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後に禁門の乱と名付けられたこの騒動によって長州藩が関門海峡を開放する事を望んだ幕府であったが、長州藩は全く応じる姿勢を見せずに攘夷実行を叫び続けていた。
この事態に対してフランスは早期の開放が無ければ再び長州に対して攻撃を加える旨を幕府へ通告、フランスに誘われたロシアも相乗りし、アメリカも参加する事を表明していた。
修好条約締結以来、幕府と関係を深めていたイギリスは不参加を表明し、イギリスの圧力と幕府の説得もあってオランダは無関心を装う事となった。
フランスからの通告に対し、小栗は幾度も折衝を行い、日本とフランスの問題として扱うことなく、あくまでフランスと長州の問題として対応する事、その交渉は全て幕府へと報告し、最終判断は幕府が行う事などを取り決め、まずは幕府が三カ月以内に開放する事を突き付けられてしまう。
禁門の乱によって朝敵征伐が決定はされたものの、すぐさま征伐に出征するほどの準備はなく、どうしても3カ月以内の問題解決は不可能だった。もちろん、フランスはそれを見越して要求していたのだが。
その結果、幕府による関門海峡解放見込みなしとして独自の行動をすぐさま開始している。
そして1864年8月初旬には幕府に対してひと月以内に解放されなければ通商に支障が出るとして早期解放を要求し、三国は攻撃準備に入る。
9月4日、下関沖に現れた三カ国艦隊を見た長州藩庁は海峡通行の保証を認め使者を送ろうとしたが使者として艦隊へ向かおうとするものが中々現れず、そうこうするうちに攻撃が始まってしまう。特に意気軒高なロシア艦隊は上陸部隊を仕立てて下関に上陸、砲台を破壊しただけには飽き足らずに街での略奪破壊の限りを尽くし、そのまま海峡を北上して次々と砲台を占領、破壊して回った。
もちろんそれはカムチャッカでの幕府軍の攻撃に対する報復であり、幕府軍に劣る装備しか持たなかった長州藩にとっては災難以外の何物でもなかった。この戦いで友人である山縣狂介を失った事を知った伊藤俊輔は後に「狂介存命ならは、より精強な軍になったかもしれぬ」と回顧したという。
こうして4日間にわたって暴れ回った三カ国艦隊に対し、長州は8日に高杉晋作を使者に出し、講和に合意したものの、その内容は巨額の賠償金に加えて彦島をロシアに割譲し、下関をフランスが租借するというかなり厳しい内容となっていた。
その内容が幕府に通告されると小栗は烈火のごとく怒り、フランス、ロシア両国の公使を江戸城へと呼びつけることとした。
当初両国は応じる姿勢を見せようとしなかったが、イギリスの仲介もあって両国は江戸城への出頭に応じ、幕閣の面前で交渉が行われることとなった。
小栗の言葉巧みな交渉術と江戸城内で見た幕府軍の装備によって、フランスは下関租借を取り下げ、ロシアも渋々ならが彦島割譲を取り下げることとなった。賠償金についても実際に被害を受けたフランス、アメリカ艦船の分は幕府が事実調査の後に支払う事としたが、それ以外の要求については一切の支払いを拒否する事を通告した。ロシアに関しては何の被害もないにもかかわらず、乗り込んで来ただけなので小栗は国際法違反であるとして賠償金の取り下げすら要求している。
こうして幕府と各国間の交渉は終ったが、フランスやロシアは個別に長州へと賠償金支払いを要求していくことになり、それが長州を更に孤立、反幕府へと駆り立てる事となってしまった。
ただし、フランス、ロシアが賠償金要求に赴くまでの間に幕府は長州征伐の軍を発し、長州討伐へと向かったが、総督に任命された紀伊藩主徳川慶勝は戦争を望まず、交渉による解決を模索し、長州側と折衝を持ち、匿っている攘夷派公卿の追放、禁門の乱首謀者の引き渡しなどの降伏条件を提示する。
長州側も禁門の乱、三か国艦隊襲来によって疲弊しており、幕府軍との戦闘を避けようとする和平派が台頭し、首謀者として家老をはじめ高杉晋作などの首を差し出す事を決定し、討伐軍との交渉に入った。
しかし、その内容を知った高杉晋作は藩中枢を批判し徹底抗戦を主張、幕府軍の来襲も近いというのにクーデターを決行する事を決意し、旧暦では12月、西暦においては1865年1月、決起部隊率いて進軍していたところを藩主流派に捕捉され戦闘となり決起部隊は壊滅、高杉も討ち取られることとなった。
この時、高杉が叫んだとされる「タイムパトロールは何処為りや」という言葉を聞いたことはないだろうか。
しかし、これは後のフィクション歴史小説「時空捜査班の事件簿」における台詞であって、討伐部隊に参加した藩士の記録には「高杉、田井なる隊士に灯篭はどこかと尋ねたり」と記されており、戦闘中に田井と言う奇兵隊隊士に対し、灯篭のありかを尋ねている事が分かる。
もちろん、ここで出てきた灯篭はそのものではなく、符丁ないしは隠語であり、奇兵隊が密輸によって装備していた江川大筒、つまりライフル砲の事を指しているとするのが定説である。
まさか、時空犯罪者に唆されたことを悟ってタイムパトロールを呼ぼうとした。などと言う可能性があるとは思えないのだから。
この事態に対してフランスは早期の開放が無ければ再び長州に対して攻撃を加える旨を幕府へ通告、フランスに誘われたロシアも相乗りし、アメリカも参加する事を表明していた。
修好条約締結以来、幕府と関係を深めていたイギリスは不参加を表明し、イギリスの圧力と幕府の説得もあってオランダは無関心を装う事となった。
フランスからの通告に対し、小栗は幾度も折衝を行い、日本とフランスの問題として扱うことなく、あくまでフランスと長州の問題として対応する事、その交渉は全て幕府へと報告し、最終判断は幕府が行う事などを取り決め、まずは幕府が三カ月以内に開放する事を突き付けられてしまう。
禁門の乱によって朝敵征伐が決定はされたものの、すぐさま征伐に出征するほどの準備はなく、どうしても3カ月以内の問題解決は不可能だった。もちろん、フランスはそれを見越して要求していたのだが。
その結果、幕府による関門海峡解放見込みなしとして独自の行動をすぐさま開始している。
そして1864年8月初旬には幕府に対してひと月以内に解放されなければ通商に支障が出るとして早期解放を要求し、三国は攻撃準備に入る。
9月4日、下関沖に現れた三カ国艦隊を見た長州藩庁は海峡通行の保証を認め使者を送ろうとしたが使者として艦隊へ向かおうとするものが中々現れず、そうこうするうちに攻撃が始まってしまう。特に意気軒高なロシア艦隊は上陸部隊を仕立てて下関に上陸、砲台を破壊しただけには飽き足らずに街での略奪破壊の限りを尽くし、そのまま海峡を北上して次々と砲台を占領、破壊して回った。
もちろんそれはカムチャッカでの幕府軍の攻撃に対する報復であり、幕府軍に劣る装備しか持たなかった長州藩にとっては災難以外の何物でもなかった。この戦いで友人である山縣狂介を失った事を知った伊藤俊輔は後に「狂介存命ならは、より精強な軍になったかもしれぬ」と回顧したという。
こうして4日間にわたって暴れ回った三カ国艦隊に対し、長州は8日に高杉晋作を使者に出し、講和に合意したものの、その内容は巨額の賠償金に加えて彦島をロシアに割譲し、下関をフランスが租借するというかなり厳しい内容となっていた。
その内容が幕府に通告されると小栗は烈火のごとく怒り、フランス、ロシア両国の公使を江戸城へと呼びつけることとした。
当初両国は応じる姿勢を見せようとしなかったが、イギリスの仲介もあって両国は江戸城への出頭に応じ、幕閣の面前で交渉が行われることとなった。
小栗の言葉巧みな交渉術と江戸城内で見た幕府軍の装備によって、フランスは下関租借を取り下げ、ロシアも渋々ならが彦島割譲を取り下げることとなった。賠償金についても実際に被害を受けたフランス、アメリカ艦船の分は幕府が事実調査の後に支払う事としたが、それ以外の要求については一切の支払いを拒否する事を通告した。ロシアに関しては何の被害もないにもかかわらず、乗り込んで来ただけなので小栗は国際法違反であるとして賠償金の取り下げすら要求している。
こうして幕府と各国間の交渉は終ったが、フランスやロシアは個別に長州へと賠償金支払いを要求していくことになり、それが長州を更に孤立、反幕府へと駆り立てる事となってしまった。
ただし、フランス、ロシアが賠償金要求に赴くまでの間に幕府は長州征伐の軍を発し、長州討伐へと向かったが、総督に任命された紀伊藩主徳川慶勝は戦争を望まず、交渉による解決を模索し、長州側と折衝を持ち、匿っている攘夷派公卿の追放、禁門の乱首謀者の引き渡しなどの降伏条件を提示する。
長州側も禁門の乱、三か国艦隊襲来によって疲弊しており、幕府軍との戦闘を避けようとする和平派が台頭し、首謀者として家老をはじめ高杉晋作などの首を差し出す事を決定し、討伐軍との交渉に入った。
しかし、その内容を知った高杉晋作は藩中枢を批判し徹底抗戦を主張、幕府軍の来襲も近いというのにクーデターを決行する事を決意し、旧暦では12月、西暦においては1865年1月、決起部隊率いて進軍していたところを藩主流派に捕捉され戦闘となり決起部隊は壊滅、高杉も討ち取られることとなった。
この時、高杉が叫んだとされる「タイムパトロールは何処為りや」という言葉を聞いたことはないだろうか。
しかし、これは後のフィクション歴史小説「時空捜査班の事件簿」における台詞であって、討伐部隊に参加した藩士の記録には「高杉、田井なる隊士に灯篭はどこかと尋ねたり」と記されており、戦闘中に田井と言う奇兵隊隊士に対し、灯篭のありかを尋ねている事が分かる。
もちろん、ここで出てきた灯篭はそのものではなく、符丁ないしは隠語であり、奇兵隊が密輸によって装備していた江川大筒、つまりライフル砲の事を指しているとするのが定説である。
まさか、時空犯罪者に唆されたことを悟ってタイムパトロールを呼ぼうとした。などと言う可能性があるとは思えないのだから。
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