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私、立川なつみは中学2年生になった。どうせ今年も前の学年で同じクラスだった数少ない友達と一緒にひっそりと過ごすのだろう、そう思っていた。
ところが……。元のクラスの女子で今年同じクラスになったのはそこまで面識のない人で、仲がいい人とは全員離れてしまった。
教室に入って席を確認すると、周辺は全員男子だった。詰んだ。そう思っていた矢先、去年同じクラスだった男子が左隣と斜め左後ろにいたのを見つけて少し安心した。しかし、そいつらはずっとゲームをしていてとても話しかけられる感じがしなかった。
「おはようございます」
担任はこの学年の担当教員のなかで一番評判が悪い先生だった。髪はボサボサで30代なのに加齢臭がキツく、常にペン回しをしていてやる気がなさそうな割にやたらと小言を言う。まったく、今日、というか今年度は本当にツイてない。
始業式が終わり、誰かに話しかけてみることにした。しかし、誰に話しかければいいかわからない。全員同じ顔に見えるし。
とりあえず身長が高くて覚えやすそうな男子に話しかけることにした。クラスラインに入っていたのでラインの名前がKということだけ知っていた。
「えっとあれですよねあのKさんですよね、本名って何ですか?」
「あ、えーっと御茶ノ水奏多です」
「何て呼べばいいですかね」
「御茶ノ水でも奏多でもKでも何でもいいですよー。で、あなたはどなた?」
「あ、立川なつみと申しますー」
「趣味ありますか?」
「音ゲー」
「仲間です!最近某有名ボカロ音ゲーにはまってて……」
御茶ノ水は程よく陰キャ感があり、音ゲーという共通の趣味があるので気が合いそうだ。
私は今度は誰に話しかけようと教室を見回し、覚えやすそうな茶髪の女子がいたので話しかけた。
「名前何?」
「リサ」
「私はなつみ、よろしく」
話しかけたのはいいが、さっと会話を交わしそのまま私は逃げてしまった。話しかける相手を間違えた、醸し出される陽キャ感に堪えられなかった。とりあえず女子の友達がクラスに一人もいないのは困るので誰かに話しかけなければ、と思っていた矢先、清楚系美少女という印象の女子から話しかけられた。本当に助かった。
「私、吉祥寺梨花。あなたのお名前は?」
「私は立川なつみ!よろしくね!梨花ちゃんって何か部活入ってる?」
「バトン部。先輩がほんとに可愛いのよ……私の推しは松本先輩で……あ、なつみちゃんは部活は?入ってる?」
「文芸部だよーあと炊飯器の会」
文芸部に入るには本当は入部届が必要なのだが、未だに出していない。まぁそんなことは今はどうでもいい。
「えっと、炊飯器の会って何?」
「漫研とかアニ研に近いやつ。何でそんな名前になったのかは知らないけど」
「へー」
「ねぇねぇ!」
梨花ちゃんと話していたら知らない人が乱入してきた。
「えっとあなたh」
「聞いて!推しが尊い!まじで二戸様がほんとにかっこいいの!」
「雪、一旦落ち着いて……」
「えーっと、雪、ちゃん?よろしくね」
「まじであの漫画ほんとにみんな読むべきだと思う!ぜひ読んでね!」
そう言って雪ちゃんは去って行った。
「えーっと、何だったんだ?」
「あの子去年からあんななのよ。推し一番って感じ。」
「ほーん」
すると、さっきの茶髪のリサが来た。
「まじであの子ほんとにウザいと思う」
「それなー」
「そ、そうだねー」
だめだ……やっぱり女子の人間関係無理だ。
家に帰ってから私は今日の自分について反省した。まず、誰に対しても話しかけ方が不自然だ。いきなり名前を聞かれたら相手もビビるに決まっている。次に、面識のない女子とはそこまで関わらない方が良い。なんだかめんどくさそうだ。まぁでもとりあえず御茶ノ水はまともに話せそうなので、よかった。
ところが……。元のクラスの女子で今年同じクラスになったのはそこまで面識のない人で、仲がいい人とは全員離れてしまった。
教室に入って席を確認すると、周辺は全員男子だった。詰んだ。そう思っていた矢先、去年同じクラスだった男子が左隣と斜め左後ろにいたのを見つけて少し安心した。しかし、そいつらはずっとゲームをしていてとても話しかけられる感じがしなかった。
「おはようございます」
担任はこの学年の担当教員のなかで一番評判が悪い先生だった。髪はボサボサで30代なのに加齢臭がキツく、常にペン回しをしていてやる気がなさそうな割にやたらと小言を言う。まったく、今日、というか今年度は本当にツイてない。
始業式が終わり、誰かに話しかけてみることにした。しかし、誰に話しかければいいかわからない。全員同じ顔に見えるし。
とりあえず身長が高くて覚えやすそうな男子に話しかけることにした。クラスラインに入っていたのでラインの名前がKということだけ知っていた。
「えっとあれですよねあのKさんですよね、本名って何ですか?」
「あ、えーっと御茶ノ水奏多です」
「何て呼べばいいですかね」
「御茶ノ水でも奏多でもKでも何でもいいですよー。で、あなたはどなた?」
「あ、立川なつみと申しますー」
「趣味ありますか?」
「音ゲー」
「仲間です!最近某有名ボカロ音ゲーにはまってて……」
御茶ノ水は程よく陰キャ感があり、音ゲーという共通の趣味があるので気が合いそうだ。
私は今度は誰に話しかけようと教室を見回し、覚えやすそうな茶髪の女子がいたので話しかけた。
「名前何?」
「リサ」
「私はなつみ、よろしく」
話しかけたのはいいが、さっと会話を交わしそのまま私は逃げてしまった。話しかける相手を間違えた、醸し出される陽キャ感に堪えられなかった。とりあえず女子の友達がクラスに一人もいないのは困るので誰かに話しかけなければ、と思っていた矢先、清楚系美少女という印象の女子から話しかけられた。本当に助かった。
「私、吉祥寺梨花。あなたのお名前は?」
「私は立川なつみ!よろしくね!梨花ちゃんって何か部活入ってる?」
「バトン部。先輩がほんとに可愛いのよ……私の推しは松本先輩で……あ、なつみちゃんは部活は?入ってる?」
「文芸部だよーあと炊飯器の会」
文芸部に入るには本当は入部届が必要なのだが、未だに出していない。まぁそんなことは今はどうでもいい。
「えっと、炊飯器の会って何?」
「漫研とかアニ研に近いやつ。何でそんな名前になったのかは知らないけど」
「へー」
「ねぇねぇ!」
梨花ちゃんと話していたら知らない人が乱入してきた。
「えっとあなたh」
「聞いて!推しが尊い!まじで二戸様がほんとにかっこいいの!」
「雪、一旦落ち着いて……」
「えーっと、雪、ちゃん?よろしくね」
「まじであの漫画ほんとにみんな読むべきだと思う!ぜひ読んでね!」
そう言って雪ちゃんは去って行った。
「えーっと、何だったんだ?」
「あの子去年からあんななのよ。推し一番って感じ。」
「ほーん」
すると、さっきの茶髪のリサが来た。
「まじであの子ほんとにウザいと思う」
「それなー」
「そ、そうだねー」
だめだ……やっぱり女子の人間関係無理だ。
家に帰ってから私は今日の自分について反省した。まず、誰に対しても話しかけ方が不自然だ。いきなり名前を聞かれたら相手もビビるに決まっている。次に、面識のない女子とはそこまで関わらない方が良い。なんだかめんどくさそうだ。まぁでもとりあえず御茶ノ水はまともに話せそうなので、よかった。
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