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58・おっさんは苦笑した
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南の拠点や開拓村からの連絡は途絶え、東征村からの物資も件の盗賊によって半月前を最後に来ていない。
こちらの連絡員が到着していないため、今頃は正式に捜索隊が出ているかも知れないが、有力な冒険者などそう残っていない上、気になるのはオーガの動き。
「アレをオーガと名付けるのかい。バラバラに勝手な名付けをされるより、召喚者の名付けを優先するのは昔からの習わしさ、使わせてもらうよ」
ギルマスはそう言って正式にオーガが、アレの名称となる事を告げた。
「ところで、この拠点に役人や王軍は居ないのですか?」
エミリーが唐突にそんな事を聞けば、ギルマスは渋い顔をする。
「アイツらが役に立つと思うかい?お嬢ちゃん」
疑問に質問で返されたエミリーも困る。
「兵士は当の昔に南へ行ったよ。行政長は都合の良い事を連絡員に話させようとあれこれやっていたからね。さすがにアタマにキてね」
なんと、都合よく情報改ざんに励んでいたらしい役人は、すでにこの拠点には居ないらしい。
その上で出した連絡員が盗賊に襲われたのでは、もはやどうしようもなかった。
「では、役人は南へ?」
エミリーの問いに頷くギルマス。
それでは情報も入らない訳だな。
かなり困った状況に陥っている拠点だが、そこまでの悲壮感は感じられない。
「そう気にしなさんな。バカ共が居ない分やりやすくなってんだ」
というギルマス。
ここまではやって来たが、おっさんたちはここから向う先がまるで存在しなかった。
南へ向うにも情報が無い。
さらに東にも開拓村があるらしく、そことは連絡が取れる状況で、今のところオーガの襲撃はないらしい。
まずは地理を把握しようと、報告を終えたおっさんは周辺情勢について聞いて回る。
その結果分かった事は、基本的に気候は王国周辺の延長という事だった。
北は森林地帯が続いており、東へ伸びる草原もそのまま。そして、南へ下る毎に乾燥地帯へと変貌していく。ただ、そこから先は探査していないので不明と言っている。
地球の地理に照らせば、中央アジアに近しい環境と言って差し支え無いだろう。
そして、さらに東へ行けば、きっとオーガの楽園が存在している。
そんな予想をしたおっさん。
そうなると、オーガが何処から来たのかという話になるが、状況からすれば南東で間違いなさそうだだった。
「南東に行けば、大河や森があるのかも」
とは、キョーコの言。
もちろん、それを確認する術は持ち合わせていないおっさんたち。
「それにしても数千キロは離れているはずだから、オーガの行動力と組織力は人に近いのかも」
と、さらなる考察をするキョーコだが、疑問が無いでもないらしい。
「でも、恐竜は鳥の祖先だから、羽毛の生えた恒温動物というのが最近の説」
という。
それに賛同するのはコータ。
「そう。昔は鱗人間ってイメージだったけど、最近はもっと鳥っぽいイメージに変化していて、人間というより大型の鳥って話になってる」
と、説明してくれたが、それはおっさんの欲しい情報ではなかった。
「オーガは鳥に似た部分はなかったな。コータ、元の世界に居たソイツはこっちのオーガとは別物だ。あまり拘らない方が良いんじゃないか?」
と、サンポに諭されている。
おっさんも、あまり地球知識に頼れないと考えていた。
そもそも、太鴨を見れば地球の知識や常識に頼れない事は分かりきっていたのだが。
さらに問題となるのは、この拠点は絶賛孤立中という事である。
東や北の開拓村とは連絡が取れているが、南の状況は皆目見当もつかない。
すぐ近くまでオーガが迫っている状況かも知れないが、規模すら不明では対策の立てようもない。
「何で探査に出ないんだ?」
おっさんはふと、そんな疑問を口にした。
探らなければ分からないのだから、偵察に出るのが普通のはず。
「そう言って帰って来ない冒険者が多いみたいですよ。他にも盗賊化した冒険者は居るかもしれません」
というエミリー。
ラノベによくある、勇気ある冒険者による英雄的行動というのは、結局のところ物語に過ぎないらしい。
そうでなくとも金にならない現状、ワザワザ自ら危険を犯す者など居なかった。
「どうすんだよ、それ」
おっさんならずも呆れてモノが言えない。
「しょうがないでしょ。やらなきゃいけない事は分かっていても、自分はやりたくない。他人が逃げる口実に使うのも見過ごせないって事だもん」
キャリーがやれやれと肩をすくめながらそう言った。
だが、それでは何も解決しない。
「なら、探査して来てやろうか?」
サンポがそう言った。
「逃げる気?」
キャリーがいつもの様に絡むが、その相手をしないサンポ。
「逃げるって、何処へだよ。ダイキを置いて逃げる意味がない。お前たち召喚者が行くとなったら大騒ぎだ。王城と繋がってるかも知れないからな。だが、森人ならそんな疑念もない」
そう言ってふらりと立ち上がるサンポ。
確かに、森人ならば冒険者達も文句は言わないだろう。もとから接点の薄い繋がりしかなく、容姿以外に興味は持たれていなさそうである。
さらにサンポの言う通り、召喚者はいくら放り出されたと言ったところで、王城が召喚した人物であり、いくら否定しても疑念は拭えない。
おっさんはおっさんで見張り塔に登って見ることにした。
魔法があるからだろうか、かなり高い塔を建てている。
こうした建築を見ると、確かにキョーコの発言が理解出来るおっさんだった。
「いや、日本の文明は鬼界カルデラ噴火でダメになったんだって聞いたよ。七千年前にそれなりの発展してたのが一瞬でパァになって、マイナスからのやり直しって」
と、キャリーがよくわからない話を始め
「日食説が主流だけど、天の岩戸伝説の元ネタかも」
と、キョーコまで乗っている。
そんなワイワイやりながら登った先から辺りを見渡せば、辺り一面の草原が広がっている。他には何も見えやしない。
「この高さから見えるのは精々30キロちょっとかな。歩いて一日以内の距離だから、開拓村とかも見えない」
そんな事を呟くキョーコ。
流石に拠点だけあって設備が充実していると感心していたおっさんには、要らない情報ではあったので苦笑した。
「その範囲にオーガは居ないのは確定だな」
見回しながらおっさんがそう告げ、後はサンポの探索結果を待つしかないとジッと遠くを見つめるのだった。
こちらの連絡員が到着していないため、今頃は正式に捜索隊が出ているかも知れないが、有力な冒険者などそう残っていない上、気になるのはオーガの動き。
「アレをオーガと名付けるのかい。バラバラに勝手な名付けをされるより、召喚者の名付けを優先するのは昔からの習わしさ、使わせてもらうよ」
ギルマスはそう言って正式にオーガが、アレの名称となる事を告げた。
「ところで、この拠点に役人や王軍は居ないのですか?」
エミリーが唐突にそんな事を聞けば、ギルマスは渋い顔をする。
「アイツらが役に立つと思うかい?お嬢ちゃん」
疑問に質問で返されたエミリーも困る。
「兵士は当の昔に南へ行ったよ。行政長は都合の良い事を連絡員に話させようとあれこれやっていたからね。さすがにアタマにキてね」
なんと、都合よく情報改ざんに励んでいたらしい役人は、すでにこの拠点には居ないらしい。
その上で出した連絡員が盗賊に襲われたのでは、もはやどうしようもなかった。
「では、役人は南へ?」
エミリーの問いに頷くギルマス。
それでは情報も入らない訳だな。
かなり困った状況に陥っている拠点だが、そこまでの悲壮感は感じられない。
「そう気にしなさんな。バカ共が居ない分やりやすくなってんだ」
というギルマス。
ここまではやって来たが、おっさんたちはここから向う先がまるで存在しなかった。
南へ向うにも情報が無い。
さらに東にも開拓村があるらしく、そことは連絡が取れる状況で、今のところオーガの襲撃はないらしい。
まずは地理を把握しようと、報告を終えたおっさんは周辺情勢について聞いて回る。
その結果分かった事は、基本的に気候は王国周辺の延長という事だった。
北は森林地帯が続いており、東へ伸びる草原もそのまま。そして、南へ下る毎に乾燥地帯へと変貌していく。ただ、そこから先は探査していないので不明と言っている。
地球の地理に照らせば、中央アジアに近しい環境と言って差し支え無いだろう。
そして、さらに東へ行けば、きっとオーガの楽園が存在している。
そんな予想をしたおっさん。
そうなると、オーガが何処から来たのかという話になるが、状況からすれば南東で間違いなさそうだだった。
「南東に行けば、大河や森があるのかも」
とは、キョーコの言。
もちろん、それを確認する術は持ち合わせていないおっさんたち。
「それにしても数千キロは離れているはずだから、オーガの行動力と組織力は人に近いのかも」
と、さらなる考察をするキョーコだが、疑問が無いでもないらしい。
「でも、恐竜は鳥の祖先だから、羽毛の生えた恒温動物というのが最近の説」
という。
それに賛同するのはコータ。
「そう。昔は鱗人間ってイメージだったけど、最近はもっと鳥っぽいイメージに変化していて、人間というより大型の鳥って話になってる」
と、説明してくれたが、それはおっさんの欲しい情報ではなかった。
「オーガは鳥に似た部分はなかったな。コータ、元の世界に居たソイツはこっちのオーガとは別物だ。あまり拘らない方が良いんじゃないか?」
と、サンポに諭されている。
おっさんも、あまり地球知識に頼れないと考えていた。
そもそも、太鴨を見れば地球の知識や常識に頼れない事は分かりきっていたのだが。
さらに問題となるのは、この拠点は絶賛孤立中という事である。
東や北の開拓村とは連絡が取れているが、南の状況は皆目見当もつかない。
すぐ近くまでオーガが迫っている状況かも知れないが、規模すら不明では対策の立てようもない。
「何で探査に出ないんだ?」
おっさんはふと、そんな疑問を口にした。
探らなければ分からないのだから、偵察に出るのが普通のはず。
「そう言って帰って来ない冒険者が多いみたいですよ。他にも盗賊化した冒険者は居るかもしれません」
というエミリー。
ラノベによくある、勇気ある冒険者による英雄的行動というのは、結局のところ物語に過ぎないらしい。
そうでなくとも金にならない現状、ワザワザ自ら危険を犯す者など居なかった。
「どうすんだよ、それ」
おっさんならずも呆れてモノが言えない。
「しょうがないでしょ。やらなきゃいけない事は分かっていても、自分はやりたくない。他人が逃げる口実に使うのも見過ごせないって事だもん」
キャリーがやれやれと肩をすくめながらそう言った。
だが、それでは何も解決しない。
「なら、探査して来てやろうか?」
サンポがそう言った。
「逃げる気?」
キャリーがいつもの様に絡むが、その相手をしないサンポ。
「逃げるって、何処へだよ。ダイキを置いて逃げる意味がない。お前たち召喚者が行くとなったら大騒ぎだ。王城と繋がってるかも知れないからな。だが、森人ならそんな疑念もない」
そう言ってふらりと立ち上がるサンポ。
確かに、森人ならば冒険者達も文句は言わないだろう。もとから接点の薄い繋がりしかなく、容姿以外に興味は持たれていなさそうである。
さらにサンポの言う通り、召喚者はいくら放り出されたと言ったところで、王城が召喚した人物であり、いくら否定しても疑念は拭えない。
おっさんはおっさんで見張り塔に登って見ることにした。
魔法があるからだろうか、かなり高い塔を建てている。
こうした建築を見ると、確かにキョーコの発言が理解出来るおっさんだった。
「いや、日本の文明は鬼界カルデラ噴火でダメになったんだって聞いたよ。七千年前にそれなりの発展してたのが一瞬でパァになって、マイナスからのやり直しって」
と、キャリーがよくわからない話を始め
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と、キョーコまで乗っている。
そんなワイワイやりながら登った先から辺りを見渡せば、辺り一面の草原が広がっている。他には何も見えやしない。
「この高さから見えるのは精々30キロちょっとかな。歩いて一日以内の距離だから、開拓村とかも見えない」
そんな事を呟くキョーコ。
流石に拠点だけあって設備が充実していると感心していたおっさんには、要らない情報ではあったので苦笑した。
「その範囲にオーガは居ないのは確定だな」
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