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四章

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 二人の間で話がひと段落したのか、ミリー嬢が身を翻して背面に聳える書類棚に向かっていった。僕がメイディ氏を見上げると、彼は口角の上がった代わりない笑みの表情で僕の頭を緩やかに撫でる。理由はよくわからないが、彼は小さな子供の頭を撫でるのが好きらしい。主人の屋敷でも度々こうして頭を撫でられていた。

「お待たせしました、こちらが新規の登録用紙です」

 僕の髪がメイディ氏の指に弄ばれてしばらく、ミリー嬢が一枚の羊皮紙と半透明の石を手に戻ってきた。曰く、この用紙に名前を書き、半透明の石に生体情報を読み取らせることで冒険者登録ができるというものらしい。僕は羽ペンを借りて、数日メイディ氏の元で練習した自分の名前を辿々しく記入する。二人の僕を見る目がなんだか生温かい気がするが、気にしない。

 次に、半透明の石に右手を乗せる。乳白色に濁った平たい石板タブレットはざらつきの中にどこかしっとりとしていて、固く冷たい石なのに僕の体温と馴染んでもっちりとした手触りを覚える。ミリー嬢の説明では、この石板には特殊な魔術が宿っており、触れたものの情報を記録し保持する性質があるという。屋敷でメイディ氏から聞いた話の中に、触れることをせず文字を刻むことのできる石碑モノリスというものがあったが、それの一種なのだろうか。

 とにかくその魔術により石板の中に生体情報を記録し保持することが、ギルドで冒険者登録することの一環だそうだ。石板がじわり、と一際白く濁ると、先ほど羊皮紙に記した僕の名前が薄く光った。

「はい、お疲れ様。これで冒険者登録完了です、ペイジくん」

 沢山の羊皮紙が束ねられたファイルの中に僕の名前を書いたものを混ぜ、ミリー嬢はペンと石板を書類棚に仕舞った。そして代わりに手のひら大の小さな紙片を持ってきて、僕に手渡す。かっちりした文字で僕の名前が記されているそれは、小さい割にしっかりとした分厚めの紙で、ギルドのマークが型押しされている。

「それは冒険者登録証ギルドカード。 ギルドを利用するのに必要なもので、身分証にもなるんですよ」

 一定期間で決められた回数の依頼を熟すことで階級ランクが上がり、それによって登録証も豪華になっていくシステムらしい。冒険者に成り立ての頃は登録証を失くしたりそもそも冒険者をやめてしまう事例が多々あり、そこにお金や素材をかけていられないのだとか。

 ギルドや冒険者について簡単な説明を受けたのち、僕は早速メイディ氏監修の元、依頼を受けることになった。
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