魔法少年 ミラクル☆みやこ

ももちよろづ

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いつか王子様が

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「いっけな~い☆ 遅刻、遅刻!」


新学期。

今日も、いつもと変わらない朝。

食パンを咥えて、慌てて走る。


俺、上野 きょう

高校三年生!

好きな食べ物は、フライドチキン!

性格は、ちょっとおっちょこちょいで、子供っぽいよ!


ドンッ!

「わっ!」

T字路で、誰かにぶつかった。



「いったぁ~……」

「ご免ね、大丈夫?」


トゥンク……♡

か……格好良い……♡

透き通る様な白い肌、ぷっくり丸い頬っぺた、長いまつ毛の、男の子。

背は、俺より、ちょい高い位?

同じ学校の制服だ。

「あっ!俺の食パン!」

俺は、彼とぶつかった衝撃で、咥えていた食パンを、地面に落としてしまった。

「3秒ルールだよ」

彼は、食パンを拾い上げると、パッパッと砂を払って、俺の掌の上に乗せた。

「じゃあ」

そう言うと、彼は名前も告げずに走り去った。

誰だろう……?



彼と衝突した余韻で、ポーッと呆けていると、

白い犬が寄って来た。

「クゥ~ン……」

「お前、フラフラじゃん。腹減ってんの?

 先刻、俺が落とした食パンだけど、食べる?」

俺が食パンを差し出すと、犬はガツガツと食い出した。


キーンコーンカーンコーン……

「いけない、遅刻する!」



キーンコーンカーンコーン……


「あぁ、木尾きお君じゃない?生徒会長の」

「えっ、たっくん、知ってるの?」

休み時間、教室前の廊下。

俺は、親友のたっくんに、朝の出来事を話した。

「ほら、あそこ」

たっくんが窓から指差す方を見ると、中庭で、今朝の彼が、女の子達に囲まれていた。

「木尾 勇気。中等部の一年生で、生徒会長。

 成績優秀、容姿端麗、スポーツ万能、人当たり良し。

 非の打ち所が無いよね」

「へぇ……」

そんなに完璧な子だったんだ。

万年、赤点スレスレの俺とは、住む世界が違う感じ……。



「ねぇねぇ、木尾君て、魚は好き?」

「うん、好きだよ」

「じゃあ、放課後、MARCOマルコデパートに行かない?

 今週、高知の物産展やってるの!

 かつおの解体ショーもあるんだって!

 鰹の叩き、その場で食べられるわよ」

木尾君が、取り巻きの女の子達に、誘われているのが、聞こえて来た。

凄い人気だな~。

窓からジッと眺めていると、俺の視線に気付いた木尾君と、目が合った。

彼は、ニコッと笑い掛けてくれた。

あわわ……!///

俺は、慌てて、窓際でしゃがみ込んだ。

そーっと、目から上だけ窓から出して、こっそり木尾君を見る。

「……京さんにも、春が来た?」

「ち、違うよ、たっくん!そんなんじゃ……!///」

「顔、真っ赤だよ?」

違うよ。

ただ、何か気になるって、それだけ……。



~ 一方、その頃…… ~


「『日本高知化計画』は、どうなっている?」

「はい、大王様!

 滞り無く、進んでおります。

 今週は、都内のデパートで、物産展を開催中です」

「うむ、良かろう」

「大野く~ん、本気でやるつもり?」

「寺谷さん、俺は、いつだって本気ですよ」

「はぁ~……」

「出でよ、カツオ怪人!」

「はっ、大王様、ここに……」

「行けっ!我が王国の力を、奴等に見せ付けるんぜよ!」

「イエス マイロード」



その日の夕方、俺の部屋。


「木尾君、かぁ……」


『大丈夫?』


格好良かったな……♡

「う~……///」

俺は、枕に顔を埋めて、ベッドの上をゴロゴロ転がった。



コン、コン


窓を叩く音がする。

見ると、朝の白い犬だった。

俺は、ガラリと窓を開ける。

「お前、家迄、付いて来ちゃったの?」

犬は、開けた窓から、シュタッと部屋に入って来た。

「どうも!シロです!」

「キェェアァァァシャァベッタァァァァ!!!」

「今朝は食パン、ご馳走様でした。

 何日もろくに食べてなかったから、助かりました」

「お前、大丈夫?

 昼飯の残り物無いか、台所見て来るわ」

冷蔵庫の中には、昼の残りであろう、おかずが入っていた。

ラップを取って皿を差し出すと、

シロと名乗る犬は、ムシャムシャと食べ出した。

「俺に、何か用?」

「ひゃい、モグは」

「口の中のモノを咀嚼してから喋れ」



「モグモグ……ボクは、魔法少年を増やす為、各地を営業に回っています。

 最近、東京近郊の担当になりました。

 今後とも宜しく」

名刺を渡された。

『派遣会社 マジカルスタッフ

 営業部  シロ      』

役職が付いてない所を見ると、平社員らしい。

「俺は、上野 京だよ」

「上野さん。ボクと契約して、魔法少年になりませんか?」

「え、でも俺、高3なんだけど」

「えっ。

 うわ、キッツ……。

 中学生かと思ってました……童顔なんですね」

シロは、まじまじと俺を見詰めた。

高3で魔法少年は、年齢的にかなりキツい。

小~中学生辺りが、相場だろう。

「だ……大丈夫です!

 昨今は、『大学生で魔法少女』と言う、

 魔法ババa……魔法おばさn……ベテラン魔法少女も、存在しますから」

「ふぅ~ん。じゃあ、ギリギリOK?」

「お願いです!ボクと契約して下さい!

 ノルマ達成しないと、会社に帰れないし、リストラされるんです!

 家には、妻と子供が!

 30連勤目で、今も、サービス残業中で……」

「生々しいわ!」



「でも、どうして魔法少年を増やしてるの?」

「今、日本には、悪の大王の魔の手が迫っているんです」

「あ、悪の大王!?」

「はい。その名は、大王・大野。

 高知国王です。

 大王は、日本を、高知国の支配下に置こうとしています」

「高知……って、四国だよね?

 高知国に日本が占領されたら、どうなるの?」

「食卓の動物性タンパク質の摂取源が、かつおだけになります」

「は?

 て事は、フライドチキンは?」

「当然、食べられません」

それは困る!

「じゃあ、ボクと契約を……」



『キャーッ!』

「何、なに!?」

何気無く点けていた、ご当地テレビ番組から、悲鳴が聞こえて来た。

『臨時ニュースが入りました。

 MARCOデパートの催事場で、高知物産展の、かつおの解体ショーの最中に、

 鰹に足が生え、暴れ出しました!』

キャスターが、トチ狂った内容を伝える。

「ん?あれは……」

逃げ惑うギャラリーの中に、見覚えのある顔があった。

「木尾君だ!

 助けに行かなきゃ!」

「あっ、上野さん!」

俺は、着の身着のまま、走り出した。
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