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続く二人目「沢野ノリスケ」
おれの災難
しおりを挟むパチパチパチ
焚き火の薪の燃える音が、静かな夜の森に響く。
ふわ~あ。
おれは、そろそろ眠くなってきた。
でも、まだ我慢だ。
おれが椅子に縛り上げられて、ゆうに三時間は経っている。
つまらない。
みんなはテントの中でわいわいやってて、おれは外で一人だった。
あーあ!
ホントついてないなあ。
ま、暇じゃないと、見張り出来ないし。
ポジティブに考えよう。
ナオキの死体は、誰も触りたがらなかったので運べず、肝試しのルートの途中に、置いてきた。
ナオキ、守ってやれなくてごめんな……。
おれは今更ながら、後悔した。
すると、テントの中から沢野(さわの)ノリスケが出てきた。
「どうしたんた?」
おれがそう聞くと、ノリスケ君は鋭い目でおれを見て、返事をした。
「便所だよ」
おれは笑いたくなった。
「バカか?ねーよそんなもの」
「じゃあ立ちしょんだ」
彼はそう言い残して、森の中へ一人去っていった。
そのすぐ後、ユウキ君が出てきて、
「どうだ、殺りに行くのか?」
と、ニヤニヤしながら言ってきた。
本気でなんなんだよこいつ。
「関係無いだろ」
ため息をつきながら言うと、ノリスケ君が森の中から帰ってきた。
「よし、戻るぞ」
「おう」
どうやら、ユウキ君はノリスケ君を待っていたらしい。
「じゃーな、せいぜい頑張れよ」
ユウキ君は捨て台詞を言いながら、テントの中に入った。
なんかムカつくな。
ゴオッ
ん?
ああっ!
「やべえ!火が!火がぁーッ!」
なんと、焚き火の火がおれの椅子に、燃え移って来ていたのだ。
おれの叫び声に反応して、テントの中から全員が出てきた。
「ええ?」
「あ」
「まじ?」
「ヤバいじゃん」
「本当か?」
「嘘だろ」
「大丈夫なのか」
「うわっ!」
口々に呟く皆。
そして、我に返ったらすぐにバケツを取り出して、水をジャージャー入れておれにぶっかけてきた。
「おい!おれじゃなくて椅子だっつーの!もっと狙えよ!」
瞬く間に、おれはびしょ濡れになってしまった。
はあ~。
もう、最悪だなぁ……。
おれは着替えを済ませると、一人テントの中へと入っていった。
みんなはというと、まだ、キャーキャーワーワーやっている。
うるせーな。
10分後に、やっと静かになった。
もう10時40分か。
おれは、寝袋に入りながら今日の事を考えていた。
何だったんだよ、アイツ。
絶対にアイツが犯人なのに、何でおれが犯人扱いされなきゃいけないんだよ。
ああもう、本当にイラつくなあ。
おれはムカムカしながら、眠りについた。
チュンチュン
うーーん。
朝日が眩しい。
おれは伸びをして、テントの外に出た。
とたんに、起きていたノリスケ君とレン君に、大笑いされた。
「ぶっ!お、おまっ……ぶふっ!」
「うわ!お前……ぶっ、あははははっ!な、何だよそれっ!」
どうしたんだ?
二人ともおれを指差しては、笑いだす。
その笑い声に起こされて、ハジメとユウキ君がテントから出てきた。
とたんに、二人も笑いだす。
「ぶはっ!お、おま、お前……うわははは!」
「ぎゃはははは!お前、何だよそれは!」
ホントに、なんの事だろう?
さらに、その二人の笑い声で起こされた、リクと安倍さんが出てきた。
……もう分かってる。
「おまっ、何だよそれはっ!……ぶ、あははははははっ!」
「うわっ!タロウ君何それぇ!ウケるぅ!」
うんざりしてきた。
何なんだよ。
みんな、おれの何で笑ってるんだ?
そうこうしているうちに、洗面所から宮野さんがやって来た。
そして、みんなと同様、笑いだした。
……と思ったけど、おれの方をチラリとも見ずに、テントに戻っていった。
すれ違いざま、宮野さんはおれにこう囁いた。
「ねぐせ、凄いよ。ていうか凄すぎ」
えっ??!
おれはなんとなく、頭をそっと触ってみた。
……あ。
「お前ら!何で教えてくれなかったんだ!」
そしたら、宮野さんにバレなかったのに!
「え?だって、分かっててやってるのかと思ったから」
「私もー」
「オレもだぞ」
「俺もだ」
こいつら~~!
ザクザク
ん?
誰かが、こちらへ向かってくる。
おれは、とっさに警戒をした。
犯人かもしれないからな。
「なんだ、ノリスケじゃねーか」
レン君が言った。
そう、森の中から一人で出てきた奴は、ノリスケ君だった。
「おはよう、ノリスケ君」
おれが挨拶すると、スルーしてレン君のところへ行ってしまった。
何だよ。
「あのさ、昨日の事なんだけど……」
「どうしたんだ?」
二人で話し始めた。
おれは、とにかくこのねぐせをどうにかしなくてはならないので、一目散に洗面所へと急いだ。
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