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78・おっさんは機嫌を取る
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東の丘からの眺めはとても壮大で、南を見れば遠くに山々が連なる姿も薄く見える。
「どうやら南には山がある様だな」
おっさんが言うが、はるか彼方に薄っすら見える頂は、エミリーには見えなかったらしい。
「キョーコによると、4000メートルの高さなら240キロ先が見えると教わりました。拠点から砦が見えるなんて凄い距離ですよね。そのくらい先にある山なんでしょうか」
というエミリーに対し、おっさんはなんと答えるか悩む。なにせ遠見では距離までは分からないため、山の高さは何とも言えないのだが、夏なのに白い山となれば、そのくらいの高山と考えて間違いなく、
「もしかすると、もっと先かも知れんな。山は夏なのに白い」
その言葉に驚くエミリー。サンポとヘタは自ら眺める事が出来るようで、
「北には夏でも寒い森もありますよ?」
と、ヘタが疑問を呈すが、おっさんはある程度南へ向かえば常夏となり、さらに南は季節が逆転する事を告げると、ヘタは信じられないと驚く。
「ダイキが何を言っているのか分からん」
と、サンポは口を尖らせる。
サンポ越しに北東を見たおっさんは、そちらには山がない事を確認する。
正確には崖の頂は尖っており、そこが険しい山岳地帯なのはたしかだが、数千メートル級の高山は見当たらない。
そうした情報を出城へと持ち帰れば、キョーコが興味を示した。
「地溝帯ならマイナス標高かも知れない。死海はマイナス400メートルのところにある」
と、地理について語り出した。
一番低いのは南極のナントカという場所でマイナス2500メートルになると聞いて、おっさんはすごい話だと思う。
「なら、川を下ればその湖まで行けるんじゃない?」
キョーコに引き気味のキャリーが投げやりにそう言えば、キョーコが食い付く。
「行きたい!見に行きたい!」
あまりの勢いに後ずさるキャリー。
「まあまあ、分かったから」
おっさんがキョーコを落ち着かせ、丘を歩いて4日、距離にして100キロ近い事を告げ、川は直線ではないのでさらに遠いだろうと言い聞かせる。
「オーガはそこから来たかも知れないし!」
オーガを口実にするキョーコ。
「動物らしきものは見てないな。湖畔が奇妙なくらい白かっただけだ」
「それは間違いなく塩湖の証拠だよ!その白いのは全部塩!!」
息つく暇なくキョーコが被せて来るのでおっさんも引いた。
キョーコの解説を聞いて分かったことは、丘の向こうの地形は地溝帯ではないかと言う事。そして、本来裂け目であるためなだらかに降るはずの位置に巨大な岩盤がせり出したことで西方は平坦なままなのだろうという事だった。
「ここも数万年先には崩落してるかもしれないけど」
と、スケールの大きな話をキョーコが付け加えるが、今はそこまで考えても仕方がないと思ったおっさん。
「それと、南に見えた山だけど、雪を被った山なら5000メートル級かも。300キロくらい先かもしれない」
そう聞いて、それはまた遠いなと思ったおっさん。
「・・・・・・ただ、そうだとするとこの南には地溝帯の影響で別の裂け目や屈曲もあるだろうから、そこは緑の溢れた場所になっているかも。オーガの生息地はそこかもしれない」
何やら一人で盛り上がっていたキョーコが今度は少し静かになったと思ったらそう言い出す。
「でも、南は砂の海だって」
エミリーがそう言って来るが、キョーコには違う考えがあるらしい。
「うん、南方の街やその南の国の向こうはそうなんだと思う。でも、ここの南はエミリーが見た湖みたいな裂け目がひとつか、もしかしたらふたつ連なってる可能性があって、そこの条件が整っていたら緑にあふれている場所かもしれない」
ならば人間が住んでいるんじゃないかとおっさんは思ったが
「オーガの素早さや硬さから、頂点に立っているのはあいつ等だと思う。人間が居ても衰退しているか、原始人から進化できていないかも」
おっさんはそれを聞いて不思議に思ったが、ここは地球とは環境が違うんだという事を思い出す。地球の場合はくまなく人類が広がって各地で文明を築いて発展させたが、ここにはオーガの様な凶暴で人間より強力な魔物が多数生息している。
話でしか聞いていない、より西方の土地がこの地域に進出してきた人類にとっての唯一の土地であり、他の地域についての情報は持ち合わせていない。
仮に他の地域に人類文明が花開いているのだとしても、まだ西方の文明が邂逅できる位置までは達していないという事になるのだろうと考えたおっさん。
「地球でもアメリカ大陸の人類は15世紀まで他大陸との接触が無かった。この土地が地球のアメリカ大陸の様な隔離された場所の可能性もある」
キョーコの解説を聞いて、そこに何の反論もなく納得するしかできないおっさんだった。
こうしてキョーコの意向によって東方探索が決定したのだが、カズキは出城の強化があるためついて来れず、ショーコも秋までに出来るだけ食料を確保する必要があるのでパスすると言って来た。
キャリーはコータが乗り気なため、嫌々ついて来ると言う。
こうして川に沿って旅立ったおっさんたちは順調に歩を進めて3日後
「居るな」
おっさんが遠方に熱感知で魔物を見つけた。そして、毛皮を用いてサンポが偵察に出る。
しばらくして戻ったサンポは
「オーガだな。そう大きな群れじゃない」
おっさんも想定していた様に、この辺りにはオーガが進出してきていた。
「やるか」
おっさんは熱感知が出来る有利な夜襲を提案した。
熱感知はおっさんだけでなく、エミリーら4人も使える。サンポとヘタも似たような暗視スキルがあるので問題なかった。
日暮れを迎え、おっさんたちは静かにオーガの群れへと接近し、まずは遠距離からおっさんと森人二人が射かけて数を減らす。
その間に接近したキャリーが外周で慌てるオーガを倒し、キョーコ、コータが群れを蹂躙していく。
おっさんたちの的確な援護もあって危なげなくオーガを倒し切ることが出来た。
「出番がありませんでした」
エミリーは持ち物が強化されたエアーライフルであったため、今回はおっさんの護衛に徹し、活躍できずに終わり、不満そうにしているが、弓士ばかり3人を後方に残すのもそれはそれで問題なので仕方がないとおっさんが言い聞かせて機嫌を取るのだった。
「どうやら南には山がある様だな」
おっさんが言うが、はるか彼方に薄っすら見える頂は、エミリーには見えなかったらしい。
「キョーコによると、4000メートルの高さなら240キロ先が見えると教わりました。拠点から砦が見えるなんて凄い距離ですよね。そのくらい先にある山なんでしょうか」
というエミリーに対し、おっさんはなんと答えるか悩む。なにせ遠見では距離までは分からないため、山の高さは何とも言えないのだが、夏なのに白い山となれば、そのくらいの高山と考えて間違いなく、
「もしかすると、もっと先かも知れんな。山は夏なのに白い」
その言葉に驚くエミリー。サンポとヘタは自ら眺める事が出来るようで、
「北には夏でも寒い森もありますよ?」
と、ヘタが疑問を呈すが、おっさんはある程度南へ向かえば常夏となり、さらに南は季節が逆転する事を告げると、ヘタは信じられないと驚く。
「ダイキが何を言っているのか分からん」
と、サンポは口を尖らせる。
サンポ越しに北東を見たおっさんは、そちらには山がない事を確認する。
正確には崖の頂は尖っており、そこが険しい山岳地帯なのはたしかだが、数千メートル級の高山は見当たらない。
そうした情報を出城へと持ち帰れば、キョーコが興味を示した。
「地溝帯ならマイナス標高かも知れない。死海はマイナス400メートルのところにある」
と、地理について語り出した。
一番低いのは南極のナントカという場所でマイナス2500メートルになると聞いて、おっさんはすごい話だと思う。
「なら、川を下ればその湖まで行けるんじゃない?」
キョーコに引き気味のキャリーが投げやりにそう言えば、キョーコが食い付く。
「行きたい!見に行きたい!」
あまりの勢いに後ずさるキャリー。
「まあまあ、分かったから」
おっさんがキョーコを落ち着かせ、丘を歩いて4日、距離にして100キロ近い事を告げ、川は直線ではないのでさらに遠いだろうと言い聞かせる。
「オーガはそこから来たかも知れないし!」
オーガを口実にするキョーコ。
「動物らしきものは見てないな。湖畔が奇妙なくらい白かっただけだ」
「それは間違いなく塩湖の証拠だよ!その白いのは全部塩!!」
息つく暇なくキョーコが被せて来るのでおっさんも引いた。
キョーコの解説を聞いて分かったことは、丘の向こうの地形は地溝帯ではないかと言う事。そして、本来裂け目であるためなだらかに降るはずの位置に巨大な岩盤がせり出したことで西方は平坦なままなのだろうという事だった。
「ここも数万年先には崩落してるかもしれないけど」
と、スケールの大きな話をキョーコが付け加えるが、今はそこまで考えても仕方がないと思ったおっさん。
「それと、南に見えた山だけど、雪を被った山なら5000メートル級かも。300キロくらい先かもしれない」
そう聞いて、それはまた遠いなと思ったおっさん。
「・・・・・・ただ、そうだとするとこの南には地溝帯の影響で別の裂け目や屈曲もあるだろうから、そこは緑の溢れた場所になっているかも。オーガの生息地はそこかもしれない」
何やら一人で盛り上がっていたキョーコが今度は少し静かになったと思ったらそう言い出す。
「でも、南は砂の海だって」
エミリーがそう言って来るが、キョーコには違う考えがあるらしい。
「うん、南方の街やその南の国の向こうはそうなんだと思う。でも、ここの南はエミリーが見た湖みたいな裂け目がひとつか、もしかしたらふたつ連なってる可能性があって、そこの条件が整っていたら緑にあふれている場所かもしれない」
ならば人間が住んでいるんじゃないかとおっさんは思ったが
「オーガの素早さや硬さから、頂点に立っているのはあいつ等だと思う。人間が居ても衰退しているか、原始人から進化できていないかも」
おっさんはそれを聞いて不思議に思ったが、ここは地球とは環境が違うんだという事を思い出す。地球の場合はくまなく人類が広がって各地で文明を築いて発展させたが、ここにはオーガの様な凶暴で人間より強力な魔物が多数生息している。
話でしか聞いていない、より西方の土地がこの地域に進出してきた人類にとっての唯一の土地であり、他の地域についての情報は持ち合わせていない。
仮に他の地域に人類文明が花開いているのだとしても、まだ西方の文明が邂逅できる位置までは達していないという事になるのだろうと考えたおっさん。
「地球でもアメリカ大陸の人類は15世紀まで他大陸との接触が無かった。この土地が地球のアメリカ大陸の様な隔離された場所の可能性もある」
キョーコの解説を聞いて、そこに何の反論もなく納得するしかできないおっさんだった。
こうしてキョーコの意向によって東方探索が決定したのだが、カズキは出城の強化があるためついて来れず、ショーコも秋までに出来るだけ食料を確保する必要があるのでパスすると言って来た。
キャリーはコータが乗り気なため、嫌々ついて来ると言う。
こうして川に沿って旅立ったおっさんたちは順調に歩を進めて3日後
「居るな」
おっさんが遠方に熱感知で魔物を見つけた。そして、毛皮を用いてサンポが偵察に出る。
しばらくして戻ったサンポは
「オーガだな。そう大きな群れじゃない」
おっさんも想定していた様に、この辺りにはオーガが進出してきていた。
「やるか」
おっさんは熱感知が出来る有利な夜襲を提案した。
熱感知はおっさんだけでなく、エミリーら4人も使える。サンポとヘタも似たような暗視スキルがあるので問題なかった。
日暮れを迎え、おっさんたちは静かにオーガの群れへと接近し、まずは遠距離からおっさんと森人二人が射かけて数を減らす。
その間に接近したキャリーが外周で慌てるオーガを倒し、キョーコ、コータが群れを蹂躙していく。
おっさんたちの的確な援護もあって危なげなくオーガを倒し切ることが出来た。
「出番がありませんでした」
エミリーは持ち物が強化されたエアーライフルであったため、今回はおっさんの護衛に徹し、活躍できずに終わり、不満そうにしているが、弓士ばかり3人を後方に残すのもそれはそれで問題なので仕方がないとおっさんが言い聞かせて機嫌を取るのだった。
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