ショコラ

ももちよろづ

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ショコラ

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ショコラには、お友達が、一人も居ません。

何故なら、触れられると、溶けてしまう体だからです。

「誰かに、触れたい。」

ショコラは、今日も、一人ぼっちでした。



或る日の事です。

ショコラの前に、一人の男が、現れました。

「やぁ!お嬢さん」

「貴方は、だぁれ?」

「俺は、銀紙。」

「あたしに、何か、御用?」

「聞いたよ。君は、触れられると、体が溶けてしまうんだって?」

「そうよ。」

「俺なら、君を、溶かさずに、包み込んであげられる」

ショコラは、銀紙と、お友達になりました。



「どうして、あたしと、いつも一緒に居るの?」

「君を、好きだからさ。」

銀紙は、ショコラに、ずっとずっと、付いて回ります。

「少しは、一人の時間も、欲しいわ。」

「駄目だよ。君の事が、心配だもの。

 目が離せない。」

ショコラは、段々、銀紙を、疎ましく思う様になりました。

「左様なら。」

「どうしてだい?」

「貴方と居ると、息が詰まっちゃう。息苦しいわ。」

ショコラは、銀紙とお別れしました。



それから、しばらくした、冬の日。

ショコラは、真っ白な人に、出会いました。

「貴方は、だぁれ?」

「僕は、スノーマン。」



「溶けない!溶けないわ!」

スノーマンは、ショコラを、溶かしません。

銀紙と違って、自由にしてくれます。

「スノーマン。私、貴方と居ると、とっても楽しい!」

「僕もだよ、ショコラ」

ショコラは、スノーマンを、好きになりました。

ずっと、彼と一緒に居たい、と思いました。



春が近付いた、或る日。

スノーマンの様子が、変です。

「どうしたの、スノーマン!?」

「僕の体は、雪で出来ているんだ。

 だから、春になって、暖かくなると、解けてしまうんだよ。」

「そんなの、嫌よ!」

「仕方の無い事なんだ。」

スノーマンの体は、所々、解けて、水になってしまっています。

「君と過ごせて、楽しかったよ、ショコラ。

 冬になったら、又、会おうね。」

そう言うと、スノーマンは、解けて、消えてしまいました。



ショコラは、又、一人ぼっちになりました。

春が来て、

夏が来て、

秋が来て、

やがて、又、冬が来ました。



「誰かに、触れたい。」

ショコラは、原っぱに、ゴロン、と仰向けに寝転びました。

ひら、ひら……

空から、白い妖精が、ショコラの鼻の上に、舞い降りました。

「……お帰りなさい。」

ショコラは、静かに、目を閉じるのでした。
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