま。親父がマカオについてプレゼンしてる辺りからかな」
「それほとんど最初からだよね!?」
ひなこは悲鳴を上げてのたうち回りたくなった。他人に聞かれるのも嫌だが、家族に聞かれるのが一番辛い。
楓は全く平常運転で手洗いとうがいを済ませ、ようやくソファに座った。身を固くするひなこと、邪魔されて不満げな雪人を改めて見比べる。
「あんたら、いつもあんな会話してる訳? マジでヤバイな」
「お願いだから蒸し返さないで!」
ひなこは小さくなって顔を覆った。
だが、キスをしている場面を見られなかったことだけは、不幸中の幸いだった。あれを目撃されたら色々と、何かが終わってしまう気がする。
もうとにかく居たたまれなくて、ガックリ肩を落とした。
じめじめと落ち込むひなこを置いてきぼりに、親子の会話は進んでいく。
「新婚なのは分かるけど、柊達の前では自重してるんだろーな」
「もちろんだよ。ところで、そろそろ彼女はできたのかな?」
「できてねーよ。つーか会うたびそうやって牽制すんのやめろよな。大人げねぇ」
「だって、どう考えても僕にとって一番の強敵は楓だからねぇ。お前が彼女でも作らない限り、心から安心はできないんだよ」
「フラれてんだよ俺は。一年以上も前に」
「まだ一年だよ。それに、タイミングが少しでもずれていたら、違う結末もあり得たかもしれないし」
途中から、彼らがひなこについて話していることに気付いた。
しかも雪人はどうやら、楓がまだ気持ちを引きずっているのではないかと疑っているようだった。
それは、楓にもひなこにも失礼な誤解だ。ひなこは憤慨して口を挟む。
「雪人さん、疑うなんて酷いです。私は、絶対に雪人さんだけなのに」
「ひなこさん……」
ひなこの恨めしげな視線に気付き、一瞬感動しかけた雪人は慌てて取り繕った。
「ごめん! ごめんね! ほんの少しだけ不安だったんだ。僕は本当に愛されているのかなって。普段のあなたの優しさを見ていれば、疑う余地なんてないのに……。でも、僕はどうしたって、あなたとの年齢差を埋められない。一緒のキャンパスに通うことはできないし、飲み会の誘いなんかもこれからあるだろうし……」
自分よりずっと背の高い雪人がしょんぼりと項垂れる姿は、何だか可愛らしく思えてしまう。悔しいが、怒りも持続しなかった。
ひなこはそっと雪人の手を握った。
「年齢差が不安なのは、私も一緒です。私は、雪人さんの側にいる、仕事もできて大人で、とっても魅力的な女性達に、到底太刀打ちできませんから……」
付き合っている時、彼の会社で行われたパーティに一度だけ顔を出したことがある。
雪人は何というか、全方位から狙われていた。ひなこは『雪人と付き合っているのは私だ』と、何度も叫びそうになった。年齢の問題もあって息子の友人として紹介されたことも、当時はひどく悲しかったものだ。
「……でも私は、雪人さんを信じてます。雪人さんとこれまで過ごしてきた時間を、分け合ってきた想いを。だから、あなたにも信じてほしい」
雪人が、ぎゅっと手を握り返してくる。まだ揺れる瞳は、迷子の子どものようだ。
たまにこうして幼い少年のような顔をするから、放っておけないと思うようになったのだ。彼の手を離せないと。
ひなこは、雪人を安心させるために優しく微笑んだ。
「それに、合コンというか飲み会? には誘われましたけど、ちゃんと断りました。私には雪人さんがいますからね」
言った途端、雪人の空気が凍り付いた。
「合コン……誘われたの? 相手は男?」
「雪人さん……」
今までの会話は何だったのかと言いたくなるような堂々巡りの気配に、ひなこは肩を落とした。根気よく言い聞かせても、彼の嫉妬は止まらない。
「ひなこさんのことはもちろん信じているよ。ただ周りの男共に嫉妬してしまうのは、どうしたってやめられないんだ。僕は心が狭いから、ひなこさんの全てを独占したいと思ってしまう……。とりあえず、その男の名前を教えてくれる?」
「な、何をする気ですか?」
「何も手出しはしないよ。ただ、ほんのちょっと調べるだけ」
「調べるってなんですか? もうっ、そんな必要ありませんってば!」
ひなこが再び怒り出すと、白けた声が過熱する二人を遮った。
「――この会話、続くカンジ? なら俺、アパート帰るけど」
楓の目がはっきり死んでいた。
ひなこはハッとする。確かに親の喧嘩など、子どもの前で見せるものではない。
「ごめんね楓君。みっともないところを見せちゃって……」
「あんたの中でそれはケンカなの? イチャイチャじゃなくて?」
慌てて謝ると、楓は死んだ目のままうわ言のように呟いた。
言っている意味はよく分からないが、彼の荒んだ目付きが解消されることはない。
今度は、ひなこ越しに雪人を睨む。
「で? 新婚旅行の話はどうなった訳?」
「あ」
すっかり忘れていたと声を上げたのは、ひなこだけだった。
楓が処置なしとばかりに項垂れる。
「……あんた、いつもこんなカンジで、親父にうまいこと丸め込まれてんじゃねーだろうな……何か段々心配になってきた……」
「そんなことは、ないと思う、けど……」
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