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17・おっさんは安定収入の方法を知る
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二日酔いに悩まされた翌日から、おっさんは村での生活を再スタートさせた。
氷風狼の群れを二つ討伐した事で喫緊の脅威は去ったとギルドは宣言し、東征村から来ていた応援冒険者たちは続々と帰って行った。
東征村というだけあって、各地の開拓地やその後背地域へと展開する開拓ギルドはこの国で一番多くの冒険者を抱え、その職域も多岐にわたるが、やはり一番多いのが魔物の討伐である。
魔物と一口に言っても、日本におけるラノベ小説と違って野生動物なる物は東方に存在しない。
東方地域とは、いわば魔境であり、そこに住む動物とは魔境の影響によって魔力を宿し、本能的に何らかの魔法を行使できる魔物へと進化していた。
そんな世界に住む山の民や森の民も当然ながら、その基準で言えば魔人に該当する。
では、西方からやって来た国の者たちはどうかと言えば、希少な魔術師を除いてほとんど魔法を使えなかった。
その為、開拓には多くの犠牲が伴い。魔王や魔の軍勢などと恐怖された魔物の群れを討伐するため、異世界から特殊なスキルを持つ者たちを召喚するという、夢やおとぎ話の様な荒唐無稽な事業に駆り立てられることなる。
それが何の因果か夢物語では終わらずに成功したのが千年前、そして現れた召喚者たちは、望み通りに高度なスキルを持っていた。
しかし、召喚した王侯貴族にとっての誤算は、召喚者たちの価値観が自分達とは隔絶していた事だっただろう。
王侯貴族は、人間が食べられる魔境の動植物などないと思っていたのに、そこから魔力的な力を持ったポーションを創り出す者、食用になる魔物、魔草を見分ける者。そう言った者たちの活躍によって、王侯貴族が知らぬ間に庶民の間には魔力を持つ者が増え、高度な修行と知識を長年かけて修めずとも魔法を行使できるようになった。
そうした者たちを指導、組織化したのも召喚者である。
ただ、王侯貴族の懸念した権力の簒奪と言った行為は起きず、召喚者側から「ギルドと契約して開拓を任せてよ!」と言い出し、国王はその申し出を前屈みに受け入れ、今に至る事となった。
そして現在、王侯貴族は「西方の純潔を守る」という崇高な信念をもって魔の領域から遠ざかっている次第な訳だ。
などと、村の物知り古老から話を聞かされたおっさんである。長年冒険者を生業として鳥魚を追っていた人物。
この村の水源でもある北東に広がる湖や東を流れる河川について詳しく聞いて、次のマグロ来襲に思いをはせるおっさんだった。
あの何とも言えない身のおいしさと、自分ならば金になる状態で手に入るウロコ。氷風狼の収入がそこそこあるとはいえ、まだまだ甲冑の代金には足りない。
「そう焦る事はねぇぞ、若いの。北の森の方じゃ年が変わる頃には割るのも大変なブ厚い氷が張る様になってな、湖や川に必ず鳥魚はやって来る。もう、来とるかも知れん。ああ、飛び去るのを見たんだったか?なら、行けば泳いどるのが居るんじゃなかろうか」
などと屈託なく語る古老の話を聞き、絶好のポイントも教えてもらったおっさんは、まずはエミリーを待たせているギルドへ向かった。
この数日で応援に来ていた冒険者はほぼ帰り、地元パーティを除くとおっさん達以外には、襲われたパーティの捜索を続ける一組、そして、マグロを狙うパーティを残すのみである。
他のパーティであればワザワザ商売敵に情報を教えたりしないが、おっさんは呑気に古老から聞いた耳寄り情報をマグロを狙うパーティへと教えてしまう。
「わざわざ教える必要はないですよ」
不機嫌そうにエミリーが言うのは、以前、おっさんが落としてエミリーがトドメを刺した件を伝え聞いたパーティがマグロの情報を得ようとウザ絡んでいたからだ。
「なに、良いじゃないか。ポイントはひとつじゃない。彼らは水中を狙うだろうけど、俺は空の方が狙いやすいんだ、気にする事はないよ」
などと呑気に言うおっさん。実際、弓で水中を射たって浅いところにしか届かない。なまじ刺せても、相手はテレビで日焼け芸能人が太い竿とデッカイリールで一時間も格闘して釣り上げる姿が放映されていたカジキマグロすら超えた魔魚である。釣りなんてアジやイカを誘われて釣った経験しかなく、おっさんでは無理だと判断していた。
「鳥魚って水中を泳ぐんですね」
と、古老の話を聞かせると驚くエミリー。空を飛べるように進化したが形は魚のまま。地上を這う事は出来ない。
そして、本格的にマグロを狙う冒険者は、空飛ぶ鳥魚に魔法を撃ちかけるのではなく、水中を泳いでいる時に、大きな竿を使って釣り上げるのだと教えられた。
当然だが、日焼けサングラス芸能人のように、長時間の格闘の末に釣り上げる事になるし、使用する竿やリール、釣り糸に釣り針、すべてが専用の高級品である。一般的な冒険者から見れば、鳥魚釣りは余裕のある冒険者の道楽と見なされている。
大抵の村人にとって、たった一匹に時間をかける遊びをやったところで、他の魚類が食い荒らされては意味がない。マグロ釣りは金になる道楽、出来るのならカツオの一本釣りの様にポンポン釣り上げろと思われているほどだ。
なので、空飛ぶ姿を見れば、買取価格など度外視して魔法を放って数を減らしている。そんな事情を知ることになった。
しかし、おっさんは全く別の方法で落とせるので、これほど楽なことはない。
おっさんは早速エミリーと共に川へと行ってみることにした。
川までは約三時間ほど、鳥魚に限らず食用になったり素材として有用な魔物が生息しているので道が整備されている。わざわざポーターを雇う必要なく辿り着ける道である。
「川に居るのは魚のほかにも貝もいるようです」
と、川の生き物の説明をしてくれるエミリーの話を聞きながら、マグロ以外にたくさん居るんだなと感心するおっさんだった。
そして着いた川と呼ばれるものは、日本では見た事も無い大河であった。おっさんの感覚からするともはや池や湖なのだが、その幅のまま数百キロにわたって続いていると聞いて、驚くしかなかった。
おっさんは試しに弓を出現させ、目一杯の力を込めて引き絞って平らな矢じりの矢を出現させて放つ。
水面に着弾した矢が盛大な水しぶきを上げて消えていったのを見届けて辺りを警戒していると、数匹のマグロが飛び立つのが見えた。
「エミリー、頼んだ」
おっさんはこちらへ向かって来るマグロを狙い定めて電撃の矢を放ち、3匹を電気ショックによって射落とす。
一匹はショックでもはや動けなくなっていたが、暴れる一匹のエラ目掛けてエミリーが槍を突き立て止めを刺す。やっている事はウサギ狩りの時と変わらない。
おっさんの発破漁的なやり方は、古老から聞いた「やってはいけない事」の一つだったが、おっさんであればそれが絶好の狩り方になった。
こうして、おっさんは資金源を定期的に得る方法を見つけたことで、安心して甲冑の完成を待つことが出来るようになったのである。
氷風狼の群れを二つ討伐した事で喫緊の脅威は去ったとギルドは宣言し、東征村から来ていた応援冒険者たちは続々と帰って行った。
東征村というだけあって、各地の開拓地やその後背地域へと展開する開拓ギルドはこの国で一番多くの冒険者を抱え、その職域も多岐にわたるが、やはり一番多いのが魔物の討伐である。
魔物と一口に言っても、日本におけるラノベ小説と違って野生動物なる物は東方に存在しない。
東方地域とは、いわば魔境であり、そこに住む動物とは魔境の影響によって魔力を宿し、本能的に何らかの魔法を行使できる魔物へと進化していた。
そんな世界に住む山の民や森の民も当然ながら、その基準で言えば魔人に該当する。
では、西方からやって来た国の者たちはどうかと言えば、希少な魔術師を除いてほとんど魔法を使えなかった。
その為、開拓には多くの犠牲が伴い。魔王や魔の軍勢などと恐怖された魔物の群れを討伐するため、異世界から特殊なスキルを持つ者たちを召喚するという、夢やおとぎ話の様な荒唐無稽な事業に駆り立てられることなる。
それが何の因果か夢物語では終わらずに成功したのが千年前、そして現れた召喚者たちは、望み通りに高度なスキルを持っていた。
しかし、召喚した王侯貴族にとっての誤算は、召喚者たちの価値観が自分達とは隔絶していた事だっただろう。
王侯貴族は、人間が食べられる魔境の動植物などないと思っていたのに、そこから魔力的な力を持ったポーションを創り出す者、食用になる魔物、魔草を見分ける者。そう言った者たちの活躍によって、王侯貴族が知らぬ間に庶民の間には魔力を持つ者が増え、高度な修行と知識を長年かけて修めずとも魔法を行使できるようになった。
そうした者たちを指導、組織化したのも召喚者である。
ただ、王侯貴族の懸念した権力の簒奪と言った行為は起きず、召喚者側から「ギルドと契約して開拓を任せてよ!」と言い出し、国王はその申し出を前屈みに受け入れ、今に至る事となった。
そして現在、王侯貴族は「西方の純潔を守る」という崇高な信念をもって魔の領域から遠ざかっている次第な訳だ。
などと、村の物知り古老から話を聞かされたおっさんである。長年冒険者を生業として鳥魚を追っていた人物。
この村の水源でもある北東に広がる湖や東を流れる河川について詳しく聞いて、次のマグロ来襲に思いをはせるおっさんだった。
あの何とも言えない身のおいしさと、自分ならば金になる状態で手に入るウロコ。氷風狼の収入がそこそこあるとはいえ、まだまだ甲冑の代金には足りない。
「そう焦る事はねぇぞ、若いの。北の森の方じゃ年が変わる頃には割るのも大変なブ厚い氷が張る様になってな、湖や川に必ず鳥魚はやって来る。もう、来とるかも知れん。ああ、飛び去るのを見たんだったか?なら、行けば泳いどるのが居るんじゃなかろうか」
などと屈託なく語る古老の話を聞き、絶好のポイントも教えてもらったおっさんは、まずはエミリーを待たせているギルドへ向かった。
この数日で応援に来ていた冒険者はほぼ帰り、地元パーティを除くとおっさん達以外には、襲われたパーティの捜索を続ける一組、そして、マグロを狙うパーティを残すのみである。
他のパーティであればワザワザ商売敵に情報を教えたりしないが、おっさんは呑気に古老から聞いた耳寄り情報をマグロを狙うパーティへと教えてしまう。
「わざわざ教える必要はないですよ」
不機嫌そうにエミリーが言うのは、以前、おっさんが落としてエミリーがトドメを刺した件を伝え聞いたパーティがマグロの情報を得ようとウザ絡んでいたからだ。
「なに、良いじゃないか。ポイントはひとつじゃない。彼らは水中を狙うだろうけど、俺は空の方が狙いやすいんだ、気にする事はないよ」
などと呑気に言うおっさん。実際、弓で水中を射たって浅いところにしか届かない。なまじ刺せても、相手はテレビで日焼け芸能人が太い竿とデッカイリールで一時間も格闘して釣り上げる姿が放映されていたカジキマグロすら超えた魔魚である。釣りなんてアジやイカを誘われて釣った経験しかなく、おっさんでは無理だと判断していた。
「鳥魚って水中を泳ぐんですね」
と、古老の話を聞かせると驚くエミリー。空を飛べるように進化したが形は魚のまま。地上を這う事は出来ない。
そして、本格的にマグロを狙う冒険者は、空飛ぶ鳥魚に魔法を撃ちかけるのではなく、水中を泳いでいる時に、大きな竿を使って釣り上げるのだと教えられた。
当然だが、日焼けサングラス芸能人のように、長時間の格闘の末に釣り上げる事になるし、使用する竿やリール、釣り糸に釣り針、すべてが専用の高級品である。一般的な冒険者から見れば、鳥魚釣りは余裕のある冒険者の道楽と見なされている。
大抵の村人にとって、たった一匹に時間をかける遊びをやったところで、他の魚類が食い荒らされては意味がない。マグロ釣りは金になる道楽、出来るのならカツオの一本釣りの様にポンポン釣り上げろと思われているほどだ。
なので、空飛ぶ姿を見れば、買取価格など度外視して魔法を放って数を減らしている。そんな事情を知ることになった。
しかし、おっさんは全く別の方法で落とせるので、これほど楽なことはない。
おっさんは早速エミリーと共に川へと行ってみることにした。
川までは約三時間ほど、鳥魚に限らず食用になったり素材として有用な魔物が生息しているので道が整備されている。わざわざポーターを雇う必要なく辿り着ける道である。
「川に居るのは魚のほかにも貝もいるようです」
と、川の生き物の説明をしてくれるエミリーの話を聞きながら、マグロ以外にたくさん居るんだなと感心するおっさんだった。
そして着いた川と呼ばれるものは、日本では見た事も無い大河であった。おっさんの感覚からするともはや池や湖なのだが、その幅のまま数百キロにわたって続いていると聞いて、驚くしかなかった。
おっさんは試しに弓を出現させ、目一杯の力を込めて引き絞って平らな矢じりの矢を出現させて放つ。
水面に着弾した矢が盛大な水しぶきを上げて消えていったのを見届けて辺りを警戒していると、数匹のマグロが飛び立つのが見えた。
「エミリー、頼んだ」
おっさんはこちらへ向かって来るマグロを狙い定めて電撃の矢を放ち、3匹を電気ショックによって射落とす。
一匹はショックでもはや動けなくなっていたが、暴れる一匹のエラ目掛けてエミリーが槍を突き立て止めを刺す。やっている事はウサギ狩りの時と変わらない。
おっさんの発破漁的なやり方は、古老から聞いた「やってはいけない事」の一つだったが、おっさんであればそれが絶好の狩り方になった。
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