上 下
6 / 22

6・幻の艦名を現実に

しおりを挟む
 さて、特型駆逐艦がひと段落した頃に軍令部から命令が届いた。



 そう言えば、特型の設計をしている頃にかの将官殿が言ってたっけ。



「貴様は駆逐艦がお似合いだな。俺は軍艦の設計で忙しいなぁ」



 などと。



 で、その軍艦の設計というのが、あの妙高型重巡洋艦な訳で、これがまた途中でかの将官殿が欧州流しとなり、何があっても譲らない人物が居ぬ間にと、平賀設計に不満の在った用兵側から急な改設計を命令されたという流れである。



 だが、これ、ただでさえデスマーチ著しい所へ、更なる追い討ちになる案件を持ち込まれた状態なので、放置する言い訳作りに、逆提案を行った。



 それが、



「コイツは今更弄るともはや手の施しようがなくなる。ただでさえ溶接指針の方策を取りまとめ中の段階で、コイツの改設計に手を付けるくらいなら、新規に溶接適用の新規設計をした方がマシだ。2~3年待てるなら、新たに設計しようじゃないか」



 と言ってやったのだ。相手は激怒。しかし、もう手一杯なので怒ろうが怒鳴ろうが知った事では無いのだよ。

 そして、検討材料として平賀艦をさらに突き詰めたペンサコーラ級原案の様な20センチ砲三連装4基12門の砲力特化艦、三連装3基9門、連装魚雷発射管4基のバランス型を提案してお引き取り願った。



 こうしておけば連中はなかなか結論が出ない沼に嵌ること請け合いだからだ。



 そうして放置していれば、時間切れでそのまま平賀設計で建造が始まり、改設計なんか無理としらばっくれることが可能になる。



 さて、そんなわけでだ。重巡洋艦の砲力と雷装について、主にゲームに関する事を語るとすれば、雷撃マジ必須。



 重巡洋艦という立ち位置がまず中途半端であり、砲力においてそこそこの為、駆逐艦や軽巡洋艦と当たればソコソコどうにかなるのだが、速射能力の高い艦が相手だと、決定力不足になるので、雷撃で相手の動きを規制し、牽制がてらに自身が有利な状況を作り出す必要がある。

 当然だが、戦艦並みにデカいので、発見されやすく狙われやすいため、戦艦や同格重巡洋艦に当たれば雷撃の在り無しが命運を決める場合もある。やはりトドメとなる魚雷を持たない米国艦はチート砲力のあるトップ艦でなければ使いにくい(あくまで個人の感想です)。



 ただ、日本艦のツリーにおいては、まだ妙高ならば雷装なしという選択もありではないかと考えられる位置取りなので、無視して次の大改編をもくろむことにした。

 だって、どんだけ弄っても帰ることが出来ると囁くのだよ、何がとは言わんがな?



 そうやって放置していると、やはり用兵側が迷走し、トンチキな事を言って来た。



 12門艦に四連装魚雷発射管4基だってさ。



 何?その寝言。寝言は寝てから言って欲しい。



「なるほど。2万トンの巨艦になるでしょうが、構いませんね?」



 と、真顔で尋ねると



「構うわ!貴様は軍縮条約を知らんのか!!」



 である。いや、無視した要求してるのアンタだよ?



 1万トンでそんな要求が通る訳ないだろうに、何を考えているんだろうか。速攻でお引き取り願った。



 もちろん、なんの腹案も無しにそんなことは言ってはいない。

 さて、藤本氏はジュネーブ軍縮交渉という、決裂した交渉に随行したわけだが、そこで得た巡洋艦の制限に関する情報をもとにグループB軽巡洋艦上限を見越し、20センチ砲と同等の射程を有し、砲門数を増やすことで時間あたり投射重量を向上させた15.5センチ砲というそれを思い付いた。イワユル最上砲である。



 しかし、15門積みは流石にやり過ぎなので、三連装4基と三連装魚雷発射管4基という組み合わせをいつでも渡せる様には準備している。



 だがそれより先に、混乱する彼らが冷静になる前にやることがあるんだ。



 それが天龍型軽巡洋艦の代艦だ。え?まだ早いだろうって?

 しかし、ゲーム的には今しかないんだよ。夕張問題のオプション発動無くてホントに良かった。



 その要目は排水量6000トン、14センチ連装砲4基8門、三連装魚雷発射管2基である。



 妙高が起工し、那智の起工も停める理由が無くなっているタイミングで、ソッと示したら、足柄、羽黒の起工停止理由として騒いでくれた。



 そして、単に停止では具合が悪いからと、藤本案を承認して溶接規格に合わせて建造承認までトントン拍子であった。大丈夫か?コイツラ。



 天龍型軽巡洋艦の代替として2隻が、足柄、羽黒に替わって建造されようとする頃、冷静になって止めに入る動きを見定めて、15.5センチ砲軽巡洋艦の資料を差し出すと見事に食い付いてきた。

 そりゃ、あれだけ問題化した12門艦騒動に光明が射したんだからなぁ~



 本来なら最上型はロンドン軍縮条約の規定から始まった話だが、この世界では重巡洋艦の建造が止まり、そのロンドン軍縮条約と時を合わせる様に、最上型モドキ艦の建造が始まるのだろう。



 そんな、新規格軽巡洋艦の設計が進む中で6000トン型軽巡洋艦の進水式が執り行われ、なんと、仁淀と命名された。2番艦は大淀となるらしいな。史実の大淀型の艦名が先に命名され、仁淀型が誕生することに相成った。



 さて、そういった時勢にワシントン軍縮条約のモラトリアム解除を見込んだ金剛代艦案のお出ましである。





 これは知っての通り、平賀、藤本の仲を決定づける話になっていたから有名過ぎるほど有名だな。



 だが、ゲーム的には平賀案は案外に悪くはないと思うんだ。

 どちらかというと、大和の検討案から捻り出されたネルソン式集中配置の使いにくいこと使いにくいこと。(あくまで個人の感想です)



 あんなものは英国面だけで沢山だよ。



 ま、そうは言っても妙高型重巡洋艦を半ば潰しちゃったから、当の御本人は大変お怒りであらせられるんだろうなぁ~
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鈍亀の軌跡

高鉢 健太
歴史・時代
日本の潜水艦の歴史を変えた軌跡をたどるお話。

本能のままに

揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください! ※更新は不定期になると思います。

日本が危機に?第二次日露戦争

歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。 なろう、カクヨムでも連載しています。

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

我らの輝かしきとき ~拝啓、坂の上から~

城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
講和内容の骨子は、以下の通りである。 一、日本の朝鮮半島に於ける優越権を認める。 二、日露両国の軍隊は、鉄道警備隊を除いて満州から撤退する。 三、ロシアは樺太を永久に日本へ譲渡する。 四、ロシアは東清鉄道の内、旅順-長春間の南満洲支線と、付属地の炭鉱の租借権を日本へ譲渡する。 五、ロシアは関東州(旅順・大連を含む遼東半島南端部)の租借権を日本へ譲渡する。 六、ロシアは沿海州沿岸の漁業権を日本人に与える。 そして、1907年7月30日のことである。

連合航空艦隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
1929年のロンドン海軍軍縮条約を機に海軍内では新時代の軍備についての議論が活発に行われるようになった。その中で生れたのが”航空艦隊主義”だった。この考えは当初、一部の中堅将校や青年将校が唱えていたものだが途中からいわゆる海軍左派である山本五十六や米内光政がこの考えを支持し始めて実現のためにの政治力を駆使し始めた。この航空艦隊主義と言うものは”重巡以上の大型艦を全て空母に改装する”というかなり極端なものだった。それでも1936年の条約失効を持って日本海軍は航空艦隊主義に傾注していくことになる。 デモ版と言っては何ですが、こんなものも書く予定があるんだなぁ程度に思ってい頂けると幸いです。

処理中です...