びるどあっぷ ふり〜と!

高鉢 健太

文字の大きさ
上 下
11 / 22

11・そ う と う か ん ! !

しおりを挟む
結果から言おう。



 友鶴事故は事故調査の段階では原因が未解明な部分も多く、結局は水槽試験による各種実験によって原因の推定が行われ、追波という状況下における操艦ミスが原因ではないかとされた。千鳥型水雷艇の性能に起因する原因は見つからず、設計に関してはさすが平賀譲と高い評価を受け、適度に武装面を修正した藤本喜久雄の評価も上がった。



 が、平賀譲は無断で他人の設計を横取りした事が決定打となり史実よりも長い現役生活を終え、予備役となる。藤本喜久雄も他人の設計を黙認したうえ、委員会に混乱を振りまいたという咎で停職謹慎が言い渡された。



 解せぬ。



 まあ、暇なんだからその間に出来ることをやろう。



 停職?何それ美味しい定食かな?



 謹慎?船の設計に手を出さなければ良いんでしょ?



 という事で、この暇な時間で例の57ミリ機関砲に関する画策をやろうと、まずは謎の神さまツールでググって調べ物をしてみた。



 そこで分かったことと言えば、かの有名なボフォース40ミリ機関砲って、その砲尾は源流をたどると保式6斤速射砲と同時期に開発されたスウェーデン製6斤速射砲に至るらしい。

 そんな砲尾を半自動化し、そこに自動装填機構を備え付けたのが、傑作との呼び声高い60口径40ミリ機関砲であり、第二次大戦後にジェット機に対応して大口径化したのが、知名度の低い60口径57ミリ連装機関砲であるという。



 なるほど、そしてさらに漁ってみると実に面白いモノが存在する事を知った。



 有名な英国の対戦車砲であるQF6ポンド砲にも自動装填機構を有するモーリンズ砲なるものが存在するらしい。

 しかも、軽便で簡易な装置の後付けなので、発射速度も決して高くはないが、常用で20発前後、最大で50発なら、平射砲としては良いんじゃない?それでいてマウント重量は短8センチ高角砲より軽くできるようだ。

 という事で、モーリンズ砲を参考に、現行の6斤速射砲に自動装填ユニットを載せられないかと色々画策し、実際に担当部署へと出向くと、その斬新さに驚かれてしまった。



「こんなことが出来るとですか?」



 というのがまず第一声だった。



 そこから実際に試作をしてもらうと、はじめは上手く作動しなかったが、機構の改善が進むと自動砲として問題なく使えることが分かり、早速適用されることとなり、6斤速射砲Bと称されることと相成った。



 そして、6斤速射砲ではさすがに性能不足という事で、砲身に関しても新規開発という方向性が示されたころには、年も暮れを迎えていた。



 そんな、停職とは何ぞや?謹慎とは何ぞや?といった事をやっている間の事は半ば公然の秘密状態であり、現場復帰と共に、正式にそこに関わるという、どうにもよく分からない事態とあいなっていた。



 直接関わっていなかった間の出来事としては、巡視船モドキの艦種名が口走った掃討という発言から掃討艦に決まったと言われた。



 掃討艦の主要な任務は海洋権益の保全、治安維持、犯罪取り締まりだという。



 そんな掃討艦である奄美型は千鳥型水雷艇をベースとして設計したアレであり、そもそもが即席の船である。



 本格的に掃討艦としての役割を担う目的で一から作る船を満賢君に任せたわけだが、ステップバウ艦首を備え、居住性の向上した構造物が艦上に並ぶ艦容へと変貌している。それはもう史実の占守型海防艦に近いものではないだろうか?

 確かに掃討艦とは警備機能強化型巡視船みたいなもんだから、そうなるのは確かなんだがね?



 そして、武装も1番12センチ砲の直後に6斤B砲のスポンソンが設けられ、角ばった艦橋を挟んで、構造物左右にも6斤B砲が鎮座し、構造物上に2番12センチ砲、そして、爆風避けの後方に後部6斤B砲その下方に3番12センチ砲という、まあ、配置がかなり海防艦である。



 さらに、簡易射撃方位盤を搭載するため、奄美型よりもその射撃能力はかなり高くなるともいう。もちろん、奄美型もB砲への改修が行われる予定だ。



 さて、そんな微笑ましい話と共に、とうとう条約脱退が本決まりとなったらしく、駆逐艦は再び特型サイズへと回帰するとの事である。



 初春型は何の問題も無く運用できているが、そもそもの要求航続距離を達成できないサイズだったので、用兵側には不満があるらしい。



 そして要求された大型駆逐艦だが、コイツには当然ながら、12.7センチ連装砲を搭載する。

 しかも、両用砲としても使える完全仕様を搭載するため、史実朝潮型どころか、夕雲型よりも大型化し、全長121m、水線長120m、満載排水量2820トンにもなっている。だって、あの連装砲が重いから。

 そして、その連装砲を管制する射撃指揮装置は軽量簡易型ではなく、最新の高射平射両用型の九四式射撃指揮装置になるらしい。これも賢吾君が開発したものであるらしい。もはや海軍は大西兄弟抜きでは立ち行かなくなってるんじゃないか?本当にチート持ちって、憑依付きの藤本氏何ですかね?大西兄弟なんじゃね?



 さて、そんな事をやっているうちに1935年も1月が終ろ・・・、え?



 歴史は変わってしまったようでござる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鈍亀の軌跡

高鉢 健太
歴史・時代
日本の潜水艦の歴史を変えた軌跡をたどるお話。

土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家
歴史・時代
 榎本艦隊北上せず。  それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。  生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。  また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。  そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。  土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。  そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。 (「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です) 

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

日は沈まず

ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。 また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

暁のミッドウェー

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。  真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。  一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。  そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。  ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。  日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。  その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。 (※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

処理中です...