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そんなにロボってすごいのか?
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共鳴石通信を使用しての訓練を始めると、それまでとは違い非常に効率が良くなった。
なにせ機体間の通信が出来る事で相手の状況や意図が把握できるのだから、これほどやり易いことは無い。
さらに、指導官用に車を用意して指揮車両の如く仕立ててみた。
「聞こえるか。各機横一列に並べ、1番の棒から順に倒していくんだ」
指揮車からそんな指示が飛んでくる。
「了解!」
若干のタイムラグを付けて4人の声が聞こえる。6ヶ所ともにその状態なんだろうなと思いながら、機体を動かす。
通信で何番を誰が倒すか指示し合いながら10本を倒す。
そんな事を繰り返すうちに連携もとれて来る。
そんな事をひたすら続け、山ではパンの木畑の整備が順調に進んでいたある日の事、最近は小規模しか起きていなかったドラゴンが大挙して押し寄せて来たらしい。
「久々にデカイのが来たみたいだな」
知らせが来たのはちょうどベインの連携訓練をしている最中であった。
「ユーヤ、行こう!ユーヤの部隊は教導ばかりやっていて最近は戦場に出ていないんだから、こういう時こそ先頭に立たないと」
リンがそんな事を言ってくる。
「もちろんそのつもりだよ。家では参集も始まってるだろうし」
これまでは小規模だったのでバリスタを新たに装備した家や部隊に指導員を派遣し、それを参戦がわりに認めてもらっていた。
魔動バリスタが普及するにつれて防衛に必要な人員はどんどん減り、しかし、バリスタが高価であることから数自体は爆発的に増えるというほどでもなかった。
何より魔動バリスタの整備は防衛戦の前後だけやればよいというほど簡単なモノではなく、扱うにもちゃんとした訓練を適時行う必要があった。
魔動バリスタは台座が常に水平になるという便利さがある一方で、魔動車により移動しているので射撃は常に狙いを定め直すという、固定式では考えられない運用が行われ、正確な射撃には照準操作への習熟が必要だった。
その為、数十日ごとに感覚を失わないように演練し続ける事が要求され、それがさらに整備費用を押し上げていたりもしたわけだが、そうした際に指導をしたのも俺の部隊の者たちだった。
なにせ、バリスタ製造元だから俺の部隊ほど常日頃からバリスタを扱っているところはなく、自分たちの訓練が無い日は誰かしらが新規に採用した部隊へ出向いたり、新人の指導や整備の助手に出向いたりしていた。
それは戦場でも同じで、自身の部隊を動かすよりも他の部隊の性能維持に人を派遣する事がもっぱらだったので、俺の部隊が部隊として戦場に出た事はここのところ無く、俺もそれに甘えて散々開発三昧だったわけだ。
しかし、今回は大規模来襲なのでそうもいかない。
「そうじゃないよ。ドラゴン・ベインで行くんだよ」
リンがそんな事を言う。
たった5機しか無く、それも未だ試作品でしかないコレでか?
「試作品だからダメだと思ってる?試作だからやってみなきゃ、どこがダメか分からないんだ」
これまでシリンダー開発やら車の発展に大いに貢献したカートレースだってリンの功績あってだし、彼女が試して作り上げてきたモノではある。
「ドラゴン・ベインは収穫機とは根本的に違う事はユーヤも分かってるよね?」
俺自身はこうしてロボに乗ってはいるが、バリスタの効率化を重視したい人間だ。何ならバリスタを装甲化して戦車にした方がコレより役に立つと考えている。出来ていないのは水平石による水平化の動作を装甲が邪魔しかねないからだ。
戦車の砲身のように安定化させられたら良いのだろうが、自動追尾ではなく、ただ水平にするだけなので、オープントップじゃ無ければ敵の視察と照準が迅速に行えない事、そして、バリスタの矢が砲弾のように小さくない事だ。重さこそないが、人の背丈ほどもあるボルトを狭い戦闘室内で番えるのは難しすぎる。当然、室内に置いておけるボルトの数も少なく、補給も迅速に行えなくなってしまう。
まあ、そんなデメリットだらけだから、危険であっても装甲化していないんだ。
たいして、コレは装甲化されている。武器はハルバートの様な戦斧の類なので補給や装填の必要が無い。何より通信装置があり、一人乗り。
さらに大きいのは陸戦兵器として専用設計されているため、収穫機と違って脚が丈夫でそのくせ動きは機敏だ。鍛冶師たちが思う存分腕を振るった一品だ。
「コイツの動きなら十分ドラゴンとやり合える。リンはそう言いたいのか?」
そう、明らかにあのティラノサウルスみたいな肉食恐竜と張り合える動きをしている。
ドラゴン・ベイン同士の模擬戦はそう言った想定を兼ねてもいた。
「やり合えるというか、勝てる」
そう断言するリン。しかし、ロボ熱なんかない俺にとっては、人型歩行兵器に対し、今になっても絶対の信頼を置けていないんだ。
勝てる。か・・・・・・
「他の・・・・・・、聞くまでもなさそうだな」
ベインの中は見えないが、他の連中もリンと同じ考えであるらしいことは雰囲気だけで分かった。なぜそこまで自信が持てるのか俺にはよく分からないが、やってやれないことは無いだろう。
俺自身もそのくらいの事は分かってはいるんだ。
「分かった。今回の戦い、ドラゴン・ベインの初陣としよう」
ロボット好きなら喜々として飛び出していくだろう状況だが、俺はそこまで乗り気になれない。
なにせ機体間の通信が出来る事で相手の状況や意図が把握できるのだから、これほどやり易いことは無い。
さらに、指導官用に車を用意して指揮車両の如く仕立ててみた。
「聞こえるか。各機横一列に並べ、1番の棒から順に倒していくんだ」
指揮車からそんな指示が飛んでくる。
「了解!」
若干のタイムラグを付けて4人の声が聞こえる。6ヶ所ともにその状態なんだろうなと思いながら、機体を動かす。
通信で何番を誰が倒すか指示し合いながら10本を倒す。
そんな事を繰り返すうちに連携もとれて来る。
そんな事をひたすら続け、山ではパンの木畑の整備が順調に進んでいたある日の事、最近は小規模しか起きていなかったドラゴンが大挙して押し寄せて来たらしい。
「久々にデカイのが来たみたいだな」
知らせが来たのはちょうどベインの連携訓練をしている最中であった。
「ユーヤ、行こう!ユーヤの部隊は教導ばかりやっていて最近は戦場に出ていないんだから、こういう時こそ先頭に立たないと」
リンがそんな事を言ってくる。
「もちろんそのつもりだよ。家では参集も始まってるだろうし」
これまでは小規模だったのでバリスタを新たに装備した家や部隊に指導員を派遣し、それを参戦がわりに認めてもらっていた。
魔動バリスタが普及するにつれて防衛に必要な人員はどんどん減り、しかし、バリスタが高価であることから数自体は爆発的に増えるというほどでもなかった。
何より魔動バリスタの整備は防衛戦の前後だけやればよいというほど簡単なモノではなく、扱うにもちゃんとした訓練を適時行う必要があった。
魔動バリスタは台座が常に水平になるという便利さがある一方で、魔動車により移動しているので射撃は常に狙いを定め直すという、固定式では考えられない運用が行われ、正確な射撃には照準操作への習熟が必要だった。
その為、数十日ごとに感覚を失わないように演練し続ける事が要求され、それがさらに整備費用を押し上げていたりもしたわけだが、そうした際に指導をしたのも俺の部隊の者たちだった。
なにせ、バリスタ製造元だから俺の部隊ほど常日頃からバリスタを扱っているところはなく、自分たちの訓練が無い日は誰かしらが新規に採用した部隊へ出向いたり、新人の指導や整備の助手に出向いたりしていた。
それは戦場でも同じで、自身の部隊を動かすよりも他の部隊の性能維持に人を派遣する事がもっぱらだったので、俺の部隊が部隊として戦場に出た事はここのところ無く、俺もそれに甘えて散々開発三昧だったわけだ。
しかし、今回は大規模来襲なのでそうもいかない。
「そうじゃないよ。ドラゴン・ベインで行くんだよ」
リンがそんな事を言う。
たった5機しか無く、それも未だ試作品でしかないコレでか?
「試作品だからダメだと思ってる?試作だからやってみなきゃ、どこがダメか分からないんだ」
これまでシリンダー開発やら車の発展に大いに貢献したカートレースだってリンの功績あってだし、彼女が試して作り上げてきたモノではある。
「ドラゴン・ベインは収穫機とは根本的に違う事はユーヤも分かってるよね?」
俺自身はこうしてロボに乗ってはいるが、バリスタの効率化を重視したい人間だ。何ならバリスタを装甲化して戦車にした方がコレより役に立つと考えている。出来ていないのは水平石による水平化の動作を装甲が邪魔しかねないからだ。
戦車の砲身のように安定化させられたら良いのだろうが、自動追尾ではなく、ただ水平にするだけなので、オープントップじゃ無ければ敵の視察と照準が迅速に行えない事、そして、バリスタの矢が砲弾のように小さくない事だ。重さこそないが、人の背丈ほどもあるボルトを狭い戦闘室内で番えるのは難しすぎる。当然、室内に置いておけるボルトの数も少なく、補給も迅速に行えなくなってしまう。
まあ、そんなデメリットだらけだから、危険であっても装甲化していないんだ。
たいして、コレは装甲化されている。武器はハルバートの様な戦斧の類なので補給や装填の必要が無い。何より通信装置があり、一人乗り。
さらに大きいのは陸戦兵器として専用設計されているため、収穫機と違って脚が丈夫でそのくせ動きは機敏だ。鍛冶師たちが思う存分腕を振るった一品だ。
「コイツの動きなら十分ドラゴンとやり合える。リンはそう言いたいのか?」
そう、明らかにあのティラノサウルスみたいな肉食恐竜と張り合える動きをしている。
ドラゴン・ベイン同士の模擬戦はそう言った想定を兼ねてもいた。
「やり合えるというか、勝てる」
そう断言するリン。しかし、ロボ熱なんかない俺にとっては、人型歩行兵器に対し、今になっても絶対の信頼を置けていないんだ。
勝てる。か・・・・・・
「他の・・・・・・、聞くまでもなさそうだな」
ベインの中は見えないが、他の連中もリンと同じ考えであるらしいことは雰囲気だけで分かった。なぜそこまで自信が持てるのか俺にはよく分からないが、やってやれないことは無いだろう。
俺自身もそのくらいの事は分かってはいるんだ。
「分かった。今回の戦い、ドラゴン・ベインの初陣としよう」
ロボット好きなら喜々として飛び出していくだろう状況だが、俺はそこまで乗り気になれない。
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