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四章

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 先ほどまでたむろしていた冒険者たちは旅立ったのか既にはけており、掲示板の前には誰も居らず、そこに残った依頼を眺めるのに新人が居座っても文句を言われることはなさそうだ。

初心者ペイジくんでも受けられる依頼はこの辺りですね」

 メイディ氏の示した依頼は、街のお使いや森での植物採集など、子供でも安全に履行出来そうな内容だった。冒険者登録が出来るようになった子供たちが小遣い稼ぎ代わりに利用することもあるのだとか。

 何かやりたいものはあるかと聞かれ、僕はそれらの依頼に目を通すことにした。

「ええと、採集、悪魔、の、森……」
「魔の森、ですね。 お屋敷の周りからこの街までの森を魔の森と呼ぶんです」
「ま、魔の森、で、ええと……?」
「魔の森に生えている薬草を摘んで持って来い、という内容ですね。 他には?」

 単語を読むことはできるが、特別な読み方や文章の繋がりを理解するには至っていない辿々しい僕の音読に、メイディ氏が適宜解説と補足を入れてくれる。数枚の依頼書を音読した後、僕は一番初めに読んだ薬草の採集をすることにした。

 依頼書を掲示板から剥ぎ取ってミリー嬢の待つカウンターに持っていき、受注と薬草の見た目についての簡単な説明を受けて、僕たちはギルドを後にした。

「今日は初めてですからね、私も少しだけお手伝いしましょう」

 大通りを手を繋いで入り口エントランスまで引き返しながらメイディ氏が悪戯っぽく笑った。ミリー嬢の説明によれば、階級に差がある複数人でパーティを組んだ際に、階級の高い冒険者が手引きをして簡単に達成されてしまう状況があるのだそうだ。それは階級の低い冒険者の為にならないし、その行為で階級が上がっても経験が積めていない冒険者には破滅が待っているだけだ。

「お手伝いと言っても、大したことはしません。 採集の効率を上げるだけですよ」

 そう言ってメイディ氏は、入り口エントランス付近の小さな露店に僕を案内した。水や携帯食料、携帯砥石など旅の消耗品を扱っている店らしい。そこでメイディ氏は、薬草を一束買って、僕の目の前にちらつかせてきた。

「これが今回ペイジくんが集める薬草です。 実物があった方が簡単でしょう?」

 目的の品が街中で買えてしまうのか、と目を白黒させていると、メイディ氏は依頼書の写しと薬草の値札を並べて指し示した。

「依頼書によると、薬草は一束銅貨5枚で納品ができます。 薬草は露店で買うと銅貨が7枚必要になります」
「あっ、なるほど……!」

 街中で簡単に買い集めることは出来るが、ギルドの報酬金とは差額が生まれてしまい、購入したものを納品すると損をしてしまう。不正が起きないように考えられているようだ。

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