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通信が出来ないと連携もとれない
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実際に保護装置の制作に取り掛かったが、頭の後ろで紐を規制するハンス方式ではやはり色々と問題があった。
「これだと頭の動きだけじゃなく、腕の動きまで規制されるから動かし辛いし、長時間乗っているのは辛いね」
リンがそんな事を言う。
そもそも、FHRシステムは現在、ハンス以外に、レース用品を多く手掛けるシンプソンというメーカーが開発したものが存在する。
こちらはハンスとは仕様が異なり、肩に載せた小さな土台から直接紐を伸ばしてヘルメットと繋いでいる。
ハンスが肩から胸にかけて長く土台を伸ばし、そこをシートベルトで固定するのに対し、シンプソンの器具はベルトで胴体に装着し、肩部の器具をシートベルトで固定する。器具自体が小さいため、装着者の負担も小さく、頭の後ろで規制されるのではなく、紐の支点が肩にある分、首を振る自由度も大きくできる。なおかつ、固定部位が少ないので腕を動かす負何にもなり難い。
ただ、ハンスは決まった紐の長さで誰にでも適合するのに対し、シンプソン式の場合、装着に際して事前に調整を行う必要がある。この調整が適正でなければ、もしもの時に本来の機能を発揮してくれない。
それぞれにメリットがあり、デメリットもある保護装置だが、知っている物が二つあるのだから両方とも作って試してみた方が良いだろう。
「う~ん、これはまた・・・・・・、体を縛るんだ」
リンが嫌な顔をする。
それも仕方がない。
ソ連の開発した耐Gスーツほどくっきりボディーラインを浮き上がらせる訳ではないが、上半身をベルトで縛れば当然ながら・・・・・・
「乗ってしまえば見えないから良いんだけどさ」
そう言って、ちょっと不満そうだ。
さて、このような器具を使う以上、ヘルメットも当然必要だが、FRPの様な合成樹脂が無いこの世界、金属か布か革で作るしかない。
骨格を金属で作り、外装を革、内装を布や綿で成形したオーダーメイドのヘルメットになっている。
もちろんだが、バイザーの無いジェットヘルだ。視界が広く取れて器具の取り付けが可能なヘルメットの形状を他に思いつかなかった。
ほら、ラリー用のヘルメットってジェットヘルじゃないか。
収穫機用は内装を簡素化して汎用性を持たせたヘルメットとして、器具の取り付けを可能にしている。
試作品をいくつもリンと二人で試しながら改良を重ねて行った訳だが、その途中で重大な問題が出てきてしまう。
「リン!待て。その・・うわ!!」
ドンという音と共に俺の乗るベインが転倒した。
シートベルトやヘルメット、頸部保護装置のおかげで体に異常はないが、ベインは壊れてしまっている。
「ユーヤ、ごめん。終了の合図見逃してた」
ベインを降りたリンがそう謝って来る。
「いや、ベインの視界は狭いんだ。動き回るベインからオッサンが常に見える訳じゃないし、声が聞こえる訳でもない。俺だって何度も見逃してるんだ」
そう、問題はこれだ。
無線がないので指示や合図が送れない。意志の疎通が難しい。
魔法と言っても念話の様なものがある訳ではないので、機体間の意思疎通や外部の指示者からの合図を常に理解できるわけではない。
無線の様なものをどう作れば良いのか俺にはよく分からない。スピーカーでも作れたなら違うのかもしれないが、そちらについても詳しくない。
「声を大きくする方法?そんなものがあるのだろうか」
研究者に相談してみたが、彼も良く分からないらしい。
そこで、糸電話を作ってみた。
「こうやって離れたところに声を伝える方法がある。声は振動だから、糸や空気を震わせて耳に届くんだ」
そう言って簡単な説明をしてみた。
「なるほど、振動か。振動を大きくすれば、音も大きくなる・・・・・・」
研究者は何か考えているらしい。
彼も魔動機械の効率化に一区切りついてどこか手持無沙汰だった。ロボットの製作となると鍛冶師の領分であって彼の出番ではない。
そんな彼にスピーカーみたいなものが作れないかどうか頼んでみたわけだ。
スピーカーは確か磁石を使っていたはずだが、そこを魔動で再現できれば可能ではないのかと、素人なりに考えたんだ。
「銀糸に魔力として振動を流せば或いは・・・・・・」
などとすでに何やら考えているようなので、後は彼に任せてみる事にしよう。
すぐに出来るとは思えないので別の事を考えてみる。
ハンドサインでベイン同士がやり取りできると云うのはありだろう。無線が搭載される以前の飛行機なんかはそうだったらしいし。
後は光での通信。モールスだな。
ただ、両方とも模擬戦の中で使えるのかは分からなかった。
特に、モールスなんて詳しくは知らないのでこれから作らないといけない。
まずは、最低限の意思疎通を行えるハンドサインを決めて使ってみることにしよう。
「これだと頭の動きだけじゃなく、腕の動きまで規制されるから動かし辛いし、長時間乗っているのは辛いね」
リンがそんな事を言う。
そもそも、FHRシステムは現在、ハンス以外に、レース用品を多く手掛けるシンプソンというメーカーが開発したものが存在する。
こちらはハンスとは仕様が異なり、肩に載せた小さな土台から直接紐を伸ばしてヘルメットと繋いでいる。
ハンスが肩から胸にかけて長く土台を伸ばし、そこをシートベルトで固定するのに対し、シンプソンの器具はベルトで胴体に装着し、肩部の器具をシートベルトで固定する。器具自体が小さいため、装着者の負担も小さく、頭の後ろで規制されるのではなく、紐の支点が肩にある分、首を振る自由度も大きくできる。なおかつ、固定部位が少ないので腕を動かす負何にもなり難い。
ただ、ハンスは決まった紐の長さで誰にでも適合するのに対し、シンプソン式の場合、装着に際して事前に調整を行う必要がある。この調整が適正でなければ、もしもの時に本来の機能を発揮してくれない。
それぞれにメリットがあり、デメリットもある保護装置だが、知っている物が二つあるのだから両方とも作って試してみた方が良いだろう。
「う~ん、これはまた・・・・・・、体を縛るんだ」
リンが嫌な顔をする。
それも仕方がない。
ソ連の開発した耐Gスーツほどくっきりボディーラインを浮き上がらせる訳ではないが、上半身をベルトで縛れば当然ながら・・・・・・
「乗ってしまえば見えないから良いんだけどさ」
そう言って、ちょっと不満そうだ。
さて、このような器具を使う以上、ヘルメットも当然必要だが、FRPの様な合成樹脂が無いこの世界、金属か布か革で作るしかない。
骨格を金属で作り、外装を革、内装を布や綿で成形したオーダーメイドのヘルメットになっている。
もちろんだが、バイザーの無いジェットヘルだ。視界が広く取れて器具の取り付けが可能なヘルメットの形状を他に思いつかなかった。
ほら、ラリー用のヘルメットってジェットヘルじゃないか。
収穫機用は内装を簡素化して汎用性を持たせたヘルメットとして、器具の取り付けを可能にしている。
試作品をいくつもリンと二人で試しながら改良を重ねて行った訳だが、その途中で重大な問題が出てきてしまう。
「リン!待て。その・・うわ!!」
ドンという音と共に俺の乗るベインが転倒した。
シートベルトやヘルメット、頸部保護装置のおかげで体に異常はないが、ベインは壊れてしまっている。
「ユーヤ、ごめん。終了の合図見逃してた」
ベインを降りたリンがそう謝って来る。
「いや、ベインの視界は狭いんだ。動き回るベインからオッサンが常に見える訳じゃないし、声が聞こえる訳でもない。俺だって何度も見逃してるんだ」
そう、問題はこれだ。
無線がないので指示や合図が送れない。意志の疎通が難しい。
魔法と言っても念話の様なものがある訳ではないので、機体間の意思疎通や外部の指示者からの合図を常に理解できるわけではない。
無線の様なものをどう作れば良いのか俺にはよく分からない。スピーカーでも作れたなら違うのかもしれないが、そちらについても詳しくない。
「声を大きくする方法?そんなものがあるのだろうか」
研究者に相談してみたが、彼も良く分からないらしい。
そこで、糸電話を作ってみた。
「こうやって離れたところに声を伝える方法がある。声は振動だから、糸や空気を震わせて耳に届くんだ」
そう言って簡単な説明をしてみた。
「なるほど、振動か。振動を大きくすれば、音も大きくなる・・・・・・」
研究者は何か考えているらしい。
彼も魔動機械の効率化に一区切りついてどこか手持無沙汰だった。ロボットの製作となると鍛冶師の領分であって彼の出番ではない。
そんな彼にスピーカーみたいなものが作れないかどうか頼んでみたわけだ。
スピーカーは確か磁石を使っていたはずだが、そこを魔動で再現できれば可能ではないのかと、素人なりに考えたんだ。
「銀糸に魔力として振動を流せば或いは・・・・・・」
などとすでに何やら考えているようなので、後は彼に任せてみる事にしよう。
すぐに出来るとは思えないので別の事を考えてみる。
ハンドサインでベイン同士がやり取りできると云うのはありだろう。無線が搭載される以前の飛行機なんかはそうだったらしいし。
後は光での通信。モールスだな。
ただ、両方とも模擬戦の中で使えるのかは分からなかった。
特に、モールスなんて詳しくは知らないのでこれから作らないといけない。
まずは、最低限の意思疎通を行えるハンドサインを決めて使ってみることにしよう。
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