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本編 ─羽ばたき─
三千世界の鴉を殺し──※
しおりを挟む荒々しく猛る男は微笑む少女の脚を乱暴に掴むと、その無抵抗な身体に襲いかかった。
「……お前っ」
指を三本、蜜壺に咥え込ませながら激しく柔壁を擦り、飛び散る蜜も厭わずに更に溢れ出させようと最奥に突き立てた。
「あっ、あっ、あっ、んぁぁ……!」
「煽るな」
苛ついた男の声は少女には届いていない。少女の身は男からの悶えるほどの快楽に支配され、それ以外はあまり感じられなくなっていた。ただ不機嫌な様子の男でも、その実は決して自分を蔑ろにしている訳ではなく、有り余る気持ちを不器用にぶつけようとしているだけなのだと少女は意識の彼方に思う。
「んあぁっ!」
子宮口が指に暴かれる。執拗に蠢き、離れようとしない。
奥が熱くて仕方なく、黒髪を乱した少女に男は口の端を吊り上げた。
「煽るほど余裕なのだな」
「あっ、うぅ……うきょ、さま……」
うねる蜜壺は指を抜いても代わりを欲しているようにヒクヒクとしていて、膣の周りを撫で上げるだけの軽い愛撫も連続の果てを強いられた少女にとっては強烈だった。
男は嗤う。その顔はいつも良からぬことが起こる兆しなのだが、突然に身を起こされた少女の視界は揺れ、何があったのか処理出来ないまま男の腹の上に乗せられた。
「挿れろ」
「……え……」
「自分で挿れてみろ」
少女の柳腰を男の無骨な手が鷲掴む。有無を言わせず逃がしもしない視線に抗う術を持たない少女は羞恥に震えるが、男は許しはしなかった。
「煽った責任は取れ。自ら招き、動くんだ」
涙が零れそうな少女の乳首をつねり、行為を促す。
「痛いのは嫌だろう?」
言いながら、つねる。声音は幼子をあやすように優しげだが、目は捕えた獲物を仕留めようと鋭さを増し、情欲にまみれて爛々としていた。思えば少女を上に乗せるのは何度かあったが、自ら挿れさせるのは初めてではないか。
蒼く鋭い視線に縫い付けられ、乳首に感じるわずかな痛みに高い声を洩らしながら少女は観念して俯いた。
「良い子にしていれば、またココを可愛がってやる」
つねられて赤くなった乳首はわずかな刺激にも敏感に反応し、優しすぎる愛撫にさえ蜜を垂れ流しては男の腹部を濡らした。おずおずと自分の背後に手を伸ばし、猛る男の楔を包む。腰を上げ、秘部を切っ先に近づけた。
「もっと腰を下ろせ」
潤んだ膣の、表面をなぞる楔が蜜にまみれた。少女の意思とは関係なく男を迎えようと開閉する膣口。もどかしく甘い刺激に秘部から腰へ電流が走った。少女は眉を悩ましげに歪め、男の劣情を宿した視線に晒されながらゆっくりと腰を下ろしていった。
「んん……はぁぁ……」
太い楔は中を押し分け、少女の良いところを抉りながら存在を主張する。
男から挿れられるのとは違い、今は自分の手で快楽を感じさせられている状態にある。
いつもとは異なる状況下で少女の中では堪らないほどの官能の渦が生まれ、楔を咥える膣がきゅうきゅうと蠢いた。
「挿れるだけで感じているのか」
男の視界に映るのは、濡れそぼった膣に包まれて蜜が伝う己の怒張と、全身を赤に染め上げ、美しく艶やかな……少女の綻ぶ姿。男は目の前に広がる光景と下半身の締め付けられる感覚に、腰を動かしたい衝動に駆られながらも眉をしかめて堪えた。
早く打ちつけ、早く少女の中を堪能したい。喘がせ、啼かせたい。狂うほど放ちたい。じわじわと呑み込まれる快楽に息を吐きつつ、少女の白い太腿を撫でた。
「……っ、……孕ませてやる…………」
欲情しきった男の呟きは虚空に消え、震える少女には届かない。男の指示と自身の意思で導きながら、胎内に徐々に埋まっていくモノに夢中になっている。やがて少女は怒張を全て受け入れ、少し痙攣をした後、一息吐いた。
「どこまでだ」
ニヤリとした男のからかう声にチラリと目を向け、少女は子宮のある辺りを撫でる。
「ぁ……ここまで……」
男の切っ先が刺さる胎内。熱く太く占領され、ギチギチと隙間も無い。男だけが好きに出来る、少女の大事な部分。
「ここ……奥まで届いて……熱くて……」
少し力を入れるだけで克明に感じ取れる形。そこから生まれる気持ち良さに、のぼせた息を吐いた少女は幼子のような声音で男に訴えてみせた。
「どうしたい」
「ん……はぁ……」
「このままが良いか。小毬」
疼く程度の快感で、男の子種をまだ受け入れていない状態で。まだ、足りない。
「いや、いや……もっと……」
「小毬」
「ほしい……ほしいの……烏京さま……」
少女の太腿を撫でる男の手に力が籠った。黒い嗤いは男の中で生まれた企みの闇を深め、飢えた獣の如く牙を剥き……腰を一気に突き上げた。
「うぁっ! んあぁぁっっ……!」
過ぎた快楽が内臓に広がる。待ち詫びた男からの刺激に胎内は喜んで蜜を飛び散らせ、よく味わおうと食い締めにかかった。
「あっ、あっ、あっ、あっ……ふあぁぁっ!」
下半身から聞こえる厭らしい水音も、肌がぶつかる音も、太腿を掴む熱い手も、胎内を抉られるのも全てが気持ち良く、少女も堪らず無意識に腰を動かした。
「んっ、あぁっ」
「自分から腰を動かすとは……そんなに俺が恋しいか」
「はい、はい……すき……すきですっ……」
発情した少女から洩れた甘美な言葉。聞いた瞬間、背筋がゾクゾクとし、男の額から汗が滲み出た。
「……堪らないな」
少女の小さい手を掴んだ男は食い縛った歯の間から劣情を帯びた声を発した。
指を絡ませ合いながら、腰を打ちつけ合う。下から上から、互いの衝撃で渦巻いた強烈な刺激が波紋となって、二人の身体を襲った。
「ぁ……だめ……」
蜜と汗にまみれ、下半身がズクズクになるまで激しく交わる。少女の朱に染まった艶かしい裸体が悶える様を目にしながら、締まる膣を好きにしている男の怒張は更に熱を上げ一層強く腰を突き上げた。
「うきょうさまっ……おねがい……」
繋いだ手がきつく絡まり、視線をぶつけながら二人は上り詰め……。
「出すぞ……全て、受け取れ……!」
「も、だめっ、あぁぁぁぁっ……!!」
全身を震わせ、仰け反って叫んだ少女の胎内に男の白濁が満ちる。残滓の一滴すら呑み込ませようと細かく腰を突き上げる男の動きに、少女はとろけた表情を浮かべた。
「うきょうさま……わたし、いいこ……?」
「あぁ。良い子だ」
力が入らなくなった身体を寝台に沈められた少女の乳房に擽ったい感触が生じた。先端には触れず、男の指が優しく這い回る。
「さっきは痛めつけてしまったからな。良い子にしていた分、今度は愛でてやろう」
果実に舌が被さり、音も無くねっとりと吸い上げられれば少女の口からは濡れた声が洩れた。
「良い子だ」
仔猫が母乳を吸うように優しく、それでいて適度な刺激も与えるよう食み舐める。乳輪に、乳房のそこかしこに咲く赤い花の痕。少女は所有印を付けられながら男の腰にもじもじと脚を擦り寄せ、降ってくる唇に喘いだ。深く息を吸い、男を見る。
「何だ。まだ欲しいか」
蒼の瞳に静かに見つめられ、とろけた表情でこくりと頷く。その反応に男は目を細め、身体を起こした。
「どこに、何が欲しい」
身の奥に再び熱が灯り、楔は硬度を取り戻していく。
甘い熱に浮かされながら、口も閉じずに少女は言う。
「私の子宮に……烏京さまの子種を……もっと……」
「さすが俺の小毬だ」
艶やかな顔をした少女を見つめながら、蜜壺に己をあてがう。誘うようにヒクヒクとしている表面を撫でると同時に、上部にある敏感な粒も刺激すれば吐息混じりの声が聞こえてくる。欲情した少女を目に焼きつけながらゆっくりと腰を進め、蜜に濡れた最奥に到達すると、微かに喘ぐ少女の頬に手を伸ばした。
壊れ物を扱うようにふわりと撫で、愛しい存在と繋がった男の口からぽつんと言葉が零れた。
「俺だけのモノだ……ずっと……一生……」
それは、その言葉は……。
「烏京さま……」
「小毬」
かつては届かなかった。男の呟いた声も、安らかにゆるめた表情も。遠い記憶の彼方より、恐怖で涙する少女の顔が今の少女と重なった。だが……。
「小毬……小毬……」
男の慈愛に満ちた言葉が少女に響く。
全て、全て……男の優しげな眼差しも声も。
「んっ、もっと……ほしい……ほしいのっ……!」
律動に溢れた少女の涙は、恐怖ではなく幸せだと男に伝える。真の愛情が、少女に染み渡った。
────────────
「……烏京さま……」
「何だ」
幾度ものまぐわいで全てを委ね合った二人は寝台に身を横たえ、静かに話をしていた。向かい合わせで相手の素肌に手を添わせ、愛しさが籠った眼差しで見つめる。
「赤ちゃんね。男の子と女の子、どちらが良いですか……?」
うつらうつらとしながら掛けられた問いに男は一瞬、口を閉ざした。子供について少女の口から具体的に話が出たのは初めてで、胸に嬉しさが込み上げると共に、穏やかだった瞳を真剣なものに変えた。
「どちらでも構わない」
決して、どうでも良いということではない。少女の子ならば男女関係なく愛せる。健康でいてくれればと思うが、ただ一つだけ。ほんの少しだけ心に秘めていた願いを吐き出す。
「ただ、お前に似た子が良い」
「……!」
愛しい少女に似た子。少女と瓜二つの赤子を想像し、笑みを洩らした男に恥じらいながら、少女も思いを吐露する。
「私は、烏京さまに似た赤ちゃんも可愛いと思いますよ……?」
そう言われ脳裏に描こうにも、自分と似た赤子の姿を想像するのはなかなかに難しい。自分の顔に興味を持ったことは一度も無いが、果たしてどうなのか。
「……それは知らんが、お前に似たら良い。可愛いらしい顔の方が子供も嬉しがる」
「……っ! そんな……烏京さまは格好良いもの……」
真剣に頬を膨らませて反論する少女に男は目を見張る。
「男の子で烏京さまに似たら、凛々しく立派に成長するでしょうね……」
夢見心地で呟く少女に顔をしかめた男は仰向けに体制を変え、呆れたように溜め息を吐いた。
「俺が格好良い、か……。つくづく物好きな鳥だな……」
「その物好きな鳥を愛してくれているのは、一体どこの狩人様でしょうね」
楽しそうに語る少女は男に身体を密着させ、ころころと笑う。男も少女の頭を撫でながら、胸に乗る心地好い重みに目を閉じた。
長時間に渡る情交の末、二人はいつの間にか眠りに就き、外から響く明烏の鳴き声でさえ幸せな眠りを邪魔できやしなかった。
朝日が射し込んで柔らかな空気が漂う寝室。繋がれた手はずっと離れず、男からの愛である指輪は少女の薬指で美しい煌めきを放ち続けていた。
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