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三章
3−8
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主人が言うには、それは昼食後に食べさせてもらった「アレ」の所為だということだ。「アレ」を捻出するために文字通り一肌脱いだ主人は、事後念入りに体を拭いてはいたが、それだけでは痕跡を消すことはできなかったのだろう、残り香のような形で主人を覆っていた。あの時は目の前に実物があったから、口にできた満足感から主人本体に気が回らなかったのだろうが、潤沢な栄養分を摂取して元気になった僕の体は、一回休んだことにより無意識に、そして貪欲に「アレ」を求めてしまっていたようだ。
「わかったら手ェ離せ」
「え」
言われて我に帰ると、僕の手は未だに主人のスラックスを掴んだままだった。如何に幼い僕だろうと、「アレ」が人体のどこで生成されるか、どうやって搾取するのかは本能的に知っている。だから、胡乱な意識の中でも的確に下腹部を狙ったのだろうが、「アレ」を求めると言うことは、つまり───
僕は途端に恥ずかしくなって慌てて手を離し、顔を真っ赤にしながらごめんなさいと謝った。主人は眉間に皺を深く刻んで僕を睨んでいたが、やがて太い首の後ろを掻きながらやれやれと軽く頭を振った。
「俺も詰めが甘かった。 興奮した夢魔がどうなるかなんてわかり切ってたのにな」
「……興奮……」
顔の火照りを冷まそうと頬に手を当ててながら、そういえば今日は別の場所でその単語を耳にしたことを思い出す。あれは、街で歩き、走り疲れたとき。人混みに揉まれ、少ない体力を使い切ったせいかと思っていたが。
「人間の精力の過剰摂取、てところだな。強制的に本能が昂っちまったんだよ」
活気ある場所で多くの人を目の当たりにしたから、幼い僕のでは耐えきれなかった。小さなコップに水を注ぎすぎて溢れるように、あの場所で重い疲労感のようなものに襲われたのだ。そしてさらに付け加えれば、水を勢いよく注ぎすぎたおかげでコップがぐらついてしまった状態が、帰宅した時の僕。倒れて全てをぶち撒ける───発情して人を襲いかねない状態になる前に、主人が「アレ」を僕に飲ませることで、僕というコップは均衡を保った。
だが、そのおかげでコップが少し成長してしまって、元あった量では足りなくなってしまった。結局僕の体は軽い飢餓状態になり、残り香を辿り主人に夜這いをかけるような状況に。軽い症状でこれなのだから、もし完全に飢えていたら、僕はなりふり構わず主人の下半身に獣のようにしゃぶりついていたのだろうか。そう考えると、ようやく落ち着いてきた顔の熱がまた上がってくる。
主人は呆れたような、疲れたような思い溜息を一つ零し、「今日はもう勘弁してくれ」と僕の首根っこを掴んで寝室から追い出したのだった。
ーーーー
またしばらくお休みして、次回から四章に入ります。
「わかったら手ェ離せ」
「え」
言われて我に帰ると、僕の手は未だに主人のスラックスを掴んだままだった。如何に幼い僕だろうと、「アレ」が人体のどこで生成されるか、どうやって搾取するのかは本能的に知っている。だから、胡乱な意識の中でも的確に下腹部を狙ったのだろうが、「アレ」を求めると言うことは、つまり───
僕は途端に恥ずかしくなって慌てて手を離し、顔を真っ赤にしながらごめんなさいと謝った。主人は眉間に皺を深く刻んで僕を睨んでいたが、やがて太い首の後ろを掻きながらやれやれと軽く頭を振った。
「俺も詰めが甘かった。 興奮した夢魔がどうなるかなんてわかり切ってたのにな」
「……興奮……」
顔の火照りを冷まそうと頬に手を当ててながら、そういえば今日は別の場所でその単語を耳にしたことを思い出す。あれは、街で歩き、走り疲れたとき。人混みに揉まれ、少ない体力を使い切ったせいかと思っていたが。
「人間の精力の過剰摂取、てところだな。強制的に本能が昂っちまったんだよ」
活気ある場所で多くの人を目の当たりにしたから、幼い僕のでは耐えきれなかった。小さなコップに水を注ぎすぎて溢れるように、あの場所で重い疲労感のようなものに襲われたのだ。そしてさらに付け加えれば、水を勢いよく注ぎすぎたおかげでコップがぐらついてしまった状態が、帰宅した時の僕。倒れて全てをぶち撒ける───発情して人を襲いかねない状態になる前に、主人が「アレ」を僕に飲ませることで、僕というコップは均衡を保った。
だが、そのおかげでコップが少し成長してしまって、元あった量では足りなくなってしまった。結局僕の体は軽い飢餓状態になり、残り香を辿り主人に夜這いをかけるような状況に。軽い症状でこれなのだから、もし完全に飢えていたら、僕はなりふり構わず主人の下半身に獣のようにしゃぶりついていたのだろうか。そう考えると、ようやく落ち着いてきた顔の熱がまた上がってくる。
主人は呆れたような、疲れたような思い溜息を一つ零し、「今日はもう勘弁してくれ」と僕の首根っこを掴んで寝室から追い出したのだった。
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またしばらくお休みして、次回から四章に入ります。
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