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13・え?ただの冗談だったのに?

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 そしてまた新たな年である。史実であれば友鶴事件によって左遷されていたはずの藤本氏が1934年も停職や謹慎お構いなしに行動し、1935年を生き残り、第四艦隊事件にも接するという事態に陥り、なぜかゲームの課金艦バリエーションにと考えていた遺作の類が何処からか平賀御大に漏れていたことに戦慄した年が過ぎ去った。



 1936年冬の帝都は騒がしい事態が起きたが、藤本氏は変わりなく精力的な仕事に溺れる日々を送っている。

 え?5500t型の後継を仁淀型の拡大版としてどうにかしろって?



 あれか、阿賀野型軽巡洋艦か。



 しかし、この世界では様々なものが変化しているので15.2センチを引っ張り出す事が出来ない。そんなモノを使うなら仁淀型の55口径14センチ砲で良いのだから。

 さて、なぜ悩んでいるのかって?



 それは簡単だよ。最上型は水雷戦隊旗艦などではなく、より小型の使い勝手が良くて安価な巡洋艦が欲しいらしい。

 じゃあ、フランスの大型駆逐艦やらソ連の嚮導駆逐艦みたく、仮名ぜかましの船体を拡大して12.7センチ砲5基化したり、14センチ砲載せりゃどうよ?って私案を渡してみたら、速攻で却下しやがった。



 そんな訳で渋々どうしようと考えていた訳だが。ふと、大和型戦艦どうなってんだろうと聞いてみたところ、大和型も史実とは違う状態らしい。



 何でも、例の金剛代艦二次案の影響が強く出過ぎている。



 史実の大和は全長263mのはずだ。



 もちろん、様々な案が比較検討された話は知っているし、その中には280m級なんてのもあったハズだ。

 が、もうその段階を越えて正式に建造案が出てきている時期なんだが、その要目が異常だった。



 基準排水量6万6000トン、全長278m、全幅35.6mであるらしい。出力は史実同様に15万馬力だが、目標速力は29ノットである。



 つまり、平賀私案を弄り倒した藤本二次案を船体のたたき台に使っている。何やってんだ?!



 色々聞いて回ると、そこに影響を与えた人物は大西倫太郎大将であるらしい。あのオッサン、息子に関しては大して助力しないのに、全く別のところで藤本氏支持を表明しておかしな影響力を行使しているらしい。

 で、さらにもしやと思って満賢君に急いである事を聞いてみた。



「もしかして、不幸な四姉妹の大規模改修計画とかないよね?」



 すると、なぜ知っているのかという顔である。え?どゆ事!??



「父の派閥に畝傍の実現を促しましたよね?」



 と、逆に聞かれた。え?何?藤本氏が裏で画策していたんじゃないのかって?してないよ?何も、全く、これっポッチも全然。



「父が畝傍という艦名はともかく、その実現に向けて動いているようでして、不幸な四姉妹の高速化を口実に安価に36センチ砲塔を8基用立てようと、ストレッチ計画を言い渡されました。それも、内密にと」



 何やってんだ一体。史実もへったくれも無い海軍の動きに困惑しか沸いて来ない。



「父は何も言いませんが、派閥としてはこれをやり遂げれば、望みの空母設計に指名されるとの事でして」



 と、目線を逸らせながら言う。



 確か、満賢君は第四艦隊事件いらい、ハリケーンバウを備えた空母の建造を訴えてるんだっけ?



 あの事件で龍驤の艦橋が圧壊し、鳳翔の飛行甲板にもかなりの被害があった事を常に口にしている。



 当然だが、鋭意建造中の蒼龍や飛龍にしたって、飛行甲板損傷の可能性は高いらしい。それを回避するには艦首を密閉するハリケーンバウが必須の事だと力説してくる。

 う・・うん、そやね。そこに異論はないよ?まったく。



「ご理解いただけますか。もちろんそうですよね。新戦艦の設計から疎外されているのですから、そうだと思っておりました!!」



 うん、まあ、ちょっとそこに誤解はあるけど、ま、いっか・・・・・・



 というような事もあったが、その大和型戦艦の備砲問題で随分ともめていたとも聞いた。

 それは、副砲として15.5センチ砲を望むグループと12.7センチ砲で固めてしまえばよいという、副砲、両用砲論争である。



 個人的には副砲派かな。両方ある方が戦艦らしいし。



 その結果は折衷案が採用されて15.5センチ連装砲を2基舷側中央へと配置し、高角砲兼用として12.7センチ連装砲を片舷5基、副砲を取り囲むように配置するという。それ、副砲派への嫌がらせじゃね?



 が、コイツは良い話を聞いたと思った。



 そして、水雷旗艦仕様の巡洋艦主砲にもその連装砲を用いることとし、基準排水量7200トンに3基6門、船体中央に水偵設備や指揮所設備を設けた史実阿賀野型と大淀型の折衷の様なモノを提出する事と相成った。



 あ、という事はこいつの船体を使ってダイドー級な防空艦まで可能かも?



 という事で、12.7センチ高角砲を前後にそれぞれ3基1群として射撃指揮装置を前後に設けた防空巡洋艦案もついでに出しておいた。



 そんな事をしている時に久々に訪れた人物が居る。



「お久しぶりです。その節は大変お世話になりました」



 砲熕部の人である。



「B砲では時代遅れというお話から、砲身を新たに55口径とし、弾薬から見直し自動砲に適したものがようやく完成しました」



 というのである。6斤B砲の後継がようやく完成を迎えたらしい。



 そこでさっそく新たな掃討艦への搭載を念頭に、こちらから要求したいことを伝える。



 そして、どうにも歴史の流れは変わらない為、特設艦や小型艦に搭載可能な軽量高角砲についてについても聞いてみたが、短8センチ高角砲程度ならば57ミリで代替可能だという。



 だが、それはそれで不味い。かと言って、短8センチ砲もどうかと思う。



「そうですね。と言っても、長8センチ砲以外の8センチ砲ならばおおむね57ミリ砲でも代替できると、こちらでも考えていますので、短8センチの後継の様な物を敢えて提示する必要性を感じまいせん」



 との事だった。



 だが、そうなると今後、戦時増産に適した簡易型艦艇を量産する際に十一年式12センチ砲か長8センチ砲を積むことになるが、増設に次ぐ増設を考えるとより量産性が良くて軽量な方が良い。十一年式兄弟が悪い訳ではないが、護衛駆逐艦とか史実海防艦とか、もっと小型軽量な砲が必要だと思わないか?長8センチは何かと量産性に難がある上、今のところ何も言われないが、やはり、対空火砲としては中途半端感が否めなくなる。史実長8センチがそうであるように。その代わりと成り得る、より製造しやすくて取り扱いのしやすい10センチ級があれば良いかとも思う。



「そうですね。より小型艦向きで短8センチに代わる高角砲も考えてみます」



 そう言って砲熕部の人は帰っていった。
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