1 / 5
牡丹の雛祭り①
しおりを挟む
~ 摂津国 神崎・遊里 ~
明石「もうじき、雛祭りどすなぁ。」
伊吹「ん? あぁ、もう、弥生か……。」
明石「……うちの家、貧しゅうて。
お雛さん、買うて貰えへんかってん。」
伊吹「………………。」
(娘を、こんな遊廓に、売る位だもんな……)
明石「お雛さんて、綺麗で、幸せそうで……。
羨ましかった。
あんな風に、なりたかった。」
伊吹「牡丹……。」
明石「そう言うたらな、お母ちゃんが、
うちに、これ、折ってくれましてん。」
~ 神崎の街 ~
伊吹「折り紙雛、か……。
雛人形位、買ってやれるが……。」
(あんな風に、なりたかった。)
伊吹「……何とか、牡丹を、喜ばせてやりてぇな……。」
~ 大江山・鬼の屋敷 ~
紅葉「何これ、可愛い! お雛様?」
伊吹「あっ、こら、紅葉!」
茨木「? 不器用なお前が、手遊びなんて、珍しいな。
女にでも、貰ったのか?」
伊吹「…………そうだよ。
明石の奴、雛人形、ずっと欲しかったんだと。」
茨木「へぇ。 つくづく、不憫な娘だな。」
伊吹「何とか、喜ばせてやる方法は、無ぇかな……?」
茨木「お前が身請けして、祝言を上げれば、
晴れて『お雛様』だろう。」
伊吹「……簡単に言うなよ……。
身請け、幾ら要ると思ってんだ?」
茨木「悪徳貴族を、地道に闇討ちし続けて、何年、掛かる事やら……。」
伊吹「あーっ!」
紅葉「ねぇねぇ、兄上!」
茨木「どうした? 紅葉。」
紅葉「春になったら、皆で、お花見に行こうよ!」
呉葉「呉葉も、兄者と行きたいです」
茨木「あぁ、暖かくなったらな。」
紅葉「わーい!
あのね、あのお山、とっても、お花が綺麗なの!」
伊吹「花咲山……。
花見、かぁ……。」
~ 京の都・清涼殿 ~
帝「頼光! 頼光はおるか?」
頼光「はっ、此処に。」
帝「余は、お主に、鬼の一味を退治せよと、命じておる!
一体、いつになったら、彼奴等を討ち取って来るのじゃ?」
頼光「は、申し訳御座居ません。」
帝「あの鬼共には、幾人もの貴族が、財を奪われておるのじゃ。
余に貢ぎの良い氏ばかり……。 ふん、忌々しい。」
頼光「左様で御座居ますか。 許せませぬな。」
帝「分かったら、さっさと行って参れ!」
頼光「ひぃっ! き、近日中には必ず!」
~ 花咲山・麓 ~
茨木「おーい、伊吹。 又、何を企んでんだ?」
伊吹「なぁ、茨木。 見ろよ、この、一面の花。
この山、使えると思わねぇか?」
茨木「ん?」
~ 大江山・鬼の屋敷 ~
虎熊「えぇっ、俺達が、ですか?」
伊吹「あぁ、頼む。」
虎熊「楽器には、自信ありませんけど……。 頭領の頼みなら!」
熊「おうよ!」
虎熊「って、熊さん、楽器、出来るんですか?」
熊「生まれてこの方、触った事も無ぇな!」
虎熊「……太鼓、叩き壊さないで下さいよ?」
金熊「ほう。 これは仲々、面白そうだ。」
星熊「ふん、仕方無いね。
しかし、天下の酒呑童子が、惚れた女の為に……ふっ。」
伊吹「……///」
熊「いやいや、いーじゃないの、純愛! 俺ぁ、応援するよ!」
虎熊「頑張って下さいね!」
伊吹「ま、そう言うこったから、宜しく頼むぜ。」
金熊「話は分かったが、大将。
我々と副将を合わせても、囃子が一人、足りなくはないか?
『五人囃子』だろうに?」
伊吹「あ……!」
~ 京の都・安倍氏の屋敷 ~
晴明「……占いの結果が出たぞ、頼光。」
頼光「おぉ、かたじけない!
して、いつと?」
晴明「弥生の、三日。
この日、大江山の鬼の住み処は、手空きになる。」
頼光「おぉ、流石は、晴明殿!」
晴明「そこを、狙うと良かろう。」
頼光「分かった、恩に着る!」
ダッシュ!
晴明「但し……、その前に、鬼と鉢合わせてしまっては、元も子も無い。
従って、攻め入る道筋は……。
…………?
頼光?
頼光!
………………。
(駄目だな、今回も……)
~ 神崎・遊里 ~
明石「旦那ったら、『雛祭りの日、遊里に暇を貰え』って、文を……。 何やろ?」
番台「明石ちゃーん! お客さん!」
明石「はーい! 今、行きますよって!」
明石「もうじき、雛祭りどすなぁ。」
伊吹「ん? あぁ、もう、弥生か……。」
明石「……うちの家、貧しゅうて。
お雛さん、買うて貰えへんかってん。」
伊吹「………………。」
(娘を、こんな遊廓に、売る位だもんな……)
明石「お雛さんて、綺麗で、幸せそうで……。
羨ましかった。
あんな風に、なりたかった。」
伊吹「牡丹……。」
明石「そう言うたらな、お母ちゃんが、
うちに、これ、折ってくれましてん。」
~ 神崎の街 ~
伊吹「折り紙雛、か……。
雛人形位、買ってやれるが……。」
(あんな風に、なりたかった。)
伊吹「……何とか、牡丹を、喜ばせてやりてぇな……。」
~ 大江山・鬼の屋敷 ~
紅葉「何これ、可愛い! お雛様?」
伊吹「あっ、こら、紅葉!」
茨木「? 不器用なお前が、手遊びなんて、珍しいな。
女にでも、貰ったのか?」
伊吹「…………そうだよ。
明石の奴、雛人形、ずっと欲しかったんだと。」
茨木「へぇ。 つくづく、不憫な娘だな。」
伊吹「何とか、喜ばせてやる方法は、無ぇかな……?」
茨木「お前が身請けして、祝言を上げれば、
晴れて『お雛様』だろう。」
伊吹「……簡単に言うなよ……。
身請け、幾ら要ると思ってんだ?」
茨木「悪徳貴族を、地道に闇討ちし続けて、何年、掛かる事やら……。」
伊吹「あーっ!」
紅葉「ねぇねぇ、兄上!」
茨木「どうした? 紅葉。」
紅葉「春になったら、皆で、お花見に行こうよ!」
呉葉「呉葉も、兄者と行きたいです」
茨木「あぁ、暖かくなったらな。」
紅葉「わーい!
あのね、あのお山、とっても、お花が綺麗なの!」
伊吹「花咲山……。
花見、かぁ……。」
~ 京の都・清涼殿 ~
帝「頼光! 頼光はおるか?」
頼光「はっ、此処に。」
帝「余は、お主に、鬼の一味を退治せよと、命じておる!
一体、いつになったら、彼奴等を討ち取って来るのじゃ?」
頼光「は、申し訳御座居ません。」
帝「あの鬼共には、幾人もの貴族が、財を奪われておるのじゃ。
余に貢ぎの良い氏ばかり……。 ふん、忌々しい。」
頼光「左様で御座居ますか。 許せませぬな。」
帝「分かったら、さっさと行って参れ!」
頼光「ひぃっ! き、近日中には必ず!」
~ 花咲山・麓 ~
茨木「おーい、伊吹。 又、何を企んでんだ?」
伊吹「なぁ、茨木。 見ろよ、この、一面の花。
この山、使えると思わねぇか?」
茨木「ん?」
~ 大江山・鬼の屋敷 ~
虎熊「えぇっ、俺達が、ですか?」
伊吹「あぁ、頼む。」
虎熊「楽器には、自信ありませんけど……。 頭領の頼みなら!」
熊「おうよ!」
虎熊「って、熊さん、楽器、出来るんですか?」
熊「生まれてこの方、触った事も無ぇな!」
虎熊「……太鼓、叩き壊さないで下さいよ?」
金熊「ほう。 これは仲々、面白そうだ。」
星熊「ふん、仕方無いね。
しかし、天下の酒呑童子が、惚れた女の為に……ふっ。」
伊吹「……///」
熊「いやいや、いーじゃないの、純愛! 俺ぁ、応援するよ!」
虎熊「頑張って下さいね!」
伊吹「ま、そう言うこったから、宜しく頼むぜ。」
金熊「話は分かったが、大将。
我々と副将を合わせても、囃子が一人、足りなくはないか?
『五人囃子』だろうに?」
伊吹「あ……!」
~ 京の都・安倍氏の屋敷 ~
晴明「……占いの結果が出たぞ、頼光。」
頼光「おぉ、かたじけない!
して、いつと?」
晴明「弥生の、三日。
この日、大江山の鬼の住み処は、手空きになる。」
頼光「おぉ、流石は、晴明殿!」
晴明「そこを、狙うと良かろう。」
頼光「分かった、恩に着る!」
ダッシュ!
晴明「但し……、その前に、鬼と鉢合わせてしまっては、元も子も無い。
従って、攻め入る道筋は……。
…………?
頼光?
頼光!
………………。
(駄目だな、今回も……)
~ 神崎・遊里 ~
明石「旦那ったら、『雛祭りの日、遊里に暇を貰え』って、文を……。 何やろ?」
番台「明石ちゃーん! お客さん!」
明石「はーい! 今、行きますよって!」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
【完結】小さな大冒険
衿乃 光希(恋愛小説大賞参加しています)
絵本
動物の子供たちが、勇気を出して一歩を踏み出す、小さくても大きな冒険物語。主人公は毎回変わります。作者は絵を描けないので、あなたの中でお好きな絵を想像して読んでくださいね。漢字にルビは振っていません。絵本大賞にエントリーしています。
まほうのマカロン
もちっぱち
絵本
ちいさなおんなのこは
貧しい家庭で暮らしていました。
ある日、おんなのこは森に迷い込み、
優しいおばあちゃんに出会います。
おばあちゃんは特別なポットから
美味しいものが出てくる呪文を教え、
おんなのこはわくわくしながら帰宅します。
おうちに戻り、ポットの呪文を唱えると、
驚くべき出来事が待っていました。
たくさん読んでいただきましたら
特別編あります🐜

いたずらてんしとうれしいのほし
戸波ミナト
絵本
いたずらてんしはうっかり弓矢でサンタさんをうちおとしてしまいました。
サンタさんは冬の国にプレゼントを届けに行くとちゅうです。
いたずらてんしはいたずらのおわびにプレゼントくばりをてつだいます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる