星乃純は死んで消えたい

冷泉 伽夜

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一年目

ある人からの手紙 一枚目

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 純へ。

 突然、手紙を送ってしまってごめんなさい。

 メールでもよかったんだけど、きっと、連絡先を消してると思ったから。

 一方的で悪いけど、どうしても自分の気持ちを伝えたかったから手紙を書いてます。手紙を書くなんて、はじめてかも。だから、変なところがあるかもしれない。純みたいに、頭がいいわけじゃないから。

 この手紙を書く前、イノセンスギフトとして活躍しはじめたときのことを思い出してたよ。

 あの頃は大変だったね。

 純が苦しんでいることはわかってた。でも、助けてあげられなかった。

 今でも後悔してる。もう遅いけど、今ならわかる。誰よりも、一番に、助けてあげられたはずなんだってこと。純の気持ちに寄り添うことができたんだってこと。

 あのときから、純がおかしくなったってことはわかってた。あのとき、純が何を考えていたのか、どうして苦しんでいたのか、もっとちゃんと、考えればよかった。

 きっと純は、あの頃から、イノセンスギフトのことも、フローリアのことも、大嫌いだったんだろうね。

 でも、ほんとうはもっともっと仲良くなりたくて。でも、どうすればいいのかわからなくて。でもきっと仲良くなれると思ってた。信じてもらえないかもしれないけど。

 あのときは忙しくて、純がたくさん傷ついてるってこともわからなくて、見放した。せめてあの日あの時だけでも、一緒にいてあげられたらよかったね。ごめん。純の気持ちは、痛いほどわかってたのに。

 純が思っている以上に幼くて未熟だったんだ。たぶん、今も。

 あのときから、たくさん、大丈夫だよって、言っておけばよかった。ダンスが苦手でも大丈夫だよって。純はそのままでも大丈夫だよって。たくさん。たくさん。

 ごめんね。わかってるよ。みんな、無理してがんばらなきゃいけない状況だったんだよね。

 ごめんね。ほんとうにごめんなさい。ただ、素直になれなかっただけなんだ。傷つけたいわけじゃ、なかったのに。

 純じゃなくて、自分が消えてしまえばよかった。そうすれば純が、いなくなることはなかったのかもしれない。

 ほんとうに、ごめんなさい。







 ――二枚目に続く。

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