Momo

ももちよろづ

文字の大きさ
上 下
7 / 7

笑顔の行方④

しおりを挟む
あ……!

朝からの騒ぎで、愛龍のレヴィに餌を遣ってないジャマイカ!

トップブリーダーの俺は、厨房から、ビタモンを取り出し、レヴィ用の皿に開けた。

キッチンには、まだ鯡の匂いが漂っていて、俺は思わず顔をしかめた。

足早に立ち去り、団の建物の裏の、モンスター牧場へ向かった。

「ふぅ……此処は閑かだぬ」

牧場では、レヴィや、団の他のモンスター達が、のびのびと放し飼いにされている。

楽しそうな鳴き声があちらこちらから聞こえて来た。

「レヴィー、飯だぞー。遅れてすまんな」

…………………………居ない!

レヴィが居ない!?

「真逆…………!?」


※ ※ ※


「気ん持ちいい~っ!」

空の上。

見渡す限りの雲海。

「クーヤ、もう肉まん食べたかな~っ?」

「クゥゥ~!」

青い龍の背に乗って、シャーマンの女性が飛んでいる。

「クーヤったら、どんなに頼んでも乗せてくれないんだもん。私だってレヴィとお散歩したかったの!」

「クルゥ、クルゥ!」

「うわ~、見て。家があんなに小さく見えるよ!」

「クゥ~」

遥か下方に、ナーロッパの家々が見える。

ミニチュアの様だ。

「あ、アジトだ~。お~い!お~い!」

手を振っても、見える訳は無い。


※ ※ ※


「あの馬鹿……!」

クーヤは苦々しく天を睨む。

「空の上には……」


※ ※ ※


「光る~雲~を突き抜~け Far away~♪(Far away)」

「クゥゥウ~♪」

「体~中に~広がるパノラマ~♪」

「クゥウゥクゥウゥウ!♪」

モモが、昔、ナーロッパで放映されていたアニメのOPを歌っている。

「そうだ!今こそあの伝説の技の練習を」

「クゥッ!」

モモはポーズもそのままに、

「か~……

 め~……

 ●~……

 め~……

 波ーーーーーーーーっ!!!」

モモの掌から、あの技に模した、攻撃魔法が放たれた。



前方から、招かれざる者が迫り来る。

「え……?」

ドラゴンライダーだ。

「レヴィ!引き返そう!」

「クゥ!」

「……女」

『ビクッ!』

モモが振り返ると、凶々しい紫の竜の背に乗る、魔道士の男が居た。

ロッドを携えたその男は、何故か腹を痛そうに盛んにさすっている。

「……今の魔法はお前か……?」

「そ……そうですが」

「俺の腹に直撃したぞ!」

「ご……ごめんなさい。当たるなんて。直ぐに、ヒーリングを」

「もう薬草を塗ったわっ!」

(ん……?こいつ、スマイル団の……?大魔王様への良い手土産だ)

「こっちへ来い」

「お断りします♪(゜ω゜)」

モモは、ポーズを付けて踊ってやった。

魔道士は、必死に笑いを堪えている。

もっとニコニコしようよ!とモモは思う。

「面白い事を言う……だが」

魔道士の掌の中に集まった魔力が、音を立てる。

「その体で、俺のトールハンマーに、何度耐えられるかな?」

「ひ……!助けて!クーヤぁーーーーっ!!」



「モモッ!!」

(!!? クーヤ!?)

クーヤの声が響いた、次の瞬間。

『べしっ!』

レヴィのしっぽアタックが、魔道士を凪ぎ払った。

「へ?」

まるで、達磨落としの様に。





















足場を失った魔道士が落下する。

「グモォォォーン!」

主を追って急下降する紫の竜。

ポカーンと呆気に取られるモモを背に乗せ、レヴィはゆっくりと旋回した。



「あ、ありがと、レヴィ」

(先刻、確かに、クーヤの声が……?)

「俺!俺だよ俺!」

「わっ!?」

振り向いたレヴィが、クーヤの声で喋っている。

「ななな!?」

「……レヴィは、憑依出来るモンスターだぞ?」

「あ」

忘れてた……w


※ ※ ※


―― 酒場 ――


「ふー、やっと改修が終わったメェ。ついでに、内装を、しーちゃん好みにリニューアルしてみたメェ」

『どかーーーーん!!』

「メェーーーー!!?」

上から何かが降って来た。

「メェッ!?」

しーちゃんの目の前には、天使の羽根と星の飾りにまみれた、魔道士の姿が。

「……(・-・)/ヨッ」

「ま……又、店が粉々メェ……!」

しーちゃん、涙目。


※ ※ ※


モモが地上に降りると、

牧場の真ん中に、

クーヤが居た。

モモは、

ニコニコ、

と笑い掛けた。

クーヤも、

ニコニコ、

と笑い返した。

モモは、何だかもう、それだけでいい様な気がした。

空が青い。

太陽もニコニコしている。

夕食には、好物を作ってあげよう。

笑うクーヤを見つめ乍ら、モモは、そんな事を考えていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~ その後

菱沼あゆ
キャラ文芸
咲子と行正、その後のお話です(⌒▽⌒)

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

後宮物語〜身代わり宮女は皇帝に溺愛されます⁉︎〜

菰野るり
キャラ文芸
寵愛なんていりません!身代わり宮女は3食昼寝付きで勉強がしたい。 私は北峰で商家を営む白(パイ)家の長女雲泪(ユンルイ) 白(パイ)家第一夫人だった母は私が小さい頃に亡くなり、家では第二夫人の娘である璃華(リーファ)だけが可愛がられている。 妹の後宮入りの用意する為に、両親は金持ちの薬屋へ第五夫人の縁談を準備した。爺さんに嫁ぐ為に生まれてきたんじゃない!逃げ出そうとする私が出会ったのは、後宮入りする予定の御令嬢が逃亡してしまい責任をとって首を吊る直前の宦官だった。 利害が一致したので、わたくし銀蓮(インリェン)として後宮入りをいたします。 雲泪(ユンレイ)の物語は完結しました。続きのお話は、堯舜(ヤオシュン)の物語として別に連載を始めます。近日中に始めますので、是非、お気に入りに登録いただき読みにきてください。お願いします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

あやかし薬膳カフェ「おおかみ」

森原すみれ@薬膳おおかみ①②③刊行
キャラ文芸
\2024/3/11 3巻(完結巻)出荷しました/ \1巻2巻番外編ストーリー公開中です/ 【アルファポリス文庫さまより刊行】 【第3回キャラ文芸大賞 特別賞受賞】 ―薬膳ドリンクとあやかしの力で、貴方のお悩みを解決します― 生真面目な26歳OLの桜良日鞠。ある日、長年続いた激務によって退職を余儀なくされてしまう。 行き場を失った日鞠が選んだ行き先は、幼少時代を過ごした北の大地・北海道。 昔過ごした街を探す日鞠は、薬膳カフェを営む大神孝太朗と出逢う。 ところがこの男、実は大きな秘密があって――? あやかし×薬膳ドリンク×人助け!? 不可思議な生き物が出入りするカフェで巻き起こる、ミニラブ&ミニ事件ストーリー。

同窓会に行ったら、知らない人がとなりに座っていました

菱沼あゆ
キャラ文芸
「同窓会っていうか、クラス会なのに、知らない人が隣にいる……」  クラス会に参加しためぐるは、隣に座ったイケメンにまったく覚えがなく、動揺していた。  だが、みんなは彼と楽しそうに話している。  いや、この人、誰なんですか――っ!?  スランプ中の天才棋士VS元天才パティシエール。 「へえー、同窓会で再会したのがはじまりなの?」 「いや、そこで、初めて出会ったんですよ」 「同窓会なのに……?」

処理中です...