巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太

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70・おっさんは褒めちぎる

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 翌日も別のエリアへと樹の実散策である。

「あれ?これってソバじゃん」

 ショーコがあたり一面の草を見ながらそんな事を言う。
 おっさんも近づいてか見れば、黒い種が無数についているのが確認出来る。

「オーガとオオカミが草食性の魔物を食い潰したかから無傷で残ったのかな」

 ソバを見ながらショーコがそんな事を言うが、あいにくソバの収穫など想定していないので道具がないおっさんたち。

「抜いてその袋で持って帰れば良いじゃん。クマとか魚が入るなら、トラック1台分くらいはいけるんじゃない?」

 ショーコたちの籠は普通の籠であって魔法効果はない。
 対しておっさんたちの持ち物は魔法効果がある。

「まあ、構いはしないが」

 おっさんはショーコに言われるままにソバらしき草を抜いてはマジックバックへと収納していく。
 ひとりでは何時までかかるか分からないので総出で抜いていき、昼ごろまでにある程度の収穫を完了させる。

「草の量が多いが、砦の畑より広いからソバの量も見込めそうだな」

 おっさんはひと仕事終えてそんな事を口にした。
 まだ袋には入りそうだが、ソバばかりではなく、目当ては樹の実であるため、昼からは本来の目的であった樹の実狩りを行った。

 昨日と同じ様にかなりの量が採れたのでみんなの顔も明るい。

 「おっさん、まだだよ」

 ソバを山のように積み上げて帰ろううとするとショーコが止める。
 何だとおっさんが見れば、村人が縄を柱に張って何かしているところであった。

「ソバを乾さなきゃ」

 と言って、ショーコはいくつか茎を纏めて縄で縛って張ってある縄へと掛けていく。一週間程度乾燥させてから脱穀、その後に皮を剥いたり粉に引いてやっと食卓に並ぶのだと教えらたおっさんは、なるほどと思いながら小学生のとき以来であろう農作業に精を出す。

 翌日はさらに人数を増やしてソバの収穫を行い、コータやキャリーのマジックバックにも目一杯ソバを詰め込んだ。
「うっわ、農作業きっつ!」

 常に中腰作業のため、キャリーが腰を叩きながらそんな事を言う

「仕方ないよ。冬を越せるか怪しい食料事情らしいから」

 コータがそんな事を言いながら作業を行い、夕方までに砦の周囲を回って袋に詰め込めるだけのソバを収穫して回った。

「今日はソバだけで一日終わったなぁ」

 誰とは無しにそんな事を言う。

 平和ではあるのだが、まったく冒険者の一日ではなかった面々は疲れが顔に出ているのだった。

「イモないの?イモ。イモならドバドバーってたくさん採れるじゃん」

 そんな事を言うキャリー

「カオリらしいね。でも無いよ、この辺り。来る途中にも麦やソバはあったけど、イモは見てないかな。あ、無くはないか、毒抜きや渋抜きしたらいけるやつ」

「いや、それはイモっても、違うやつじゃん」

 ふたりが言うイモはジャガイモやサツマイモだろうなと思ったおっさん。

「あー、イモってほとんどが熱帯や湿潤気候のはずだから、ステップや亜寒帯には無いかなぁ」

 と、コータが独り言を言う。

「何でそんな事知ってんの!」

 それが聞こえたキャリーの逆ギレに苦笑いするコータを見ながら、おっさんもため息を吐く。ジャガイモがあればもう少し楽だったかもと思ったおっさん。

「なんと!これほど周りに食物があったのか!これなら、これならいけるかも知れんな!」

 ソバを発見した報告をすると、責任者はそう喜んでいる。
 なにせ、ショーコによればこの地に生えているソバは促成栽培可能で、今から蒔いて雪が降る前に収穫可能になるとの事だった。
 こうした冬前に実るソバや樹の実

などが、草食性の魔物が冬を越えるための食料になるのだろうと言う。

 他にも葉物野菜の原種的な草を何種類か見つけたらしく、種が取れたら栽培化するのもアリだろうとの事だった。 

 その間、カズキは銃や弾の生産がひと段落つき、村人たちから保存用の壺などを依頼されていた。穀物ならばそのまま袋で置いて置けば良いが、ラディッシュ糖を絞った後の搾りかすであるとか、ラデッシュ糖を用いて作られるシロップ漬けや甘納豆の様な保存食を入れる器が無いため、壁や塔を制作できるカズキに白羽の矢が立ったのだった。

「おお、こんな透明で見事なガラス瓶など見た事がない!」

 カズキが作ったのは壺や甕ではなく、外から中身が見えるガラスを選んでいた。その騒ぎをおっさんも見ることになり、本当に何でも作れるんだなと感心する。
 その日の夕食はいつもと違って質素なものとなった。

「ん?何だか今日は質素だな」

 おっさんがそんな事を言う。

「見た目はね。彩が無いから仕方ないんだけど、搾りかすで作った乾パンの試食も兼ねてだから。栄養価は保証するよ」

 ショーコがそんな事をいう。試食と言うだけあって、このメニューなのはおっさんたちやラディッシュ糖に携わる村人だけ。他はいつも通りのメニューであった。

 そんな乾パンを齧ったおっさんは驚いた顔をする。

「甘みがあるな。ビスケットみたいだ」

 それは絞り切れていない糖分が残っている甘さと、搾りかすと水、塩を混ぜて練っている事で塩味によっていっそう甘さが引き立っている事による効果である。

「本来は保存用だからもっと硬くて齧りつけない物になるかと思ったんだけど、冬がめっちゃ寒いじゃん?だからそこまでしなくてもよさそってことで、ビスケット並みに食べられんの」

 と説明するショーコ。さらに足の早い果実類であるとか、寒さに弱い樹の実類も甘納豆やシロップ漬けにしているそうで、乾パンのおともに一部が使われている。それらは当然ながら甘く、その甘さを何とかしてくれるのが、浄水作用もあるという木の葉を用いたお茶である。

「魔法瓶も作れるから真冬でも半日くらいは温かいままで行けるかな?」

 お茶もなかなかの飲み口だったため、おっさんが褒めちぎっていると、カズキがそう補足してくるので、是非にと頼むおっさんであった。
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