30 / 56
四章
4−7
しおりを挟む
二人の間で話がひと段落したのか、ミリー嬢が身を翻して背面に聳える書類棚に向かっていった。僕がメイディ氏を見上げると、彼は口角の上がった代わりない笑みの表情で僕の頭を緩やかに撫でる。理由はよくわからないが、彼は小さな子供の頭を撫でるのが好きらしい。主人の屋敷でも度々こうして頭を撫でられていた。
「お待たせしました、こちらが新規の登録用紙です」
僕の髪がメイディ氏の指に弄ばれてしばらく、ミリー嬢が一枚の羊皮紙と半透明の石を手に戻ってきた。曰く、この用紙に名前を書き、半透明の石に生体情報を読み取らせることで冒険者登録ができるというものらしい。僕は羽ペンを借りて、数日メイディ氏の元で練習した自分の名前を辿々しく記入する。二人の僕を見る目がなんだか生温かい気がするが、気にしない。
次に、半透明の石に右手を乗せる。乳白色に濁った平たい石板はざらつきの中にどこかしっとりとしていて、固く冷たい石なのに僕の体温と馴染んでもっちりとした手触りを覚える。ミリー嬢の説明では、この石板には特殊な魔術が宿っており、触れたものの情報を記録し保持する性質があるという。屋敷でメイディ氏から聞いた話の中に、触れることをせず文字を刻むことのできる石碑というものがあったが、それの一種なのだろうか。
とにかくその魔術により石板の中に生体情報を記録し保持することが、ギルドで冒険者登録することの一環だそうだ。石板がじわり、と一際白く濁ると、先ほど羊皮紙に記した僕の名前が薄く光った。
「はい、お疲れ様。これで冒険者登録完了です、ペイジくん」
沢山の羊皮紙が束ねられたファイルの中に僕の名前を書いたものを混ぜ、ミリー嬢はペンと石板を書類棚に仕舞った。そして代わりに手のひら大の小さな紙片を持ってきて、僕に手渡す。かっちりした文字で僕の名前が記されているそれは、小さい割にしっかりとした分厚めの紙で、ギルドのマークが型押しされている。
「それは冒険者登録証。 ギルドを利用するのに必要なもので、身分証にもなるんですよ」
一定期間で決められた回数の依頼を熟すことで階級が上がり、それによって登録証も豪華になっていくシステムらしい。冒険者に成り立ての頃は登録証を失くしたりそもそも冒険者をやめてしまう事例が多々あり、そこにお金や素材をかけていられないのだとか。
ギルドや冒険者について簡単な説明を受けたのち、僕は早速メイディ氏監修の元、依頼を受けることになった。
「お待たせしました、こちらが新規の登録用紙です」
僕の髪がメイディ氏の指に弄ばれてしばらく、ミリー嬢が一枚の羊皮紙と半透明の石を手に戻ってきた。曰く、この用紙に名前を書き、半透明の石に生体情報を読み取らせることで冒険者登録ができるというものらしい。僕は羽ペンを借りて、数日メイディ氏の元で練習した自分の名前を辿々しく記入する。二人の僕を見る目がなんだか生温かい気がするが、気にしない。
次に、半透明の石に右手を乗せる。乳白色に濁った平たい石板はざらつきの中にどこかしっとりとしていて、固く冷たい石なのに僕の体温と馴染んでもっちりとした手触りを覚える。ミリー嬢の説明では、この石板には特殊な魔術が宿っており、触れたものの情報を記録し保持する性質があるという。屋敷でメイディ氏から聞いた話の中に、触れることをせず文字を刻むことのできる石碑というものがあったが、それの一種なのだろうか。
とにかくその魔術により石板の中に生体情報を記録し保持することが、ギルドで冒険者登録することの一環だそうだ。石板がじわり、と一際白く濁ると、先ほど羊皮紙に記した僕の名前が薄く光った。
「はい、お疲れ様。これで冒険者登録完了です、ペイジくん」
沢山の羊皮紙が束ねられたファイルの中に僕の名前を書いたものを混ぜ、ミリー嬢はペンと石板を書類棚に仕舞った。そして代わりに手のひら大の小さな紙片を持ってきて、僕に手渡す。かっちりした文字で僕の名前が記されているそれは、小さい割にしっかりとした分厚めの紙で、ギルドのマークが型押しされている。
「それは冒険者登録証。 ギルドを利用するのに必要なもので、身分証にもなるんですよ」
一定期間で決められた回数の依頼を熟すことで階級が上がり、それによって登録証も豪華になっていくシステムらしい。冒険者に成り立ての頃は登録証を失くしたりそもそも冒険者をやめてしまう事例が多々あり、そこにお金や素材をかけていられないのだとか。
ギルドや冒険者について簡単な説明を受けたのち、僕は早速メイディ氏監修の元、依頼を受けることになった。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
田舎のおっちゃん♂とヤリまくる夏休み☀️
宗形オリヴァー
BL
「おらっ! お前の奥に出すからな…っ! ド田舎おっさんの天然精子、たっぷり受け止めろや……っ!!」
失恋の傷を癒すべく、都会から遠く離れた万歳島(ばんざいじま)へやってきた学園二年生の東真京介(あずま・きょうすけ)。
父の友人である「おっちゃん」こと虎魚吉朗(おこぜ・よしろう)とのめくるめく再会は、誰もいない海で追いかけあったり、おっちゃんのガチガチな天然田舎巨根にご奉仕したり、健全で非健全なスローライフの始まりだった…!
田舎暮らしガチムチおっちゃん×ハートブレイクDKの、Hでヒーリングな夏休み・開始っ!☀️
身体検査が恥ずかしすぎる
Sion ショタもの書きさん
BL
桜の咲く季節。4月となり、陽物男子中学校は盛大な入学式を行った。俺はクラスの振り分けも終わり、このまま何事もなく学校生活が始まるのだと思っていた。
しかし入学式の一週間後、この学校では新入生の身体検査を行う。内容はとてもじゃないけど言うことはできない。俺はその検査で、とんでもない目にあった。
※注意:エロです
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる