32 / 93
第七章「ハル、師匠になる」
30.新たな成長そして課題
しおりを挟む
「よーし、じゃあちょっと実践してみようか」
「はい!」
クロエにも魔法を教えるようになって早2週間。そろそろテスト時期かと思ったショコラとハルはあるものを用意した。
「マーシャ、私がとりあえず雑魚モンスターを2体召喚するからそれを倒せ。クロエも同じような事をするからな」
「リリィはこのちょっと枯れかけてる苗を回復魔法で。クロエはこっちの薬草畑の苗を」
「はい! 師匠!」
「分かりました……。ところでハルさん、野菜畑の当番サボったので」
「クロエ! ちょっとそんなこと言わないで!? セレネにバレたらなんて言われるか……」
「セレネー、ハルが水やりサボ……」
「ショコラさん! ホントにやめて!」
クロエの一言がきっかけでいつもの漫才が始まったが、弟子達は慣れたのかその様子を生暖かい目で見ていた。
気を取り直して、まずはショコラが召喚魔法を使い、雑魚モンスターであるホーンラビットを召喚する。その様子を見てハルはこの前のバーベキューのことを思い出したが、ショコラが目線で「倒されたら消えるタイプの奴」と投げかけたので、ふて腐れたように目を反らした。
目線でも茶番を繰り広げる2人に気づかずまずはマーシャが魔法を出す。今回はこの前とは違って「サンダー」を使う。すると、杖に願いをこめただけで杖に雷撃が走り、一気にホーンラビットを片付けた。
続くクロエも「フリーズ」を無詠唱で使い、一瞬でラビットを片付ける。その様子を見てショコラは満足そうだった。
「2人とも凄いな! 威力はともかくもう無詠唱で出せるとは滅多に見ないぞ!」
「そりゃあ認められるために頑張りましたから!」
「毎日夜遅くまで自分の部屋の机で頑張ったもんね!」
「そりゃあ凄い……でもお前らちゃんと寝てる? ハルから聞いたけど執筆活動もしてるんだろ?」
「ああ、それならレイラさんがこの薬を飲めばと」
「レイラー! 新しく来た子を実験台にするんじゃない!」
まさかドーピングをしていたとは思わずショコラは向かいの研究所にいるレイラに向かって怒鳴った。そして2人の方に向いてお説教をする。
「レイラから怪しいお薬を貰うんじゃありません! ちゃんと寝なさい!」
「はーーい……」
ショコラにお説教された2人は正座して小さくなっていた。その様子を見たハルがちょっと呆れながら、リリィとクロエに声をかけた。
「リリィ、クロエ次はこっちだよ」
「はーい」
クロエとリリィはそれぞれの位置に着く。それぞれの植木鉢の中にはハルの不注意で枯らした苗があり、そこに回復魔法をかけて治すのが2人の試験だ。
回復魔法を2人はまた無詠唱で唱える。すると、苗はみるみるうちに回復してゆき、他の苗よりも生長していった。
「凄いわ! 無詠唱で回復はおろか生長までさせるなんて!」
「そりゃ上手くなるまで何度も繰り返しましたから」
「そうそう自分に回復魔法かけて、レイラさんのポーション飲みながら」
「ちょっと!? 不健康すぎない!?」
まさかこの世界にもエナジードリンク(この場合はポーション)付けで頑張る社畜みたいな存在がいるのかとハルはビックリし、リリィを叱った。
しかし、ショコラはその様子を見て「全く……3ヶ月も飲まず食わずあげく寝ずに読書した奴が何を今更……」とぼそっと呟いた。
「おーい、3人ともちょっと」
「どうしました、ショコラ師匠」
「何かあったんですか?」
ある日、いつもの如く弟子たちを教えていたショコラは3人を呼び出し、屋敷の中へと入れた。何事かと不思議に思う3人を連れ、ショコラは一室を開ける。
そこはショコラ達がいつも使っている図書館であり、慣れてるクロエはともかく、2人はその大きさに口を開けて驚いていた。ショコラは驚いている2人をつついて、正気に戻し、3つに分かれて机に積まれている本を見せた。
「お前らにやって欲しいことはとりあえずこの本を全て読破して欲しい」
「全部ですか!?」
「ああ」
いきなりショコラに言われ、3人は驚く。1冊だけでもかなりの量があるそれは5冊ほど各列に積まれていた。あまりの量にマーシャ達が諦めたような声で言った。
「え……? これ全てですか!?」
「あのちょっと……多くないですかね……」
「うっわ、規格外……」
いきなり本を見せられた3人は慌てる。しかし、ショコラは優しくかつ諭すように語りかけた。
「ここにある本は将来魔女になったときのために必要な事が書いてある。覚える呪文は当然のこと、いつ使うべきかや魔力を消費しない方法もだ。私達2人はこの前のテストでお前らに何かを感じたし、健康を捨ててまで努力するその姿勢にうたれてたな」
「ショコラ師匠……」
「どうだ? 頑張れるか?」
「はい!」
「よーし、いい返事だ。じゃあハルこの本で分からないことがあったらアイツらに教えてやってな」
「分かりましたよ、ショコラさん」
3人の魔法修行はまだまだ始まったばかり、そしてこの3人も後にとんでもない魔女になるが……それはまた別のお話。
「はい!」
クロエにも魔法を教えるようになって早2週間。そろそろテスト時期かと思ったショコラとハルはあるものを用意した。
「マーシャ、私がとりあえず雑魚モンスターを2体召喚するからそれを倒せ。クロエも同じような事をするからな」
「リリィはこのちょっと枯れかけてる苗を回復魔法で。クロエはこっちの薬草畑の苗を」
「はい! 師匠!」
「分かりました……。ところでハルさん、野菜畑の当番サボったので」
「クロエ! ちょっとそんなこと言わないで!? セレネにバレたらなんて言われるか……」
「セレネー、ハルが水やりサボ……」
「ショコラさん! ホントにやめて!」
クロエの一言がきっかけでいつもの漫才が始まったが、弟子達は慣れたのかその様子を生暖かい目で見ていた。
気を取り直して、まずはショコラが召喚魔法を使い、雑魚モンスターであるホーンラビットを召喚する。その様子を見てハルはこの前のバーベキューのことを思い出したが、ショコラが目線で「倒されたら消えるタイプの奴」と投げかけたので、ふて腐れたように目を反らした。
目線でも茶番を繰り広げる2人に気づかずまずはマーシャが魔法を出す。今回はこの前とは違って「サンダー」を使う。すると、杖に願いをこめただけで杖に雷撃が走り、一気にホーンラビットを片付けた。
続くクロエも「フリーズ」を無詠唱で使い、一瞬でラビットを片付ける。その様子を見てショコラは満足そうだった。
「2人とも凄いな! 威力はともかくもう無詠唱で出せるとは滅多に見ないぞ!」
「そりゃあ認められるために頑張りましたから!」
「毎日夜遅くまで自分の部屋の机で頑張ったもんね!」
「そりゃあ凄い……でもお前らちゃんと寝てる? ハルから聞いたけど執筆活動もしてるんだろ?」
「ああ、それならレイラさんがこの薬を飲めばと」
「レイラー! 新しく来た子を実験台にするんじゃない!」
まさかドーピングをしていたとは思わずショコラは向かいの研究所にいるレイラに向かって怒鳴った。そして2人の方に向いてお説教をする。
「レイラから怪しいお薬を貰うんじゃありません! ちゃんと寝なさい!」
「はーーい……」
ショコラにお説教された2人は正座して小さくなっていた。その様子を見たハルがちょっと呆れながら、リリィとクロエに声をかけた。
「リリィ、クロエ次はこっちだよ」
「はーい」
クロエとリリィはそれぞれの位置に着く。それぞれの植木鉢の中にはハルの不注意で枯らした苗があり、そこに回復魔法をかけて治すのが2人の試験だ。
回復魔法を2人はまた無詠唱で唱える。すると、苗はみるみるうちに回復してゆき、他の苗よりも生長していった。
「凄いわ! 無詠唱で回復はおろか生長までさせるなんて!」
「そりゃ上手くなるまで何度も繰り返しましたから」
「そうそう自分に回復魔法かけて、レイラさんのポーション飲みながら」
「ちょっと!? 不健康すぎない!?」
まさかこの世界にもエナジードリンク(この場合はポーション)付けで頑張る社畜みたいな存在がいるのかとハルはビックリし、リリィを叱った。
しかし、ショコラはその様子を見て「全く……3ヶ月も飲まず食わずあげく寝ずに読書した奴が何を今更……」とぼそっと呟いた。
「おーい、3人ともちょっと」
「どうしました、ショコラ師匠」
「何かあったんですか?」
ある日、いつもの如く弟子たちを教えていたショコラは3人を呼び出し、屋敷の中へと入れた。何事かと不思議に思う3人を連れ、ショコラは一室を開ける。
そこはショコラ達がいつも使っている図書館であり、慣れてるクロエはともかく、2人はその大きさに口を開けて驚いていた。ショコラは驚いている2人をつついて、正気に戻し、3つに分かれて机に積まれている本を見せた。
「お前らにやって欲しいことはとりあえずこの本を全て読破して欲しい」
「全部ですか!?」
「ああ」
いきなりショコラに言われ、3人は驚く。1冊だけでもかなりの量があるそれは5冊ほど各列に積まれていた。あまりの量にマーシャ達が諦めたような声で言った。
「え……? これ全てですか!?」
「あのちょっと……多くないですかね……」
「うっわ、規格外……」
いきなり本を見せられた3人は慌てる。しかし、ショコラは優しくかつ諭すように語りかけた。
「ここにある本は将来魔女になったときのために必要な事が書いてある。覚える呪文は当然のこと、いつ使うべきかや魔力を消費しない方法もだ。私達2人はこの前のテストでお前らに何かを感じたし、健康を捨ててまで努力するその姿勢にうたれてたな」
「ショコラ師匠……」
「どうだ? 頑張れるか?」
「はい!」
「よーし、いい返事だ。じゃあハルこの本で分からないことがあったらアイツらに教えてやってな」
「分かりましたよ、ショコラさん」
3人の魔法修行はまだまだ始まったばかり、そしてこの3人も後にとんでもない魔女になるが……それはまた別のお話。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
隣国は魔法世界
各務みづほ
ファンタジー
【魔法なんてあり得ないーー理系女子ライサ、魔法世界へ行く】
隣接する二つの国、科学技術の発達した国と、魔法使いの住む国。
この相反する二つの世界は、古来より敵対し、戦争を繰り返し、そして領土を分断した後に現在休戦していた。
科学世界メルレーン王国の少女ライサは、人々の間で禁断とされているこの境界の壁を越え、隣国の魔法世界オスフォード王国に足を踏み入れる。
それは再び始まる戦乱の幕開けであった。
⚫︎恋愛要素ありの王国ファンタジーです。科学vs魔法。三部構成で、第一部は冒険編から始まります。
⚫︎異世界ですが転生、転移ではありません。
⚫︎挿絵のあるお話に◆をつけています。
⚫︎外伝「隣国は科学世界 ー隣国は魔法世界 another storyー」もよろしくお願いいたします。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
魔王様は攻略中! ~ヒロインに抜擢されましたが、戦闘力と恋愛力は別のようです
枢 呂紅
ファンタジー
戦闘力は抜群だけど恋愛方面はポンコツな異世界の魔王様が、乙女ゲーム世界に召喚されてしまった。
生き残る条件は、攻略対象者と一緒に乙女ゲーム世界を救うこと。けれども魔王様の恋愛経験値は残念ながらゼロ!
頭を抱える魔王様を、さらなる非情な現実が襲う。
「この世界の聖女が、どうやって攻略対象者に力を与えると思いますか? 答えは聖女の口付けです!」
まさかのDEAD or KISSな展開に絶体絶命な魔王様。さらには攻略対象者の中に、元の世界の腹心の部下までがまぎれこんできて……?
果たして魔王様は、乙女ゲームのヒロインとして世界を無事に救えるのか。
初心すぎる魔王様が赤面して転げまわったり、人間の手から敬愛する魔王を守るために異世界から駆けつけたはずの元悪魔な美形部下が泥沼にはまって悶え苦しんだり。
最恐魔王の、ジレきゅん主従ラブ!
※小説家になろう様でも連載しています。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる