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次は三人目「坂宮ユウキ」
閉じ込められた?!
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はあぁぁぁ。
おれは、道なき道を歩きながら盛大なため息をついた。
ホントに、何なんだよ。
最悪じゃねーかよ、って思う。
その理由は、今から二時間前の事。
──二時間前
この島で二度の殺人事件が起こったため、さすがにみんなは帰ろうと思っていた。
一人一人が、持ってきた荷物をまとめていく。
「よーし、準備はできたかー?」
おおー……。
ユウキ君の呼び掛けに、みんなは疲れきった声で返事をした。
「おいおい、元気ないなぁ」
「しょうがないでしょう。二回も、ここで人が殺されたのを見てるんだもの」
ユウキ君に意見したのは、疲れきった顔をした川田さんだ。
川田さんに、宮野さんと安倍さんが同調する。
「そうよ……」
「それに、眠いし」
いや、それは関係ないだろ。
おれは、すかさず心の中でツッコミを入れる。
「お前は元気で良いよなあ」
ユウキ君に向かってそう言ったのは、ゲンヤ君だった。
「そうか?お前らが元気ないんだろ」
「うるせえ。黙れ」
いつもなら、「何だとコノヤロー!やんのか?!」とか言って喧嘩を仕掛けてくるのに、今日はそんな気も起きないらしい。
拍子抜けしたような表情をしたユウキ君だったが、すぐに気を取り直して、
「まあ良いか。じゃ行くぞ」
と言った。
獣道は、普通の道路と違って舗装されていないので、進んでいくのがかなり難しかった。
(ここへ来るとき、よくこんな所通れたよな~。)
そんな事を思いながら、足を踏み外さないよう、一心に足を動かした。
二十分程かけて、ようやく船の所へと戻れたおれ達。
歓喜の声があがる。
おれも正直、達成感で「やっとついたー!」と叫びたかった。
しかし、歓喜の声は、じょじょに悲鳴のようなものへと変わっていく。
おれは、すぐに状況を理解した。
なんてったって、
脱出用のボートが、
何者かによって、
──破壊されていたのだ。
「はああぁぁあぁ?!」
思わずおれは、大声で叫んでしまった。
「ウソでしょぉ?!」
「ありえなーい!」
「この島に、閉じ込められちゃったじゃない!」
そうだ。
脱出用ボートが使えない以上、おれ達はこの島に閉じ込められてしまっているのだ。
みんなは、怒りに任せて口々にあーだこーだ言い争っている。
しかし、おれは違う意味で怒っていた。
(ここまで歩いてくんの、超大変だったんだぞ!こんな風に水の泡になっちまうのか?!ひでぇだろーがよォ!)
おれは、ここまで歩いてくる間にかなり我慢してきた。
痛い。
辛い。
苦しい。
疲れた。
もうやだ。
歩きたくない。
それでも、歯を喰いしばってこの二十分間耐えて、歩き続けた。
そんなおれを嘲笑うかのような光景を前に、ついに怒りが頂点に達したのだ。
怒りでなにも言えなくなってしまったおれを見て、先頭を歩いていたユウキ君は、いつもとは違った声のトーンで話しかけてきた。
「タロウ君。怒るのは分かけど、とりあえず落ち着こうか」
ふんわりした声色で、優しい笑みを浮かべて言う。
みんなの前だからだろう。
二人きりの時とは比べ物にならないくらいの差に、おれはおっかなびっくり返事をする。
「いや、まあ、落ち着こうとは思ってるんだけどさ……」
もう怒ってはいないけど、なんか気持ちが複雑なんだよな。
そうか、とユウキ君が一言言うと、いきなり元気よく
「さあ、帰るぞ!」
と叫んだ。
……とまあ、そんなわけで、今は元いた所へ戻ってる最中って事だ。
最悪だろ?
おれはまた、はあっ、とため息をつき、先を急いだ。
おれは、道なき道を歩きながら盛大なため息をついた。
ホントに、何なんだよ。
最悪じゃねーかよ、って思う。
その理由は、今から二時間前の事。
──二時間前
この島で二度の殺人事件が起こったため、さすがにみんなは帰ろうと思っていた。
一人一人が、持ってきた荷物をまとめていく。
「よーし、準備はできたかー?」
おおー……。
ユウキ君の呼び掛けに、みんなは疲れきった声で返事をした。
「おいおい、元気ないなぁ」
「しょうがないでしょう。二回も、ここで人が殺されたのを見てるんだもの」
ユウキ君に意見したのは、疲れきった顔をした川田さんだ。
川田さんに、宮野さんと安倍さんが同調する。
「そうよ……」
「それに、眠いし」
いや、それは関係ないだろ。
おれは、すかさず心の中でツッコミを入れる。
「お前は元気で良いよなあ」
ユウキ君に向かってそう言ったのは、ゲンヤ君だった。
「そうか?お前らが元気ないんだろ」
「うるせえ。黙れ」
いつもなら、「何だとコノヤロー!やんのか?!」とか言って喧嘩を仕掛けてくるのに、今日はそんな気も起きないらしい。
拍子抜けしたような表情をしたユウキ君だったが、すぐに気を取り直して、
「まあ良いか。じゃ行くぞ」
と言った。
獣道は、普通の道路と違って舗装されていないので、進んでいくのがかなり難しかった。
(ここへ来るとき、よくこんな所通れたよな~。)
そんな事を思いながら、足を踏み外さないよう、一心に足を動かした。
二十分程かけて、ようやく船の所へと戻れたおれ達。
歓喜の声があがる。
おれも正直、達成感で「やっとついたー!」と叫びたかった。
しかし、歓喜の声は、じょじょに悲鳴のようなものへと変わっていく。
おれは、すぐに状況を理解した。
なんてったって、
脱出用のボートが、
何者かによって、
──破壊されていたのだ。
「はああぁぁあぁ?!」
思わずおれは、大声で叫んでしまった。
「ウソでしょぉ?!」
「ありえなーい!」
「この島に、閉じ込められちゃったじゃない!」
そうだ。
脱出用ボートが使えない以上、おれ達はこの島に閉じ込められてしまっているのだ。
みんなは、怒りに任せて口々にあーだこーだ言い争っている。
しかし、おれは違う意味で怒っていた。
(ここまで歩いてくんの、超大変だったんだぞ!こんな風に水の泡になっちまうのか?!ひでぇだろーがよォ!)
おれは、ここまで歩いてくる間にかなり我慢してきた。
痛い。
辛い。
苦しい。
疲れた。
もうやだ。
歩きたくない。
それでも、歯を喰いしばってこの二十分間耐えて、歩き続けた。
そんなおれを嘲笑うかのような光景を前に、ついに怒りが頂点に達したのだ。
怒りでなにも言えなくなってしまったおれを見て、先頭を歩いていたユウキ君は、いつもとは違った声のトーンで話しかけてきた。
「タロウ君。怒るのは分かけど、とりあえず落ち着こうか」
ふんわりした声色で、優しい笑みを浮かべて言う。
みんなの前だからだろう。
二人きりの時とは比べ物にならないくらいの差に、おれはおっかなびっくり返事をする。
「いや、まあ、落ち着こうとは思ってるんだけどさ……」
もう怒ってはいないけど、なんか気持ちが複雑なんだよな。
そうか、とユウキ君が一言言うと、いきなり元気よく
「さあ、帰るぞ!」
と叫んだ。
……とまあ、そんなわけで、今は元いた所へ戻ってる最中って事だ。
最悪だろ?
おれはまた、はあっ、とため息をつき、先を急いだ。
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